○白山市共生のまちづくり条例

平成29年6月23日

条例第20号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 障害を理由とする差別の解消

第1節 障害を理由とする差別の禁止(第8条)

第2節 障害を理由とする差別を解消するための施策(第9条―第14条)

第3章 情報コミュニケーション、就労並びに保育及び教育における共生

第1節 情報コミュニケーションにおける共生(第15条)

第2節 就労における共生(第16条―第18条)

第3節 保育及び教育における共生(第19条―第23条)

第4章 合理的配慮の提供(第24条―第27条)

第5章 環境整備の推進(第28条―第32条)

第6章 白山市障害者差別解消のまちづくり支援協議会(第33条)

附則

平成18年に、障害者の権利に関する条約が国際連合で採択され、わが国においても、障害者基本法の抜本的改正、障害を理由とした差別の解消に関する法律の制定などの制度改革が進められ、平成26年1月に同条約の批准に至った。これにより、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会の実現に向け大きく前進した。

白山市は、これまでも障害のある人たちをはじめとする関係者と協力して共生に向けてのまちづくりを進めてきたが、依然として障害を理由とした差別や、障害のある人の日常生活や社会生活の妨げとなる社会的障壁が存在する。

このような状況を踏まえ、障害のある人に対する合理的配慮の提供などに関する理念が市民一人一人に理解され、障害の有無にかかわらず安心して日常生活を送り、平等な社会参加の機会が保障されることにより、人格及び個性を尊重して共に生きる「共生のまち 白山市」の実現を目指し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消についての基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消に関して市の施策の基本となる事項を定めることにより、「共生のまち 白山市」を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2) 社会的障壁 障害のある人が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(3) 障害を理由とする差別 不当な差別的取扱いをすることにより障害のある人の権利若しくは利益を侵害すること又は合理的配慮の提供を行わないことをいう。

(4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なしに障害又は障害に関連する事由を理由として障害のある人を排除すること、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件を付けることその他障害のある人に対する不利益な取扱いをすることをいう。

(5) 合理的配慮の提供 障害のある人及びその家族等から現に社会的障壁の除去を必要としているという表明があった場合において、障害のある人が障害のない人と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で、障害のある人の意向を尊重しながら、その性別、年齢、障害の特性及び本人の特性に応じた必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置をいう。

(6) 市民 市内に居住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。

(7) 事業者 市内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体をいう。

(8) 建設的な対話 課題の解決に向けて相互に納得のできる結論が得られるような話合いをいう。

(9) 手話等コミュニケーション手段 障害のある人が自ら選択する手話、要約筆記その他のコミュニケーションの手段をいう。

(10) コミュニケーション支援従事者 手話通訳士及び手話通訳者、要約筆記者、代読を行う者、点訳者及び音訳者(朗読者を含む。)並びに知的障害のある人への伝達補助等を行う支援従事者をいう。

(基本理念)

第3条 障害の有無にかかわらず、安心して幸せに暮らすことができる社会の実現は、次に掲げる基本理念に基づき行うものとする。

(1) 全ての市民は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること。

(2) 障害を理由とする差別を全ての市民の問題として認識し、その解消が社会全体に活力を与えるものであることについて、障害のある人と障害のない人が共に理解を深め、その解消に向けて協力していくこと。

(3) 障害のある人の社会参加及び平等な生活に大きな制約をもたらす社会的障壁を解消すること。

(4) 障害のある人が社会を構成する一員として自らの意思によって社会、経済、文化その他の分野の活動に、平等に参加することができるよう機会を確保すること。

(5) 合理的配慮の提供は、障害のある人と障害のない人の双方にとって必要なものであることを理解し、行われること。

(6) 障害のある人が言語(手話を含む。)その他のコミュニケーションの手段及び情報取得のための手段について、可能な限り、その選択の機会を確保し、及び拡大すること。

(市の責務)

