○障害のある人もない人も共に安心して暮らせる八王子づくり条例
平成23年12月15日
条例第24号
私たちのまち八王子は、全ての人が基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有するという認識に立ち、障害の有無にかかわらず、誰もが地域社会で共に支え合い、安心して暮らせるまちを目指し、障害のある人に対する福祉の向上のため、様々な施策を推進してきた。
しかしながら、依然として障害のある人は、障害に対する誤解や偏見により不利益な取扱いを受け、配慮不足により日常生活の様々な場面で不自由を感じている状況にある。
このような中、障害のある人もない人も、共に支え合い、安心して暮らせるまちの実現のため、市、市民、事業者など全ての者が連携し、障害のある人の生活を困難にしてきた心の壁、社会参加を困難にする物理的環境、社会的制度、情報の不足など、社会的障壁を取り除き、障害のある人に対するいかなる差別もなくす取組が私たちに求められている。
このため、私たちは、障害のある人が、障害のない人と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に安心して暮らせるまちの実現を目指し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、障害者に対する市民及び事業者の理解を深め、障害者に対する差別をなくすための取組について、基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、当該取組に係る施策を総合的に推進し、もって市民が障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共に安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(3) 差別 障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をいう。
(基本理念)
第3条 障害者に対する差別をなくすための取組は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提として行わなければならない。
2 障害者に対する差別をなくすための取組は、差別の多くが障害者に対する誤解、偏見その他の理解の不足から生じていることを踏まえ、障害及び障害者に対する理解を広げる取組と一体のものとして行わなければならない。
3 障害者に対する差別をなくすための取組は、様々な立場の市民がそれぞれの立場を理解し、相互に協力して行わなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害及び障害者に対する理解を広げ、差別をなくすための施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。
2 市は、前項の差別をなくすための施策を実施するときは、障害者の性別、年齢及び障害の状態に十分配慮するものとする。
(市民等の責務)
第5条 市民及び事業者は、基本理念にのっとり、障害及び障害者に対する理解を深め、市が実施する障害者に対する差別をなくすための施策に協力するよう努めなければならない。
(差別の禁止等)
第6条 何人も、障害者に対し、差別をしてはならない。
2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって障害者の権利利益を侵害することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。
(合理的な配慮)
第7条 市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、次に掲げる場合には、前条第2項の規定の趣旨を踏まえ、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
(1) 不特定多数の者が利用する施設(公共交通機関を含む。)を提供するとき。
(2) 意思疎通を図るとき及び不特定多数の者に情報を提供するとき。
(3) 商品を販売し、又はサービスを提供するとき。
(4) 不動産の取引を行うとき。
(5) 労働者の募集、採用及び労働条件を決定するとき。
(6) 医療又はリハビリテーションを提供するとき。
(7) 教育を行うとき。
(8) 保育を行うとき。
(9) 療育を行うとき。
(10) その他社会的障壁となって、障害者に対し日常生活又は社会生活に相当な制限を与えているとき。
(市民等の理解の促進)
第8条 市は、市民及び事業者が障害及び障害者に対する理解を深めるよう、普及啓発その他必要な措置を講ずるものとする。
2 市長及び教育委員会は、児童及び生徒が障害及び障害者に対する理解を深めるための教育の重要性を認識し、その実施について相互に連携を図るものとする。
3 市は、障害者に対する支援を適切に行うため、全ての職員並びに指定管理者(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定により、公の施設の管理を行わせることができるものとして市長が指定する法人その他の団体をいう。)及び市外郭団体(市が出資又は出えんする団体で、市長が別に定めるものをいう。)が障害及び障害者についての知識を習得し、及び理解を深めるために必要な措置を講ずるものとする。
4 事業者は、前条第1項の必要かつ合理的な配慮を行うため、従業員が障害及び障害者についての理解を深めるための研修を行うよう努めるものとする。
(移動手段の確保)
第9条 市は、障害者の社会参加を推進するため、障害者が必要とする移動の手段が確保できるよう、公共交通事業者その他の関係者の理解及び協力を得るよう努めるものとする。
(情報伝達)
第10条 市は、障害者が自ら選択するコミュニケーション手段(字幕、手話通訳、要約筆記、音声解説等)を利用できるよう、コミュニケーション手段の普及啓発及び利用拡大の支援に努めるものとする。
(医療及びリハビリテーション)
第11条 市は、地域で生活する障害者に必要な医療及びリハビリテーションが受けられるよう医療関係団体との調整に努めるものとする。
(教育)
