○神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例
平成30年3月30日
条例第21号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 認知症の人にやさしいまちづくりに関する施策の基本事項(第6条―第11条)
第3章 補則(第12条―第15条)
附則
神戸市では、昭和52年に神戸市民の福祉をまもる条例を制定し、市、事業者及び市民の協働による福祉都市づくりを全国に先駆け推進してきた。
平成7年の阪神・淡路大震災を契機に、高齢者の見守り活動は、見守り推進員の配置及び地域との更なる連携による展開がなされており、その後、協働・参画3条例(神戸市民による地域活動の推進に関する条例、神戸市民の意見提出手続に関する条例及び神戸市行政評価条例をいう。)の下、活発な地域活動が人と人のつながりを深めてきた。
また、復興プロジェクトとして神戸医療産業都市構想が進められ、日本最大級のバイオメディカルクラスター(高度専門病院、医療関係企業及び研究機関等の集積をいう。)が形成されており、世界保健機関健康開発総合研究センターにおいては、高齢化社会に対応するユニバーサルヘルスカバレッジ(全ての人が適切な健康増進、予防、治療及び機能回復に関するサービスを支払可能な費用で受けられる状態をいう。)の実現に向けた取組が進められている。
このような活動が評価され、平成28年9月にG7保健大臣会合が神戸市で開催された際に、認知症に関する取組が言及された神戸コミュニケが出され、平成29年5月に世界保健機関総会にて認知症に関する行動計画であるグローバルアクションプランが採択された。
神戸市は、国の認知症施策総合推進戦略(新オレンジプラン)を推進するとともに、この世界的な認知症への取組を実践する中で、市民誰一人として取り残さないとの決意の下、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、認知症の人にやさしいまちづくりの理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定め、もって認知症の人にやさしいまちの実現に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「認知症の人」とは、介護保険法(平成9年法律第123号)第5条の2に規定する認知症(以下単に「認知症」という。)の者をいう。
(基本理念)
第3条 市、市民及び事業者は、次に掲げる認知症の人にやさしいまちづくりに関する基本理念(以下単に「基本理念」という。)に基づき、取組を推進するものとする。
(1) 認知症の人の尊厳が保持され、その者の意思が尊重され、社会参加を促進し、安全に、かつ、安心して暮らし続けられるまちを目指すこと。
(2) 認知症の人とその家族のより良い生活を実現するために必要な支援を受けられるよう、まち全体で支えること。
(市の責務)
第4条 市は、基本理念にのっとり、認知症を重要保健課題として位置付け、市内の認知症に係る医療及び介護の関係者並びに大学等研究機関と連携し、次に掲げる事項に基づく施策を総合的に実施するものとする。
(1) 社会的認知の向上及び啓発
(2) リスクの軽減及び予防
(3) 診断、治療、介護その他支援の充実
(4) 介護者及び家族への支援
(5) 科学的根拠の基盤となる情報システムの整備及び充実
(6) 研究開発の推進
2 前項の施策の策定及び実施に当たっては、認知症の人及びその家族の視点を尊重するとともに、絶えず検証し、及び必要に応じてその内容を見直すものとする。
(市民及び事業者の役割)
第5条 市民及び事業者は、認知症の人及びその家族に対する理解を深め、市内の認知症に係る医療及び介護の関係者並びに大学等研究機関との連携により、市と協働して認知症の人にやさしいまちづくりに努めるものとする。
第2章 認知症の人にやさしいまちづくりに関する施策の基本事項
(責務又は役割を踏まえた施策の推進)
第6条 前章の責務又は役割を踏まえ、市、市民及び事業者は、市内の認知症に係る医療及び介護の関係者並びに大学等研究機関と連携し、協働してこの章の取組を行うものとする。
(予防及び早期介入)
第7条 市、市民及び事業者は、世界保健機関並びに神戸医療産業都市に関連する企業、大学及び研究機関等と連携し、又は協力し、次に掲げる事項に係る施策の実施により、認知症の予防及び早期介入を推進するものとする。
(1) 認知症の早期発見及び早期介入に資する研究に対する介護等の情報提供による協力に関すること。
(2) 認知症治療薬及び早期診断手法の研究並びに認知症の予防及び介護に関する製品及びサービスの開発支援に関すること。
(3) 認知症研究等で得られた成果等最新の知見の市民への還元等及び認知症に関する施策への反映に関すること。
(事故の救済及び予防)
第8条 市は、認知症の人及びその家族が安心して暮らすことができるようにするため、市長が定める方法によって認知症と診断された者による事故について、第12条の神戸市認知症の人にやさしいまちづくり推進委員会の判定に基づく給付金の支給その他必要な施策を講ずるものとする。
3 市、市民及び事業者は、高齢運転者による交通事故の防止に向けて、移動手段の確保その他の地域での生活支援に努めるとともに、認知症の疑いがある者が道路交通法(昭和35年法律第105号)第104条の4第1項の申請をすることを促進するための取組を推進するものとする。
