○郡山市環境基本条例
平成10年6月26日
郡山市条例第46号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 環境の保全及び創造に関する施策の基本指針等(第8条・第9条)
第3章 環境の保全及び創造のための基本的施策(第10条―第25条)
附則
わたくしたちの先人は、安積疏水を開さくすることで、猪苗代湖の水を安積平野に行き渡らせ、この大地を開拓し、本市発展の礎を築いた。わたくしたちは、これら先人の歴史的遺産を受け継ぐとともに、豊かな自然の恵みを受けて生活を営み、産業を興し、伝統や文化を育んできた。
しかしながら、近年、都市化の進展、市民の生活様式の変化等に伴い、生活の利便性が高まる一方で、資源やエネルギーが大量に消費され、本市においても都市型・生活型公害、廃棄物の増大などの問題が顕在化してきた。また、自然の復元力を超えるまでに拡大しつつある人間の活動は、地域の環境にとどまらず、自然の生態系に影響を及ぼし、さらには、地球の環境を脅かすまでに至っている。
わたくしたちは、健全で恵み豊かな環境の下に、健康で文化的な生活を営む権利とともに、この環境を保全し、さらにより良い環境とし、将来の世代に継承していくべき責務を有している。
わたくしたちは、人類が自然の生態系の一部であり、地球の環境は有限でかけがえのないものであることを深く認識し、市、事業者及び市民が相互に協力し合って、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な社会を構築し、人と自然が共生できるまちづくりに取り組んでいくことを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この条例において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この条例において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、市民が健康で文化的な生活を営むことのできる健全で恵み豊かな環境を確保し、及び向上させ、並びに将来の世代へ継承できるように適切に行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、生態系が健全に維持され、人と自然との共生が確保されるよう適切に行われなければならない。
3 環境の保全及び創造は、資源の適正な管理及び循環的な利用の推進により、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な社会を構築することを旨として、市、事業者及び市民の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われなければならない。
4 地球環境保全は、市、事業者及び市民がこれを自らの課題として認識し、すべての事業活動及び日常生活において積極的に推進されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める環境の保全及び創造についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全及び創造に関し、市民の意見を尊重して、本市の自然的社会的条件に応じた基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 前項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(市民の責務)
第6条 市民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(年次報告書)
第7条 市長は、毎年、環境の状況並びに環境の保全及び創造に関して講じた施策の状況を明らかにするため報告書を作成し、公表するものとする。
第2章 環境の保全及び創造に関する施策の基本指針等
(施策の基本指針)
第8条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
(1) 公害を防止し、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素を良好な状態に保持することにより、市民の健康を保護し、及び生活環境を保全すること。
(2) 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性を確保するとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境の保全及び回復を図り、人と自然が共生できる良好な環境を確保すること。
(3) 緑化の推進、水辺地の整備、良好な景観の創造及び歴史的文化的遺産の保全を図ること。
(4) 資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用、廃棄物の減量等を推進することにより、環境への負荷の低減を図るとともに、地球環境保全に貢献すること。
(5) 環境の保全及び創造のため、市、事業者及び市民が相互に協力し合える社会を形成すること。
(環境基本計画)
第9条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、郡山市環境基本計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な目標及び施策の方向
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、環境基本計画を定めるに当たっては、市民の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるとともに、郡山市環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
第3章 環境の保全及び創造のための基本的施策
(施策の策定等に当たっての配慮)
第10条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画との整合を図るとともに、環境の保全について配慮しなければならない。
(環境影響評価の推進)
第11条 市は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たり、あらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測及び評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(規制の措置)
第12条 市は、公害を防止するため、公害の原因となる行為に関し必要な規制の措置を講ずるものとする。
2 前項に定めるもののほか、市は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。
(財政上の措置)
第13条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(環境の保全に関する施設の整備その他の事業の推進)
第14条 市は、下水道等の公共的施設の整備事業その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、公園、緑地等の快適な生活環境の確保のための公共的施設の適正な整備を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
3 市は、前2項に定める公共的施設等の適切な利用を促進するために必要な措置を講ずるものとする。
(資源の循環的な利用の促進等)
第15条 市は、環境への負荷の低減を図るため、事業者及び市民による資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量が促進されるよう必要な措置を講ずるとともに、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、製品、役務等の利用が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、環境への負荷の低減を図るため、市の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たっては、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量の推進に努めるものとする。
(森林及び緑地の保全及び創造)
第16条 市は、快適な生活環境を保全し、及び生物の多様性の確保に資するため、森林及び緑地の保全及び創造に関し、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(水環境の保全及び創造)
第17条 市は、生物の多様性の確保に配慮しつつ、良好な生活環境を保全するため、水環境の保全及び創造に関し、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(良好な景観の形成等)
第18条 市は、地域の特性が生かされた快適な生活環境を保全するため、良好な景観の形成及び歴史的文化的遺産の保全に関し、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興等)
第19条 市は、関係機関等と協力して、市民及び事業者が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともに環境の保全及び創造に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興、広報活動の充実その他の必要な措置を講ずるものとする。
(民間団体等の自発的な活動の促進)
第20条 市は、市民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「民間団体等」という。)が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動、環境美化に関する活動その他の環境の保全及び創造に関する活動が促進されるよう、指導、支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
(調査研究の実施)
第22条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な調査研究を実施するよう努めるものとする。
(監視等の体制の整備等)
第23条 市は、環境の状況を把握し、並びに環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、測定等の体制の整備に努めるものとする。
2 市は、前項の監視、測定等により把握した環境の状況について公表するものとする。
(地球環境保全の推進)
第24条 市は、地球環境保全に資する施策を積極的に推進するものとする。
2 市は、国、他の地方公共団体、民間団体等その他の関係機関等と連携し、地球環境保全に関する調査研究、情報の提供、技術の活用等の推進に努めるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力等)
第25条 市は、環境の保全及び創造に関する施策であって広域的な取組を必要とするものについては、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。
2 市は、事業者及び市民との緊密な連携の下に、環境の保全及び創造に関する施策の推進に努めるものとする。
附則
この条例は、平成10年7月1日から施行する。