○尾鷲市熊野参詣道伊勢路景観保護条例

平成14年6月28日

条例第39号

「熊野へ参るには 紀路と伊勢路のどれ近し どれ遠し 広大慈悲の道なれば紀路も伊勢路も遠からず」と「梁塵秘抄」の一節にあるとおり、熊野参詣道伊勢路は熊野三山に至る古い歴史をもつ参詣道である。

熊野参詣道伊勢路は埋もれた文化遺産として時を過ごしたが、古道を大切に思う人々のたゆまぬ努力、粘り強い掘り起こしがなされてくるなか、ふたたび「熊野古道」と称しての21世紀への熊野詣が甦った。旅人が訪れ、山並みと入り江が続く峠越えを辿り、巡礼の苦難と喜びを体験し、身も心も大自然の手にゆだね癒す。このことは、熊野参詣道伊勢路の普遍的価値、歴史的な重みが今なお生き続けていることを証明している。

この地域に住む私たちは、先人が残してくれたかけがえのない文化遺産・熊野参詣道伊勢路をはじめ、森林、石造遺物、水流、農山村集落景観、海岸線の眺望、これらによって醸し出される風土の文化的景観を誇りとしてきたところである。

特にこの地域の森林景観は、ある時は林業と密接にかかわり、またある時は自然のままにといった特性や歴史性があることを理解し、今後もこの地域における生活や生業が良好な状態で持続されるよう努めていく必要がある。なお、当地域にはヒノキ、スギ等の人工林が多く、その多くが林業によって育まれており、これらの地権者の権利を侵害することなく保護に努めていく必要がある。

私たちは、自らの信念によって、自然・歴史・文化的景観、このすばらしい遺産の普遍的価値を高めながら、末永く保存するとともに、地域生活に活かしていくこととしていきたい。ここに、熊野参詣道伊勢路の文化的景観を世界人類の遺産として、すべての人間の責任において、次の世代に引き継ぐことを目指して、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、地域遺産である「熊野参詣道伊勢路」と貴重な遺産周辺の文化的景観や自然環境を保全することが必要な地帯の指定及びそのすぐれた条件を生かした景観づくりについて必要な事項を定めることにより、住民の生活を豊かにするとともに良好な文化的景観を将来の世代に継承することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 文化的景観保全地帯 歴史的意義を有する参詣道に沿って豊かな自然景観を有し、計画的に自然景観の保全を図る必要がある地帯

(2) 自然景観の保全 現存する地形の保全、森林の緑や水等による自然美の豊かな景観を守り、育てることをいう。

(3) 景観づくり 自然景観の形成並びに保全をいう。

(4) 原因者 土地の形質を変更、土石の採取、建築物等の建設・改築、木竹の伐採、その他、景観を阻害するすべての行為を行う者

(5) 建築物等 建築物、工作物及び広告物をいう。

(6) 事業者 農林経営や建築物等に係る各種事業を行う者をいう。

(7) 「熊野参詣道伊勢路」の利用者 「熊野参詣道伊勢路」へ来訪する、観光・信仰等を目的として利用する者

(市の責務)

第3条 市は、熊野参詣道伊勢路の良好な文化的景観が保存されるよう適切な保全措置を講ずるとともに、文化的景観の環境確保に対する市民の意識の高揚と自主活動の助長に努めなければならない。

2 市は、国、県の施策と相まって熊野参詣道伊勢路の文化的、社会的条件に配慮した歴史的文化遺産の環境確保に関する施策等を策定し、実施しなければならない。

3 市は、文化的景観保全地帯及びその周辺における森林施業と熊野参詣道伊勢路の利用者との安全調整等を図るため、関係者との協議を行うとともに、必要に応じて適切な施策を実施しなければならない。

4 市は、重要な文化的景観遺産の保存、活用を図るため、これらの損傷、滅失等の防止に努めなければならない。

(市民等の責務)

第4条 市民等は、自らが熊野参詣道伊勢路の文化的景観づくりの主体であることを認識するとともに、相互に協力して熊野参詣道伊勢路の景観づくりに努めるものとする。

(保全地帯の指定)

第5条 市長は、熊野参詣道伊勢路の保存すべき地帯を、文化的景観保全地帯(以下「保全地帯」という。)として指定することができる。

2 保全地帯を指定したときは、その名所及び区域を告示し、保全地帯の図面を住民等の縦覧に供さなければならない。

3 保全地帯の指定は告示によりその効力を生ずる。

(保全地帯指定の取り消し)

