○岐阜市地下水保全条例
平成14年6月28日
条例第26号
目次
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 地下水のかん養(第7条―第10条)
第3章 地下水の利用(第11条―第23条)
第4章 汚染の防止(第24条―第31条)
第5章 地下水汚染対策本部(第32条)
第6章 雑則(第33条―第41条)
第7章 公表及び罰則(第42条―第47条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、清流長良川及び豊かな森林に支えられ、市民にとって貴重かつ限りある資源である本市の地下水を汚染から守り、そのかん養を図ることによって、自然環境の保全及び水循環の安定に寄与し、並びに市民の健康及び生活環境を保護するとともに、秩序ある事業活動の促進を図ることを目的とする。
(1) 地下水 水循環の一つの過程において、市域の地表面下に存在する水(温泉法(昭和23年法律第125号)第2条第1項に規定する温泉及び鉱業法(昭和25年法律第289号)第5条に規定する鉱業権に基づいて掘採する同法第3条第1項の可燃性天然ガスを溶存する地下水を除く。)をいう。
(2) 土壌 地盤を構成している物質で、かつ、地下水以外の固体及び気体の総体をいう。
(3) 対象物質 トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1・1・1―トリクロロエタンその他の人の健康又は生活環境を害するおそれがある物質として規則で定めるものをいう。
(4) 使用事業者 対象物質を使用して事業を行う者(対象物質を製造する者を含む。)をいう。
(5) 使用事業場 対象物質を使用して物の製造(対象物質の製造を含む。)、加工、洗浄、検査、保管その他これらに類する行為を行う工場及び事業場をいう。
(6) 汚染 地下水又は土壌について、対象物質の濃度が規則で定める基準(以下「汚染基準」という。)を超えることをいう。
(7) 地下水等 地下水及びその汚染を防止するために保全が必要となる土壌の総体をいう。
(8) 地下水影響工事等 建築物の建築その他の工事及び砂利採取で、地下水の水質又は水位に影響を及ぼすおそれがあるものをいう。
(9) 工事施工者 工事施工主の依頼を受け、地下水影響工事等を行おうとする者又は地下水影響工事等を行っている者(下請負人を含む。)をいう。
(10) 汚濁 水質について、規則で定める基準に適合しないことをいう。
(11) 揚水設備 動力により地下水を揚水する設備で、その吐出口の内径(吐出口が2つ以上あるときは、それらの内径の合計とする。以下同じ。)及び能力が規則で定める基準以上のものをいう。
(12) 揚水設備設置者 揚水設備を所有又は管理している者をいう。
(市の責務)
第3条 市は、地下水等の保全に関する施策を策定し、これを実施しなければならない。
(市民の責務)
第4条 市民は、地下水等の保全に努めるとともに、市が実施する地下水等の保全に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、地下水等の保全に努めるとともに、市が実施する地下水等の保全に関する施策に協力しなければならない。
(地下水を揚水する者の責務)
第6条 地下水を揚水する者は、地下水をかん養し、かつ、地下水等の保全に努めるとともに、市が実施する地下水等の保全に関する施策に協力しなければならない。
2 地下水を揚水する者は、自らの責任において地下水の適正な管理を実施するよう努めなければならない。
第2章 地下水のかん養
(森林の保全)
第7条 市長は、水源保護のため、雨水の保水能力が高い森林の保護育成に努めるものとする。
(雨水の地下浸透の促進)
第8条 市長は、道路等の整備に当たっては、雨水を浸透させる技術の導入に努め、市の公園及び公共施設の敷地については、雨水の浸透性の保持に努めるものとする。
2 事業者及び地下水を揚水する者は、その敷地内において、緑化の促進及び雨水の浸透性の保持に努めるものとする。
3 市民は、その宅地内において、緑化の促進及び雨水の浸透性の保持に努めるものとする。
(水辺の整備)
第9条 市長は、河川改修等水辺の整備に当たっては、雨水の保水及び地下水のかん養に配慮するものとする。
(国及び県の事業)
第10条 市長は、国及び県が実施する事業に当たっては、国及び県に対し、雨水の保水及び地下水のかん養について協力を要請するものとする。
第3章 地下水の利用
(揚水設備設置の届出)
第11条 揚水設備を設置しようとする者は、次に掲げる事項を市長に届け出なければならない。
(1) 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
(2) 揚水設備を設置する場所
(3) 揚水設備の揚水機の吐出口の内径及び能力
(4) 1日当たりの最大揚水予定量及び年間揚水予定日数
(5) 揚水設備により揚水する地下水の用途
(6) 揚水設備のストレーナーの位置
(7) 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項
2 前項の規定による届出には、揚水設備の設置の場所を示す図面その他規則で定める書類を添付しなければならない。
(実施の制限)
