○にいがた食の安全・安心条例
平成17年10月24日
新潟県条例第81号
にいがた食の安全・安心条例をここに公布する。
にいがた食の安全・安心条例
目次
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 食の安全・安心に関する基本的施策(第9条―第22条)
第3章 使用禁止農薬等を使用した農林水産物の出荷等の禁止(第23条―第25条)
第4章 にいがた食の安全・安心審議会(第26条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、食の安全・安心について、基本理念を定め、県及び食品関連事業者の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、県が食の安全・安心に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な事項を定め、もって県民の健康を保護すること並びに県民が安全で安心な食生活を享受でき、及び安全で安心な食品等を消費者に提供できる新潟県を築くことを目的とする。
(1) 食の安全・安心 食品等の安全性及び食品等に対する消費者の信頼を確保することをいう。
(2) 食品等 食品(すべての飲食物(その原料又は材料として使用される農林水産物を含み、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)をいう。以下同じ。)及び添加物(食品衛生法(昭和22年法律第233号)第4条第2項に規定する添加物をいう。以下同じ。)、器具(同条第4項に規定する器具をいう。以下同じ。)並びに容器包装(同条第5項に規定する容器包装をいう。以下同じ。)をいう。
(3) 食品関連事業者 食品若しくは添加物、器具又は容器包装の生産、輸入、販売その他の事業活動を行う事業者をいう。
(4) 生産者 食品関連事業者のうち、農林水産物を生産し、又は採取する者及びこれらの者で構成される団体をいう。
(平26条例76・一部改正)
(基本理念)
第3条 食の安全・安心は、県民の健康を保護することが最も重要であるという認識の下に行われなければならない。
2 食の安全・安心は、必要な措置が食品等の生産から消費に至る一連の過程の各段階において適切に講じられることにより、行われなければならない。
3 食の安全・安心は、食料供給県としての役割にかんがみ、農林水産物その他食品の生産、製造、加工等の段階において特に行われなければならない。
4 食の安全・安心は、科学的知見に基づき行われなければならない。
5 食の安全・安心は、消費者、食品関連事業者及び県の相互理解と協力の下に行われなければならない。
6 食の安全・安心は、食品等の安全性と環境の密接な関係に配慮して行われなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念にのっとり、食の安全・安心に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、この条例に基づく施策の実施に当たっては、国、他の都道府県及び市町村と緊密な連携を図るものとする。
(食品関連事業者の責務)
第5条 食品関連事業者は、関係法令を遵守するとともに、自らの事業活動が県民の健康に大きく影響を及ぼすことを自覚し、自らが提供する食品等の自主検査を推進する等自主的に食品等の安全性の確保に取り組まなければならない。
2 食品関連事業者は、その事業活動に係る食品等に関する情報の公開、消費者との積極的な意見の交換等を通じ、食品等に対する消費者の信頼の確保に努めなければならない。
3 食品関連事業者は、食品等の安全性と環境が密接に関係していることを踏まえ、その事業活動が環境に与える影響に配慮しなければならない。
4 食品関連事業者は、県がこの条例に基づき実施する施策に協力しなければならない。
(県民の役割)
第6条 県民は、食品等の消費に際し、その安全性を損なうことがないよう適切に行動し、並びに食品等の安全性、健全な食生活等に関する知識及び理解を深めるよう努めるものとする。
2 県民は、食品関連事業者が食の安全・安心について積極的に取り組むことができるように、その取組について理解を深めるとともに、その取組に協力するよう努めるものとする。
3 県民は、食の安全・安心に関する県の施策に対し必要に応じて意見を表明し、及びその施策に協力するよう努めるものとする。
4 県民は、自らが行う食品等の消費行動が環境に様々な影響を与え、それが食品等の安全性に関係していることを踏まえ、食品等の消費に当たっては環境に与える影響への配慮に努めるものとする。
(財政上の措置)
第7条 県は、食の安全・安心に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(施策の調整)
第8条 県は、食の安全・安心に関する施策の実施に当たり、関係法令を所管し、又はこれに関連する事務若しくは事業を行う県の各機関が常に緊密な連絡を保ちつつ相互に施策の調整を図るため必要な措置を講ずるものとする。
第2章 食の安全・安心に関する基本的施策
(基本計画)
第9条 知事は、食の安全・安心に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 基本計画は、食の安全・安心に関する施策の目標及び内容について定めるものとする。
3 知事は、基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、県民の意見を反映することができるよう必要な措置を講じなければならない。
4 知事は、基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、にいがた食の安全・安心審議会の意見を聴かなければならない。
5 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前3項の規定は、基本計画の変更について準用する。
