○神戸市こどもを虐待から守る条例

平成31年3月7日

条例第26号

こどもは生まれた時から一人の人間としてその権利が保障され,尊重されるべき存在であり,健やかに成長する権利がある。そして,神戸市民全体の幸せであり,希望,願いでもあるこどもの幸せの実現のためには,保護者が喜びや生きがいを感じながら,安心して子育てができるよう,社会全体で支援していく必要がある。

こどもへの虐待は,こどもの基本的人権を否定する著しい人権侵害であり,こどもの心身の健やかな成長及び人格の形成に重大な影響を与えるもので,理由の如何に関わらず決して許されない。

こうした認識の下,神戸市は,市民,行政及び地域が一体となって,虐待のない子育てに優しい街を目指すとともに,虐待が起こった時にはそれを決して許さず,厳しい態度で臨むことが求められている。

こどもへの虐待をなくしていくためには,虐待の未然防止,早期発見,早期対応,対応後のこども,保護者等への支援を強化・充実させていく必要がある。

こどもたちの幸せを守り虐待を防止するため,全ての神戸市民が一体となって,地域の力でこどもと家庭を支える社会を推進するため,この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は,こどもを虐待から守るための基本理念を定め,神戸市(以下「市」という。),市民(市内で活動する者及び団体を含む。以下同じ。),保護者及び近親者並びに関係機関等の責務を明らかにするとともに,市内から虐待がなくなるよう,虐待の予防及び早期発見並びに虐待を受けたこどもの保護その他こどもを虐待から守るための施策の基本的事項を定めることにより,こどもを虐待から守る施策を総合的に推進し,もってこどもの心身の健やかな成長及び発達に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。

(1) こども 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「法」という。)第2条に規定する児童をいう。

(2) 保護者 法第2条に規定する保護者をいう。

(3) 近親者 保護者の2親等以内の親族をいう。

(4) 虐待 法第2条に規定する児童虐待をいう。

(5) 関係機関等 学校,児童福祉施設,医療機関その他こどもの福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員,児童福祉施設の職員,医師,歯科医師,薬剤師,保健師,助産師,看護師,弁護士その他こどもの福祉に職務上関係のある者をいう。

(6) 通告受理機関 神戸市児童相談所条例(昭和39年3月条例第70号)に基づく神戸市こども家庭センター(以下「こども家庭センター」という。),区役所(神戸市区の設置等に関する条例(平成31年3月条例第31号)に規定する区の事務所をいう。以下同じ。)同条例に基づく支所並びに神戸市福祉事務所条例(昭和26年10月条例第68号)に基づく福祉事務所をいう。

(基本理念)

第3条 虐待は,こどもの人権を著しく侵害し,こどもの心身の健やかな成長及び発達並びに人格の形成に重大な影響を及ぼすものであり,何人も虐待を行い,又は虐待を許してはならない。

2 虐待への対応は,こどもの利益に最大限配慮しなければならない。

3 市,市民,保護者及び関係機関等は,次世代を担う全てのこども一人一人が尊重され,及び健やかに成長することができる虐待のない社会の実現を目指し,総力を挙げて取り組まなければならない。

(市の責務)

第4条 市は,虐待の防止及び予防のため,子育て家庭が孤立することのない地域社会の形成に向け,虐待の未然防止及び早期発見のための取組,子育てに係る心身の負担を軽減する事業その他の子育てに役立つ施策を推進するとともに,こどもが安心して成長できるよう,環境の整備に努めなければならない。

2 市は,こども家庭センター,区役所及び関係機関等の連携を強化し,虐待の未然防止,早期発見及び支援の充実に努めなければならない。

3 市は,専門的知識に基づき虐待を受けたこどもの保護及び自立の支援をより迅速かつ適切に行うことができるよう,こども家庭センター及び区役所の職員,学校の教職員,児童福祉施設の職員その他虐待を受けたこどもの保護及び自立の支援を行う職務に携わる者の確保及び体制の拡充に努めるとともに,研修その他の必要な措置を講じ,虐待に関する専門的な知識を有する職員の育成に努めなければならない。

4 市は,虐待を防止するため,虐待に係る通告義務及び市が実施する子育て支援策等について必要な広報その他の啓発活動を行わなければならない。

5 市は,関係機関等がこども及び保護者への適切な支援を行えるよう,関係機関等の取組を支援するよう努めなければならない。

6 市は,虐待を受けたこどもがその心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析及び検証を行うとともに,当該検証に基づき必要な対策を講ずるものとする。

7 市は,虐待の未然防止及び早期発見のための方策,虐待を受けたこどものケア並びに虐待を行った保護者の指導及び支援の在り方,学校の教職員及び児童福祉施設の職員が虐待防止に果たすべき役割その他虐待の防止のために必要な事項についての調査研究を行うものとする。

(市民の責務)

