○大潟村環境基本条例
平成24年3月19日
条例第2号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 基本施策等
第1節 施策の基本方針(第8条)
第2節 環境基本計画等(第9条―第11条)
第3節 基本施策(第12条―第32条)
第4節 地球環境保全(第33条)
第3章 大潟村環境審議会(第34条・第35条)
附則
前文
大潟村は食料生産基地の建設を主な目的に、世紀の大事業「八郎潟干拓」によって生まれました。この干拓によって自然環境は一度大きく改変されましたが、環境への負荷の少ない農業の取り組みが進んだ結果、新たな自然環境、特に田畑を含めた「湿地性里山」環境が、豊かに育まれてきました。
一方で、調整池として残された八郎湖の水質は年々悪化し、一度失われた環境をとり戻すことは大変なコストと労力を要すること、また、今日の環境に関する様々な問題の解決には、社会経済活動そのものの見直しも必要であることを私たちは学んできました。
私たちは、大潟村の生物多様性を維持しつつ、人々の暮らす郷土として、また安全な食料生産基地として大潟村の環境がより豊かに育まれることを目指さなければなりません。その際、八郎湖の水質改善については、周囲の自治体とも連携を深め、主体的に取り組んでいく必要があります。また、地球温暖化やエネルギー等の地球規模の環境問題及び放射能等の環境や健康に影響を及ぼす問題に対しても自らの課題として取り組む必要があります。
このような認識のもと、村、村民、事業者等が協働し、環境の保全と創造に一体となって取り組むことにより、環境への負荷が少ない持続的発展可能な社会を実現することを目指し、ここに大潟村環境基本条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本村の環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに、村、事業者、村民及び滞在者の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策(以下「環境施策」という。)の基本となる事項を定めることにより、環境施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の村民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに、村民の福祉に貢献することを目的とする。
(1) 環境の保全及び創造 「保全」は、現在の環境をこれ以上悪化させないよう、又は負荷を減らすよう、日常・社会・経済などに関する活動を行なうことをいい、「創造」は、失われてしまった環境をよみがえらせるための活動及びより良好な環境を作り出していくことをいう。「保全」はまた「創造」の意味をも含むが、ここではより積極的な決意を表すため「保全及び創造」を使う。
(2) 湿地性里山 大潟村における、湿地の要素をあわせ持った里山環境をいう。大潟村は、周囲を調整池や承水路で囲まれ、その中に広大な水田やヨシ原、防災林が広がる独特の環境を有している。
(3) 環境創造型農業 大潟村における、自然を豊かに保つことが農業者としての社会的責任であることを自覚し、八郎湖への環境負荷の削減、生きものとの共生及び豊かな生態系の創造をめざし実践される農業をいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。
(1) 村民が、健康で安全かつ快適な生活を営むことのできる恵み豊かな環境を確保し、その環境を将来の村民に引き継いでいくこと。
(2) 人間が生態系の一部として存在し、自然から多くの恵みを受けていることを認識して、村の主産業である農業生産活動及び日常生活等において人と自然とが健全に共生していくこと。
(3) 環境への負荷の少ない持続的発展可能な社会の構築を目的として、すべての者が、公平な役割分担のもとに主体的かつ積極的に資源の適正な管理及び循環的な利用等の推進に取り組むこと。
(4) 地球環境保全に関して、地域の環境が地球環境と深くかかわっているとの認識のもとにあらゆる事業活動及び日常生活において、積極的に推進すること。
(村の責務)
第4条 村は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」といいます。)にのっとり、環境の保全及び創造に関する自然的社会的条件に応じた施策を策定し、計画的に実施する責務を有する。
(農業者をはじめとした事業者の責務)
第5条 農業者をはじめとした事業者(以下「事業者」という。)は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴う公害の発生を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、廃棄物の発生を抑制し、及び再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
3 前2項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、村が実施する環境施策に協力する責務を有する。
(村民の責務)
第6条 村民は、基本理念にのっとり、その日常生活において環境への負荷を低減するよう努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、村民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、村が行う環境施策に協力する責務を有する。
(滞在者の責務)
第7条 観光及びその他の目的で滞在する者は、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、村が行う環境施策、事業者並びに村民が行う環境の保全及び創造に関する活動に協力する責務を有する。
第2章 基本施策等
第1節 施策の基本方針
(施策の基本方針)
第8条 村は、環境施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ、総合的かつ計画的に行うものとする。
