○近江八幡市風景づくり条例
平成22年3月21日
条例第187号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 風景計画(第9条―第11条)
第3章 風景づくり協定地区(第12条―第16条)
第4章 風景資産(第17条―第20条)
第5章 眺望風景(第21条―第24条)
第6章 公共事業における風景づくり(第25条―第27条)
第7章 風景づくりに対する支援等(第28条―第31条)
第8章 近江八幡市風景づくり委員会(第32条―第34条)
第9章 雑則(第35条)
付則
前文
私たちのまち近江八幡は、豊かに水をたたえる琵琶湖をはじめ、四季折々の表情をみせる湖辺の野山、我国の淡水湖にあって唯一の住区をもつ離島沖島、日本一の佳観を誇る水郷西の湖など、水と緑の織りなす美しい自然環境に恵まれている。
また、整然と区画された広大な田園と辺りに点在する伝統的な農村集落や鎮守の森、そこに伝わる祭りや行事が大切に受け継がれている。
一方、市街地に目を移せば、特別史跡安土城跡を有する安土山山麓の旧城下町の町割り、市民活動でよみがえった八幡堀と我国の近代商業を先導した八幡商人の重要伝統的建造物群保存地区、大正ロマンの香り高いヴォーリス建築の数々等、各時代を代表する歴史的建造物が残されている。
古くは八風街道や中山道、朝鮮人街道が、近年に至っては湖岸を巡る湖周道路が本市を西に東に横切り、それに沿うように家並みが田畑が葭原が道行く人を楽しませる。それら我が市の風景は、巧まずして様々な特徴あるゾーン(区域)を形成しながら隣接し、緩やかに混じり合い、「人間の生活と自然とが入り込み独特の風景を醸し出すところ」、「大都市と伝統的な地方の生活が緩やかに混じり合うところ」、「古いものと新しいもの、文化と文明が交錯するところ」といった組み合わせで表現される多彩な「波打ち際」を演出し、詩情あふれる風景を創り出している。
このように先人から受け継がれ歳月を経て築かれてきた風景は、実に味わい深く、私たちを魅了してやまず、今や市民の大切な共有財産となっている。
私たちは、一人ひとりの参画と協働により、この近江八幡の詩情あふれる風景を大切に守り、はぐくみ、誇りと愛着をもって次の世代へ引き継いでいくため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市の風景づくりに関する施策の基本となる事項を総合的に定めることにより、市、市民、事業者等が連携、協働し、近江八幡の魅力ある風景を守り、はぐくみ、次世代に引き継ぐ営みを支援することを目的とする。
(1) 風景 長い歴史の流れの中で、人々の五感によってその価値を共有されてきた自然、建造物、まちなみ、田園及び人々の営みによって形成された景観をいう。
(2) 風景づくり 人々が四季の変化や日々の営みの中で、近江八幡の魅力ある良好な風景を守り、はぐくみ、次世代に引き継ぐことをいう。
(3) 建築物 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号に規定する建築物をいう。
(4) 工作物 建築物以外の工作物のうち規則で定めるものをいう。
(5) 広告物 屋外広告物法(昭和24年法律第189号)第2条第1項に規定する屋外広告物をいう。
(6) 施工者等 前3号に掲げるものの新築、新設、表示、増改築その他これらに類する行為を行う者及び土地の開墾その他の土地の形質の変更を行う者並びにこれらの行為に係わる設計を業として行う者をいう。
(基本理念)
第3条 風景づくりは、近江八幡を愛する心をはぐくみ、まちの文化を高めていくよう推進されなければならない。
2 風景づくりは、市、市民、事業者等がそれぞれの担う役割を認識し、互いに連携し、かつ、協働して推進されなければならない。
3 風景づくりは、魅力ある風景を守り、はぐくみ、次世代に引き継ぐ人づくりを推進するものでなくてはならない。
(市の責務)
第4条 市は、風景づくりに関する基本的かつ総合的な施策を策定し、これを実施しなければならない。
2 市は、前項の施策の策定及び実施に当たっては、市民及び事業者等の意見が十分に反映されるよう努めなければならない。
3 市は、市民、事業者、施工者等の風景づくりに関する意識を高めるとともに、風景づくりに関する情報の提供、その他支援に努めなければならない。
(市民の責務)
第5条 市民は、自らが風景づくりの主体であることを認識し、積極的に風景づくりに努めなければならない。
2 市民は、この条例の目的を達成するため、市が実施する風景づくりの施策に協力しなければならない。
