○大田区手話言語及び障害者の意思疎通に関する条例
令和2年9月30日
条例第52号
手話は、障害者の権利に関する条約や障害者基本法により、非音声の言語として位置付けられています。手話は、手や指、体の動き、顔の表情を組み合わせて、視覚的に表現される独自の文法体系をもつ言語であり、ろう者及び手話を必要としている人にとっては、文化を創造し、日常生活や社会生活を営むために大切に受け継がれてきた言語です。
また、障害者基本法において、「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」が求められています。
大田区は、手話が言語であることの区民及び事業者への理解を促進するとともに、それぞれの障害の特性に応じた意思疎通手段の利用を促進することにより、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現を目指して、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であることの理解の促進及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関し、基本理念を定め、大田区(以下「区」という。)の責務並びに区民及び事業者の役割を明らかにすることにより、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 障害者 障害者基本法(昭和45年法律第84号。以下「法」という。)に規定する身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) ろう者 手話を言語として、日常生活又は社会生活を営む者をいう。
(3) 手話を必要としている人 中途失聴者、難聴者及び手話を意思疎通のための手段として利用している者をいう。
(4) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(5) 区民 区内に在住し、在勤し、又は在学する者をいう。
(6) 事業者 区内で事業を行う個人、法人及びこれらの者で構成する団体をいう。
(7) 意思疎通手段 音声(読上げを含む。)及び手話、触手話、空書、要約筆記、手話通訳、筆談、点字、口話、拡大文字、平易な表現、サイン、絵図及び記号、意思伝達装置、その他の障害者が日常生活及び社会生活において情報を取得し、及びコミュニケーションを行う際に障害の特性に応じて必要な手段として利用されるものをいう。
(8) 合理的配慮 障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
(基本理念)
第3条 手話が言語であることの理解の促進及び手話の普及並びに障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進は、次に掲げる事項を基本理念として行う。
(1) 手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であって、言語であると認識すること。
(2) 障害の有無にかかわらず、互いを理解し、その人格及び個性を尊重すること。
(3) 障害の特性に応じた意思疎通手段の選択の機会の確保は、障害者が意思疎通を円滑に図ることができるようにすることを基本として行うこと。
(区の責務)
第4条 区は、前条に定める基本理念に基づき、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1) 手話が言語であることの理解の促進及び手話の普及に関する施策
(2) 障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関する施策
(3) 前2号に掲げるもののほか、区長が必要と認める施策
2 区は、前項の施策の推進に当たっては、法第11条第3項の規定により区が策定する計画との整合性を図るものとする。
(区民の役割)
第5条 区民は、手話が言語であること及び障害者の意思疎通に関する理解を深めるとともに、前条の規定により区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、手話が言語であること及び障害者の意思疎通に関する理解を深め、第4条の規定により区が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、事業を行うに当たり、障害者が障害の特性に応じた意思疎通手段を利用するための合理的配慮をするよう努めるものとする。
(委任)
第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、区長が別に定める。
付則
この条例は、公布の日から施行する。