○鶴岡市障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例
令和2年3月25日
条例第11号
全ての人は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重され、地域社会で自らの個性と能力を発揮しながら心豊かに生活する権利を有している。
近年、障害者を取り巻く法整備が進められているが、今なお、障害のある人は、日常生活や社会生活において、周囲の理解不足や偏見、誤解、障害への配慮が不十分な社会の仕組みなど様々な社会的な障壁に直面し、それによって生きづらさを感じており、社会への参加や活動が十分に行えていない実情にある。
誰もが安心して暮らし続けられるまちづくりを進めていくには、市民一人ひとりが、障害を理由とする差別を身近な問題として深く受け止め、障害及び障害のある人に対する理解を深めるとともに、障害のある人の性別、年齢及び障害の状態に応じた適切な配慮について学び、実践していくことが重要である。
このような認識の下、市、市民及び事業者が一体となって、障害を理由とする差別の解消の推進に積極的に取り組み、全ての市民が、障害の有無にかかわらず、相互に多様な人格と個性を尊重し合いながら、共に生きることのできる共生社会の実現を目指すことを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消の推進について、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消を推進するために基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)による施策と相まって、障害のある人もない人も共に安心して暮らしやすい共生社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 社会的障壁 障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(3) 障害を理由とする差別 正当な理由なく、障害又は障害に関連する事由を理由として、排除、制限等の不当な差別的取扱いをすること又は合理的な配慮を提供しないことをいう。
(4) 合理的な配慮 障害者の性別、年齢、障害の状態等に応じて社会的障壁を取り除くための必要かつ適切な変更又は調整を過重な負担の生じない範囲で行うことをいう。
(基本理念)
第3条 障害者に対する障害を理由とする差別の解消の推進は、次に掲げる事項(以下「基本理念」という。)を旨として図られなければならない。
(1) 全ての市民は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること。
(2) 全ての障害者は、自ら選択した場所に居住し、その地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
(3) 全ての障害者は、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されること。
(4) 市、市民及び事業者は、社会的障壁を取り除き、共生社会を実現させるため、互いに協力して障害及び障害者に対する理解の促進に取り組むこと。
(市の責務)
第4条 市は、基本理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進を図るために必要な施策を計画し、及び実施する責務を有する。
2 市は、市民及び事業者等と協力して障害を理由とする差別の解消の推進に取り組まなければならない。
3 市は、第1項の規定により計画した施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(市民の役割等)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、障害及び障害者に対する理解を深めるとともに、市が障害を理由とする差別の解消の推進のために実施する施策に協力するよう努めるものとする。
2 障害者及び障害者の家族、後見人、保佐人、補助人その他障害者の支援者(以下「障害者の保護者等」という。)は、合理的な配慮が必要なときは、その内容について周囲に伝えるよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、障害及び障害者に対する理解を深め、市が障害を理由とする差別の解消の推進のために実施する施策に協力するとともに、障害者との対話を行いながら、合理的な配慮をするよう努めるものとする。
(市における障害を理由とする差別の禁止)
第7条 市は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。
2 市は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合には、障害者の権利利益を侵害することのないよう、合理的な配慮をしなければならない。
3 市は、不当な差別的取扱いに該当しない正当な理由がある場合又は過重な負担となるため合理的な配慮をすることができない場合には、障害者にその内容を説明し、理解を得るよう努めるものとする。
(事業者における障害を理由とする差別の禁止)
第8条 事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。
2 事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合には、障害者の権利利益を侵害することのないよう、合理的な配慮をしなければならない。
(一部改正〔令和6年条例7号〕)
(広報、啓発等)
第9条 市は、市民及び事業者が障害及び障害者に関する正しい理解を深め、その特性に応じた適切な意思疎通を通して共に生き支え合うまちとなるよう、広報、啓発その他の必要な施策を実施しなければならない。
(相談及び対応)
第10条 障害者及び障害者の保護者等は、障害を理由とする差別に関し、市長に相談することができる。