(事業者及び施工者等の責務)
第6条 事業者は、事業活動の実施に当たっては、積極的に風景づくりに努めなければならない。
2 施工者等は、自らの業務が風景づくりに影響を与えるものであることを認識し、積極的に風景づくりに努めなければならない。
3 事業者及び施工者等は、この条例の目的を達成するため、市が実施する風景づくりの施策に協力しなければならない。
(土地及び建築物等の所有者の責務)
第7条 土地並びに建築物、工作物及び広告物(以下「建築物等」という。)の所有者は、土地及び建築物等が風景を構成する要素であることを認識し、その利用等に当たっては風景づくりに貢献するものとなるよう努めなければならない。
(来訪者の協力)
第8条 市、市民、事業者等は、来訪者に対し自らが取り組む風景づくりに対して、理解と協力を求めることができる。
第2章 風景計画
(風景計画の策定)
第9条 市長は、景観法(平成16年法律第110号。以下「法」という。)第8条第1項各号に該当する土地の区域について、風景づくりを総合的かつ計画的に推進するための計画(以下「風景計画」という。)を定めることができる。
2 風景計画は、法第8条第1項に規定する景観計画をいう。
(1) 湖畔風景地域 琵琶湖とその湖岸風景を活かし、琵琶湖との一体的な風景づくりを図る必要があると認められる地域
(2) 水郷風景地域 内湖を中心としたヨシ群落、樹林地、田畑、農村集落等で構成された水郷風景として、一体的な風景づくりを図る必要があると認められる地域
(3) 田園風景地域 田畑、里山、農村集落等で構成された田園風景として、一体的な風景づくりを図る必要があると認められる地域
(4) 伝統的風景地域 城下町としてつくられ、八幡商人の本拠地として発展してきた地域で、町家等が残る伝統的な風景を形成する地域及びその伝統的風景と一体的な風景づくりを図る必要があると認められる地域
(5) 街道風景地域 街道沿いとしての歴史をもち、その個性を活かした風景づくりを図る必要があると認められる地域
(6) 市街地風景地域 良好な市街地風景や新しい先導的な市街地風景づくりを図る必要があると認められる地域
(7) 歴史文化風景地域 山城跡等の史跡とその周辺の関連文化財群、田畑等で構成された歴史文化的な風景として、一体的な風景づくりを図る必要があると認められる地域
4 市長は、風景地域を指定するときは、当該地域ごとにその特性に応じ、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 良好な風景の形成に関する方針
(2) 良好な風景の形成のための行為の制限に関する事項
(3) その他良好な風景の形成に必要な事項
(平28条例23・一部改正)
(風景計画検討に当たっての市民参画)
第10条 市長は、風景計画を検討するに当たっては、幅広い市民の参画を得るよう配慮するものとする。
(風景計画策定の手続)
第11条 市長は、風景計画を定めようとするときは、法第9条に定める手続によるほか、あらかじめ第32条に規定する近江八幡市風景づくり委員会の意見を聴かなければならない。
2 前項の規定は、風景計画の変更について準用する。
第3章 風景づくり協定地区
(風景づくり協定)
第12条 一定のまとまりのある区域内の土地(道路、河川、公園等公共の用に供する土地を除く。)及び建築物等の所有者並びにこれらを管理する者(以下「土地所有者等」という。)は、規則で定めるところにより、当該区域内において自主的に行う風景づくりに関する協定(以下「風景づくり協定」という。)を締結することができる。
2 風景づくり協定には、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 協定の名称
(2) 協定の目的
(3) 協定の対象となる区域
(4) 代表者
(5) 風景づくりに関する活動内容
(6) 風景づくり協定の有効期間
(7) 協定の変更又は廃止の手続
3 風景づくり協定には、次に掲げる事項で必要なものを定めるものとする。
(1) 建築物の敷地、位置、規模、構造、用途、建築設備又は形態意匠に関する基準
(2) 工作物の位置、規模、用途又は形態意匠に関する基準
(3) 樹林地、草地等の保全又は緑化に関する事項
(4) 屋外広告物の表示又は屋外広告物を掲出する物件の設置に関する基準
(5) 農用地の保全又は利用に関する事項
(6) その他良好な風景の形成に関する事項