(1) 大気、水、土壌等環境の自然的構成要素を良好な状態に保持すること。
(2) 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保を図るとともに、林野、農地、水辺等における多様な自然環境の保全及び創造により、人と自然が共生することのできる良好な環境を確保すること。
(3) 村民が健康で安全に暮らせる潤いと安らぎのある生活空間の形成、地域の特性を生かした美しい景観の形成及び歴史的又は文化的環境の形成を図ること。
(4) 廃棄物の減量、資源の循環的な利用、再生可能エネルギーの導入、エネルギーの有効利用を推進し、並びに必要な技術等の活用を図ることにより、持続的発展が可能な社会を構築すること。
(5) 地球環境保全を積極的に推進すること。
(6) 村、事業者、村民及び滞在者が協働して取り組むことのできる社会を形成すること。
第2節 環境基本計画等
(環境基本計画)
第9条 村長は、環境施策を総合的かつ計画的に推進するため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画として大潟村環境基本計画(以下「環境基本計画」という。)を定めるものとする。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な目標及び施策の方向
(2) 前号に掲げるもののほか、環境施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 村長は、環境基本計画を定めるに当たっては、事業者及び村民の意見を反映することができるように必要な措置を講じなければならない。
4 村長は、環境基本計画を定めたときは、速やかに、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(施策の策定等に当たっての配慮)
第10条 村は、施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画との整合性の確保を図るほか、環境の適正な保全について十分に配慮するものとする。
(年次報告)
第11条 村長は、毎年本村の環境の状況、村が講じた環境施策の実施状況等を明らかにした報告書を作成し、これを公表しなければならない。
第3節 基本施策
(規制の措置)
第12条 村は、環境の保全上の支障を防止するため、次に掲げる行為について必要な規制の措置を講ずるものとする。
(1) 公害の原因となる行為
(2) 自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為
(3) 生態系の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為
(4) 前3号に掲げるもののほか、人の健康又は生活環境に支障を及ぼすおそれがある行為
(誘導的措置)
第13条 村は、事業者及び村民が自らの活動に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の環境の保全及び創造に資する適切な措置をとるように誘導するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(環境の保全に関する施設の整備等の推進)
第14条 村は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 村は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(良好で快適な生活環境の保全及び創造)
第15条 村は、水と緑に親しむことができる生活空間、良好な景観、歴史的文化的な環境その他の地域の特性を生かした快適な環境を保全及び創造するため、必要な措置を講ずるものとする。
(廃棄物の減量、資源の循環的な利用等の推進)
第16条 村は、環境への負荷の低減を図るため、事業者及び村民による廃棄物の減量、資源の循環的な利用及びエネルギーの有効的利用等の促進に関し必要な措置を講ずるものとする。
(環境への負荷の低減に資する製品等の利用の推進)
第17条 村は、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する製品、原材料、役務等の利用の推進を図るため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(八郎湖の水環境及び生態系の保全及び創造)
第18条 村は、八郎湖が村の持続的発展の生命線であるという認識のもと、国、他の地方公共団体(以下、「国等」という。)及びその他の関係機関と協力し、八郎湖の水環境及び生態系の適正な保全及び創造に努めるとともに、健全な水環境と安全な水の確保のために必要な措置を講ずるものとする。
(湿地性里山環境の保全及び創造)
第19条 村は、人と自然とが豊かに共生できる基盤としての湿地性里山環境を保全及び創造するとともに、そこに棲む生物について多様性の保全、及び保護管理を行うため、必要な措置を講ずるものとする
(環境創造型農業の推進)
第20条 村は、農地が有する環境の保全と創造に寄与する多面的な機能を尊重し、品質及び生産性の維持・向上を図りつつ、環境への負荷の低減に配慮した安全・安心な食料を生産するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 村は、農業から生ずる廃棄物の適正な処理並びに循環的な利用の促進に必要な措置を講ずるものとする。
3 農業者は、環境創造型農業の実践に積極的に取り組むとともに、村が実施する環境創造型農業の推進のための施策に協力するものとする。
(環境影響評価の推進)
第21条 村は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行おうとする事業者が、あらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づいてその事業に係る環境の保全及び創造について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(事業者の環境管理の促進)