7 知事は、毎年度、基本計画に基づく施策の実施状況を公表しなければならない。
(安全で安心な食品等の提供の促進)
第10条 県は、安全で安心な農作物等の生産を促進するため、生産の各段階における安全性の確保のための取組の促進、生産技術の開発及びその成果の普及、生産過程の情報の記録及びその保管に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、安全で安心な畜産物の生産を促進するため、家畜の飼養に当たっての衛生的な管理の指導及び促進、家畜伝染病等の検査、監視及び防疫体制の整備、生産過程の情報の記録及びその保管に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
3 県は、安全で安心な水産物の提供を促進するため、生鮮水産物の鮮度の保持に必要な技術の開発及びその成果の普及、漁獲の場所等の情報の記録及びその保管に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
4 県は、安全で安心な加工食品の提供を促進するため、食品衛生に関する最新の知識の普及、加工食品の製造、加工等における高度な衛生管理のための手法の導入に対する支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
5 県は、前各項に定めるもののほか、安全で安心な食品等の提供を促進するため、添加物、農薬、動物用医薬品及び飼料の適正な使用方法の指導、それらに関する自主的な検査の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。
6 県は、遺伝子組換え作物(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)第2条第2項に規定する遺伝子組換え生物等であって、作物その他の栽培される植物であるものをいう。以下この条において同じ。)の栽培等に起因する遺伝子組換え作物と他の作物との交雑及び遺伝子組換え作物の他の作物への混入の防止に関し必要な措置を講ずるものとする。
(一貫した監視等の実施)
第11条 県は、食品等の安全性を確保するため、食品等の生産から販売に至る一連の食品等の供給の過程において一貫した監視、指導、検査その他の必要な措置を講ずるものとする。
(食品等の適正な表示等)
第12条 県は、食品関連事業者に対し、食品等の表示及び広告が適正に実施されるよう監視及び指導を行うとともに、食品等の表示及び広告が食品等に対する消費者の信頼の確保に配慮したものとなるよう普及啓発その他の必要な措置を講ずるものとする。
(危機管理体制の整備)
第13条 県は、食品等の消費に起因する県民の健康への重大な被害が発生し、又は発生するおそれがある緊急の事態に対処し、及び当該事態の発生を防止するため、必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
(研究開発の推進)
第14条 県は、科学的知見に基づき食の安全・安心を図るため、食品等の安全性に関する研究開発を推進し、及びその成果の普及のために必要な措置を講ずるものとする。
(情報の提供等)
第15条 県は、食の安全・安心に関する情報を積極的に収集するとともに、消費者及び食品関連事業者に対し、当該情報を必要に応じて迅速かつ正確に提供するものとする。
2 県は、食品関連事業者が消費者に対して行うその事業活動に係る正確かつ適切な情報その他の食の安全・安心に関する情報の提供の促進に必要な支援を行うものとする。
3 県は、食の安全・安心に関し、消費者、食品関連事業者及び県が相互に情報及び意見の交換を行い、消費者及び食品関連事業者が相互に理解を深めるために必要な措置を講ずるものとする。
(自主基準の設定及び公開)
第16条 食品関連事業者は、県民が安全で安心な食品等を選択することができるように、知事が別に定めるところにより、自らが提供する食品等に係る食の安全・安心に関する基準の設定及び公開並びにその遵守に努めるものとする。
2 県は、前項の規定により食品関連事業者が行う基準の設定及び公開を促進するために必要な措置を講ずるものとする。
(食育の推進)
第17条 県は、県民が食品関連事業者の活動、自らの食生活等に関心を持ち、食の安全・安心に対する理解を深めることができるように、地産地消(地域で生産された農林水産物を当該地域で消費することをいう。)の推進、食品等の安全性に関する様々な教育の機会の提供等により、食育(食に関する知識及び食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることをいう。)の取組を推進するものとする。
2 県は、前項の取組を推進するに当たっては、家庭、学校、地域等で相互に緊密な連携が図られるよう必要な措置を講ずるものとする。
(施策の申出)
第18条 県民は、県の行う食の安全・安心に関する施策に改善が必要であると認めるときは、必要な措置が講ぜられるよう県に対して申出をすることができる。
2 県は、前項の申出(以下「施策の申出」という。)があったときは、必要な調査を行い、当該施策の申出に係る処理の経過及びその結果を当該施策の申出をした者に対し通知するものとする。
3 県は、施策の申出の処理に当たって必要があると認めるときは、にいがた食の安全・安心審議会の意見を聴くものとする。
4 県は、施策の申出の趣旨及びその処理の結果を公表するものとする。
(危害情報の申出)
第19条 県民は、健康に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある食品等についての情報を入手したときは、必要な措置が講ぜられるよう県に対して申出をすることができる。
2 県は、前項の申出があったときは、必要な調査を行い、必要があると認めるときは、この条例に基づく措置その他の措置を講ずるものとする。
(国等への協力要請及び提言)