2 市長は、前項の規定による相談を受けたときは、次に掲げる事務を行うものとする。
(1) 障害者又は障害者の保護者等への事実の確認
(2) 障害者又は障害者の保護者等への必要な助言及び情報提供
(3) 関係行政機関との連絡調整
3 市長は、前項各号に掲げる事務の全部又は一部を、市が障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第77条第1項第3号に掲げる事業の実施を委託している者に委託することができる。
(助言又はあっせんの求め)
第11条 障害者は、障害を理由とする差別を受けたときは、市長に申し出て、当該障害を理由とする差別に該当する事案(以下「差別事案」という。)を解決するため、市長が障害者、障害者の保護者等又は障害を理由とする差別をしたとされる者(以下「当事者等」という。)に必要な助言をすること又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことを求めることができる。
2 障害者の保護者等は、前項の規定による申出をすることができる。ただし、当該申出が当該障害者の意思に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。
(1) 当該差別事案に係る行政庁の処分その他の行為又は不作為について、行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令の規定により審査請求その他の不服申立てをすることができるとき。
(2) 当該差別事案が発生した日(継続的な行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているとき(その期間内に申出ができなかったことについてやむを得ない理由があるときを除く。)。
(3) 当該差別事案が、現に犯罪の捜査の対象となっているとき。
(助言又はあっせん)
第13条 市長は、前条の調査の結果、必要があると認めるときは、当事者等に対し、必要な助言をし、又は当事者等の間に立ち、差別事案の解決に資するあっせん案の提示を行うことができる。
2 市長は、前項のあっせん案を作成しようとするときは、当事者等の意見の聴取を行わなければならない。
4 当事者等は、第1項のあっせん案を受諾したときは、その旨を記載した書面を市長に提出しなければならない。
(調整委員会の設置)
第14条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定による市長の附属機関として、鶴岡市障害者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
(調整委員会の所掌事項)
第15条 調整委員会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。
(1) 差別事案に対する助言又はあっせん案の提示に関する事項
(2) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する事項
(調整委員会の組織等)
第16条 調整委員会は、委員10人以内で組織する。
2 委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱する。
(1) 国又は地方公共団体の機関の職員であって、福祉、保健、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの
(2) 特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他障害者に係る公益の増進に資することを目的とする団体に属する者
(3) 障害者又はその介護若しくは支援をする者
(4) 障害者に係る福祉又は保健に関し識見を有する者
3 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
5 調整委員会に委員長を置き、委員の互選により選任する。
6 委員長は、会務を総理し、調整委員会を代表する。
7 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、あらかじめ委員長が指名する委員がその職務を代理する。
(調整委員会の会議)
第17条 調整委員会の会議は、委員長が招集し、会議の議長となる。
2 調整委員会は、委員の過半数の出席がなければ、会議を開くことができない。
3 調整委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
4 調整委員会は、必要があると認めるときは、委員以外の者に対して会議への出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、又は必要な資料の提供を求めることができる。
(調整委員会の庶務)
第18条 調整委員会の庶務は、健康福祉部において処理する。
(調整委員会の運営に関する事項についての委任)
第19条 この条例に定めるもののほか、調整委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が調整委員会に諮って定める。
(協議の場の設置)
第20条 障害を理由とする差別の解消の推進に向けた施策を効果的かつ円滑に行うため、障害者差別解消法第17条第1項の規定に基づき、障害者関係団体、福祉関係団体、就労支援機関、教育機関その他の関係機関による協議の場を設置する。
(委任)
第21条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和2年4月1日から施行する。
(検討)
2 市長は、障害者差別解消法附則第7条の規定による国の検討に併せて、社会情勢の変化等を勘案し、この条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の見直しを行うものとする。
附則(令和6年3月21日条例第7号)
この条例は、令和6年4月1日から施行する。