第5条 市民は,こどもを虐待から守り,虐待のない子育てしやすいまちづくりを進めるため,市の施策及び関係機関等の取組に積極的に協力するとともに,虐待のないまちづくりの推進に積極的な役割を果たすよう努めなければならない。

2 市民は,虐待を受けたと思われるこどもを発見した場合は,速やかに,通告受理機関に通告しなければならない。

3 市民は,子育てに係る保護者の負担を理解するとともに,地域においてこども及び保護者(以下この項において「こども等」という。)を見守り,及びこども等への声かけ等を行うことを通じ,こども等との関わりを深め,子育てに係る生活環境が地域社会から孤立することのないよう努めなければならない。

(保護者及び近親者の責務)

第6条 保護者は,虐待を行ってはならない。

2 保護者は,虐待が正当化されないことを認識するとともに,しつけに際してこどもに身体的又は精神的苦痛を与えることのないよう,こどもの人権に配慮し,及びこどもの心身の健やかな成長及び発達を図るよう努めなければならない。

3 保護者は,子育てに関する知識の習得に努め,自らが子育てについての第一義的責任を有することを自覚し,及びこどもに愛情を持って接するとともに,年齢に応じた配慮をしながらこどもの健全な養育に努めなければならない。

4 保護者は,子育ての支援等が必要となった場合,子育て支援事業を利用するとともに,地域活動等へ積極的に参加することにより,子育てに係る生活環境が地域社会から孤立することのないよう努めなければならない。

5 保護者は,市長,通告受理機関又は関係機関等による調査に協力するとともに,市又は関係機関等から指導又は助言その他の支援を受けた場合は,これらに従って必要な改善等を行うよう努めなければならない。

6 近親者は,保護者の子育てに積極的に協力し,こどもの健全育成の支援に努めなければならない。

7 近親者は,虐待の事案又は虐待の疑いのある事案について,通告受理機関等と連携し,こどもの安全確保に努めなければならない。

(関係機関等の責務)

第7条 関係機関等は,自らが全てのこどもの心身の健やかな成長に資する職務を担っていることを自覚し,市が実施する虐待の予防及び早期発見のための施策の推進に協力するよう努めなければならない。

2 関係機関等は,その専門的知識及び経験を生かし,こどもを虐待から守るため,虐待の未然防止及び早期発見のための取組を行うよう努めるとともに,こどもが地域において安心かつ安全に生活できるようこども及び保護者の支援に努めなければならない。

3 関係機関等は,虐待を受けたと思われるこどもを発見した場合は,速やかに,通告受理機関に通告するとともに,通告受理機関による調査,適切な保護及び支援等に協力するよう努めなければならない。

4 関係機関等は,虐待の未然防止及び早期発見に向け,職員が必要な知識を修得できるよう,職員に対する研修等の機会を設けるよう努めなければならない。

5 関係機関等は,子育て支援事業等多様な機会を通じ,広く子育ての相談に応じるとともに,市民に対し広く虐待の防止に係る啓発等を行うよう努めなければならない。

(市長の責務)

第8条 市長は,通告受理機関の長から定期的に虐待の事案に関する報告を受けるとともに,当該事案のうち市長が重大と認めたものについて速やかに対応状況を把握し,及びこども家庭センター所長に対して適切な助言をしなければならない。

2 市長は,重大と認めた事案について,市会へ報告しなければならない。

(母子保健施策等との連携)

第9条 市は,母子保健事業を通じ,子育て家庭が安心して子育てができるよう支援し,家庭の状況に応じて必要な対応を行うよう努めなければならない。

2 市は,母子保健事業を通じ,虐待の予防及び早期発見に努めるとともに,市民,関係機関等及び警察と連携を図り,虐待に適切に対応しなければならない。

3 こどもに関わる医療機関又は学校等は,支援を必要とする妊産婦又はこどもの情報を把握した場合は,市への情報提供等,市との連携を強化することにより,虐待の未然防止に努めるものとする。

(情報の共有等)

第10条 市は,次の各号に掲げる場合には,当該場合に係る事案の情報を通告受理機関において適切に共有し,各通告受理機関が管理する情報に差異が生じないよう必要な措置を講ずるものとする。

(1) 虐待の事案又は虐待の疑いのある事案を把握した場合

(2) 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第27条第1項第3号の措置を解除しようとする場合

(3) 児童福祉法第33条第1項又は第2項の規定による一時保護を解除しようとする場合

2 市は,前項第1号に規定する事案について,当該事案に係るこども及び保護者の情報を警察と適切に共有するよう努めなければならない。

3 市は,こどもの安全確保及び自立支援を目的として,必要に応じて,第1項第1号に規定する事案に係るこども又は保護者の氏名,住所,心身の状況その他これらの者に係る情報を関係機関等と共有することができる。

