○障がいのある人もない人も心豊かに暮らせる臼杵市づくり条例

令和2年3月25日

条例第10号

目次

前文

第1章 総則(第1条~第5条)

第2章 障がいのある人に対する差別等の禁止(第6条・第7条)

第3章 共生社会実現に向けた取組(第8条~第20条)

第4章 臼杵市障がい者差別解消調整委員会(第21条~第26条)

第5章 障がいを理由とする差別の解消を図るための施策(第27条~第31条)

第6章 雑則(第32条)

附則

前文

全ての市民がその人らしく生活し、住み慣れた地域で共に支え合いながら、心豊かに暮らすことのできる社会の実現は、私たち市民の共通の願いである。

しかしながら、障がいのある人やその家族は、障がいに関する理解の不足から生じる誤解や偏見により、依然として障がいを理由とする不利益な扱いを受けている。また、自らの意思による選択が認められず、諦めなければならない現実、障がいのある人やその家族が親亡き後の生活に思い悩む等、社会の中で大きな不安を感じている。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)においては、障がいを理由とする差別の解消を推進し、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すこととされている。

本市においても、障がいのある人に対する差別の解消及び障がいのある人の権利を尊重し、心豊かに暮らせるまちづくりに向けて、障がい及び障がいのある人とその家族に対する市民の理解を深める取組並びに障がいのある人の社会参加に対する支援を更に充実させる必要がある。

ここに、本市は、障がいのある人の権利の擁護等に関する理念が全ての市民に浸透し、障がいのある人もない人も同じ地域社会の一員として、誰もが互いを尊重し、支え合い、いつまでも安全に安心して心豊かに暮らせる臼杵市を目指して、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、障がい及び障がいのある人とその家族に対する市民の理解を深め、障がいのある人に対する差別をなくすための取組について、基本理念を定め、市、市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、障がいを理由とする差別の解消を推進し、もって障がいのある人もない人も健やかで安らかに暮らすことのできる共生社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい及び難病等(以下「障がい」と総称する。)のある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。

(2) 障がいを理由とする差別 正当な理由がなく、障がい又は障がいに関連する事由を理由として、障がいのない人と異なる不利益な取扱いをすることにより、障がいのある人の権利利益を侵害することをいう。

(3) 社会的障壁 障がいのある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(4) 合理的配慮 障がいのある人の性別、年齢及び障がいの状態に応じた社会的障壁の除去のため、その実施に伴う負担が過重でない場合に、障がいのある人にとって必要、かつ、合理的な現状の変更又は調整を行うことをいう。

(5) 市民 市内に居住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。

(6) 事業者 市内において商業その他の事業を行う者をいう。

(基本理念)

第3条 共生社会の実現に向けた取組は、次に掲げる事項を基本として行われなければならない。

(1) 障がいのある人もない人も、性別又は年齢にかかわらず、かけがえのない個人としての権利が平等に尊重されること。

(2) 障がいのある人が、障がいを理由とする差別によって、その権利利益を侵害されないこと。

(3) 障がいのある人が、住み慣れた地域において、安心して暮らしていくことができるよう、必要な合理的配慮がされること。

(4) 市民一人一人が、障がい及び障がいのある人とその家族に関心を持ち、理解を深めること。

(5) 誰もが互いに意思を伝え合い理解し合えるよう、障がいのある人が、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段について選択の機会が確保されるとともに、情報の取得及び意思疎通のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

(市の責務)

第4条 市は、前条の基本理念に基づき、障がい及び障がいのある人とその家族に対する市民及び事業者の理解を深め、障がいのある人の権利の擁護及び障がいを理由とする差別の解消に向けて、必要な施策を策定し、及び実施しなければならない。

2 市は、前項の施策を策定し、及び実施するに当たり、市民、事業者、大分県その他の地方公共団体と連携し、協力を図るものとする。

(市民及び事業者の責務)

第5条 市民及び事業者は、基本理念に基づき、障がい及び障がいのある人とその家族に対する理解を深め、障がいを理由とする差別の解消に向けた施策に協力するよう努めなけらばならない。