第20条 県は、食の安全・安心を図るために必要があると認めるときは、国等に対し、必要な協力を求め、又は食の安全・安心に関する施策の提言を行うものとする。
(人材の育成)
第21条 県は、食の安全・安心に係る専門的な知識を有する人材を育成するために必要な措置を講ずるものとする。
(環境保全施策との連携等)
第22条 県は、食の安全・安心に関する施策の策定に当たっては、食品等の安全性と土壌、地下水、河川、海域等の環境が密接に関係していることを踏まえ、これらの汚染の防止その他の環境保全のための施策と十分に連携を図るとともに、食品関連事業者による事業活動が環境に配慮したものとなるよう必要な措置を講ずるものとする。
第3章 使用禁止農薬等を使用した農林水産物の出荷等の禁止
(出荷等の禁止)
第23条 生産者は、生産し、又は採取した農林水産物が次の各号のいずれかに該当する場合は、当該農林水産物を出荷し、又は販売してはならない。
(1) 農薬取締法(昭和23年法律第82号)第24条の規定により使用を禁止された農薬を使用し、生産された場合
(2) 農薬取締法第25条第1項の基準に違反して農薬を使用し、生産された場合
(3) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第83条の3の規定により使用を禁止された医薬品又は再生医療等製品を使用し、生産された場合
(4) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第83条の4第1項の基準に違反して動物用医薬品又は動物用再生医療等製品を使用し、生産された場合
(平26条例76・平30条例54・一部改正)
(報告及び立入検査等)
第24条 知事は、この章の規定を施行するため必要があると認めるときは、生産者に対し、その業務に関し報告又は生産された農林水産物その他資料の提出を求めることができる。
2 知事は、この章の規定を施行するため必要があると認めるときは、その職員に、生産者の事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。
3 前項の場合には、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
4 第2項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(勧告及び公表)
第25条 知事は、生産者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該生産者に対し、必要な措置を講ずるよう勧告することができる。
(1) 第23条の規定に違反して生産者が農林水産物を出荷し、又は販売したとき。
(3) 第24条第2項の規定による立入り又は帳簿等の検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。
2 知事は、前項の規定による勧告をした場合において、生産者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、別に定めるところにより、その旨及び当該勧告の内容を公表することができる。
3 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該生産者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、公益上、緊急に公表する必要があるため、当該意見を述べる機会を与えることができない場合は、この限りでない。
第4章 にいがた食の安全・安心審議会
第26条 この条例の規定によりその権限に属させられた事項その他食の安全・安心に関する重要事項を調査審議させるため、にいがた食の安全・安心審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、前項の規定による調査審議を行うほか、食の安全・安心に関し必要な事項について、知事に意見を述べることができる。
3 審議会は、委員15人以内で組織する。
4 前項に規定する委員のほか、特別の事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に特別委員を置くことができる。
5 委員及び特別委員は、消費者、食品関連事業者及び学識経験のある者のうちから知事が委嘱する。
6 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
7 委員は、再任されることができる。
8 特別委員は、当該特別の事項に関する調査審議が終了したときは、解嘱されるものとする。
9 審議会に、必要に応じ、専門部会を置くことができる。
10 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関して必要な事項は、規則で定める。
(平18条例26・一部改正)
附則
(検討)
2 県は、この条例の施行後3年を経過した場合において、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則(平成18年条例第26号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成18年5月20日(以下「施行日」という。)から施行する。ただし、附則第4項、第6項から第8項まで及び第10項から第12項までの規定は公布の日から、附則第5項及び第9項の規定は同年4月1日から施行する。
(検討)
13 県は、この条例の施行後3年を経過した場合において、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則(平成26年条例第76号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成26年11月25日から施行する。
附則(平成30年条例第54号)
この条例は、公布の日から施行する。