第12条 市は、障害者である児童及び生徒がその年齢及び能力に応じ、その特性を踏まえた教育を受けることができるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(保育)
第13条 市は、障害者である乳幼児及び児童が、その特性を踏まえた保育を受けることができるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(療育)
第14条 市は、障害者である子どもが、可能な限りその身近な場所において療育その他これに関連する支援を受けられるよう適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
(関係法令等との調和)
第15条 市は、障害者に対する理解を広げ、差別をなくすための施策の推進に当たっては、障害者基本法(昭和45年法律第84号)、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)その他の関係法令との調和を図らなければならない。
(差別に関する相談、助言等)
第16条 障害者及びその関係者は、障害者本人に係る差別に該当すると思われる事案(以下「対象事案」という。)について、市に相談することができる。
2 市は、対象事案に関する相談があったときは、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 相談に応じ、関係者への事実の確認及び調査を行うこと。
(2) 相談に応じ、関係者に必要な助言及び情報提供を行うこと。
(3) 相談に係る関係者間の調整を行うこと。
(4) 関係行政機関への紹介を行うこと。
(相談員)
第17条 市は、相談支援事業者(市から委託を受けて障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第77条第1項第3号に規定する事業を行う者をいう。)に、前条第2項各号に掲げる業務の全部又は一部を委託することができる。
(助言及びあっせんの申立て)
第18条 障害者は、対象事案があるときは、市長に対し、対象事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うよう申し立てることができる。
2 障害者の保護者又は関係者は、当該障害者に代わり、前項の申立てをすることができる。ただし、当該障害者の意に反することが明らかであると認められるときは、することができない。
(1) 行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により、審査請求その他の不服申立てをすることができる事案であって、行政庁の行う処分の取消し、撤廃又は変更を求めるものであるとき。
(2) 申立ての原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているものであるとき(その間に申立てをしなかったことにつき正当な理由がある場合を除く。)。
(3) 現に犯罪の捜査の対象となっているものであるとき。
2 調整委員会は、前項の助言又はあっせんを行うことの適否を判断するために必要があると認めるときは、当該対象事案に係る障害者及び関係者に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
3 市長は、調整委員会が助言又はあっせんを行うことが相当であると判断した場合には、差別をしたと認められる者に対し、助言又はあっせんを行う。
(勧告)
第21条 市長は、前条第3項の規定による助言又はあっせんを行った場合において、差別をしたと認められる者が、正当な理由なく当該助言又はあっせんを受け入れないときは、差別の解消に必要な措置を講ずるよう勧告することができる。
(公表)
第22条 市長は、前条の規定による勧告を受けた事業者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、市規則で定めるところにより、当該勧告を受けた事業者に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。
(調整委員会)
第23条 障害者に対する差別をなくすための取組を効果的かつ円滑に行うため、市長の附属機関として、八王子市障害者の権利擁護に関する調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
2 調整委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
(1) 対象事案に係る申立てについての調査審議に関すること。
(2) 障害者差別解消法第18条第1項及び第3項に規定する事務に関すること。
(3) 差別と思われる事案に係る協議及び当該事案に係る事実についての調査に関すること。
3 調整委員会は、委員20人以内をもって組織する。
4 調整委員会の委員は、障害者差別解消法第17条第2項各号に定める者及び障害者の権利の擁護に関し優れた識見を有する者のうちから市長が委嘱する。
5 調整委員会の委員の任期は2年とし、再任を妨げない。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 調整委員会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
8 前各項に定めるもののほか、調整委員会の運営について必要な事項は、別に定める。
(委任)
第24条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。
附則
1 この条例は、平成24年4月1日から施行する。
2 市長は、この条例の施行後3年を目途として、障害者に係る法制度の動向を勘案し、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則(平成25年2月28日条例第3号)
この条例は、平成25年4月1日から施行する。
附則(平成28年3月29日条例第27号)
この条例は、平成28年4月1日から施行する。
附則(令和元年12月17日条例第29号)
この条例は、令和2年4月1日から施行する。