○志摩市まちづくり基本条例

平成20年6月30日

条例第22号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第4条)

第2章 市民(第5条・第6条)

第3章 議会(第7条―第9条)

第4章 行政機関(第10条―第19条)

第5章 情報の共有(第20条・第21条)

第6章 参画及び協働(第22条―第26条)

第7章 市民自治活動(第27条―第29条)

第8章 他の団体及び関係機関との連携(第30条)

第9章 条例の実効性を確保するしくみ(第31条―第33条)

附則

前文

私たちのまち志摩市は、全域が伊勢志摩国立公園に含まれる風光明媚な地域であり、雄大な太平洋と波静かな英虞湾、的矢湾の豊かな海産物の恵みを受け、万葉の時代から「御食つ国(みけつくに)」として栄えてきた歴史があります。この地域は、それぞれの地区が古くから生活圏を共にし、日常的な交流が盛んであり、各地区には特徴ある祭りや伝統芸能が受け継がれ、先人からの歴史や文化が今も息づいています。

私たちは、様々な恵みをもたらす美しく豊かな自然や連綿と受け継がれた歴史と文化を守り、継承し、それぞれの地区の特性を活かし、融合させながら、志摩市の個性として発揮していかなければなりません。

そして、志摩市に住む人が快適に暮らせるよう生活環境を整え、心身ともに健康で生きがいを持てる、誰もが安全で安心に暮らせる「人にやさしいまちづくり」を進めていきます。また、志摩市を訪れる人にも、志摩市の豊かで活気ある生活や「心のもてなし」を実感していただけるよう「住んでよし、訪れてよしの志摩市」の実現を目指していきます。

少子高齢化や地方分権が進展するなかで、志摩市総合計画を実現していくためには、志摩市の自治は自己決定、自己責任を基本とした市民自治活動を促進し、市民が主体となるまちづくりを進めなければなりません。そのために、市民に開かれたまちとして、情報の共有を推進していきます。また、住民や自治会、ボランティア団体、NPO法人等の市民と議会及び行政機関がそれぞれの責務や役割を認識し、協働によるまちづくりを進めることが必要であります。

私たちは、「補完性の原則」に基づき、「志摩のちから」を発揮し、市民一人一人が輝く、自立したまちづくりを実践するために、志摩市まちづくり基本条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、私たちのまち志摩市のまちづくりに関する基本的な事項を定め、地方自治の本旨に基づき、自立したまちの実現を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意味は、当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 市内に住所を有する人(以下「住民」という。)、在勤又は在学する個人及び市内で事業を営む者又は活動する団体等をいう。

(2) 行政機関 市長、教育委員会、監査委員、選挙管理委員会、農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいう。

(3) 市 市議会(以下「議会」という。)及び行政機関で構成される地方公共団体をいう。

(4) 参画 市民がまちづくりに主体的に参加し、活動することをいう。

(5) 協働 市民、議会及び行政機関が対等の立場でそれぞれの役割及び責任を認識し、共通するまちづくりの目的の実現に向け、連携、協力及び活動することをいう。

(基本原則)

第3条 私たちのまちづくりは、次に掲げる基本原則によって推進するものとする。

(1) 国籍、性別、年齢等にかかわらず、市民一人一人の人権が保障され、その個性及び能力が十分に発揮されること。

(2) 市民、議会及び行政機関がまちづくりに関する情報を互いに共有すること。

(3) 市民の参画が保障されるとともに、市民、議会及び行政機関が協働すること。

(条例の位置付け)

第4条 この条例は、志摩市のまちづくりの基本事項について定める最高規範であり、議会及び行政機関は、他の条例等の制定及び改廃に当たっては、この条例の趣旨を最大限に尊重しなければならない。

第2章 市民

(市民の権利)

第5条 市民は、まちづくりに関する情報を知る権利及びまちづくりに参画する権利を有する。

(市民の責務)