第4条 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、次に掲げる施策を推進するものとする。

(1) 市民及び事業者と連携して、障害のある人の自己決定権を尊重しながら差別の解消に向けた取組を行うこと。

(2) 障害のある人との建設的な対話を行いながら合理的配慮の提供を行うこと。

(3) 市民及び事業者に対し、基本理念について啓発を行うこと。

(4) 合理的配慮の提供のあり方について調査及び研究を行うこと。

(5) 市民及び事業者が合理的配慮の提供を行うための支援を行うこと。

(6) 障害の特性及び個人の特性について市民及び事業者の理解が深まるよう啓発を行うこと。

(7) 障害を理由とする差別の解消に関する相談を受け、紛争解決に向けて必要な支援を行うこと。

(8) 障害を理由とする差別の解消に関し関係機関と連携を図ること。

(市民及び事業者の責務)

第5条 市民及び事業者は、基本理念にのっとり、市が実施する施策に協力するとともに、障害の状態について理解を深め、障害のある人との建設的な対話を行いながら合理的配慮の提供に努めるものとする。

(障害者計画との関係)

第6条 市は、障害を理由とする差別の解消に関する施策について、白山市障害者計画(障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づき策定された計画をいう。)に定めるものとする。

(財政上の措置)

第7条 市は、障害を理由とする差別の解消に関する施策を実施するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

第2章 障害を理由とする差別の解消

第1節 障害を理由とする差別の禁止

第8条 何人も、障害のある人に対し、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。

2 市は、社会的障壁の除去の実施について必要な合理的配慮の提供を行わなければならない。

3 市民は、社会的障壁の除去の実施について必要な合理的配慮の提供を行うよう努めるものとする。

4 事業者は、社会的障壁の除去の実施について必要な合理的配慮の提供を行うよう努めるほか、その事業を行うに当たり障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があったときは、その実施に伴う負担が過重でない限り、社会的障壁の除去の実施について必要な合理的配慮の提供を行わなければならない。

第2節 障害を理由とする差別を解消するための施策

(相談)

第9条 障害のある人及びその家族その他の関係者は、市又は市が委託する相談機関(以下「委託相談機関」という。)に対し、障害を理由とする差別に関する相談を行うことができる。

2 市又は委託相談機関は、前項の相談を受けた場合は、必要に応じて次に掲げる対応を行うものとする。

(1) 相談者(前項の規定により相談を行おうとする者をいう。以下同じ。)に対する事実確認、事情聴取、説明及び助言

(2) 相談に係る関係者間の調整

(3) 第33条第1項に規定する支援協議会(第11条において「支援協議会」という。)への報告

(4) 関係行政機関への通知

(5) あっせんの申立ての支援

(6) 前各号に掲げるもののほか、障害を理由とする差別の解消に関し必要な対応

3 相談に係る関係者(関係団体を含む。以下同じ。)は、正当な理由がある場合を除き、市又は委託相談機関が実施する事実確認等について協力しなければならない。

(あっせんの申立て)

第10条 相談者は、市長に対し、相談に係る事案を解決するために必要なあっせんの申立て(以下「あっせんの申立て」という。)をすることができる。

2 あっせんの申立ては、現に障害を理由とする差別に関する紛争が生じている場合であって、前条第2項の対応を行っても当該紛争が解決されないとき(当該あっせんの申立てをすることが障害のある人の意に反することが明らかである場合を除く。)でなければ、することができない。ただし、あっせんの申立てをすることについて緊急の必要性があると市長が認める場合は、この限りでない。

3 あっせんの申立ては、行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令に基づく不服申立ての手続をすることができる行政庁の処分に対しては、することができない。

(あっせん等)

第11条 市長は、あっせんの申立てがあったときは、当該あっせんの申立てに係る事案について調査を行い、又は委託相談機関に必要な調査を行わせることができる。この場合において、調査の対象者は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。