2 全ての市民は、障がいを理由とする差別は直接的に行われるだけでなく、間接的に行われることがあることを理解しなければならない。

第2章 障がいのある人に対する差別等の禁止

(差別等の禁止)

第6条 全ての市民は、障がいのある人及びその家族に対し、障がいを理由とする差別をする行為その他権利利益を侵害する行為をしてはならない。

2 事業者は、障がいのある人に対してサービスを提供する場合において、正当な理由なく、障がいを理由として、サービスの提供を拒否し、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをしてはならない。

(合理的配慮)

第7条 市は、次の行政サービスを行う場合には、合理的配慮をしなければならない。

(1) 教育又は療育その他の福祉サービスを提供するとき。

(2) 不特定、かつ、多数の者が利用する施設(公共交通機関を含む。)を利用に供するとき。

(3) 情報を収集、利用及び提供するとき。

(4) 災害時又は緊急時に援護を行うとき。

(5) 雇用するとき。

(6) 前各号に掲げるもののほか、事務又は事業を行うに当たり、合理的配慮が必要と認められるとき。

2 市民及び事業者は、次のサービスを行う場合には、合理的配慮をするよう努めなければならない。

(1) 医療を提供するとき。

(2) 商品の販売、不動産の取引又はサービスの提供をするとき。

(3) 前2号のほか、前項各号に掲げるサービスを提供するとき。

第3章 共生社会実現に向けた取組

(広報その他の啓発活動の推進)

第8条 市は、障がい及び障がいのある人とその家族に対する市民の理解を深めるための広報その他の啓発活動を推進するものとする。

(障がいのある人とない人との交流の推進)

第9条 市は、障がいのある人とない人との相互理解を深めるために障がいのある人とない人が交流することのできるよう必要な取組を行うものとする。

(障がい及び障がいのある人に関する教育の推進)

第10条 市は、学校において、児童及び生徒が障がい及び障がいのある人に関する正しい知識を持つための教育が行われるよう努めるものとする。

(参画の推進)

第11条 市は、障がい及び障がいのある人が市政に関する政策の参画を推進するため、政策の企画、立案等に当たっては、障がいのある人に対する適切な情報提供及び障がいのある人からの意見の聴取を行うよう努めるものとする。

(自立支援の環境づくり)

第12条 市は、障がいのある人が必要な支援を受けながら、自らの意思により選択し、自分らしく生きることができるために必要な取組を行うものとする。

(社会参加への環境づくり)

第13条 市は、障がいのある人が積極的に社会に参加し、地域の一員として、芸術、文化、スポーツ等を楽しみ、心豊かに生活することができるよう必要な取組を行うものとする。

(就労及び雇用への支援等)

第14条 市は、障がいのある人の就労が促進されるよう、障がいのある人が就労するために必要な相談及び支援を行うものとする。

2 市は、関係機関と連携し、事業者が障がいのある人について個々の障がいの特性を理解し、雇用の機会を広げるために必要な取組を行うものとする。

(親なき後等における生活維持のための支援)

第15条 市は、親その他の者で障がいのある人の生活を支えていた者が死亡若しくは高齢化により支えることができなくなった場合又は在宅で生活する障がいのある人が高齢化若しくは重度化した場合においても、地域での生活が継続できるよう必要な取組を行うものとする。

(情報の取得及び意思疎通における支援)

第16条 市は、障がいのある人が、情報の取得及び意思疎通が容易にできるようにするために必要な支援を行うものとする。

(意思疎通手段の普及等)

第17条 市は、点字、平易な表現等の障がいの特性に応じた意思疎通手段の普及を図るものとする。

2 市は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進及び普及を図るものとする。

(意思疎通支援者の養成等)

第18条 市は、手話、点字その他の方法により障がいのある人の情報の取得及び意思疎通を支援する者の養成及び技術の向上のために必要な取組を行うものとする。

(障がいのある人に配慮した情報提供)

第19条 市は、障がいのある人が情報を速やかに取得することができるよう、手話、点字、平易な表現等の障がいの特性に配慮した手段及び書面による情報提供に努めるものとする。