第6条 市民は、まちづくりの主体であり、自らの発言と行動に責任を持ち、積極的にまちづくりに参画するよう努めなければならない。

2 市民は、前条の権利を行使するに当たり公共の福祉の増進に努め、次世代及び自然環境に配慮し、人にやさしいまちづくりに努めなければならない。

第3章 議会

(議会の役割と権限)

第7条 議会は、市の意思決定機関であるとともに、市政運営を監視し、けん制する機能を有する。

2 議会は、法令の定めるところにより条例の制定及び改廃並びに予算の決定、決算の認定等を議決するとともに、行政機関に対する検査、監査請求等の権限を有する。

3 議会は、この条例の趣旨を踏まえ、市民の意思を市政に反映させるため、積極的にまちづくりの推進に努めるものとする。

(議会の責務)

第8条 議会は、市民との情報共有を図り、市民に開かれた議会運営に努めなければならない。

2 議会は、行政活動を調査及び監視するとともに、市の政策水準の向上を図り、政策形成機能の強化とその活用に努めなければならない。

(議員の責務)

第9条 議会議員は、市民の信託にこたえ、誠実に職務を遂行するとともに議会の責務を遂行するため、自己の研さんに努めなければならない。

第4章 行政機関

(行政機関の責務)

第10条 行政機関は、法令で定めるところにより、条例、予算、その他議会の議決に基づく事務及び法令等に基づく事務を誠実に管理し、執行しなければならない。

2 行政機関は、個人情報の厳格な保護を前提とした積極的な情報の公開及び提供を推進し、透明性を確保した公正で適正な行政活動を行うとともに、その説明責任を果たさなければならない。

(市長の責務)

第11条 市長は、市の代表者として市の事務を管理し、これを執行する。

2 市長は、市民の信託にこたえ、この条例に基づき、公正かつ誠実に市政を執行しなければならない。

(職員の責務)

第12条 職員は、全体の奉仕者として、公正、誠実かつ効率的に職務を遂行しなければならない。

2 職員は、地域の課題に適切に対応するとともに、職務に必要な知識、技能等の向上に努めなければならない。

(法務政策)

第13条 行政機関は、市民の要望や地域課題に対応するため、自らの責任において法令解釈を行い、政策形成できるよう法務体制を充実し、条例、規則等の整備を積極的に行わなければならない。

(人事政策)

第14条 市長は、職員と組織の能力が最大限に発揮できるよう、職員を適切に指揮監督し、知識や能力を持った職員の育成並びに適正な人事評価及び配置に努めなければならない。

(公益通報)

第15条 市長は、法令で定めるところにより、職員の公益通報に関する市政運営上の違法行為及び公益の損失を防止するよう努めなければならない。

(財政運営)

第16条 市長は、最小の経費で最大の効果をあげられるよう、健全で効率的な財政運営を行わなければならない。

2 市長は、市民負担のあり方や市有財産の有効活用等を検討するなど自主財源の確保と財源調達等の工夫をし、財政基盤の強化に努めなければならない。

3 市長は、予算の執行状況等財政に関する状況を市民に分かりやすく公表しなければならない。

(意見等への対応)

第17条 行政機関は、市民から意見、要望、苦情等があったときは、速やかに事実関係を調査し、誠実に答えるよう努めなければならない。

(行政評価)

第18条 行政機関は、効率的かつ効果的な行政活動を進めるため、常に総合計画等の重要な計画の目標及び成果を明らかにするとともに、その達成度等を適切に評価し、効果的な事業の選択及び質の向上並びに財源、人員等の効率的活用を図らなければならない。

(監査)

第19条 監査委員は、市の財務等に係る監査を行うに当たり、事務事業の適法性のほか有効性及び効率性の評価を踏まえた監査を行わなければならない。

第5章 情報の共有

(情報共有の推進)

第20条 行政機関は、第5条に規定する市民の知る権利を保障し、市政に関する情報を積極的に提供するとともに、市政運営に必要な情報の収集及び管理を行い、市民との情報共有に努めなければならない。

(個人情報の保護)

第21条 行政機関は、別に条例で定めるところにより、個人の権利及び利益が侵害されることのないよう個人情報の収集、利用、提供、管理等を厳正に行わなければならない。

第6章 参画及び協働

(参画の保障)

