○障害のある人もない人も共に暮らしやすい石川県づくり条例

令和元年十月一日

条例第九号

障害のある人もない人も共に暮らしやすい石川県づくり条例をここに公布する。

障害のある人もない人も共に暮らしやすい石川県づくり条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第八条)

第二章 障害を理由とする差別の解消(第九条・第十条)

第三章 障害を理由とする差別の解消の推進等に関する施策(第十一条―第十八条)

附則

全ての県民が、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人としてその尊厳が重んぜられ、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合い、地域で支え合いながら共に暮らす社会こそ、私たちが築くべき地域社会である。

平成十八年に国際連合において採択された障害者の権利に関する条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の人権と基本的自由を確保するための必要かつ適当な変更及び調整を「合理的配慮」と定義した上で、合理的配慮の否定を含めたあらゆる形態の差別を障害に基づく差別として、その撤廃のための措置をとることを定めている。

我が国においても、平成二十五年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が制定され、差別の解消に向けた取組が進みつつあるが、障害及び障害者に対する理解や、障害者との対話を通じて社会的障壁を認識し、除去することの重要性に対する理解は未だ十分に深まっているとは言い難い状況にある。

県民誰もが住み慣れた地域で安心して暮らしていくためには、地域における支え合いの充実が欠かせない。本県では、町内会や自治会などの地域コミュニティにおいて県民同士がきずなを深めながら、支え合う地域を築くための努力が重ねられてきた。

こうした地域の基盤を活かしながら、県民が障害や障害者に対する理解を深めるとともに、障害者が日常生活や社会生活を営む上で妨げとなる様々な社会的障壁について、建設的な対話を通じて、相互に人格と個性を尊重し、歩み寄ることで、これを取り除くよう努力しなければならない。

ここに、県民一人一人が、あるいは地域の多様な主体が、支え合いの心を育み、障害の有無に関わらず、共に暮らしやすい地域社会を築くことを目指して、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、障害を理由とする差別の解消の推進並びに障害者の自立及び社会参加に向けた取組(以下「障害を理由とする差別の解消の推進等」という。)について基本理念を定め、県及び市町の責務並びに県民及び事業者等の役割を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の解消の推進等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

 不当な差別的取扱い 正当な理由なく、障害又は障害に関連することを理由として、不利な区別、排除及び権利の制限をすること、障害者が権利を行使する際に条件を付けることその他の障害者でない者と異なる取扱い(障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置を除く。)をすることをいう。

 合理的配慮 障害者が障害者でない者と同等の権利を行使するため又は障害者でない者と同等の機会及び待遇を確保するための必要かつ適当な現状の変更又は調整であり、その実施に伴う負担が過重でないものをいう。

 地域コミュニティ 町内会、自治会、婦人会、老人クラブ、子ども会、まちづくり団体その他の集団又は組織であって、地域における県民同士の相互交流が行われるものをいう。

(基本理念)

第三条 障害を理由とする差別の解消の推進等は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 全ての県民は、障害の有無に関わらず、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。

 障害を理由とする差別及び社会的障壁に係る問題は、全ての県民にとっての課題であり、障害及び障害者に対する理解並びに社会的障壁の除去の重要性に対する理解の不足から生じていることを踏まえ、全ての県民が、障害及び障害者についての知識及び理解を深める必要があること。

 地域コミュニティにおいては、障害の有無に関わらず全ての県民が、互いにそれぞれの立場で可能な配慮や支援を行い、誰もが地域活動等に参加しやすい環境をつくることなどにより、相互理解、対話及び支え合いの取組を進めること。

 全ての障害者は、社会を構成する一員として、社会、経済、文化、スポーツその他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

 全ての障害者は、言語(手話を含む。)その他の手段による意思疎通及び情報の取得又は利用について、その手段を選択する機会の確保及び拡大が図られること。

(県の責務)

第四条 県は、前条に定める基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進等のための施策を策定し、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

2 県は、市町が障害を理由とする差別の解消の推進等のための施策を講じようとするときは、当該市町と連携するとともに、情報の提供、技術的な助言その他の必要な措置を講ずるものとする。

(市町の責務)

第五条 市町は、基本理念にのっとり、県との役割分担を踏まえ、地域の実情に応じて、障害及び障害者に対する住民の理解を深めるとともに、障害を理由とする差別の解消の推進等のための施策を推進するよう努めるものとする。