2 平成31年度から令和6年度までの各年度分の個人の市民税に係る均等割の税率は、神戸市市税条例(昭和25年8月条例第199号)第21条第1項の規定にかかわらず、同項に規定する額に400円を加算した額とする。
3 前項の規定による加算額に係る収納額に相当する額は、次に掲げる経費の財源に充てるものとする。
(1) 市長が定める方法によって実施する認知症の診断に係る助成に必要な経費
(3) 第1号に規定する診断において認知症と診断された者による事故についての賠償責任保険に加入するために必要な経費
(4) 前3号に定めるもののほか、事故の救済を実施するに当たって必要な事項として市長が定める経費
4 市長は、第2項の規定による加算額に係る収納額に相当する額を適切に管理するため、予算に定める額を、神戸市民の福祉をまもる条例(昭和52年1月条例第62号)第53条の規定により設置された基金に積み立てるものとする。
(治療及び介護の提供)
第10条 市は、介護保険法第115条の46第1項に規定する地域包括支援センターを拠点として認知症に係る相談を推進するとともに、早期受診につながる体制の確立並びに早期診断、適切な治療及び介護の提供に必要な環境整備を行うものとする。
2 市は、認知症の人を支援する医療及び介護に係る人材を確保し、及び資質を向上するため支援体制を充実させるものとする。
(地域の力を豊かにしていくこと)
第11条 市、市民及び事業者は、認知症の人が住み慣れた地域で最期まで安心して暮らし続けることができるよう、次に掲げる施策を実施し、地域の力を豊かにしていくこととする。
(1) 地域の実情に応じた効果的な介護予防事業の推進に関すること。
(2) 認知症の人とその家族が、地域住民や支援を行う者と交流できる環境の整備に関すること。
(3) 認知症の人が社会での役割又は生きがいを持てるような社会参加の場の提供に関すること。
(4) 地域包括支援センター単位での声かけ訓練の促進等意識の醸成に関すること。
(5) 認知症への理解を深める啓発及び行方不明者の早期発見のための情報通信技術を活用した取組等による地域での認知症の人の見守りの推進に関すること。
(6) 児童及び生徒に対する認知症の人を含む高齢者への理解を深める教育の推進に関すること。
(7) 認知症の人の判断能力に配慮した成年後見等の権利擁護の取組の推進に関すること。
第3章 補則
(委員会)
第12条 市は、認知症の人にやさしいまちづくりの推進及び評価について調査審議し、並びに第8条第1項の判定をするため、市長の附属機関として、神戸市認知症の人にやさしいまちづくり推進委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、20人以内の委員で組織する。
3 委員は、学識経験者、地域活動団体の関係者その他市長が必要があると認める者のうちから市長が委嘱する。
4 委員の任期は、3年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 委員は、再任されることができる。
6 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(議会への報告)
第13条 市長は、毎年度、認知症の人にやさしいまちづくりに関する施策の実施状況を議会に報告するものとする。
(財政上の措置)
第14条 市は、この条例の目的を達成するため、第9条に定めるもののほか、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(施行細目の委任)
第15条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成30年4月1日から施行する。
附則(平成30年12月10日条例第16号)
(施行期日)
1 この条例は、平成31年4月1日から施行する。ただし、第1条の規定中神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例目次の改正規定、同条例第8条第1項の改正規定(「第11条」を「第12条」に改める部分に限る。)、同条例第14条を同条例第15条とする改正規定、同条例第13条の改正規定、同条例第13条を同条例第14条とする改正規定、同条例第12条を同条例第13条とし、同条例第9条から同条例第11条までを1条ずつ繰り下げる改正規定及び同条例第8条の次に1条を加える改正規定は、同年1月1日から施行する。
(適用区分)
2 第1条の規定による改正後の神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例第8条第1項の規定(以下「新規定」という。)に基づく給付金の支給その他必要な施策については、前項本文の規定による施行の日(以下「施行日」という。)前に新規定の例により認知症と診断された者に関しても講ずるものとする。
3 新規定に基づく給付金の支給その他必要な施策は、施行日以後に発生した事故について講ずるものとする。
(準備行為)
4 市長は、施行日前においても、新規定に係る認知症の診断の方法を定めることその他の新規定の施行に必要な準備行為をすることができる。
附則(令和3年12月9日条例第20号)
この条例は、公布の日から施行する。