○日野市みんなですすめる食育条例
平成21年3月31日
条例第6号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 基本となる事項(第4条―第13条)
第3章 推進体制(第14条)
付則
すべての市民が心とからだの健康を確保し、幸福感をもって暮らすことのできる社会をつくることが私たちの願いです。
この願いをかなえるためには、食はとても重要ですが、食の安全性の問題、飽食、不規則な食生活による肥満や生活習慣病の増加など、食に関するさまざまな問題があります。
幸い、私たちのまち日野は、都市の農業を守る事業が進められ、田畑を多く見ることができ、その大地で農業者によって大切に育まれた農産物などが家庭の食卓や学校給食に並び、農業体験などとあわせて、生産と食が身近に感じられる環境にあります。
しかし、社会全体で抱える食に関するさまざまな問題は、私たち日野においても生じており、すべての市民が健康に生き、心豊かな人生を歩み、それを次世代へ受け継いでいくためには、食のあり方について学び、積極的に食育の推進を図っていく必要があり、家庭とともに食にかかわるすべての関係者が同じ目標に向かって取り組まなければなりません。
ここに、日野市における食育の推進について、食にかかわるすべての関係者の責務を明らかにして、日野市食育推進計画に関する取組を総合的・計画的に推進するため、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、日野市(以下「市」といいます。)の食育の推進に関する基本的な理念を定め、市、市民、教育委員会、学校、子育て関連施設、農業委員会、農業者、東京南農業協同組合、食品関連事業者の責務を明らかにして日野市食育推進計画を推進することで、現在だけでなく将来にわたり健康で文化的な活力ある社会の実現に役立つことを目的とします。
(1) 食育 一人ひとりが、さまざまな経験から食に関する知識やバランスの良い食生活、安全安心な食品を選ぶ力を身につけるともに、動物や植物など命あるものを食べることや食にかかわる人々への感謝の気持ちや理解を深め、生涯にわたって生き生きと暮らせるような力を身につけることをいいます。
(2) 地産地消 地元で収穫された農産物を地元で消費することをいいます。
(3) 日野産野菜 日野市内で生産される野菜(りんごなどの果物、卵を含みます。)をいいます。
(4) 食育計画 食育基本法(平成17年法律第63号)第18条第1項の規定により、日野市内における食育の推進に関する計画として作成された「日野市食育推進計画」をいいます。
(5) 教育委員会 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)に基づき、学校の教育や生涯学習などを振興するために設置された機関をいいます。
(6) 学校 教育委員会で定める方針に沿って、校長を筆頭に教職員が児童・生徒を指導する日野市立の小中学校をいいます。
(7) 子育て関連施設 日野市内の幼稚園、保育所や日野市立の子ども家庭支援センター、児童館(学童クラブを含みます。)をいいます。
(8) 農業委員会 農業委員会等に関する法律(昭和26年法律第88号)に基づき、農地の保全を図るために農地の売買などについて公正な審査をするほか、農業者の代表機関として、意見などを公表するために設置された行政委員会をいいます。
(9) 農業者 農業(畜産業を含みます。)を営む人をいいます。
(10) 東京南農業協同組合 日野市内にある東京南農業協同組合本店、東京南農業協同組合日野支店、東京南農業協同組合七生支店をいいます。
(11) 食品関連事業者 食品の製造、加工、流通、販売、食事の提供をする人をいいます。
(基本理念)
第3条 食育の推進は、市民一人ひとりが生涯にわたって生き生きと暮らせるように次に掲げる基本理念に沿って行わなければなりません。
(1) 食育は、食に関する知識やバランスの良い食生活、安全安心な食品を選ぶ力を身につけるとともに、体験などを通して、食生活が動物や植物などの命を食べることや食にかかわる人々のさまざまな活動によって支えられていることへの感謝の気持ちや理解が深まるように推進します。
(2) 食育は、心やからだの成長や人格の形成に大きな影響を及ぼすことから、次世代を担う子どもたちに対して、特に積極的に推進します。
(3) 食品の安全は、食生活において基本的なことであり、安全安心な食品と食の環境が守られるように推進します。
(4) 食育は、農業者と消費者の距離が近い日野市の特色を生かし、農業者と消費者との交流を図りながら、地産地消に取り組みます。
