○岐阜市いじめ防止対策推進条例
令和2年9月28日
条例第63号
岐阜市いじめ防止等対策推進条例(平成26年岐阜市条例第39号)の全部を改正する。
令和元年7月、岐阜市立中学校の生徒が、いじめを主要因として自死するという大変痛ましい出来事が起こりました。将来への希望に満ちているはずの尊い命が、基本的人権を侵害するいじめにより奪われてしまったのです。
いじめは、いつ、どこでも、誰にでも起こり得るものと言われています。こうした悲劇を二度と繰り返さない、子どもたちが安心して学びに向かうことができる教育環境を作ることは、市、学校にとどまらず、全ての市民の責務です。
私たちは、命の尊厳を改めて理解し、お互いを大切にする社会を今一度作り上げるため、いじめ問題の克服に向けて取り組む必要があります。私たちは、大変重い教訓を得ました。この生徒の死を決して忘れることなく心に刻み、常に当事者意識を持ち、私たち一人ひとりができること、やるべきことを行っていかなければなりません。そうした決意の下、ここに、いじめ防止の基本理念を明らかにし、いじめの防止のための施策を推進するため、本条例を定めるものとします。
(趣旨)
第1条 この条例は、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ、本市におけるいじめの防止等のための対策について、基本理念を定め、市、市立学校その他関係する者の責務等を明らかにするとともに、市の対策に関する基本的な事項を定めるものとする。
(1) いじめ 児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する市立学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているものをいう。
(2) いじめの防止等 法第1条に規定するいじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。
(3) 市立学校 岐阜市立学校設置条例(昭和39年岐阜市条例第25号)第2条に規定する学校(幼稚園を除く。)をいう。
(4) 教職員 法第8条に規定する教職員をいう。
(5) 児童生徒 市立学校に在籍する児童又は生徒をいう。
(6) 被害児童生徒 いじめを受けた児童生徒をいう。
(7) 加害児童生徒 いじめを行った児童生徒をいう。
(8) 保護者 児童生徒に対し親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。
(9) 重大事態 法第28条第1項に規定する重大事態をいう。
(基本理念)
第3条 いじめは、子どもの尊厳を傷つけ、命までも奪ってしまう重大な人権侵害であるとの認識の下に、市及び市立学校並びに教職員、保護者、市民等全ての大人は、子どもたちが安心して学びに向かうことができる教育の環境を整える責務や役割を負い、一人ひとりが命の尊さを理解し、互いを思いやるとともに、子どもの声を聴き、誰一人孤立させない、いじめを絶対に許さない社会の実現のため、それぞれの大人が当事者であるとの認識に立って、その責務と役割を自覚し、主体的かつ能動的に行動し、又は協働し、いじめ問題の克服に取り組まなければならない。
(いじめの禁止)
第4条 児童生徒は、いじめを行ってはならない。
(いじめの防止に係る基本行動)
第5条 いじめの防止に係る対策は、いじめがどの児童生徒にも起こり得る問題であることを踏まえ、全ての児童生徒に、命の尊厳、自己及び他人の人格の尊重並びにいじめは決して許されないことに対する理解を促し、もって心の通う対人関係を構築できる社会性のある大人へと育み、いじめを生まない土壌を作ることを旨として行わなければならない。
2 いじめの防止に係る対策において、市立学校は、全ての児童生徒が、安全に、かつ、安心して学校生活を送ることができるよう、互いの自由を認め、信頼し合える学校風土の形成に努めなければならない。
(いじめの早期発見に係る基本行動)
第6条 いじめの早期発見のため、全ての市民は、家庭及び地域と連携して、いじめが、人目に付きにくい時間や場所で、遊び等を装って、又は大人が気付きにくい形で行われるものであるとの認識に立って、児童生徒の変化に積極的に関心を持ち、いじめを認知しなければならない。
(いじめへの対処に係る基本行動)
第7条 いじめへの対処に当たっては、岐阜市教育委員会(以下「教育委員会」という。)及び市立学校は、被害児童生徒及び第13条第2項の規定によりいじめについて相談をした児童生徒の立場に寄り添い、その安全を確保するとともに、加害児童生徒に対し事情を確認し、適切に指導しなければならない。
2 いじめへの対処に当たっては、教育委員会及び市立学校は、いじめ又はいじめと疑わしい行為を発見し、又は認知したときは、直ちに当該いじめ又はいじめと疑わしい行為に関わりを持ち、組織的に対応しなければならない。
(1) いじめの防止等のために必要な施策を策定し、及び総合的かつ効果的に推進すること。
(2) 市立学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講ずること。
(教育委員会の責務)
第9条 教育委員会は、前条各号に掲げるもののほか、次に掲げる責務を有するものとする。
(1) 市立学校におけるいじめの防止等のために関係機関並びに家庭及び地域の連携を図ること。
(2) 市立学校の教職員が、いじめの防止等に迅速かつ的確に取り組むための環境を整備すること。
(3) 児童生徒からいじめの相談があったとき又は関係機関並びに家庭及び地域からいじめに係る情報提供があったときは、直ちに学校に対し、必要な対処を講ずるよう指示するとともに必要な支援を講ずること。
