○越前市みんなの心をつなぐ手話言語条例

令和2年3月19日

条例第6号

ろう者とは、聴覚障がい者のうち、社会生活において手話を母語とする者又は手話を獲得しようとする者を指し、ろう者はものごとを考えたり、気持ちを伝えたりするときに手話を使って、思考と意思疎通を行います。手話とは、音声言語である日本語と異なる言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語です。手話は、ろう者が生きる上で必要かつ大切な言語です。

しかし、手話が言語として社会的に認められない期間が長く続きました。そのことで、ろう者は、社会から排除され、不当な差別も受けてきました。ろう者による当事者の権利を守る運動を経て、ようやく、国連においては障害者の権利に関する条約で手話は言語であると明確になり、日本でも障害者基本法において手話は言語であると位置づけられました。しかしながら、身近な暮らしの中では、手話を言語として認識されない場面がいまだ見られます。ろう者とろう者以外の者の間に生まれる情報取得における障壁が、必然とろう者を孤立させてしまうのです。

情報取得における障壁を取り除くには、手話が言語であることの理解や認識を広めていくことが大切です。また、手話が特別なことではないことが実感できるよう、生まれた時から手話に触れる環境を整えていくことが大切です。

ここに、言語である手話を広めることで、思いやりの心をもってお互いの気持ちを理解し、越前市民が安心して生活できる越前市を目指していくために条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は障害者の権利に関する条約第2条及び障害者基本法(昭和45年法律第84号)第3条第3項において手話が言語であると位置づけられたことを踏まえ、手話は言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民、ろう者及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もってろう者とろう者以外の者が相互に理解し、ろう者が安心して生活できる地域共生社会を実現することを目的とします。

(基本理念)

第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、ろう者が手話でコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、ろう者とろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重することを基本として行われなければなりません。

(市の責務)

第3条 市は、手話への理解の促進及び手話の普及を図り、手話を使いやすい環境の整備をするために必要な施策を推進します。

2 前項の場合において、市は、関係団体等を支援し、及び協力して推進するものとします。

(市民の役割)

第4条 市民は、地域社会で共に暮らす一人として、手話への理解を深め、手話でコミュニケーションを図ることにより、ろう者とろう者以外の者が共に暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めます。

(ろう者の役割)

第5条 ろう者は、手話に関する市の施策に協力するとともに、手話の意義及び基本理念に対する市民の理解の促進及び手話の普及に努めます。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、ろう者が利用しやすい環境に配慮し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めます。

(基本推進方針)

第7条 市は、あらかじめ、ろう者及び手話に関わる者の意見を聴取し、手話への理解の促進及び手話の普及のために基本推進方針を策定します。

2 市は、基本推進方針と市が別に定める他の計画との整合性を図るものとします。

3 基本推進方針においては、次の事項を定めるものとします。

(1) 子どもから大人まで手話への理解の促進及び手話の普及を図るための施策に関すること。

(2) 手話による情報取得及び手話を使いやすい環境づくりに関すること。

(3) 手話による意思疎通支援に関すること。

(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項

(施策の推進)

第8条 市は、基本推進方針に基づき施策を定め、これを総合的かつ計画的に実施するものとします。

2 市は、施策の実施状況について検証を行い必要な見直しを行うものとし、ろう者、手話に関わる者その他の関係者の意見を反映させるための会議を開催します。

3 前項の会議の運営に関し必要な事項は、市長が別に定めます。

(財政措置)

第9条 市は、手話に関する施策を積極的に推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めます。

(検討)

第10条 市は、この条例の施行後、ろう者、関係者及び関係団体より施策について要望があった場合には、必要に応じて、施策の施行状況について調査を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとします。

(委任)

第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。

この条例は、令和2年4月1日から施行します。

越前市みんなの心をつなぐ手話言語条例

令和2年3月19日 条例第6号

(令和2年4月1日施行)