第13条 第11条第1項又は前条第1項の規定による届出をした者は、当該届出が受け付けられた日から30日を経過した後でなければ、それぞれ、当該届出に係る揚水設備を設置し、又は当該届出に係る第11条第1項第3号から第7号までに掲げる事項の変更をしてはならない。
(廃止等の届出)
第15条 第11条第1項の規定による届出をした者は、揚水設備の使用を停止し、又は揚水設備を撤去したときは、その日から30日以内に、その旨を市長に届け出なければならない。
(地下水揚水量の報告)
第16条 第11条第1項の規定による届出をした者は、年間(4月1日から翌年3月31日までの期間をいう。)に揚水した地下水量を市長に報告しなければならない。
(地位の承継等)
第17条 第11条第1項の規定による届出をした者から当該届出に係る揚水設備を譲り受け、又は借り受けた者は、当該設備に係る当該届出をした者の地位を承継する。
2 第11条第1項の規定による届出をした者について相続、合併又は分割(当該届出に係る揚水設備を承継させる場合に限る。)があったときは、相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該揚水設備を承継する法人は、当該設備に係る当該届出をした者の地位を承継する。
(地下水の効率的な利用)
第18条 地下水を揚水する者は、揚水した地下水の再生利用設備の設置、拡大等によって循環利用等を図り、地下水の効率的な利用に努めなければならない。
(地下水の利用制限)
第19条 市長は、地下水の異常渇水又は地盤沈下があると認めるときは、揚水設備設置者に対し、期間を定めて地下水の揚水の一時停止又は揚水量の上限(以下「揚水限度量」という。)を定めて揚水の制限を命ずることができる。
(地下水影響工事等の実施の届出)
第20条 工事施工者は、施工しようとする地下水影響工事等が規則で定めるものに該当するときは、当該地下水影響工事等の開始の日の7日前までに、次に掲げる事項を市長に届け出なければならない。
(1) 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
(2) 地下水影響工事等を伴う工事の目的に係る施設又は工作物の種類
(3) 地下水影響工事等の場所及び実施の期間
(4) 地下水影響工事等の場所の周辺地区の地下水の水質及び水位に対する配慮の方法
(5) 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項
2 前項の規定による届出には、当該地下水影響工事等の場所の付近の見取図その他規則で定める書類を添付しなければならない。
(地下水影響工事等による地下水への影響防止)
第21条 前条の規定による届出をすべき工事施工者は、当該地下水影響工事等により地下水の水質又は水位に影響を与えるおそれがあると認められるときは、あらかじめ次に掲げる措置を講ずるものとする。
(1) 地下水の水質又は水位に影響を与えるおそれがある区域に居住する住民に対する説明
(2) 地下水影響工事等が行われる場所の地下水位の調査
(3) 前2号に掲げるもののほか、規則で定める措置
2 工事施工者は、当該地下水影響工事等により地下水の水質又は水位に影響を与えたときは、速やかに次に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 地下水の水質又は水位に影響を与えた区域に居住する住民に対する説明及び協議
(2) 地下水の水質又は水位に影響を与えた区域内の地下水の水質検査
(3) 前2号に掲げるもののほか、規則で定める措置
3 工事施工者は、当該地下水影響工事等により生じた汚濁水を公共用水域(水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)第2条第1項に規定する公共用水域をいう。以下同じ。)へ排出する場合は、汚濁を解消してから排出しなければならない。
(公共用水域への影響に対する措置命令)
第23条 市長は、工事施工者が行い、又は行った地下水影響工事等が公共用水域の水質を汚濁させたと認めるときは、当該工事施工者に対し、期限を定めて汚濁を解消するための必要な措置を講ずるよう命ずることができる。
第4章 汚染の防止
(対象物質の使用量の削減等)
第24条 使用事業者は、対象物質の使用量の削減並びに使用事業場の施設の改善及び対象外の物質への転換に努めなければならない。
(地下浸透の防止)
第25条 使用事業者は、対象物質による地下水等の汚染を防止するため、対象物質を適正に管理しなければならない。
2 使用事業者は、対象物質が大気へ蒸発した後、地下へ浸透することによって地下水等が汚染されることを防止するため、対象物質の大気への蒸発を抑制するよう努めなければならない。
3 使用事業者は、対象物質が保管場所及び貯蔵施設から漏出することのないよう点検等を実施しなければならない。
(対象物質の自主管理)
第26条 使用事業者は、対象物質の搬入量及び搬出量に関する物質の収支を記録し、保存するものとする。
(自主検査等)
第27条 使用事業者は、使用事業場内の地下水等について、対象物質の濃度を定期的に測定(以下「自主検査」という。)し、その結果を保存するものとする。
2 自主検査の要領は、規則で定める。
3 使用事業者は、第1項の規定により実施した自主検査の結果が汚染基準を超えた場合は、その結果を直ちに市長に報告しなければならない。