4 風景づくり協定を締結した者は、規則で定めるところにより、市長に前2項に掲げる事項を記載した協定書を提出して認定を求めることができる。
5 市長は、前項の規定により認定を求められた協定が、風景づくりの推進に資すると認めるときは、当該協定を風景づくり協定として認定するものとする。
6 市長は、風景づくり協定を認定したときは、その内容を公表するものとする。
(風景づくり協定の変更)
第13条 前条第5項の規定により認定を受けた風景づくり協定を締結した土地所有者等は、当該協定を変更しようとするときは、規則で定めるところにより、変更しようとする内容を記載した協定書案を市長に提出してその認定を受けなければならない。
(風景づくり協定の廃止)
第14条 第12条第5項の規定により認定を受けた風景づくり協定を締結した土地所有者等は、当該協定を廃止したときは、規則で定めるところにより、その内容を市長に届け出なければならない。
2 市長は、前項の届出があったときは、その旨を公表するものとする。
(協定項目に係る行為の通知)
第15条 第12条第5項の規定により認定を受けた風景づくり協定を締結した土地所有者等は、当該協定の対象となる区域内において、当該協定で定めた事項に係る行為を行おうとする場合には、規則で定めるところにより、あらかじめ当該協定の代表者に対し、当該協定項目に係る行為の内容を通知しなければならない。
(風景づくり協定への配慮の要請)
第16条 市長及び第12条第5項の規定により認定を受けた風景づくり協定を締結した土地所有者等は、当該協定の対象となる区域内において、当該協定に定める協力事項に係る基準に適合しない行為を行おうとする土地所有者等に対し、当該協定に定める協定事項に係る基準に配慮するよう要請することができる。
第4章 風景資産
(風景資産の推薦)
第17条 市民は、地域の自然、歴史、文化等を象徴する建造物、樹木その他規則で定めるものを、規則で定めるところにより風景資産として市長に推薦することができる。
(風景資産の登録)
第18条 市長は、前条の規定により推薦のあった資産が風景づくりの推進に資すると認めるときは、当該資産を風景資産として登録するものとする。
2 市長は、風景資産を登録しようとするときは、あらかじめ第32条に規定する近江八幡市風景づくり委員会の意見を聴かなければならない。
3 市長は、風景資産を登録しようとするときは、あらかじめ当該資産の所有者又は管理者の意見を聴かなければならない。
4 市長は、第1項の規定により風景資産を登録したときは、速やかに、その旨及び規則で定める事項を当該資産の所有者又は管理者に通知するとともに、これを公表しなければならない。
(風景資産の保全)
第19条 前条第1項の規定により登録された風景資産の所有者又は管理者は、当該風景資産の保全に努めなければならない。
(風景資産の顕彰)
第20条 市長は、第18条第1項の規定により登録した風景資産について、必要と認めるときは、顕彰のための措置を行うものとする。
第5章 眺望風景
(眺望風景保全地区)
第21条 市長は、第18条第1項の規定により登録された風景資産にかかる眺望を保全する必要があると認める場合は、必要な土地の区域を眺望風景保全地区として指定することができる。
2 市長は、前項の眺望風景保全地区の指定に当たっては、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 眺望風景を保全すべき資産
(2) 眺望風景を保全すべき視点の位置
(3) 眺望風景を保全する区域
(4) 眺望風景保全地区内における建築物等の規模、位置、形態意匠等の基準等眺望風景を保全するために必要となる事項
3 市長は、眺望風景保全地区を指定しようとするときは、あらかじめ第32条に規定する近江八幡市風景づくり委員会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、眺望風景保全地区を指定しようとするときは、あらかじめ当該地区内の土地及び建築物等の所有者又は管理者の意見を聴かなければならない。
5 市長は、眺望風景保全地区を指定したときは、これを告示しなければならない。
6 前3項の規定は、眺望風景保全地区の指定内容の変更又は解除を行う場合に準用する。
(1) 建築物等の新築、増築、改築若しくは移転、除却、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更
(2) 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
(3) 土石の類の採取
