○南九州市家庭教育支援条例

平成28年12月22日

条例第39号

家庭は,教育の原点であり,すべての教育の出発点であると言われます。基本的生活習慣,倫理観,自立心や自制心などは,家族との触れ合いを通じて家庭で育まれます。私たちの南九州市では,これまでもそれぞれの家庭はもちろんのこと,子どもを取り巻く地域社会で,子どもの育ちを支えてきました。

しかしながら,地域や家庭の教育力の低下や子育て等に対する親の不安や児童虐待などの問題とともに,いじめ問題や子どもの自尊心の低さも指摘されています。また,少子化や核家族化の進行,情報化社会の進展,地域社会への関心や連帯感の希薄化等の状況を踏まえると,子育てへの不安を解消し安心して子育てができる取組を地域社会で支援していくとともに,次代を担う子どもが健やかに育つ環境づくりなど,家庭教育への支援を更に進めていくことが求められています。

そのような背景の中で,各家庭が改めて家庭教育に対する責任を自覚し,その役割を認識するとともに,家庭を取り巻く学校,地域社会,事業者,行政等がそれぞれの役割を果たし,家庭教育を支えていく風土を醸成していく必要があります。

ここに,社会全体による協働の子育て・人づくりを進め,子どもの健やかな成長に喜びを実感できる南九州市の実現を目指して,この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は,次代を担う子どもの育成に関し,家庭教育を支援していくための基本理念を定め,保護者,学校,地域社会,事業者及び市の役割を明らかにするとともに,子育てに関する市の施策その他の基本となる事項を定めることにより,すべての教育の出発点である家庭教育を支援し,子どもの健やかな成長に寄与することを目的とする。

(用語の定義)

第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の定義は,当該各号に定めるところによる。

(1) 子ども 市内に居住するおおむね18歳未満の者をいう。

(2) 保護者 親権を有する者又はその者に代わり子どもを育てる立場にある者で,子どもを現に監護する者をいう。

(3) 家庭教育 保護者がその子どもに対して行う教育をいう。

(4) 学校 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学を除く。),児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定子ども園をいう。

(5) 地域社会 地域に居住する者並びに地域に関する課題の解決及び地域住民の連携を図るために活動する団体をいう。

(6) 事業者 市内において,事業所又は事業の拠点を有し,事業を行う個人又は法人その他の団体をいう。

(7) 協働 保護者,学校,地域社会,事業者及び市がそれぞれの果たすべき責務を自覚し,相互に支え合い,協力することをいう。

(基本理念)

第3条 保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に,家庭教育の支援を社会全体で協働して行う。

(1) 子どもは郷土の宝及び次代を担う力という認識の下,子どもを一人の人間として尊厳を有し,かけがえのない存在として尊重するとともに,子どもの健やかな成長に向けた取組への支援を行う。

(2) 保護者,学校,地域社会,事業者及び市は,それぞれの役割を果たすとともに,家庭教育の自主性を尊重しつつ,相互に協働し子どもの発達に応じた家庭教育への支援を行う。

(保護者の役割)

第4条 保護者は,基本理念にのっとり,子どもに家庭の一員としての自覚を育みながら,基本的生活習慣,社会規範等を身に付けられるようにするとともに,子どもが自立心及び心豊かな人間性を育めるよう,次に掲げることに努めるものとする。

(1) 家庭が子どもにとって安心できるものとなるよう,愛情をもって子どもに接し,人への信頼感及び安心感を育てるようにすること。

(2) 子どもの思いを受け止め,自らが範を示す中で望ましい生活習慣の形成を図り,健やかな成長に必要な力を身に付けられるようにすること。

(3) 家庭内での役割分担を明確にし,子どもに家庭の一員としての責任を持たせ,自立心を育み,自尊感情・自己肯定感を高めるようにすること。

(4) 学校の行事等への参加を通して,子どもの長所及び課題を学校と共有し,自らも親として成長していくようにすること。

(5) 地域社会の一員として,地域活動への参加を通して,人と支え合うことの大切さを学ぶため,子どもとともに地域との交流を図るようにすること。

(学校の役割)