第2章 基本となる事項
(市の責務)
第4条 市は、市民の健康のため、市が行う食育に関する事業を市民にわかりやすい方法で案内しなければなりません。
2 市は、家庭訪問事業、保健事業、各種健診の場など、地域に根ざした保健師、栄養士などの活動を行い、健康の管理に関する正しい知識や技術の普及、情報の提供などを推進し、市民の食育、健康づくりを支援しなければなりません。
3 市は、都市の農地を守り、都市の農業を育てなければなりません。
4 市は、生産者と消費者の交流の場をつくり、地産地消を推進しなければなりません。
5 市は、食育計画で定める学校給食での日野産野菜利用率25パーセントの達成のため、教育委員会、学校、農業委員会、農業者、東京南農業協同組合と連携し、学校で積極的に日野産野菜が利用されるように推進しなければなりません。
6 市は、市民に安全安心な食品と食の環境を提供するため、国、東京都、保健医療機関、農業委員会、農業者、東京南農業協同組合、食品関連事業者、大学などと連携し、情報の収集や発信をしなければなりません。
7 市は、自治会などの地区組織、市民ボランティア、食に関する活動を行う団体、企業などと連携し、食育を推進しなければなりません。
8 市は、食育計画で定める食育の施策を推進するために必要な財政上の措置を講じなければなりません。
(市民の責務)
第5条 市民は、個人や家族の心とからだの健康を守り、増進するため、バランスの良い食生活、安全安心な食品を選ぶ力を身につけ、健全な食生活を送るように努めます。
2 市民は、市が取り組んでいる都市の農地を守ることや都市の農業を育てること、地産地消の取組を理解し、日野産野菜の購入や生産者との交流に努めます。
(保護者等の責務)
第6条 保護者等は、子どもたちが、自然の恵みである食物と、食に関連する人々やその活動への感謝の気持ちを深める心を持って成長し、生涯にわたって健全な心やからだ、豊かな人間の形成を育んでいくことができるような食環境づくりに取り組むように努めます。
2 保護者等は、子どもたちの健やかな心とからだの発育、発達のため、毎日の食事を準備し、子どもたちとともに家庭で楽しく食事をするような環境づくりに努めます。
(教育委員会の責務)
第7条 教育委員会は、教育と食育のつながりを大切にして地域、学校、保護者等を通じて食に関する理解を深め、情報の共有化を図り、栄養、健康の増進、地産地消などを充実させるために指導の体制などの確立を図り、食育と健康教育を推進しなければなりません。
2 教育委員会は、学校での食育の推進のために、学校給食法(昭和29年法律第160号)を踏まえ、食に関する指導の全体計画を策定し、実体験を通した実践的な取組が行え、教科や行事などとの関連が図られ、家庭や地域と連携できるように支援しなければなりません。
3 教育委員会は、食育の推進のために東京都などと連携し、人材の育成を図らなければなりません。
4 教育委員会は、食育計画で定める学校給食での日野産野菜利用率25パーセントの達成のため、市、学校、農業委員会、農業者、東京南農業協同組合と連携し、学校で積極的に日野産野菜が利用されるように推進しなければなりません。
(学校の責務)
第8条 学校は、国で定める指導の方針を踏まえ、児童や生徒の食や健康への関心、理解が深まるよう、食育や健康教育を推進しなければなりません。
2 学校は、安全安心な給食を提供しなければなりません。
3 学校は、食育計画で定めた学校給食での日野産野菜利用率25パーセントの達成のため、市、教育委員会、農業委員会、農業者、東京南農業協同組合と連携し、日野産野菜を積極的に利用しなければなりません。
4 学校は、保護者等に対して、家庭で食育が推進されるように情報の発信をしなければなりません。
5 学校は、自然の恵みを知らせるとともに作物を育て、調理活動を行い、みんなで食べる楽しさを経験させるとともに、食文化を伝えていくため、行事食や伝統食などを給食に取り入れなければなりません。
(子育て関連施設の責務)
第9条 子育て関連施設は、子どもたちに生活や遊びのなかで食にかかわる体験活動を通じて、食べることの大切さや楽しみを教え、元気と意欲あふれる毎日を過ごすことができるようにするとともに保護者等や地域へ食育の情報を発信しなければなりません。
2 幼稚園や保育所は、国で定める指導の方針、保育の方針を踏まえ、子どもたちに食事の取り方、望ましい食習慣の確立、生涯にわたり健康で過ごすことができる生活のリズムを身につけさせなければなりません。
3 保育所は、安全安心な給食を提供しなければなりません。
4 保育所は、自然の恵みを知らせるとともに作物を育て、調理活動を行い、みんなと一緒に食べる楽しさを経験させるとともに、食文化を伝えるため、行事食や伝統食などを給食に取り入れなければなりません。
