○松本市公契約条例

令和5年6月30日

条例第28号

(目的)

第1条 この条例は、公契約に関し、基本理念、市及び受注者等の責務その他基本となる事項を定めることにより、公契約の適正な履行及び品質の確保、地域経済の健全な発展、公契約に従事する労働者の適正な労働条件等の確保、社会的課題の解決に資する取組みの推進等を図り、もって市民が豊かで安心して暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 公契約 本市が発注する工事又は製造の請負、業務委託、物品の購入その他の契約及び地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定による公の施設の管理に関する協定(以下「協定」という。)をいう。

(2) 特定公契約 公契約のうち、規則で定めるものをいう。

(3) 市長等 市長(教育委員会が協定を締結する場合にあっては、教育委員会)及び地方公営企業の管理者をいう。

(4) 受注者 本市と公契約を締結する者をいう。

(5) 特定受注者 本市と特定公契約を締結する者をいう。

(6) 下請負者 次に掲げる者をいう。

 下請、再委託その他いかなる名称によるかを問わず、本市以外の者から公契約に係る業務の一部を請け負い、又は受託する者

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)第2条第1号に規定する労働者派遣をすることを約する契約により、受注者又はに規定する者に公契約に係る業務に従事する労働者を派遣する者

(7) 受注者等 受注者及び下請負者をいう。

(8) 労働者 次に掲げる者をいう。

 労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者であって、受注者等に雇用され、公契約に係る業務に従事する者。ただし、同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。

 自らが提供する労務の対価を得るために公契約に係る業務を請け負い、又は受託する者

(基本理念)

第3条 公契約は、次に掲げる事項を基本理念として行わなければならない。

(1) 締結に至る過程において、公正性、透明性及び競争性を確保すること。

(2) 適正な履行及び良好な品質を確保し、市民サービスの向上に努めること。

(3) 関係法令の遵守及び談合その他の不正行為の排除を徹底すること。

(4) 地域経済の健全な発展及び地域における雇用の確保に努めること。

(5) 市民の安全、安心な暮らしに寄与する事業者及びその担い手の育成を図ること。

(6) 事業者の有する専門的な技術の承継を図ること。

(7) 労働者の適正な労働条件その他の労働環境を確保すること。

(8) 社会的課題の解決及び持続可能で活力ある地域社会の実現に資する取組みの推進に努めること。

(市の責務)

第4条 市は、この条例の目的を達成するため、次に掲げる施策及び前条に規定する基本理念に基づく施策を総合的かつ効果的に推進しなければならない。

(1) 公正で透明性のある入札を実施するとともに、積極的な情報公開に努めること。

(2) 契約の性質及び目的を踏まえた適正な入札方法等の採用並びに計画的な発注による履行時期の平準化を図ること。

(3) 事業者が事業を維持継続するための担い手の確保及び育成に必要となる適正な利潤を確保できるよう、経済社会情勢の変化及び市場における労務その他の取引価格等を考慮した適正な予定価格を定めること。

(4) 事業者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、事業者の休日、必要な準備期間等を考慮し、適正な工期を設定すること。

(5) 専門的な知識又は技術等を有する事業者が市内に存しない場合その他特別の事情がある場合を除き、市内の事業者に対する発注に努めること。

(6) 関係法令遵守のために必要な措置を講ずるとともに、不正行為に対しては厳正に対処すること。

(受注者等の責務)

第5条 受注者等は、公契約に携わる者としての社会的な責任を自覚し、労働基準法、最低賃金法(昭和34年法律第137号)その他の関係法令を遵守するとともに、次に掲げる取組みその他第3条に規定する基本理念に基づく必要な取組みを行い、公契約を誠実かつ適正に履行しなければならない。

(1) 品質及び労働環境が向上するよう適正な価格での入札に努めること。

(2) 下請負者に市内の事業者を選定するよう努めること。

(3) 市内の事業者から資材を調達するよう努めること。

(4) 地域において労働者を確保し、その育成に努めること。

(5) 労働者の賃金その他の労働条件の向上及び安全な労働環境の整備に努めること。

(6) 第3条に規定する基本理念に基づき市が実施する施策に協力するよう努めること。

(下請負者との契約)

第6条 受注者等は、下請負者との契約に当たっては、建設業法(昭和24年法律第100号)、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)その他の関係法令を遵守し、下請負者との対等な立場における合意に基づく適正な契約の締結に努めなければならない。

(従前従事労働者の雇用)

第7条 受注者等は、公契約に係る業務(規則で定めるものに限る。)を履行するに当たっては、当該業務の適正な履行及びその品質を確保し、並びに雇用の安定に配慮するため、従前から当該業務に従事していた労働者であって、引き続き当該業務に従事することを希望する者を雇用するよう努めなければならない。

(労働環境報告書)

第8条 特定受注者は、特定公契約に係る労働者の賃金、労働時間、社会保険の加入状況その他の労働条件が適正であることを確認するための書類(以下「労働環境報告書」という。)を市長等に提出しなければならない。提出した労働環境報告書の内容に変更があった場合も同様とする。