第6条 市長は、保全地帯がその価値を失った場合、その他特別な事由があるときは、当該地帯指定を取り消すことができる。

2 前項の場合には、前条第2項第3項の規定を準用する。

(保全地帯における利用のための規制)

第7条 熊野参詣道伊勢路の利用者は、保全地帯内において、次の行為をしてはならない。

(1) 火災の危険を生じさせること。

(2) ごみ、その他汚物を捨て又は放置すること。

(3) 土地の形質を変更すること。

(4) 鉱物の採掘又は土石を採取すること。

(5) 木竹の伐採又は草木の採取、その他生態系を壊すおそれのあること。

(6) 看板、標識又は工作物を設置すること。

2 前項の規定にかかわらず、非常災害のために必要な応急措置を行うためにする場合は適用しない。

(保全地帯における行為の許可)

第8条 保全地帯において、次の各号のいずれかに該当する行為をしようとする者は、規則で定めるところにより、あらかじめ市長の許可を受けなければならない。

(1) 建築物及び工作物の新築、増築、改築、移転、大規模の修繕若しくは外観の色彩の変更

(2) 広告物の設置及び形状等の変更

(3) 土地の形質の変更

(4) 鉱物の採掘又は土石の採取

(5) 木竹の伐採又は植栽を除くその他景観保全に特に大きな影響を及ぼすおそれがあると市長が認める行為

2 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合は適用しない。

(1) 非常災害のために必要な応急措置を行うためにする場合

(2) その他規則で定める行為

(保全地帯における行為の届出)

第9条 保全地帯内において、次の各号のいずれかに該当する行為をしようとする者は、規則で定めるところにより、あらかじめその内容を市長に届け出なければならない。

(1) 木竹の伐採又は植栽

(2) その他景観保全に大きな影響を及ぼすおそれがあると市長が認める行為

2 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合は適用しない。

(1) 森林法(昭和26年法律第249号)において定める森林施業計画の認定を受けた木竹の伐採又は植栽であって、当該森林施業計画の計画内容に基づく場合

(2) 森林法による伐採及び伐採後の造林届出書を市長に提出する場合

(3) 森林法の規定により指定された保安林において、当該保安林における立木の伐採等の許可を受けた場合又は保安林における間伐の届出のあった場合

(4) 前条第2項各号に掲げる場合

3 市長は、第1項の規定による届出があった場合において、当該届出に係る行為が自然景観を保全する上で必要があると認める時は、その届出者に対し、必要な措置を講ずるよう助言し、又は指導することができる。

(審議会の設置)

第10条 市長の諮問に応じ、文化的景観保全地帯に関する事項を調査審議し、その結果を市長に答申するため、尾鷲市文化的景観保全審議会(以下「審議会」という。)を設置する。

2 審議会は、文化的景観の保全に関し必要と認める事項について市長に意見を述べることができる。

(審議会の組織及び運営)

第11条 審議会は、委員12名以内で組織し、次の各号に掲げる者のうちから市長が委嘱する。

(1) 市民の代表者

(2) 学識経験者

(3) 保全地帯における所有者及び林業関係者

(4) その他市長が必要と認める者

2 委員の任期は、2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。

3 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営について必要な事項は、規則で定める。

(是正措置)

第12条 市長は、文化的景観保全地帯において、景観を著しく阻害していると認められる場合、原因者に対して景観の保全に配慮した是正措置を勧告することができる。

(立ち入り調査)

第13条 市長は、文化的景観保全地帯の環境確保のために必要があると認めるときは、関係職員を実地に立ち入らせ、その状況を調査することができる。

2 前項の規定により立ち入り調査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があった場合はこれを提示しなければならない。

3 第1項の規定による立ち入り調査の機能は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(国等の機関に関する特例)

第14条 国若しくは公共団体の機関又は法令の規定により国の機関若しくは地方公共団体とみなされた法人が保全地帯内で行う第8条及び第9条の規定は適用しない。

2 前項の行為については、あらかじめ市長と協議しなければならない。

(熊野参詣道伊勢路環境保全指導員)

第15条 市に、熊野参詣道伊勢路の環境保全状況を把握し、及び熊野参詣道伊勢路の環境保全のための指導等に当たらせるため、熊野参詣道伊勢路環境保全指導員を置くことができる。

(規則への委任)

第16条 この条例の施行に関して必要な事項は、市長が別に規則で定める。

附 則

この条例は、平成14年7月1日から施行する。

附 則(平成19年3月27日条例第8号)

この条例は、公布の日から施行する。

尾鷲市熊野参詣道伊勢路景観保護条例

平成14年6月28日 条例第39号

(平成19年3月27日施行)