2 市長は、前項の調査の結果を支援協議会に報告し、あっせん又は助言を求めるものとする。

3 支援協議会は、前項のあっせん又は助言を行うために必要と認めるときは、関係者に対して説明又は資料の提出を求めることができる。

4 支援協議会は、相談に係る関係者の間に立ちあっせん又は助言を行うものとする。

(勧告)

第12条 市長は、前条第2項のあっせんが行われ、障害を理由とする差別を行ったとされる者が、正当な理由がなく当該あっせんに従わない場合は、これに従うよう勧告することができる。

2 市長は、前項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ当該勧告の相手方に対してその旨を通知し、かつ、その者に対して意見を述べる機会を与えなければならない。

(公表)

第13条 市長は、前条第1項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなく当該勧告に従わない場合は、その旨を公表することができる。

2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、白山市行政手続条例(平成17年白山市条例第10号)に基づき、あらかじめ当該公表の相手方に対してその旨を通知し、かつ、その者に対して意見を述べる機会を与えなければならない。

(その他の必要な対応)

第14条 市長は、第12条第1項の規定による勧告及び前条第1項の規定による公表をした場合であっても、障害を理由とする差別が解消されないと認めるときは、障害を理由とする差別を解消するために必要な対応を行うことができる。

第3章 情報コミュニケーション、就労並びに保育及び教育における共生

第1節 情報コミュニケーションにおける共生

(多様な障害に応じたコミュニケーション手段の普及啓発等)

第15条 市は、手話等コミュニケーション手段を利用できるよう市民及び事業者に対して普及啓発を行い、利用の拡大を図るとともに、相談及び支援を行うものとする。

2 市は、手話等コミュニケーション手段を利用する場合に必要となるコミュニケーション支援従事者の確保及び養成を行うものとする。

3 市は、次に掲げる手話等コミュニケ―ション手段の利用について支援を行うとともに、市民の理解を深めるための取組を行うものとする。

(1) 聴覚に障害のある人における手話、要約筆記及び筆談

(2) 知的、精神及び発達障害のある人における平易な表現、写真、イラスト、記号及びジェスチャー

(3) 視覚に障害のある人における代読、音声による表現、誘導案内及び音による伝達

(4) 盲ろう者における触手話及び指点字

(5) 前各号に掲げるもののほか、障害のある人におけるコミュニケーションの手段として必要なもの

第2節 就労における共生

(情報提供及び啓発)

第16条 市は、障害のある人の就労を促進するため、事業者に対し、不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供等に関する情報その他障害のある人が就労するために理解が必要な情報について提供及び啓発を行うものとする。

(体制の充実)

第17条 市は、障害のある人の就労を促進するため、障害のある人の就労に関する相談及び支援体制の充実を図るものとする。

(雇用)

第18条 事業者は、障害のある人の就労の機会を拡大するとともに、雇用の定着を図るよう努めるものとする。

第3節 保育及び教育における共生

(保育及び教育における共生)

第19条 市は、保育所等、小学校及び中学校において、障害のある子どもと障害のない子どもが共に育つ保育又は共に学ぶ教育の実施に努めるものとする。

(情報提供及び就学相談)

第20条 市は、小中学校等及び特別支援学校に関する情報について提供を行い、及び就学相談を行うものとする。

(体制の充実)

第21条 市は、関係機関と連携を図ることにより、乳幼児期からの専門的な保育、教育相談及び支援体制の充実を図るものとする。

(日常生活の充実)

第22条 市は、福祉サービス、医療等に関する機関と連携し、障害のある子どもの保護者と共通の理解を図り、日常生活の充実に努めるものとする。

(支援の推進)

第23条 市は、障害のある子ども自らの意向を尊重し、保護者と共通の理解を図り、進路選択等の支援の推進に努めるものとする。

第4章 合理的配慮の提供

(コミュニケーションにおける合理的配慮の提供)

第24条 市は、コミュニケーションを図ることが困難な障害のある人に対し、その障害の特性を理解し、障害の特性に応じて適切に説明し、及び情報を提供する際に合理的配慮の提供を行わなければならない。