5 子ども家庭支援センターは、子育てひろば事業の実施や相談の活動を通して、一人ひとりの子どもの成長や発達の段階に応じた食育の大切さについて、普及啓発を図らなければなりません。また、家庭からの乳幼児の食に関する相談に対応して保護者等や子どもの食への不安を解消するとともに情報の提供をしなければなりません。
6 児童館(学童クラブを除きます。)は、調理活動の体験から自分でつくり、食べる喜び、感動を味わい、豊かな経験を積み重ね、食べたいものを考え、調理に導けるさまざまな事業を行わなければなりません。
7 学童クラブは、作物の収穫の体験や季節に応じたおやつの提供を通して、児童同士の交流を図り、くつろげる場とするとともに、安全安心なおやつを提供しなければなりません。
(農業委員会の責務)
第10条 農業委員会は、食育計画の推進のために農業の発展と農地の保全を積極的に行わなければなりません。
2 農業委員会は、食育計画で定めた学校給食での日野産野菜利用率25パーセントの達成のため、市、教育委員会、学校、農業者、東京南農業協同組合と連携し、学校で積極的に日野産野菜が利用されるように推進しなければなりません。
(農業者の責務)
第11条 農業者は、市民が地産地消を継続的に行えるように農産物の生産力の向上に努めます。
2 農業者は、生産の活動を行うときは市民へ安全安心な農産物を供給するように努めます。
3 農業者は、市や学校などと連携し、さまざまな体験の機会ができるように努めます。
4 農業者は、食育計画で定めた学校給食での日野産野菜利用率25パーセントの達成のため、市、教育委員会、学校、農業委員会、東京南農業協同組合と連携し、日野産野菜を積極的に学校給食へ供給するように努めます。
(東京南農業協同組合の責務)
第12条 東京南農業協同組合は、農業者の生産力の向上及び農業経営の合理化が図られるように指導に努めます。
2 東京南農業協同組合は、安全安心な農産物を提供できるように市、農業者、農業委員会との連携に努めます。
3 東京南農業協同組合は、食育計画で定めた学校給食での日野産野菜利用率25パーセントの達成のため、市、教育委員会、学校、農業委員会、農業者と連携し、学校で積極的に日野産野菜が利用されるように努めます。
(食品関連事業者の責務)
第13条 食品関連事業者は、安全安心な食品の提供に努めます。
2 食品関連事業者は、健康と食育のために栄養バランスの良い食生活の重要性を認識し、情報の提供に努めます。
3 食品関連事業者は、食品の安全性など自らの事業の活動について、正確で適切な情報の提供に努めます。
第3章 推進体制
(日野市食育推進会議)
第14条 市は、食育計画の推進のために、食育基本法第33条第1項の規定により、日野市食育推進会議(以下「推進会議」といいます。)を設置します。
2 推進会議は、次に掲げる事項について、市長の求めに応じ、審議します。
(1) 食育計画の推進の状況の評価、検証に関すること。
(2) 食育計画の作成に関すること。
(3) 前号に掲げるもののほか、食育に関する施策に関すること。
3 推進会議は、次に掲げる人のうちから、市長が委嘱し、又は任命する委員8人以内で組織します。
(1) 公募市民 3人以内
(2) 食育に関する知識や経験を特に有する人 5人以内
4 委員の任期は、2年とし、再任は妨げません。ただし、委員が欠けたときは、補欠の委員を選任し、委員の任期は前任者の残任期間とします。
5 推進会議に会長と副会長を置き、委員の互選によりこれを定めます。
6 会長は、会務を総理し、推進会議を代表します。
7 副会長は、会長を補佐し、会長が欠けたとき、又は会長に事故があるときは、その職務を代行します。
8 推進会議は、委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができません。
9 推進会議の議事は、出席した委員の過半数で決まり、可否が同数のときは、会長が決めます。
10 推進会議の庶務は、健康福祉部で処理します。
11 前各項に定めるほか、推進会議の運営に関し必要な事項は、会長が推進会議の意見をきいて定めます。
付則
(施行期日)
1 この条例は、平成21年4月1日から施行します。
(日野市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
2 日野市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(昭和38年条例第13号)の一部を次のように改正します。
〔次のよう〕略