○日田市障がいによる差別を解消し誰もが心豊かに暮らせるまちづくり条例
平成31年3月26日
条例第2号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 不当な差別的取扱い及び虐待の禁止並びに相互理解の促進の取組(第7条・第8条)
第3章 障がいを理由とする差別の解消を図るための取組(第9条・第10条)
第4章 障がいを理由とする差別に対する相談体制(第11条―第16条)
第5章 日田市障がい者差別解消調整委員会(第17条)
第6章 雑則(第18条)
附則
前文
日田市では、これまで、誰もが障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し安心して地域で暮らすことのできる共生社会の実現に向けて、就労促進等をはじめとする福祉の増進を通じて、障がいのある人の社会参加の推進や障がい者差別の解消に向けて積極的に取り組んできたところである。
しかしながら、障がいのある人やその家族は、日常生活又は社会生活を営む中で、障がいに関する理解の不足から生じる誤解や偏見、社会にある様々な障壁により、依然として社会の中で暮らすことに困難を感じ苦しんでいる状況が存在する。
このような中で、誰もが障がいの有無にかかわらず心豊かに暮らせるまちづくりを実現するためには、市、市民及び事業者が共に知恵と力を出し合い、あらゆる社会的障壁をなくし、共に支え合うことのできる仕組みの整備及び活用を図ることが必要である。
ここに、私たちは、障がいを理由とするあらゆる差別をなくすことを決意し、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり、誰もが障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現し、もって、誰もが安心して心豊かに暮らせるまちづくりに資するため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、障がいのある人への差別をなくすことに関し、基本理念を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにし、障がいのある人への差別の解消を推進することにより、障がいの有無によって分け隔てられることなく全ての人が個人として尊重される共生社会を実現することを目的とする。
(1) 障がい 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)、難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)その他の心身の機能の障がいをいう。
(2) 障がいのある人 障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(3) 社会的障壁 障がいのある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(4) 障がいを理由とする差別 障がいのある人に対して、障がいを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為(社会的障壁の除去に伴う負担が過重でない場合に、合理的配慮を怠ることを含む。)をいう。
(5) 合理的配慮 障がいのある人が、障がいのない人(障がいのある人以外の者をいう。以下同じ。)と平等に全ての人権及び基本的自由を享有し、日常生活又は社会生活を営むことができるよう社会的障壁を取り除くに当たって、その実施に伴う負担が過重でない場合に、障がいのある人にとって必要とされる社会的な制度の整備及び支援を行うことをいう。
(6) 虐待 障がいのある人に対して、暴行、暴言、侮辱、嫌がらせ、無視、放置、財産の侵奪、わいせつ行為、性的無配慮等を行うこと又は障がいのある人をしてそれらの行為をさせることをいう。
(7) 自立 第三者の支えを必要とするか否かにかかわらず、自らの人生を自らの意思で選択できることをいう。
(8) 市民 次のいずれかに該当するものをいう。
ア 市内に住所を有する者
イ 市内に通勤又は通学をする者
(9) 事業者 市内で事業を営み、又は活動する者をいう。
(基本理念)
第3条 第1条に規定する社会の実現は、全ての障がいのある人が、障がいのない人と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
(1) 全て障がいのある人は、必要な支援を受けながら、自らの意思により選択し、自らの人生を自分らしく生きることができること。
(2) 全て障がいのある人は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
(3) 全て障がいのある人は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することができること。
(4) 全て障がいのある人は、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。
(5) 障がいを理由とする差別の解消を図るための施策は、障がいのある人の性別、年齢、障がいの状態及び生活の実態に応じて、策定され、及び実施されること。
(6) 障がいのある人に対する理解を深めること及び障がいを理由とする差別を解消することは、市、市民及び事業者が取り組むべき課題であるという認識が共有されること。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める基本理念にのっとり、障がいのある人への差別及び虐待をなくすための取組に係る施策を総合的かつ計画的に実施しなければならない。
2 市は、障がいのある人への差別及び虐待をなくすための取組を行うに当たって、次に掲げる事項を基本としなければならない。
(1) 障がいに対する理解を広め、定着させること。
(2) 障がいのある人が意見を述べる機会を確保すること。
(3) 市民及び事業者と連携し、障がいのある人の選択を尊重して取り組むこと。
(4) 多くの市民の参加及び参画の下で取り組むこと。
3 市は、障がいのある人を保護する者が死亡した後、障がいのある人の生活の維持に関する課題その他の人生の各段階において生じる日常生活又は社会生活上の課題の解消に努めるものとする。
4 市は、障がいのある人への差別及び虐待をなくすための取組に係る施策を実施するに当たり、市民、事業者、国、大分県その他の地方公共団体と連携及び協力を図らなければならない。
(市民及び事業者の責務)
第5条 市民及び事業者は、第3条に定める基本理念にのっとり、障がいに対する理解を深めるとともに、障がいのある人への差別及び虐待をなくすための取組に協力するよう努めるものとする。
2 市民は、障がいのある人との対話を行いながら、合理的配慮をするよう努めるものとする。
3 事業者は、障がいのある人との対話を行いながら、合理的配慮をしなければならない。
(令6条例13・一部改正)
(財政上の措置)
第6条 市は、障がいのある人に対する理解を深め、及び障がいのある人への差別及び虐待をなくすための取組に係る施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第2章 不当な差別的取扱い及び虐待の禁止並びに相互理解の促進の取組
(差別及び虐待の禁止)
第7条 何人も、障がいを理由とする差別及び虐待をしてはならない。
2 合理的配慮は、社会的障壁の除去に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう適切に行われなければならない。
(相互理解の促進)