(4) 木竹の伐採
(助言、指導又は勧告)
第23条 市長は、前条の協議があった場合において、当該行為に係る計画の内容が、第21条第2項第4号で定める基準に適合しないと認めるときは、当該行為をしようとする者に対して、必要な措置を講じるよう助言、指導又は勧告しなければならない。
(報告等)
第24条 前条第1項の規定による助言、指導又は勧告を受けた者は、当該助言、指導又は勧告によって講じた措置について、規則で定めるところにより市長に報告しなければならない。
2 市長は、前項の規定により報告を受けた場合は、必要に応じて実地調査を実施するものとする。
第6章 公共事業における風景づくり
(公共事業風景づくり指針)
第25条 市長は、歴史的かつ文化的な視点を踏まえて、公共事業又は公共施設の建設における風景づくりの指針(以下「公共事業風景づくり指針」という。)を定めるものとする。
2 公共事業風景づくり指針を策定しようとするときは、あらかじめ第32条に規定する近江八幡市風景づくり委員会の意見を聴かなければならない。
3 市長は、公共事業風景づくり指針を定めたときは、これを公表しなければならない。
4 前2項の規定は、公共事業風景づくり指針を変更する場合に準用する。
(先導的役割)
第26条 市長は、公共事業又は公共施設の建設を行う場合は、公共事業風景づくり指針に基づき、風景づくりにおける先導的役割を果たさなければならない。
(国等に対する要請)
第27条 市長は、国、県、その他規則で定める公共的団体が公共事業又は公共施設の建設を行う場合には、公共事業風景づくり指針に配慮するよう要請するものとする。
第7章 風景づくりに対する支援等
(風景づくり活動団体の認定)
第28条 市長は、規則で定めるところにより、風景づくりに関する自主的な活動を行う団体を風景づくり活動団体として認定することができる。
2 市長は、風景づくり活動団体を認定しようとするときは、あらかじめ第32条に規定する近江八幡市風景づくり委員会の意見を聴かなければならない。
3 市長は、風景づくり活動団体を認定したときは、これを公表しなければならない。
(風景資産の保全への支援及び助成)
第30条 市長は、第19条の規定に基づき登録された風景資産の保全を行う者を支援する必要があると認めるときは、技術的支援又は予算の範囲内において、保全に要する経費の一部を助成する等の支援を行うことができる。
(協働による風景づくりの推進)
第31条 市長は、市、市民、事業者等の協働による風景づくりを推進するため、風景づくりに関する記録の収集、情報提供、学習機会等の提供に努めなければならない。
第8章 近江八幡市風景づくり委員会
(設置)
第32条 本市の風景づくりの推進を図るため、法第15条に規定する景観協議会として、近江八幡市風景づくり委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、この条例の規定により定められた事項及び風景づくりに関する重要事項を調査審議するほか、市長の諮問に応じ、風景づくりに関する事項を調査審議するものとする。
3 委員会は、風景づくりに関する事項について、市長に意見を述べることができる。
(組織)
第33条 委員会は、委員15名以内をもって組織する。
2 委員会の委員は、風景づくりに関し学識経験を有する者その他市長が適当と認める者のうちから市長が委嘱する。
3 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、委員に欠員が生じた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(委任)
第34条 委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第9章 雑則
(委任)
第35条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
付則
(施行期日)
1 この条例は、平成22年3月21日から施行する。
3 地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第5条第1項の規定により、市長が処理する事務となる日の前に、滋賀県知事が定めた景観法第8条に規定する「滋賀県景観計画」(平成20年滋賀県告示第289号)のうち合併前の安土町の区域については、第9条の市長が定めた「風景計画」とみなす。
付則(平成28年条例第23号)
この条例は、平成28年4月1日から施行する。