(4) 加害児童生徒の保護者に対して学校教育法(昭和22年法律第26号)第35条第1項(同法第49条において準用する場合を含む。)に規定する出席停止を命ずる等いじめへの対処に必要な措置を講ずること。
(市立学校の責務)
第10条 市立学校は、基本理念等に基づき、次に掲げる責務を有するものとする。
(1) 学校全体で、いじめの未然防止及び早期発見に取り組むこと。
(2) 児童生徒に対し、自らを大切にするとともに、互いの違いを認め合い、自らと同様に他者を尊重し、思いやる教育に取り組むこと。
(3) いじめを早期に発見するため、児童生徒に対する定期的な調査その他必要な措置を講ずるとともに児童生徒からの全ての兆候に迅速かつ適切に対処し、児童生徒が決して孤立することのないよう取り組むこと。
(4) いじめ(いじめと疑わしい行為を含む。以下この項において同じ。)を発見し、又は認知したとき(児童生徒又は保護者からいじめの相談を受けたとき、市民からいじめに係る情報提供があったとき及び教育委員会からいじめに係る指示があったときを含む。)は、次に掲げる事項を行うこと。
ア 直ちに校長を中心とした組織的な指導体制を確立するとともに、当該いじめの事実の確認を行うこと。
イ 保護者の協力を得て、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号。以下「地教行法」という。)第47条の5第1項に規定する学校運営協議会その他の関係機関と連携し、適切かつ迅速に対処すること。
ウ 関係する児童生徒の保護者に対し、遅滞なく、当該いじめの状況及び対処の方針を伝えること。
エ 教育委員会に対し、速やかに当該いじめの状況及び対処の方針を報告すること。その後のいじめへの対処についても同様とする。
(5) 被害児童生徒及び第13条第2項の規定によりいじめについて相談をした児童生徒が安心して教育を受けられる環境を確保するとともに、いじめが解決するまで当該被害児童生徒及び当該児童生徒に支援を講ずること。
(6) 加害児童生徒に対し、いじめが人格を傷つけ、及び生命、身体又は財産を脅かす行為であることを理解させ、かつ、自らが行ったいじめの責任を自覚することができるよう指導し、必要に応じ別室指導、訓告その他の学校教育法第11条に規定する懲戒を毅然と行うこと。
(7) いじめへの対処について正確に記録し、これを組織として共有し、かつ、適正に保存すること。
(8) いじめを無くすために、児童生徒が自ら考える取組を支援すること。
2 市立学校は、法第13条に規定する当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針(以下「学校基本方針」という。)を策定しなければならない。
3 市立学校は、学校基本方針の策定に当たっては、児童生徒、保護者及び地域住民の意見を聴くものとする。
4 市立学校は、学校基本方針を策定したときは、これを教育委員会に報告するとともに、公表しなければならない。
5 市立学校は、学校基本方針を必要に応じ随時又は年に1回見直しを行うものとする。この場合において、当該見直しにより学校基本方針に修正が生じたときの手続は、前2項の規定によるものとする。
(市立学校の教職員の責務)
第11条 市立学校の教職員は、前条第1項各号に掲げるもののほか、基本理念等及び学校基本方針に基づき、児童生徒と真摯に向き合い、いじめの防止等に迅速かつ適切に対応しなければならない。
2 市立学校の教職員は、いじめの防止等の対応をするときは、複数の教職員で行うものとする。
(1) 子どもの教育について第一義的責任を有し、自らが保護する児童生徒に対し、いじめを行うことのないよう、規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行うよう努めること。
(2) その保護する児童生徒がいじめを受けた場合は、適切に当該児童生徒をいじめから保護し、市立学校若しくは市立学校の教職員、教育委員会又は市に相談すること。当該児童生徒から他の児童生徒がいじめを受けている等の相談があった場合も同様とする。
(3) 市、教育委員会及び市立学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めること。
(児童生徒の役割)
第13条 児童生徒は、自らを大切にするとともに、互いの人格を尊重し、他者(自分以外の者をいう。)に対する思いやりを持つよう努めるものとする。
2 児童生徒は、いじめを見つけたときやいじめが行われている疑いがあると思うとき又は友だちからいじめの相談を受けたときは、観衆(いじめをはやしたてたり、おもしろがったりして見ている者をいう。)や傍観者(いじめを見て見ぬふりをする者をいう。)になるのではなく、学校の先生(教職員をいう。)や家族(父母、兄弟姉妹等(保護者を含む。)をいう。)等に相談するよう努めるものとする。
3 児童生徒は、いじめを無くすために何をすべきか、何ができるか等について自ら考え、いじめを無くすことに積極的に取り組むよう努めるものとする。
(市民の役割)
第14条 市民は、地域において、児童生徒の見守りその他児童生徒が心身ともに健全に過ごすことができる環境づくりに努めるものとする。
2 市民は、いじめ又はいじめの疑いがあると思われるときは、市、教育委員会又は市立学校その他の関係機関に情報を提供するよう努めるものとする。
3 市民は、市、教育委員会及び市立学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めるものとする。
(いじめを見逃さない日)
第15条 児童生徒をいじめから守り、社会全体でいじめの防止に取り組むため、毎月3日を「いじめを見逃さない日」と定める。
2 市及び教育委員会は、いじめを見逃さない日において、いじめの防止を推進するための広報啓発活動を実施するものとする。
