○神戸市民による地域活動の推進に関する条例

平成16年3月31日

条例第58号

本市では、基本構想の下、協働の理念に沿って、市民主体のまちづくりを積極的に進めてきている。特に、平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を契機として、新たな市民主体の活動が芽生え、市民と市とが一体となり、着実に復興の歩みを進めてきている。その中で、人と人とのつながりとともに、市民一人ひとりが自律し、地域社会の一員としての自覚を持つ必要があること、更に、地域における身近な課題を解決していくためには、地域における市民の知恵と力とが必要であることを深く認識することとなった。

一方、21世紀の成熟社会を迎え、少子高齢社会の進行、国際化及び情報化の進展、地球規模での環境問題の深刻化など社会経済情勢の変化がより一層進んでいる。また、地方分権が進展する中、地域が主役となり、地域の特性に応じた自己決定及び自己責任の原則に基づく地方公共団体の運営が求められている。加えて、本市の財政は、阪神・淡路大震災による被害及び長引く構造的な不況の影響により厳しい状況となっている。

こうした状況の中、ますます複雑多様化する市民の需要及び新たな地域の課題に対応し、一人ひとりの市民が主役のまちを実現するためには、これまで以上に、市民と市とが、お互いの役割を尊重し、共に課題解決に協力して取り組む関係(以下「パートナーシップ関係」という。)を築き、共に考え、共に汗を流す、協働と参画のまちづくりを進めていくことが、極めて重要となっている。

市は、より一層市民の視線で物事を考え、市政の透明性の確保及び市民に説明する責務を果たすべく情報の公開及び提供に努め、市民と市との新たな役割分担を構築する必要がある。

一方、市民は、まちづくりの主役としての自覚を持ち、自ら考え、行動する必要がある。その際、個人としての活動はもとより、地域の組織としての活動が有効であること、加えて、様々な地域組織、NPO等がゆるやかに連携することが、地域の活動を活発化するとの認識が重要である。

こうした認識の下、多くの市民の思いに応え、市民と市による協働と参画のまちづくりに基づく、市民の知恵と力が生きる地域社会を実現するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、市民と市との協働と参画のまちづくりを推進し、市民の知恵と力とが生きる、個性豊かで魅力と活力とにあふれた地域社会の実現を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 市内に住み、働き又は学ぶ者、市内で活動する地域組織、NPOその他の団体及び市内に事務所又は事業所を有する法人をいう。

(2) 地域組織 地域において営利を目的としない公益的な活動を行う組織をいう。

(3) NPO 特定の社会的な課題に自主的に取り組む社会貢献性のある団体をいう。

(4) 地域 市民がお互い助け合い、はぐくみ合う心豊かな生活を送ることを目的として活動する区域をいう。

(5) 地域活動 地域の課題を解決することを目的とし、営利を目的としない公益的な活動を行うことをいう。

(6) 協働と参画 市民と市とがそれぞれに果たすべき責任と役割を自覚し、活動の前提としての地域活動に関するお互いの情報の提供及び活用(以下「情報共有」という。)に努め、相互に補完及び協力をし、共に公共的活動を行うことをいう。

(市民の役割)

第3条 市民は、自主性及び自律性が尊重される中、まちづくりにおける自らの立場を自覚し、積極的に協働と参画のまちづくりに努めるものとする。

2 市民は、身近な地域及び市政に対する関心を自ら高め、活動するよう努めるものとする。

(地域組織及びNPOの役割)

第4条 地域組織及びNPOは、地域社会でその一員として自己の責任の下に活動し、広く地域住民から理解され、及び支持されるよう努めるとともに、必要に応じて、他の地域組織、NPO、事業者その他の団体(以下「地域組織等」という。)及び市と連携して地域活動の推進に努めるものとする。

(事業者の役割)

第5条 事業者は、地域社会の一員であることを認識し、地域活動に関する理解を深めるとともに、必要に応じて、他の地域組織等及び市と連携して地域活動の推進に努めるものとする。

(市の役割)

第6条 市は、市民による地域活動の自主性及び自律性を尊重しなければならない。

2 市は、協働と参画のまちづくりを推進するため、市民が自ら地域における課題の解決に向けて取り組むことができるよう、必要な施策を講じなければならない。

3 市は、市民が自ら地域における課題について考え、及び行動することができるよう、市政に関する情報の公開及び提供を図り、市民と市の情報共有に努めなければならない。

4 市は、市職員に対する協働と参画のまちづくりに関する啓発、研修等を実施し、職員が協働と参画のまちづくりの重要性の認識を深めるよう努めなければならない。

(市職員の役割)

第7条 市職員は、協働と参画のまちづくりを推進するため、市民本位の立場から職務を遂行しなければならない。

2 市職員は、協働と参画のまちづくりを推進するため、必要な知識、技能等の向上に努めなければならない。

(市民と市との関係)

第8条 市民及び市は、対等の立場でお互いの役割を理解し、及び尊重しながらパートナーシップ関係を構築するものとする。

2 市民及び市は、地域における市民相互の情報共有及び市民と市との情報共有に基づき、協働と参画のまちづくりを進めるものとする。

(協定の締結等)

第9条 市民及び市は、地域における課題の解決に取り組むため、双方協議の上でお互いの役割分担を定め、協定を締結することができる。

2 市は、様々な地域組織等の多様な活動内容に注目し、柔軟かつ弾力的な地域活動を推進するため、地域組織等のゆるやかな連携によるまちづくりを目指すものとする。

(人材支援)

第10条 市は、市民による地域活動を推進するため、地域を支える人材を支援するための施策を講ずるものとする。

2 市は、地域における人材に対する評価及び表彰の制度の充実に努めるものとする。

(財政的支援)

第11条 市は、市民による地域活動を推進するため、市民の自主的な提案に基づく地域における課題の解決に資する活動に対し、予算の範囲内で助成することができる。

2 市は、市民による地域活動を推進するため、地域に対する助成制度について、地域の実情を踏まえて運用するものとする。

(活動の場の整備)

第12条 市は、市民による地域活動を推進するため、情報の受信及び発信をする機能、活動を支援する機能及び市民による地域に関する提案等を調整する機能を有する場の整備に努めるものとする。

2 市は、市民による地域活動を推進するため、地域内の施設を有効に利用するよう努めるものとする。

(推進体制)

第13条 市は、地域に密着した行政を推進するため、地域を担当する組織及び職員の充実に努めるものとする。

(地域活動推進委員会の設置)

第14条 市長の附属機関として、神戸市地域活動推進委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、次に掲げる事務を行う。

(1) 諮問に応じ、地域活動の推進に関する事項を調査審議し、及び当該事項について意見を述べること。

(2) 地域活動の推進に関する施策の実施状況及び地域活動の現状について意見を述べること。

3 委員会は、12人以内の委員で組織する。

4 委員の任期は、1年とする。ただし、再任を妨げない。

5 委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、平成16年10月1日から施行する。

神戸市民による地域活動の推進に関する条例

平成16年3月31日 条例第58号

(平成16年10月1日施行)