第22条 村は、事業者によるその事業活動に伴う環境への負荷の低減を図るために事業者が自主的に行う環境管理(環境の保全に関する方針の策定、目標の設定、計画の作成、体制の整備及び実施状況の点検等をいう。)の促進に関し、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(事業者及び村民の参加及び協力の促進)
第23条 村は、環境施策の効率的かつ効果的な推進を図るため、事業者及び村民の環境施策への参加及び協力の促進に関し必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(環境教育及び環境学習の推進等)
第24条 村は、環境の保全及び創造について、事業者及び村民の関心と理解が深められ、これらの者による自発的な活動が促進されるように、教育並びに学習の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。
(自発的な活動の促進)
第25条 村は、事業者、村民又はこれらの者の組織する民間の団体が自発的に行う緑化活動、環境美化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動の促進並びにそれらの情報発信に関し必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(情報の収集及び提供)
第26条 村は、環境の保全及び創造に資するため、必要な情報を収集し、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ、適切に提供するように努めるものとする。
2 前項の規定により収集及び提供する情報については、その種類及び項目の検討を定期的に行うものとする。
(調査研究の実施及び監視等の体制の整備)
第27条 村は、環境施策を適切に策定するため、必要な調査研究を実施するものとする。
2 村は、環境の状況を的確に把握し、及び環境施策を適正に実施するために必要な監視等の体制を整備するものとする。
(立入調査)
第28条 村長は、この条例の施行に必要な限度において、事業者等に対し、施設の状況その他の必要な事項の報告をするよう、又は村長の指定する職員等による必要と認める場所への立ち入り調査に協力するよう要請することができる。
2 事業者等は、前項に規定する調査等への協力要請を受けたときは、誠意をもってこれに応ずるよう努めなければならない。
3 前項の規定により立入調査をする職員等は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
4 第1項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(改善勧告及び改善命令)
第29条 村長は、この条例の施行に必要な限度において、法令に特別の定めがある場合を除くほか、事業者等に対し必要な改善を行うよう勧告することができる。
2 村長は、前項の規定による勧告を行った場合において、必要があると認めるときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に基づいて講じた措置について報告を求めることができる。
3 村長は、第1項の規定による改善勧告を受けた者が正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、期限を定め、当該勧告に従うべき旨を命ずることができる。
(環境の保全に関する協定の締結及び環境保全区域の設定)
第30条 村長は、環境の保全上の支障を防止するため必要があると認めるときは、事業者等と環境の保全に関する協定について協議し、その締結に努めるものとする。
2 村長は、環境の保全上の支障を防止するため必要があると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、区域内の一定の行為を制限すること等を内容とする環境保全区域を指定することができる。
3 村長は、前項に規定する区域及び制限内容等を定めようとするときは、大潟村環境審議会及び土地の所有者その他の利害関係者の意見を聴かなければならない。
4 村長は、環境保全区域を指定したときは、速やかにその旨及びその区域を告示するとともに、環境保全区域にその旨を掲示しなければならない。
5 前2項の規定は、環境保全区域の指定の解除及びその区域の変更についても準用する。
(推進体制の整備)
第31条 村は、環境施策を総合的かつ計画的に推進するため、必要な体制を整備するものとする。
(国等との協力及び国等への要請)
第32条 村は、環境の保全及び創造のために必要があると認めるときは、国等と協力して、環境施策を推進するように努めるものとする。
2 村は、環境の保全及び創造のために必要があると認めるときは、国等に対し情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう要請するものとする。
第4節 地球環境保全
(地球環境保全)
第33条 村は、地球環境保全に資するため、環境施策を推進するものとする。
2 村は、国等及びその他の関係機関と連携し、地球環境保全に関する国際協力を推進するように努めるものとする。
第3章 大潟村環境審議会
(設置)
第34条 環境の保全および創造に関する基本的事項を調査審議するため、大潟村環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事項)
第35条 審議会の所掌事項は、次のとおりとする。
(1) 環境基本計画に関する事項
(2) 環境の保全及び創造に関する基本的事項及び重要事項
(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関し必要と認められる事項
2 審議会は、前項各号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関し村長に意見を述べることができる。
3 前2項に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成24年4月1日から施行する。