○神戸市外国人に対する不当な差別の解消と多文化共生社会の実現に関する条例

令和元年6月18日

条例第8号

多文化共生は今や人類の平和と繁栄を実現するための共通の課題であり、故に国籍、人種、文化、宗教などの違いをもって不当な差別を助長し、扇動する行為を防止、解消することは人類共通の責務であるといえる。

多文化共生の果実はすでに私たち神戸市民の手元にある。すなわち1868年の開港以来、神戸は、諸外国から人々が来訪し、共に街を作り、仕事をし、神戸経済を発展させるとともに、独自の多文化共生の生活文化を生み出してきた。諸外国の人々との交流なくして今日の神戸の街は存在しなかったといっても過言ではない。

さらに近年、発展著しいアジアを中心とした海外からの観光客や留学生の増加は、日本経済の成長に寄与している。また多くの業種、業界で人手不足が深刻な問題になっている中、その解消策の一つとして海外からの人材の導入に大きな期待がかかっている。

このような現況を見れば、諸外国の人々が安心して我が国を訪れ、また生活することのできる社会を構築しなければ、本市はもとより日本の社会が立ち行かなくなることは明らかである。

本市が平成28年3月に策定した神戸2020ビジョンでも、誰もが包摂され、その個性と多様性を尊重し、誰もが持てる力を発揮でき、支え合うことのできる社会づくりを目指していくことを規定している。

本市が世界に開かれた都市として、外国人に対する不当な差別的言動をはじめとするあらゆる不当な差別を解消することはもとより、全ての市民がそれぞれの文化を尊重し合い、共に生きる社会を構築することは、市民経済の発展と市民福祉向上のために極めて重要であることから、その推進のためこの条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、表現の自由その他の自由及び権利を保障する日本国憲法を遵守しつつ、外国人に対する不当な差別を解消するとともに、それぞれの文化を尊重し合い共に生きる多文化共生社会を構築するため、その取組について、基本的施策を定め、これを推進することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「外国人」とは、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第2条第2号に規定する外国人であって、適法に居住するものをいう。

(市民の責務)

第3条 市民は、外国人に対する不当な差別を解消し、及び全ての人の尊厳が尊重されるまちづくりを進めるよう努めるものとする。

(相談体制の整備)

第4条 市は、外国人に対する不当な差別に関する相談に的確に応ずるとともに、国又は関係機関との連携により、必要な相談体制の拡充に努めるものとする。

(教育の充実等)

第5条 市は、国又は関係機関との連携により、外国人に対する不当な差別を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。

(啓発活動等)

第6条 市は、国又は関係機関との連携により、外国人に対する不当な差別の解消の必要性について、市民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。

2 市は、国籍や民族の違いを問わず、全ての人がお互いの違いを認め合う多文化共生社会を実現するという視点に立ち、多文化共生の基礎となる人権啓発を推進するよう努めるものとする。

(情報提供)

第7条 市は、外国人に対し我が国の社会生活に必要な情報を的確に提供するよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第8条 市は、この条例の目的を達成するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(議会への報告)

第9条 市長は、毎年度、この条例に基づく市の施策の実施状況を議会に報告するものとする。

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

神戸市外国人に対する不当な差別の解消と多文化共生社会の実現に関する条例

令和元年6月18日 条例第8号

(令和2年4月1日施行)