2 特定公契約に係る業務の下請負者(協定に係る業務においては規則で定める者に限る。)は、特定受注者を通じて労働環境報告書を市長等に提出しなければならない。提出した労働環境報告書の内容に変更があった場合も同様とする。

3 市長等は、前2項の規定により提出された労働環境報告書を閲覧に供するものとする。

(下請負者への明示)

第9条 特定受注者及び前条第2項に規定する下請負者(以下これらを「特定受注者等」という。)は、その履行すべき公契約に係る業務の一部について、他の事業者に請け負わせ、若しくは委託し、又は労働者派遣法第2条第2号に規定する派遣労働者に従事させようとするときは、その相手方に対し、あらかじめ、次の事項を明示しなければならない。

(1) 前条第2項の規定により労働環境報告書の提出義務があること。

(2) 前条第3項の規定により労働環境報告書は閲覧に供されること。

(3) 第13条の規定により労働環境報告書の内容について報告等を求められることがあること。

(労働者への周知)

第10条 特定受注者等は、次に掲げる事項について、規則で定める方法により労働者に周知しなければならない。

(1) 当該労働者が従事する特定公契約の名称

(2) 当該特定公契約に係る労働環境報告書の項目及び閲覧場所

(3) 次条の規定により申出をすることができる旨及び当該申出をする場合の申出先

(4) 次条の規定による申出を理由とする不利益な取扱いを受けないこと。

(労働者からの申出等)

第11条 公契約に係る業務に従事する労働者は、当該業務の労働環境が労働基準法、最低賃金法その他の関係法令に違反している疑いがあると認めるときは、その旨を市長等に申し出ることができる。

2 市長等は、前項の規定による申出及び公契約に係る労働環境に関する相談を受け付けるための窓口を設置するものとする。

(不利益取扱いの禁止)

第12条 受注者等は、労働者が前条第1項の規定による申出を行ったこと及び同条第2項に規定する窓口へ相談をしたこと並びに次条の規定による質問に回答したことを理由に、当該労働者に対して解雇、請負契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない。

(報告等の求め)

第13条 市長等は、第11条第1項の規定による申出があったとき、又は受注者等がこの条例若しくは関係法令に違反している疑いがあると認めるときは、当該受注者等に対し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又は当該受注者等が締結した公契約に係る業務に従事する労働者を含む関係者に質問することができる。

(関係機関への通報)

第14条 市長等は、受注者等が関係法令に違反していることを確認した場合において必要があると認めるときは、関係機関へ通報するものとする。

(是正措置)

第15条 市長等は、受注者等が次の各号(第1号にあっては、特定受注者等に限る。)のいずれかに該当すると認めるときは、当該受注者等に対し、期限を定めて是正のための必要な措置を講ずることを求めるものとする。

(1) 労働環境報告書を提出しないとき又は虚偽の労働環境報告書を提出したとき。

(2) 第13条の規定による報告又は資料の提出の求めに対し、次のいずれかに該当するとき。

 報告又は資料の提出をしないとき。

 虚偽の報告又は虚偽の資料の提出をしたとき。

(3) 第13条の規定による質問に対し答弁しないとき又は虚偽の答弁をしたとき。

(4) 労働環境報告書の内容その他公契約に係る労働環境について改善の必要があると市長等が認めるとき。

2 受注者等は、前項の規定による市長等の求め(以下「是正の求め」という。)があったときは、速やかに必要な措置を講ずるとともに、規則で定めるところにより、当該措置の内容について市長等に報告しなければならない。

(公表)

第16条 市長等は、受注者等が正当な理由なく是正の求めに応じないときは、当該受注者等の入札への参加資格を停止し、又はその氏名及び住所(法人その他の団体にあっては、その名称及び代表者の氏名並びに主たる事務所の所在地)並びに当該是正の求めの内容を公表することができる。

2 市長等は、前項の規定による入札への参加資格の停止又は公表をしようとするときは、あらかじめ、当該受注者等に対し、理由を明示して通知するとともに、弁明の機会を与えなければならない。

(公契約審議会)

第17条 公契約に関する施策の適正な実施を推進するため、松本市公契約審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、委員6人以内をもって組織する。

3 委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱する。

(1) 事業者

(2) 労働者の代表者

(3) 学識経験者

(4) その他市長が特に必要と認める者

4 委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。

5 委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

(委任)

第18条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

(施行期日)

1 この条例は、令和5年7月1日から施行する。

(経過措置)

2 第3条から第7条までの規定は、この条例の施行の日以後に入札の公告その他の契約の申込みの誘引が行われる公契約について適用する。

3 第8条から第16条までの規定は、令和5年10月1日以後に締結する公契約について適用する。

(松本市特別職の職員の給与及び費用弁償に関する条例の一部改正)

4 松本市特別職の職員の給与及び費用弁償に関する条例(昭和26年条例第8号)の一部を次のように改正する。

別表第2退職手当審査会委員の項の次に次のように加える。

公契約審議会委員



7,000

4,900

松本市公契約条例

令和5年6月30日 条例第28号

(令和5年7月1日施行)