第22条 市民は、行政機関における政策形成、実施過程及び評価へ参画をすることができる。

2 行政機関は、第5条に規定する市民のまちづくりに参画する権利を保障するため、多様な市民参画制度を整備し、積極的な運用を図らなければならない。

(参画の形態)

第23条 行政機関は、別に定めるところにより、前条第1項の規定による参画する機会として次の各号に掲げる方法のうち事案に応じて必要なものを用いるものとする。

(1) 審議会、懇談会等への公募委員の募集

(2) 説明会及び対話集会(タウンミーティング)の開催

(3) 意見公募(パブリックコメント等)、アンケート調査等の実施

2 行政機関は、前項第2号及び第3号に規定する説明会、対話集会、意見公募、アンケート調査等で提示された意見には、原則として回答し、公表するように努めなければならない。

(住民投票)

第24条 市長は、市政に係る重要事項について広く住民の意思を確認するため、必要に応じて住民投票の制度を設けることができる。

2 住民投票を行う場合は、その事案ごとに投票権者等の住民投票の実施に必要な事項及び投票結果の取扱い等を規定した条例を議会の議決を経て別に定める。

(住民投票条例の直接請求)

第25条 住民のうち選挙権を有する者は、地方自治法第74条の規定により、その総数の50分の1以上の連署をもって住民投票を規定した条例の制定を市長に請求することができる。

(協働の推進)

第26条 行政機関は、地域の課題を解決するため、自立的に活動する市民の自主性を尊重し、対等な立場で協働によるまちづくりを推進する。

2 行政機関は、市民がまちづくりの主体として、より良い活動が行える環境を整備し、まちづくり活動を促進するための支援に努めなければならない。

第7章 市民自治活動

(市民自治活動の推進)

第27条 市民は、安心して暮らし続けられる豊かなまちづくりの活動に自主的に参画し、相互に助け合い、地域課題の解決に向けて協力して行動するものとする。

2 豊かなまちづくりの活動は、公共の福祉の増進に寄与することを目的とし、自主的に組織されたまちづくり団体が議会、行政機関その他の団体とそれぞれの特性を理解し、互いに尊重し合い、協働して行うものとする。

3 行政機関は、多様なまちづくり団体が自発的かつ自主的に公共的課題の解決、公共的サービスの提供等に取り組めるよう適切な措置を講じ、必要な支援を行わなければならない。

(地域コミュニティの推進)

第28条 市民は、地域社会における良好な環境の維持及び増進のため、自主的に自治会等の地域コミュニティの活動に参画し、地域課題の解決に努めるものとする。

2 行政機関は、地域コミュニティの果たす役割を尊重し、その活動を推進するために必要な支援を行わなければならない。

(市民自治活動の制度化)

第29条 行政機関と自治会等は、第5条に規定する権利を保障するための一つとして、自ら地域の課題等を話合い、解決できるよう、協働によるまちづくりを実践する制度を整備しなければならない。

第8章 他の団体及び関係機関との連携

(他の団体及び関係機関との連携)

第30条 市は、国及び三重県と対等な立場で連携及び協力し、自治の発展のため、適切な関係を構築するものとする。

2 市は、効率的な自治体運営のため、環境の保全、防災、観光等広域的な課題に取り組むため、他の自治体と積極的に連携及び協力するものとする。

第9章 条例の実効性を確保する仕組み

(まちづくり基本条例推進委員会の設置)

第31条 市長は、市民自治をより推進するため、この条例の運用状況を把握し、適切な運用を図るため志摩市まちづくり基本条例推進委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

2 前項に規定する委員会の設置に関し必要な事項は、市長が別に定める。

(この条例の検討及び見直し)

第32条 市長は、この条例の施行後4年を超えない期間ごとに、社会及び経済情勢の変化に対応しているか検討のうえ、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

(委任)

第33条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、平成20年8月1日から施行する。

志摩市まちづくり基本条例

平成20年6月30日 条例第22号

(平成20年8月1日施行)