第5条 学校は,基本理念にのっとり,保護者及び地域社会と連携し,子どもの心身の発達に応じた体系的な保育又は教育を展開することにより,健やかな成長に必要な力を身に付けられるようにするとともに,保護者及び地域の信頼に応え,次に掲げることに努めるものとする。

(1) 基礎的・基本的な知識及び技能の確実な習得並びにこれらを活用する力を育み,主体的に学習に取り組む態度及び意欲を育成することを通して,学力の向上を図ること。

(2) 他者との関わりの中で,規範意識,協調性等を培うとともに,思いやりの心,感謝の心,感動する心等の豊かな人間性を育むこと。

(3) 生涯にわたって運動に親しみ,健康を保持増進し,豊かな生活を実現するための健康及び体力を育むこと。

(4) 保護者,地域社会,事業者等と連携し,協働した活動並びに家庭教育への支援を推進すること。

(地域社会の役割)

第6条 地域社会は,基本理念にのっとり,家庭教育支援に関する地域での環境整備を行うとともに,地域素材を活用した様々な活動を通して,豊かな人間性,主体性及び郷土愛が育まれるよう,次に掲げることに努めるものとする。

(1) 子どもへの声かけ,見守り等により子どもが安全で健やかに育つ環境づくりをすること。

(2) 子ども及び保護者が地域の一員として,地域の行事及び活動に参加又は参画できる機会をつくること。

(3) 地域に伝わる行事,体験活動,歴史等を守り,語り伝えていくことで,子どもがふるさとを大切に思う気持ちや将来への夢を育むこと。

(事業者の役割)

第7条 事業者は,基本理念にのっとり,地域の一員として,将来を担う子どもの育成に責任を負うこと及び子どもの健やかな成長が将来の人材を育成する大切な営みであることを自覚し,次に掲げることに努めるものとする。

(1) 事業所に勤務する保護者が仕事と子育てを両立しやすい職場環境を整えること。

(2) 市,学校及び地域社会が実施する家庭教育支援に関する施策に,積極的に協力すること。

(3) 職場見学,職場体験,講師派遣等に協力すること。

(市の役割)

第8条 市は,基本理念にのっとり,保護者,学校,地域社会及び事業者が,それぞれの果たすべき役割に従い,協働して子どもの健やかな成長に関する取組を推進できるように,家庭教育の支援に関して必要な施策又は措置を講じるとともに広く市民への周知及び広報に努めるものとする。

(保護者への支援)

第9条 市は,保護者に対し,子育てに関する情報提供に努めるとともに,子育てに関する講座の開設等により学習の機会を充実するものとする。

(学校への支援)

第10条 市は,学校が教育機能を十分に発揮できるように,教職員の資質向上を図るとともに,学校の教育環境の充実に努めるものとする。

(地域社会への支援)

第11条 市は,地域社会の活動を推進するために必要な人材の育成支援を行うとともに,地域社会が行う学校や社会教育施設等における活動に必要な支援を行うものとする。

(事業者の理解及び協力の推進)

第12条 市は,子どもの健やかな成長に関して,事業者の理解及び協力が得られるように子育てに関する情報提供,広報及び啓発活動を行うものとする。

(子どもの自主的活動への支援)

第13条 市は,郷土の教育的伝統と風土を生かしながら,平和学習,伝統文化,スポーツ活動,体験活動等の自主的活動を支援するとともに,行事等への主体的な参加及び参画の機会の拡充に向けた支援を行うものとする。

(相談体制の充実)

第14条 市は,子育てに関する様々な分野の相談に応じるため,相談・支援を行う機関及び団体と連携を図り,相談体制の充実を図るとともに相談窓口の周知等を行うものとする。

(市民の理解及び協力)

第15条 市は,家庭教育に関する情報の収集,整理,分析及び提供を行い,家庭教育の支援に関するネットワークづくりを支援するとともに,市民の理解及び協力を得るものとする。

この条例は,平成29年4月1日から施行する。

南九州市家庭教育支援条例

平成28年12月22日 条例第39号

(平成29年4月1日施行)