(県民及び事業者等の役割)

第六条 県民及び事業者(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号。次条において「障害者差別解消法」という。)第二条第七号の事業者のうち県内に所在するものをいう。以下同じ。)は、障害及び障害者に対する理解を深めるとともに、県又は市町が実施する障害を理由とする差別の解消の推進等のための施策について協力するよう努めるものとする。

2 障害者は、自らの障害の特性及び社会的障壁の除去に必要な支援について、可能な範囲で周囲に伝えることにより、障害及び障害者に対する理解が深められるよう努めるものとする。

3 障害者関係団体は、障害及び障害者に対する理解を深めるための啓発を行うとともに、県又は市町が実施する障害を理由とする差別の解消の推進等のための施策について協力するよう努めるものとする。

(環境の整備)

第七条 行政機関等(障害者差別解消法第二条第三号の行政機関等のうち県内に所在するものをいう。第九条第二項において同じ。)及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての合理的配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めるものとする。

(財政上の措置)

第八条 県は、障害を理由とする差別の解消の推進等に関する施策を進めるため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第二章 障害を理由とする差別の解消

(障害を理由とする差別の禁止)

第九条 何人も、障害者に対して、不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2 行政機関等及び事業者は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害者本人による意思の表明が困難な場合には、当該障害者の家族、介助者等コミュニケーションを支援する者が障害者本人を補佐して行う意思の表明も含む。次項において同じ。)があった場合には、合理的配慮をしなければならない。

3 県民は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合には、合理的配慮をするよう努めるものとする。

(令六条例一五・一部改正)

(相談対応)

第十条 何人も、県に対し、障害を理由とする差別に関する相談をすることができる。

2 県は、前項の規定による相談を受けたときは、その内容に応じて次に掲げる対応をするものとする。

 相談者に対して、必要な助言又は情報提供を行うこと。

 相談に係る関係者間の調整を行うこと。

 関係機関への通知その他連絡調整を行うこと。

第三章 障害を理由とする差別の解消の推進等に関する施策

(普及啓発)

第十一条 県は、県民及び事業者が障害及び障害者に対する理解並びに社会的障壁の除去についての重要性に対する理解を深めるよう、知識の普及及び啓発のための広報活動その他必要な施策を講ずるものとする。

(地域コミュニティにおける環境づくり)

第十二条 県は、地域コミュニティにおいて県民がそれぞれの立場で可能な配慮や支援を行うことにより障害の有無に関わらず誰もが地域活動等に参加しやすい環境がつくられるよう、必要な施策を講ずるものとする。

(共に学び合う交流の機会の充実)

第十三条 県は、障害者と障害者でない者が共に学び合う交流の機会の充実を図るとともに、その相互理解を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

(教育の推進)

第十四条 県は、市町と連携し、障害者がその年齢及び特性を踏まえた十分な教育を受けられるよう、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、市町と連携し、障害者と障害者でない者が共に学べるよう必要な施策を推進するとともに、県民が障害及び障害者に対する理解並びに社会的障壁の除去についての重要性に対する理解を深めるための教育を推進するものとする。

(雇用及び就労の促進)

第十五条 県は、関係機関と連携し、障害者の雇用及び就労について事業者の理解を深めるとともに、障害者の雇用及び就労を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

(意思疎通等のための手段の確保)

第十六条 県は、手話、筆談、要約筆記、点字、音声、拡大文字、代読、代筆、わかりやすい表現その他の障害者にとって利用しやすい手段による意思疎通及び情報の取得又は利用について、手段を選択する機会の確保及び拡大のために必要な施策を講ずるものとする。

(文化芸術活動の推進)

第十七条 県は、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成三十年法律第四十七号)の趣旨にのっとり、障害者による文化芸術活動の推進を図り、文化芸術活動を通じた障害者の個性と能力の発揮及び社会参加の促進に必要な施策を講ずるものとする。

(障害者スポーツの振興)

第十八条 県は、障害者スポーツの振興を図り、障害者がスポーツを行う機会を確保するとともに、障害者と障害者でない者が共にスポーツを行う機会を確保するために必要な施策を講ずるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

(令和六年三月十四日条例第十五号)

この条例は、令和六年四月一日から施行する。

障害のある人もない人も共に暮らしやすい石川県づくり条例

令和元年10月1日 条例第9号

(令和6年4月1日施行)