4 前項の規定に基づき情報を得た者は,正当な理由がなく,第1項第1号に規定する事案に関し知り得た秘密を漏らしてはならない。

5 通告受理機関は,第1項第1号に規定する事案に係るこども又は保護者が転入(住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第22条の転入をいう。)をし,又は転出(同法第24条の転出をいう。)をした場合,転入又は転出に係る地方公共団体と当該こども又は保護者を支援するために必要な情報を共有するなどの必要な措置を講じるよう努めるものとする。

(虐待を受けたこどもに対する保護及び支援等)

第11条 市は,関係機関等と連携し,虐待を受けたこどもの心身の健全な発達を促進するため,当該こどもの意思を尊重しつつ,当該こどもに対し適切な保護及び支援を実施し,及び自立に向けた指導及び援助を行うよう努めなければならない。

2 市は,虐待を受けたこどもが良好な家庭的環境において養育を受け,及びその年齢に応じた教育を受けることができるよう,一時保護をする施設等を整備し,及び里親等の拡充を推進するために必要な支援に努めるものとする。

3 市長又は福祉事務所長は,法第8条第1項に規定する安全の確認を行うための措置その他の法に規定する権限を行使し,こどもの命を守るために必要な措置を講じなければならない。

4 こども家庭センター所長は,法第8条第2項に規定する安全の確認を行うための措置又は同項第1号に規定する一時保護(以下「安全確認等」という。)その他の法に規定する権限を行使し,こどもの命を守るために必要な措置を講じなければならない。

5 市長は,法第8条の2に規定する出頭要求及び必要な調査又は質問(以下「出頭要求等」という。),法第9条第1項に規定する立入り及び必要な調査又は質問(以下「立入調査等」という。),法第9条の2第1項に規定する出頭要求及び必要な調査又は質問(以下「再出頭要求等」という。),法第9条の3第1項に規定する臨検又は捜索及び同条第2項に規定する必要な調査又は質問(以下「臨検等」という。)その他の法に規定する権限を行使し,こどもの命を守るために必要な措置を講じなければならない。

6 こども家庭センター所長は,第4項に規定する安全確認等を行う場合において,必要があると認めるときは,法第10条に規定する警察署長に対する援助要請の実施について検討しなければならない。市長が,前項に規定する立入調査等又は臨検等を行う場合についても,同様とする。

(犯罪性の検討)

第12条 市長及び通告受理機関の長は,第3条第1項の理念に基づき,家庭の事情に配慮しつつ,犯罪性のある事案について告発の検討を怠ってはならない。

2 こども家庭センター所長は,虐待の事案について,弁護士等の専門家の意見を聴取し,当該事案の犯罪性の有無について検討しなければならない。

(虐待を行った保護者の支援,指導等)

第13条 市は,関係機関等と連携し,虐待を行った保護者と当該保護者から虐待を受けたこどもの良好な関係を再構築するための援助計画を作成するとともに,当該援助計画に基づき,当該保護者に対して虐待の再発防止の指導その他の支援を行うものとする。

(虐待の防止等に係る体制の整備)

第14条 市は,こども及び保護者の支援を適切に行えるよう,毎年度,通告受理機関における虐待の防止に関する取組の状況を把握し,及び検証するとともに,組織の役割及び機能分担並びに国が定める職員の配置基準等を踏まえ,人員の確保,施設の整備その他の虐待の防止に必要な体制を整備しなければならない。

2 市は,区役所においてこども及び保護者の支援を適切に行うことができるよう,支援を行うための拠点として整備し,及び職員の研修を徹底するよう努めなければならない。

3 市は,児童福祉法第25条の2第1項に規定する要保護児童対策地域協議会が関係機関等と協力し,及び連携し,並びに適切に機能するよう努めなければならない。

4 市は,警察及び家庭裁判所との対応を円滑に行うため,法的な知見の強化を図ることを目的として,弁護士等の専門的知識を有する者を置く。

(虐待防止の推進)

第15条 市は,関係機関等と連携し,虐待を早期に発見することができるよう,相談又は通告を容易に行うことができる環境づくりに努めるものとする。

2 市は,学校教育の場において,命の大切さ及び人権尊重の観点から,こども及び保護者に対し,虐待防止の啓発に取り組むものとする。

(虐待防止推進月間)

第16条 市民の間に広く虐待の防止等についての関心と理解を深めるため,虐待防止推進月間を設ける。

2 虐待防止推進月間は,11月とする。

3 市は,関係機関等と連携し,虐待防止推進月間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第17条 市は,こどもを虐待から守るための施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(市会への報告及び公表)

第18条 市長は,毎年,虐待の発生状況,通告の状況,虐待に係る市の施策の実施状況その他の市内における虐待に係る状況について,年次報告として取りまとめ議会に報告するとともに,市民に公表するものとする。

(施行細目の委任)

第19条 この条例の施行に関し必要な事項は,市長が定める。

附 則

この条例は,平成31年4月1日から施行する。

附 則(平成31年3月29日条例第41号)

この条例は,平成31年4月1日から施行する。

神戸市こどもを虐待から守る条例

平成31年3月7日 条例第26号

(平成31年4月1日施行)