第8条 市、市民及び事業者は、障がいに関する理解の不足から生じる誤解や偏見を解消するため、障がいのある人と相互に理解を深めなければならない。
2 市、市民及び事業者は、相互理解の促進を図るため、研修の実施及び相互に交流できる機会の提供その他必要な取組を行うよう努めるものとする。
3 市は、義務教育において、児童及び生徒が障がいに対する理解を深めるよう障がいに関する教育を積極的に行うものとする。
第3章 障がいを理由とする差別の解消を図るための取組
(市における社会的障壁の除去のための合理的な配慮の提供)
第9条 市は、障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障がいのある人の家族、後見人その他の関係者が本人に代わって行ったものを含む。以下「意思の表明」という。)があった場合において、当該障がいのある人が障がいのない人と同等に権利を行使できるようにするため、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮の提供をするものとする。障がいのある人の意思の表明がない場合であっても、当該障がいのある人が現に社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときも同様とする。
(事業者における社会的障壁の除去のための合理的な配慮の提供)
第10条 事業者は、前条に規定する意思の表明があった場合において、当該障がいのある人が障がいのない人と同等に権利を行使できるようにするため、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮の提供をするものとする。障がいのある人の意思の表明がない場合であっても、当該障がいのある人が現に社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときも同様とする。
(令6条例13・一部改正)
第4章 障がいを理由とする差別に対する相談体制
(相談)
第11条 障がいのある人又はその家族、後見人その他の関係者は、障がいのある人への差別又は虐待に該当すると思われる事案(以下「差別等事案」という。)について、市に相談することができる。
2 市は、前項の規定による相談があったときは、次に掲げる事務を行うものとする。
(1) 障がいのある人又はその家族、後見人その他の関係者への事実の確認及び調査を行うこと。
(2) 障がいのある人又はその家族、後見人その他の関係者に必要な助言及び情報提供を行うこと。
(3) 障がいのある人又はその家族、後見人その他の関係者の相談に係る調整を行うこと。
(4) 関係行政機関への紹介を行うこと。
3 市は、障がいのある人又はその家族、後見人その他の関係者への相談支援を行う事業者に、前項各号に掲げる事務の全部又は一部を委託することができる。
(助言又はあっせんの申立て)
第12条 差別等事案を受けたと認める障がいのある人は、市長に対し、当該差別等事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うよう申し立てることができる。
2 差別等事案を受けたと認める障がいのある人の家族、後見人その他の関係者は、前項に規定する申立てをすることができる。ただし、当該障がいのある人本人の意に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。
(1) 過去に同一の事案の申立てを行ったことがあるとき。
(2) 行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により審査請求その他の不服申立てをすることができるとき。
(3) 申立ての原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているとき(その期間に申立てができなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)。
(4) 現に犯罪の捜査の対象となっているとき。
2 市長は、前項の諮問により助言等を行うことが適当と認められたときは、当該差別等事案を受けたと認められる障がいのある人又はその家族、後見人その他の関係者及び差別等事案をしたと認められる者に対し、助言等を行うものとする。
(勧告)
第15条 市長は、前条第2項の規定により助言等を行った場合において、差別等事案をしたと認められる者が正当な理由なく当該助言等に従わないときは、当該差別等事案をしたと認められる者に対して当該助言等に従うよう勧告することができる。
(公表)
第16条 前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、当該勧告を受けた者の氏名、当該勧告の内容を公表することができる。
2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表の対象となる者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、意見を述べる機会を与えなければならない。
第5章 日田市障がい者差別解消調整委員会
(調整委員会の設置)
第17条 第14条第1項に規定する市長の諮問に応じ、差別等事案に係る申立てについて調査及び審議するため、日田市障がい者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
2 調整委員会が所掌する事務は、次の各号に掲げるとおりとする。
(1) 市長の諮問に応じ、差別等事案に係る事項を調査すること。
(2) 調査結果に基づき、市長に対して助言又はあっせんの必要性について答申すること。
3 調整委員会は、委員8人以内で組織する。
4 調整委員会の委員(以下「委員」という。)は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
(1) 学識経験者
(2) 障がいのある人への差別又は虐待に関し、優れた識見を有する者
(3) 障がい者団体を代表する者
(4) 医療、教育、福祉等の事業に従事する者
5 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 委員会に委員長を置き、委員の互選によりこれを定める。
8 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
9 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、委員長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
10 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
第6章 雑則
(その他)
第18条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成31年4月1日から施行する。
(準備行為)
2 第17条第4項の規定による委員会の委員の委嘱に関し必要な行為は、この条例の施行の日前においてもすることができる。
(日田市特別職の職員で非常勤の者の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
3 日田市特別職の職員で非常勤の者の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年条例第167号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
附則(令和6年3月27日条例第13号)
この条例は、令和6年4月1日から施行する。