(災害時等の情報伝達手段の確保)

第20条 市は、関係機関と連携して、災害時又は緊急時に障がいのある人が必要な情報を取得し、又は発信できるよう、多様な情報伝達手段を確保するよう努めるものとする。

第4章 臼杵市障がい者差別解消調整委員会

(設置)

第21条 この条例の規定によりその権限に属させられた事項を処理するため、臼杵市障がい者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。

(委員)

第22条 委員は、障がいを理由とする差別の解消等に関して、高い識見を有する者であって、次の各号のいずれかに該当する者のうちから、市長が委嘱する。

(1) 障がいのある人又はその家族

(2) 福祉、医療、雇用、教育等に関する事業に従事する者

(3) 障がい者福祉に関し学識経験を有する者

(4) 障がい者団体に属する者

(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める者

2 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 委員は、再任されることができる。

4 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

5 市長は、委員が前項前段の規定に違反したことが判明したとき、又は職務の遂行に必要な適格性を欠くと認めるときは、その委員を罷免することができる。

(委員長及び副委員長)

第23条 調整委員会に委員長及び副委員長を置き、委員の互選によってこれを定める。

2 委員長は、会務を総理し、調整委員会を代表する。

3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、その職務を代理する。

(会議)

第24条 調整委員会の会議は、委員長が招集し、委員長が会議の議長となる。

2 調整委員会の会議は、委員の半数以上が出席しなければ開くことができない。

3 調整委員会の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

4 委員長は、必要があると認めるときは、委員以外の者を会議に出席させ、説明又は意見を求めることができる。

(庶務)

第25条 調整委員会の庶務は、福祉課において処理する。

(調整委員会の運営)

第26条 この章に定めるもののほか、調整委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が調整委員会に諮って定める。

第5章 障がいを理由とする差別の解消を図るための施策

(相談)

第27条 障がいのある人又はその家族その他関係者(以下「障がいのある人等」という。)は、市に対し、障がいを理由とする差別に関する相談をすることができる。

2 市は、障がいのある人等から前項の規定による相談を受けたときは、必要に応じて次に掲げる対応を行うものとする。

(1) 障がいのある人等及び当該相談に係る事案(以下「相談事案」という。)の関係者への事実の確認及び調査

(2) 障がいのある人等及び相談事案の関係者への相談事案の解決に必要な説明及び助言

(3) 関係行政機関への通知

(4) 前3号に掲げるもののほか、障がいを理由とする差別を解消するために必要な対応

(あっせんの申立て)

第28条 前条第1項の規定により相談をした障がいのある人等は、同条第2項の規定による対応が行われても、なお相談事案が解決されないときは、市長に対し、その解決のために必要なあっせんの申立てをすることができる。ただし、当該障がいのある人の家族その他関係者が申立てをしようとする場合において、当該申立てをすることが当該障がいのある人の意に反することが明らかであるときは、この限りでない。

2 あっせんの申立ては、行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令に基づく不服申立ての手続をすることができる行政庁の処分については、することができない。

(あっせん)

第29条 市長は、前条第1項の申立てに基づきあっせんをしようとするときは、調整委員会に諮問することができる。

2 市長は、調整委員会から諮問に対する答申を受け、あっせんを行うことが適当であると認めた場合は、当該申立てに係る相談事案の関係者に対し、あっせんを行うものとする。

(勧告)

第30条 市長は、前条第2項の規定によりあっせんを行った場合において、障がいを理由とする差別を行ったと認められる者が当該あっせんに従わないときは、当該あっせんに従うよう勧告することができる。

(公表)

第31条 市長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。

2 市長は、前項の規定による公表をしようとする場合には、あらかじめ、当該公表されるべき者に対しその理由を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。

第6章 雑則

(委任)

第32条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

障がいのある人もない人も心豊かに暮らせる臼杵市づくり条例

令和2年3月25日 条例第10号

(令和2年4月1日施行)

体系情報
第8編 生/第1章 社会福祉/第5節 障害者福祉
沿革情報
令和2年3月25日 条例第10号