2 事業者は、コミュニケーションを図ることが困難な障害のある人に対し、その障害の特性を理解し、障害の特性に応じて適切に説明し、及び情報を提供する際に合理的配慮の提供に努めるものとする。

(保育及び教育における合理的配慮の提供)

第25条 市は、障害のある子どもの障害の特性及び本人の特性を理解し、保育及び教育の実施に関して平等な機会を保障するための合理的配慮の提供を行わなければならない。

(防災における合理的配慮の提供)

第26条 市は、障害のある人に対して災害が生じた際の安全を確保するため、防災に関する計画の策定に当たり障害のある人が必要とする合理的配慮の提供について明記するものとする。

2 市は、災害が生じた際に、障害のある人の被害を最小限にとどめるため、障害のある人が必要とする支援の内容を具体的に定め、必要な支援を継続的に行わなければならない。

3 市民及び事業者は、災害が生じた際に、障害のある人の被害を最小限にとどめるため、可能な限り支援するよう努めるものとする。

(医療等における合理的配慮の提供)

第27条 市は、障害のある人が保健事業を利用し、又は医療等を受けることができるよう福祉、保健及び医療機関その他関係者と連携し、合理的配慮の提供を行わなければならない。

2 事業者は、障害のある人が保健事業を利用し、又は医療等を受けることができるよう合理的配慮の提供に努めるものとする。

第5章 環境整備の推進

(環境整備の推進)

第28条 市及び事業者は、障害のある人が障害のない人と平等に地域の中で安心して日常生活及び社会生活を営むことができるよう環境の整備に努めるものとする。

(情報コミュニケーションにおける環境整備)

第29条 市及び事業者は、障害のある人が手話等コミュニケーション手段の利用を円滑にできるよう環境の整備に努めるものとする。

(就労における環境整備)

第30条 市は、障害のある人の就労を促進するため、障害のある人の就労に関する相談及び支援体制の環境の整備を図るものとする。

2 事業者は、障害の特性について理解し、障害のある人に対する就労の機会の拡大又は職場等の環境の整備に努めるものとする。

(保育及び教育における環境整備)

第31条 市は、障害のある子どもが充実した保育及び教育を受けられるよう環境の整備に努めるものとする。

(公共施設及び交通機関における環境整備)

第32条 市は、公共施設において、障害のある人が必要とする設備の設置に努めるものとする。

2 市及び事業者は、障害のある人の公共交通機関の利用を円滑にするため、障害のある人が必要とする環境の整備に努めるものとする。

第6章 白山市障害者差別解消のまちづくり支援協議会

第33条 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第17条第1項の規定に基づき、白山市障害者差別解消のまちづくり支援協議会(以下「支援協議会」という。)を置く。

2 支援協議会は、次に掲げる事項を所掌する。

(1) 第11条第4項のあっせん又は助言

(2) 障害を理由とする差別を解消するために必要な施策の推進

(3) この条例の施行状況の検討及び見直しに関する提言

(4) 前3号に掲げるもののほか、障害を理由とする差別の解消に関し必要な事項

3 支援協議会は、委員15人以内で組織する。

4 委員は、障害のある人及びその家族、支援者並びに福祉、医療、教育及び雇用その他の分野において障害のある人の権利の擁護に関し識見を有する者から、市長が委嘱する。

5 委員の任期は、3年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 委員は、再任されることができる。

7 前各項に定めるもののほか、支援協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、市長が別に定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成29年10月1日から施行する。

(白山市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)

2 白山市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(平成17年白山市条例第53号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(令和6年3月22日条例第14号)

この条例は、令和6年4月1日から施行する。

白山市共生のまちづくり条例

平成29年6月23日 条例第20号

(令和6年4月1日施行)

体系情報
白山市例規集/第8編 生/第1章 社会福祉/第5節 障害者福祉
沿革情報
平成29年6月23日 条例第20号
令和6年3月22日 条例第14号