○神戸市がん対策推進条例

平成26年3月31日

条例第59号

我が国では、急速な少子高齢化や社会構造の変化が進む中で、偏りのある食生活、運動不足、過労などによる生活習慣病の問題や、働く環境の変化などに起因する心の問題などが生じており、私たちの健康を取り巻く環境は厳しさを増している。その中にあって、特にがんは、昭和56年より、国民の死亡原因の第1位であり、生涯のうちに約2人に1人はがんにかかると推計され、年間約35万人がこの病によって命を失っている「国民病」である。

本市においても、年間の死亡者数のうち、がんによる死亡者数は約3割を占めており、本市の健康増進計画においてがん検診受診率の向上対策及び検診結果に応じた取組の推進を掲げ、がん対策の推進に取り組んでいる。

しかしながら、本市が実施しているがん検診の受診率はおおむね2割から4割と低く、がんの脅威、予防の重要性等に対する意識が市民に十分に浸透しているとは言い難い状態にある。

このような背景の下、市民にがんの予防、早期発見及び早期治療に係る意識を普及させ、がんの予防対策並びに患者及び家族等の活動に対する支援の充実に努め、市民総ぐるみで、がん対策の更なる向上に寄与していくことを目的に、ここに神戸市がん対策推進条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、本市のがん対策を総合的に推進するため、がん対策に関する基本的事項を定め、もってがんの予防及び早期発見の推進並びに地域のがんに係る医療水準の向上並びにがん患者及びその家族(以下「がん患者等」という。)への支援を図ることを目的とする。

(市の責務)

第2条 市は、国、県、医療機関その他関係機関及び関係団体並びに患者会等(がん患者等で構成される団体等をいう。以下同じ。)と連携を図りつつ、がん対策に関し、実効性のある施策を実施するよう努めるものとする。

(市民の役割)

第3条 市民は、がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防及びがん検診の受診に努めるとともに、市が実施するがん対策に協力するよう努めるものとする。

(保健医療関係者の役割)

第4条 保健医療関係者(がんの予防及び早期発見並びにがんに係る医療(以下「がん医療」という。)に携わる者をいう。以下同じ。)は、市が実施するがん対策に協力するよう努めるものとする。

2 保健医療関係者は、がん患者等に対し、積極的にこれらの者が必要とするがんに関する情報を提供するよう努めるものとする。

(がんの予防の推進)

第5条 市は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響に関する知識の普及啓発その他がんの予防の推進のために必要な施策を実施するものとする。

2 市は、肺がんを始めとする種々のがんの原因である喫煙の抑制に向け、喫煙及び受動喫煙が健康に及ぼす影響に関する知識の普及啓発を図るほか、受動喫煙対策として、健康増進法(平成14年法律第103号)その他の法令に基づき、必要な施策を実施するものとする。

(がんに関する教育の推進)

第6条 市は、学校教育の場において、健康の保持増進及び疾病の予防といった観点から、がんの予防も含めた健康教育に取り組むものとする。

(がん検診の受診率の向上等)

第7条 市は、市民のがん検診の受診率向上に資するよう、がん検診の普及啓発に関する施策を実施するものとする。

2 市は、がんの早期発見に資するよう、国の指針に基づくとともに、最新の知見も踏まえ、科学的根拠に基づく適切ながん検診を実施するよう努めるものとする。

3 市は、企業、団体及び医療保険者(介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第7項に規定する医療保険者をいう。)との連携を図りつつ、がん検診の適切な受診の推進その他がん対策を協働して実施するよう努めるものとする。

(医療体制の充実及び研究の支援)

第8条 市並びに医療機関その他関係機関及び関係団体は、県と連携を図りつつ、がん患者がそのがんの状態に応じて、手術療法、放射線療法、化学療法等又はこれらを組み合わせた集学的治療による、質の高い適切ながん医療を受けることができるよう必要な環境整備に努めるものとする。

2 市は、がんの予防及び治療に伴う身体的負担の軽減が図れるよう、革新的ながんの診断法及び治療法の創出に資するがん研究を医療機関その他関係機関と連携しながら支援するよう努めるものとする。

(緩和ケアの充実)

第9条 市並びに医療機関その他関係機関及び関係団体は、県と連携を図りつつ、緩和ケア(がん患者の身体的苦痛、精神的苦痛その他の苦痛又は社会生活上の不安の軽減等を目的とする医療、看護、介護その他の行為をいう。)の充実を図るために必要な環境整備に努めるものとする。

(在宅療養の充実)

第10条 市並びに医療機関その他関係機関及び関係団体は、県と連携を図りつつ、がん患者等の意向により、その居宅において療養できるよう必要な環境整備に努めるものとする。

(がん患者等への支援)

第11条 市は、肉体的な痛みだけでなく、精神的な不安や悩みに直面するがん患者等をサポートするため、相談体制の充実を図るとともに、患者会等が行う活動を支援するよう努めるものとする。

2 市は、がん患者の就労に関する啓発活動、治療と就労の両立についての相談体制の整備その他のがん患者の就労に関する必要な支援をするよう努めるものとする。

(情報の収集及び提供並びに広報)

第12条 市は、市民ががん医療に関する適切な情報を得られるよう、県及び医療機関と連携を図りつつ、がん医療に関する情報の収集に努めるものとする。

2 市は、医療機関その他関係機関及び関係団体と連携を図りつつ、市民に対し、がん医療及びがん患者等の支援に関する情報の提供に努めるものとする。

3 市は、市民のがん対策に関する理解及び関心を深めるため、広報活動その他の必要な施策を実施するものとする。

(財政上の措置)

第13条 市は、がん対策に関する施策を計画的に実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(議会への報告)

第14条 市長は、毎年度、本市のがん対策の実施状況を議会に報告するものとする。

この条例は、平成26年4月1日から施行する。

(令和元年12月6日条例第35号)

この条例は、令和2年1月1日から施行する。

神戸市がん対策推進条例

平成26年3月31日 条例第59号

(令和2年1月1日施行)