3 市立学校は、いじめを見逃さない日において、人権及び道徳に係る教育を実施するとともに、児童生徒が主体的にいじめの防止に向けた活動を行うことができるよう支援し、及び指導するものとする。
(いじめ問題対策連絡協議会)
第16条 法第14条第1項の規定により、いじめの防止等に関係する機関及び団体の連携を図るため、岐阜市いじめ問題対策連絡協議会(以下「協議会」という。)を置く。
2 協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める。
(いじめ問題対策委員会)
第17条 法第14条第3項の規定により、協議会と連携し、いじめの防止等のための対策を実効的に行うため、教育委員会に岐阜市教育委員会いじめ問題対策委員会(以下「対策委員会」という。)を置く。
2 対策委員会は、児童生徒に重大事態が発生したときは、教育委員会の諮問に応じ、法第28条第1項に規定する調査を行う。
3 対策委員会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、臨時委員を置くことができる。
4 対策委員会に、所掌事務の遂行に必要な調査をさせるため、調査員を置くことができる。
5 対策委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める。
(学校いじめ防止対策推進会議)
第18条 法第22条の規定により、学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、市立学校に、学校いじめ防止対策推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議は、次に掲げる事務を行う。
(1) 学校基本方針の策定(第10条第5項の規定による修正を含む。)、実施及び検証
(2) いじめに係る相談体制の整備
(3) いじめの早期発見のための情報の収集、記録及び共有
(4) いじめの認知
(5) 被害児童生徒及びその保護者の支援並びに加害児童生徒の指導及びその保護者への助言
(6) 当該市立学校の教職員を対象とする研修並びに保護者及び地域住民を対象とする啓発活動
(7) 前各号に掲げるもののほか、当該市立学校の校長が必要と認める事項
3 推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める。
(いじめ問題調査委員会)
第19条 法第30条第2項に規定する調査を実施するため、岐阜市いじめ問題調査委員会(以下「調査委員会」という。)を置く。
2 調査委員会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、臨時委員を置くことができる。
3 調査委員会に、所掌事務の遂行に必要な調査をさせるため、調査員を置くことができる。
4 調査委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(重大事態への対処)
第20条 市立学校の校長は、当該市立学校に在籍する児童生徒に重大事態が発生した場合は、直ちに教育委員会にその旨を報告しなければならない。
2 教育委員会は、前項の場合又は児童生徒若しくは保護者から重大事態に該当する事実があったと申立てを受けた場合は、法第30条第1項の規定によりその旨を市長に報告するとともに、法第28条第1項の規定により当該重大事態に係る調査を開始するものとする。
3 教育委員会及び市立学校の校長は、法第28条第2項の規定により、被害児童生徒及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係その他の必要な情報を提供する場合においては、当該重大事態に係る他の児童生徒及び関係者の個人情報の保護に配慮するものとする。
4 教育委員会は、重大事態に係る調査の結果を、速やかに市長に報告しなければならない。この場合において、教育委員会は、被害児童生徒又はその保護者が当該重大事態に係る被害児童生徒又はその保護者の所見を当該調査結果に添付することを希望するときは、当該所見を記載した文書の提供を受け、当該文書を調査結果の報告書に添付し、市長に送付するものとする。
5 市長は、被害児童生徒及びその保護者に対し、法第30条第2項に規定する調査に係る重大事態の事実関係その他の必要な情報を提供する場合においては、当該重大事態に係る他の児童生徒その他の関係者の個人情報の保護に配慮するものとする。
(市立学校以外の学校等への協力要請)
第21条 市長及び教育委員会は、次に掲げる者に対し、いじめの防止等に必要な協力を求めることができる。
(1) 市立学校以外の学校の校長及び当該学校の設置者
(2) 前号に規定する学校並びにその設置者を所管する国及び地方公共団体(当該学校の設置者である場合を除く。)
(市長及び教育委員会の連携)
第22条 市長及び教育委員会は、いじめの防止等のための対策を連携して推進するため、いじめに関する情報を共有し、積極的に連絡調整を行うものとする。
2 市長は、いじめにより、児童生徒の生命又は身体に現に被害が生じ、又はまさに被害が生じるおそれがあると見込まれる場合は、講ずべき措置について協議するため、速やかに地教行法第1条の4に規定する総合教育会議(以下「総合教育会議」という。)を招集するものとする。
3 教育委員会は、いじめの防止等のため対策について協議する必要があると思料するときは、市長に対し、当該対策の具体的事項を示して、総合教育会議の招集を求めることができる。
(委任)
第23条 この条例の施行に関し必要な事項は、教育委員会が別に定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。
附則(令和4年条例第31号)
この条例は、令和4年4月1日から施行する。