○神戸市みんなの手話言語条例
平成27年3月31日
条例第36号
手話は、ろう者がコミュニケーションを図り、社会活動に参加し、人間関係を育み、成長していくために使われてきました。手話は、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語として、ろう者にとって豊かな社会生活を営むために大切に受け継がれてきたものです。
しかし、手話は言語として認知されず、かつて多くのろう学校で手話が禁止されていました。そのため、様々な場面でろう者は多くの不便や不安を感じながら生活してきました。
手話の使用が制限される状況において、なお、手話が発展してきたのは、手話がろう者の「アイデンティティー」であり、「いのち」であったからです。
こうした中、障害者の権利に関する条約及び障害者基本法において、手話は言語として位置付けられました。今後は、手話を必要とする全ての人が、いつでもどこでも容易に情報を得ることができ、コミュニケーションを十分に図ることができる社会を構築していかなければなりません。
神戸市は、昭和52年に全国に先駆けて神戸市民の福祉をまもる条例を制定し、市民及び事業者と共に誇り高い福祉都市の実現に向け取り組んできました。
世界で手話が言語であると位置付けられた今、神戸市は、市民みんなの手話への理解の促進に努め、手話を日常的に使用できる環境を整えることにより、ろう者もろう者以外の者も互いに心と心が触れ合い、通じ合うまちを目指して、この条例を定めます。
(目的)
第1条 この条例は、手話への理解の促進及び手話の普及に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策に係る基本的事項を定めることにより、手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もってろう者及びろう者以外の者が共生する地域社会を実現することを目的とする。
(基本理念)
第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であること及びろう者が手話によりコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、ろう者及びろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。
(市の責務)
第3条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ろう者が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるよう必要な配慮を行い、手話に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
(市民の役割)
第4条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第5条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。
(施策の推進方針)
第6条 市は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するための方針(以下「施策の推進方針」という。)を定めるものとする。
(1) 手話への理解の促進及び手話の普及のための施策
(2) 手話により情報を取得する機会の拡大のための施策
(3) コミュニケーションの手段として手話を選択しやすい環境の整備のための施策
(4) 手話通訳者の確保及び養成のための施策
2 施策の推進方針は、障害者のための施策に関する市の基本的な計画と調和が保たれたものでなければならない。
3 市長は、施策の推進方針について、ろう者、手話通訳者その他関係者の意見を聴くため、これらの者との協議の場を設けなければならない。
(学校における理解の促進)
第7条 市は、学校教育の場において、基本理念にのっとり、手話に接する機会の提供その他の手話に親しむための取組を通じて、手話への理解の促進に努めるものとする。
(財政上の措置)
第8条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(議会への報告)
第9条 市長は、毎年度、本市の手話に関する施策の実施状況を議会に報告するものとする。
附則
この条例は、平成27年4月1日から施行する。