○五所川原市認知症の人とともに生きるまちづくり条例
令和6年12月12日
五所川原市条例第30号
市では、認知症の人の意思が尊重され、住み慣れた地域で暮らし続けることができる社会の実現を目指し、平成28年10月に「認知症の人をみんなで支え合うまちづくり宣言」を行い、認知症の人と地域社会が共生するための取組や認知症予防に向けた施策を総合的に推進してきた。
しかしながら、市においては、人口減少及び高齢化の進展により地域のつながりが希薄化している状況であり、高齢者の見守りの担い手不足や社会的に孤立する高齢者の増加など、その取り巻く環境は、極めて厳しい状況にある。
このような状況の下で、今後更なる高齢化を見据え、市民一人一人が認知症への理解を深めるとともに、認知症の人やその家族が地域で安心して暮らすことができる社会を目指す必要があり、また、一人暮らしの高齢者に対する支援や地域全体での見守りを強化し、全ての関係者が一体となって認知症に関する施策に取り組むことが求められる。
これらを踏まえ、市は、認知症に関する施策を通じて、市民が共に支え合って生きるまちづくりを進めるため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、認知症の人が希望と生きがいを持ち、全ての市民が共に支え合って生きるまちづくりについて、認知症の施策に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民、事業者、地域組織及び関係機関の役割を明らかにすることにより、認知症の施策を総合的に推進し、もって認知症の人及びその家族(日常生活において密接な関係を有する者を含む。以下同じ。)が安心して生活できるまちづくりの実現に資することを目的とする。
(1) 認知症 介護保険法(平成9年法律第123号)第5条の2第1項に規定する認知症をいう。
(2) 市民 市内に居住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。
(3) 事業者 市内において事業を行う個人又は法人その他の団体をいう。
(4) 地域組織 自治会その他の市内に居住する者により構成された組織をいう。
(5) 関係機関 医療、介護、福祉等の分野において認知症の人の支援に携わる機関をいう。
(6) 認知症サポーター 認知症に係る養成講座を受講し、認知症について正しく理解した上で、地域や職域において認知症の人及びその家族を温かい目で見守り、支援する応援者をいう。
(基本理念)
第3条 認知症に関する施策は、次に掲げる基本理念にのっとり、推進するものとする。
(1) 市並びに市民、事業者、地域組織及び関係機関がそれぞれの責務又は役割を果たし、相互に連携して地域全体で認知症の人及びその家族を支え合うとともに、認知症の人及びその家族の意思が尊重され、認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らすことができる認知症とともに生きるまちづくりの実現を目指すこと。
(2) 認知症の人が人格と尊厳を尊重されながら安心して生活できる環境を整備し、共生する活力ある社会の実現を推進すること。
(市の責務)
第4条 市は、前条の基本理念に基づき、認知症に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。
2 市は、前項の施策の推進に当たっては、認知症の人及びその家族の視点を尊重するとともに、市民、事業者、地域組織及び関係機関と連携して取り組むものとする。
3 市は、認知症に係る施策として、次に掲げる事項を推進するものとする。
(1) 認知症の人に対する理解の増進に関すること。
(2) 認知症の人の生活環境におけるバリアフリー化の推進に関すること。
(3) 認知症の人の社会参加の機会を確保し、及び促進すること。
(4) 認知症の人の意思決定支援及び権利擁護に関すること。
(5) 保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制並びに相談体制の整備に関すること。
(6) 認知症に係る研究等の推進に関すること。
(7) 認知症の予防に関すること。
(市民の役割)
第5条 市民は、誰もが認知症になり得ることを認識し、認知症に関する正しい知識を習得することにより、認知症の人とともに生きる社会への理解を深め、その実現に努めるものとする。
2 市民は、認知症の人が安心して暮らせる地域社会の実現に向け、地域全体での見守り活動その他の取組に協力するよう努めるものとする。
3 市民は、認知症に関する市の施策並びに事業者、地域組織及び関係機関の認知症の予防及び支援に関する取組に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、従業員が認知症に関する正しい知識を習得し、理解を深めるために必要な教育、研修等の機会を設け、及び認知症の人に配慮したサービスの提供を行うよう努めるものとする。
2 事業者は、認知症に関する市の施策並びに市民、地域組織及び関係機関の認知症の予防及び支援に関する取組に協力するよう努めるものとする。
3 事業者は、認知症の人が安心して暮らせる地域社会の実現に向け、認知症の人が生活する上で必要な様々なサービスを利用しやすい環境の整備に努めるものとする。
(地域組織の役割)
第7条 地域組織は、認知症に関する正しい知識を習得し、理解を深めるとともに、地域ぐるみで認知症の人を見守り、支える体制づくりを推進し、認知症予防に資する交流又は活動ができる居場所づくりに積極的に取り組むよう努めるものとする。
2 地域組織は、認知症に関する市の施策並びに市民、事業者及び関係機関の認知症の予防及び支援に関する取組に協力するよう努めるものとする。
(関係機関の役割)
第8条 関係機関は、認知症に関する専門知識及び技能の向上に努め、また、認知症に関する市の施策並びに市民、事業者並びに地域組織の認知症の予防及び支援に関する取組に積極的に協力するよう努めるものとする。
2 関係機関は、認知症の人の状態に応じて、適時かつ適切な保健医療サービス又は福祉サービスを提供できるよう相互に連携し、協力するよう努めるものとする。
3 関係機関は、認知症の人及びその家族が抱える多様な相談に対応できる支援体制を整備し、維持するよう努めるものとする。
(認知症に関する正しい知識の普及及び理解の促進)
第9条 市は、事業者、地域組織、関係機関等と連携し、認知症に関する正しい知識を普及するため、認知症サポーターの養成を積極的に推進するとともに、研修会の開催、多様な広報媒体の活用その他の必要な施策を実施するものとする。
2 市は、認知症に関する普及啓発活動として、認知症に関する啓発イベントを実施するとともに、認知症サポーターを増やし、認知症の人及びその家族が安心して生活できる地域づくりの体制の構築に取り組むものとする。
3 市は、地域の住民同士が気軽に集える場において、仲間づくりや生きがいづくりを促進し、認知症の発症を遅らせ、又は認知症になった場合であってもその進行を緩やかにする取組を推進するものとする。
(認知症の人及びその家族への支援)
第10条 市は、認知症の人の尊厳を保ち、認知症の人が自分らしい生活を送ることができるよう認知症の人の判断能力に配慮した成年後見制度その他の権利擁護に関する施策を推進するものとする。
2 市は、相談支援体制の強化、多職種間での連携及び情報共有の推進を図り、認知症の早期発見、早期対応及び継続的な支援ができる体制の整備に努めるものとする。
3 市は、認知症の人の家族が孤立せず、安心して生活ができるよう相談できる環境及び介護の負担を軽減する支援体制を整備し、その充実を図るものとする。
(委任)
第11条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、令和7年4月1日から施行する。