4 使用事業場の敷地となっている土地の所有者その他当該土地の管理権限を有する者で、当該使用事業場の地下水等について対象物質の濃度を測定した者(使用事業者を除く。)は、対象物質の濃度が汚染基準を超えたことが明らかになった場合には、その結果を直ちに市長に報告しなければならない。
5 市長は、前項の規定により報告を受けた結果を当該報告に係る使用事業場の使用事業者に通知しなければならない。
6 使用事業者は、使用事業場内の地下水等について、対象物質の濃度が汚染基準を超えたことを知ったときは、その原因を究明し、地下水等の汚染の拡大を防止する措置又は汚染を予防する措置を講じなければならない。
7 使用事業者は、前項の措置を講じた場合は、その講じた措置の内容を速やかに市長に報告しなければならない。
(地位の承継)
第28条 使用事業者から使用事業場を譲り受け、又は借り受けた者は、当該使用事業場に係る当該使用事業者の地位を承継する。
2 使用事業者について相続、合併又は分割(使用事業場を承継させる場合に限る。)があったときは、相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により使用事業場を承継する法人は、当該使用事業場に係る当該使用事業者の地位を承継する。
(従業者の教育)
第29条 使用事業者は、その従業者に対し、対象物質に関する知識及び取扱方法について教育しなければならない。
(事故時の措置)
第30条 使用事業者は、使用事業場において、施設の破損、従業員等の過失その他の事故等により、対象物質による地下水等の汚染が生じ、又はそのおそれがあるときは、地下水等の汚染の拡大を防止する措置又は汚染を予防する措置を講じ、遅滞なくその事故の状況及び講じた措置の内容を市長に報告しなければならない。
第5章 地下水汚染対策本部
(地下水汚染対策本部の設置)
第32条 市長は、対象物質による地下水等の汚染が明らかになり、人の健康又は生活環境に被害を生ずるおそれがあり、緊急の対策を講ずる必要があると認めるときは、岐阜市地下水汚染対策本部(以下「対策本部」という。)を設置することができる。
2 対策本部は10人以内の委員により組織し、委員は市長が指名した職員をもって充てる。
3 対策本部の組織、運営その他必要な事項は、規則で定める。
第6章 雑則
(立入検査等)
第33条 市長は、この条例の規定を施行するため必要な限度において、使用事業者に対し、使用事業場の施設の状況その他の必要な事項の報告を求め、又はその職員に、使用事業場に立ち入り、使用事業場の施設、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 市長は、この条例の規定を施行するため必要な限度において、揚水設備設置者に対し、揚水設備の状況その他の必要な事項の報告を求め、又はその職員に、揚水設備が設置されている土地等に立ち入り、揚水設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 前2項の規定により立入検査する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
(監視等の実施)
第34条 市長は、地下水の状況を監視するため、定期的に地下水の水質及び水位を測定しなければならない。
(汚染の公表)
第35条 市長は、地下水等が汚染されている事実を知ったときは、直ちにその事実を公表しなければならない。
2 市長は、前項の規定による公表をする場合において必要と認めるときは、汚染対策の状況等をあわせて公表しなければならない。
(技術的助言等)
第36条 市長は、使用事業者に対し、汚染防止対策、汚染調査及び浄化事業に関する技術的な助言及び情報の提供に努めるものとする。
(飲用地下水の適正管理)
第37条 地下水を飲用のために揚水する者は、その設備の適正な管理に努めなければならない。
(飲用指導等)
第38条 市長は、市民に対し、地下水の適切な飲用指導を行うほか、地下水が対象物質により汚染された場合は、当該地下水を飲用している区域の市民に対し、汚染された地下水の飲用方法及び市の水道水への切替えを指導するとともに、必要な措置を講ずるものとする。
(健康相談等の実施)
第39条 市長は、対象物質により汚染された地下水を飲用していた市民に対し、健康相談を行うとともに、必要に応じて健康診断を実施することができる。
(周辺自治体との協力)
第40条 市長は、他の自治体と協力して地下水のかん養に努めるものとする。
2 市長は、地下水の汚染が他の自治体に及ぶおそれがあるときは、県及び周辺自治体にその旨を速やかに連絡するとともに、協力して地下水汚染対策に努めるものとする。
第7章 公表及び罰則
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成15年4月1日から施行する。
3 市長は、前項の届出をせず、又は虚偽の届出をした者が正当な理由なく市長の指導に従わないときは、その旨を公表することができる。
(柳津町の編入に伴う経過措置)
4 柳津町の編入の際現に同町の区域内において揚水設備(設置工事中のものを含む。)を所有し、又は借り受けている者は、編入の日から6月以内に当該揚水設備について、第11条に規定する届出を市長にしなければならない。
5 市長は、前項の届出をせず、又は虚偽の届出をした者が正当な理由なく市長の指導に従わないときは、その旨を公表することができる。
附 則(平成17年条例第78号)
この条例は、平成18年1月1日から施行する。