○糸島市男女共同参画社会推進条例
平成22年3月31日
条例第199号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 基本的施策(第9条―第24条)
第3章 男女共同参画苦情処理委員(第25条―第32条)
第4章 苦情及び救済の申出の処理(第33条―第40条)
第5章 男女共同参画審議会(第41条)
第6章 雑則(第42条)
附則
日本国憲法には、個人の尊重、男女の平等がうたわれています。わが国では、国際的な取組と連動しながら、男女平等の実現に向けた法や制度の整備が着実に進められ、平成11年6月には「男女共同参画社会基本法」が制定されて、男女共同参画社会の形成が21世紀の最重要課題と位置付けられました。
しかしながら、今もなお、「男は仕事、女は家庭」という性別による固定的な役割分担意識や、それに基づく社会制度や慣行が根強く残っており、そのことが、男女の生き方の自由な選択や社会活動への参画の機会を妨げる要因になっています。
一方、少子高齢化の進行や社会経済情勢の急速な変化などにより、従来型の社会のあり方が問われるようになってきました。新たな活力ある社会をつくるためにも、男女が対等なパートナーとして、さまざまな分野に参画していくことが求められています。
このような状況を踏まえ、ここに、糸島市の男女共同参画社会の形成に関する基本理念を定め、市と市民と事業者等が協力し合って、男女共同参画社会の形成に関する取組を総合的かつ計画的に推進することにより、豊かで活力ある糸島市を実現するために、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市の男女共同参画社会の形成に関する基本理念を定め、市、議会、市民及び事業者等の責務を明らかにするとともに、男女共同参画社会の形成に関する施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
(1) 男女共同参画社会 男女が社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を受けることができ、かつ、共に責任を担うべき社会をいう。
(2) 積極的改善措置 前号に規定する機会に係る男女間の格差を改善するため、必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。
(3) 市 市長、教育委員会その他の執行機関をいう。
(4) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する者及び市内を活動の拠点とする個人をいう。
(5) 事業者等 市内において、事業又は活動を行う法人(個人事業主を含む。)及び団体をいう。
(6) セクシュアル・ハラスメント 相手の意に反した性的な言動により、相手方の尊厳を傷つけ、不利益を与え、又はその生活環境を害することをいう。
(7) ドメスティック・バイオレンス 夫婦、恋人等親密な関係にある人から受ける身体的、精神的、性的、経済的又は言語的な暴力及び虐待(子どもを巻き込んでの暴力及び虐待を含む。)をいう。
(基本理念)
第3条 次に掲げる事項を基本理念として、男女共同参画社会の形成を推進しなければならない。
(1) 男女の個人としての尊厳を重んじ、性別による直接的又は間接的な差別的取扱いをしないこと。
(2) 男女の個性が共に尊重され、能力が発揮できる機会を確保すること。
(3) 性別による固定的な役割分担意識を反映した社会における制度又は慣行をなくすよう努めるとともに、これらが男女の社会における活動の自由な選択に対し影響を及ぼすことのないよう配慮すること。
(4) 男女が社会の対等な構成員として、市の政策又は事業者等の事業若しくは活動方針の立案及び決定に対し共同して参画する機会を確保すること。
(5) 家族を構成する男女が、家事、子育て、介護その他の家庭生活において、家族の一員として互いに協力し、かつ、職場、学校、地域その他の社会のあらゆる分野における活動に、対等に参画できるようにすること。
(6) 学校教育、社会教育その他のあらゆる教育の場において、人権教育及び男女平等教育を推進すること。
(7) 男女の対等な関係のもとに、互いの性を理解し、妊娠、出産等性と生殖に関して自らの意思が尊重され、生涯を通して健康で安全な生活を営む権利を確保すること。
(8) 男女共同参画社会の形成は、国際社会における取組と密接な関係を有していることを考慮し、国際的協調のもとに行われること。
(市の責務)
第4条 市は、男女共同参画社会の形成を推進するための施策(以下「推進施策」という。)を総合的かつ計画的に実施しなければならない。
2 市は、国、県その他地方公共団体と連携を図るとともに、市民及び事業者等と協力して推進施策を実施しなければならない。
3 市は、推進施策を実施するために必要な財政上の措置を講じるよう努めなければならない。
(議会の責務)
第5条 議会は、意思決定機関として、男女共同参画社会の形成の推進に配慮しなければならない。
(市民の責務)
第6条 市民は、男女共同参画社会の形成に関する理解を深め、職場、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野における活動において、自ら積極的に参画するよう努めなければならない。
2 市民は、市が実施する推進施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者等の責務)
第7条 事業者等は、事業又は活動において、男女が対等に参画する機会を確保するため、積極的改善措置を実施するよう努めるとともに、家庭生活と両立することができるよう環境の整備に努めなければならない。
2 事業者等は、市が実施する推進施策に協力するよう努めなければならない。
3 事業者等は、糸島市指名競争入札参加資格等に関する規程(平成22年糸島市告示第22号)第2条の規定による申請及び地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第244条の2第3項の規定により条例で定める指定管理者の指定の申請をするときは、男女共同参画の推進状況を報告しなければならない。
4 事業者等は、事業又は活動に対し、市から補助金の交付を受けるときは、男女共同参画の推進状況を報告しなければならない。ただし、市長が必要がないと認めるときは、この限りでない。
(差別的取扱い等の禁止)
第8条 何人も、職場、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野における活動において、性別による差別的取扱いをしてはならない。
2 何人も、セクシュアル・ハラスメント及びドメスティック・バイオレンスを行ってはならない。
3 何人も、性同一性障害を理由とする差別的取扱いをしてはならない。
第2章 基本的施策
(基本計画)
第9条 市長は、推進施策を総合的かつ計画的に実施するため、推進計画、行動計画及び実施計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 市長は、基本計画を策定するときは、あらかじめ糸島市男女共同参画審議会(第5章の章名、第41条の見出し及び同条第1項を除き、以下「審議会」という。)の意見を聴くとともに、広く市民の意見を反映させるための措置を講じるものとする。
3 市長は、基本計画を策定したときは、これを公表しなければならない。
(施策への配慮)
第10条 市は、施策を策定し、及び実施するときは、男女共同参画社会の形成の推進に配慮しなければならない。
(委員の構成割合)
第11条 市は、法第138条の4第3項の規定による附属機関及び本市の条例、規則等の規定により設置する審議会等の委員を任命し、又は委嘱するときは、男女いずれか一方の委員の数が委員の総数の10分の3以上となるよう努めなければならない。
(模範的職場環境)
第12条 市は、次に掲げる事項を実施し、職場における男女共同参画社会の形成の推進の模範とならなければならない。
(1) 女性の職域の拡大を図るとともに、管理職への登用率を高めること。
(2) 職員が育児休業、介護休暇等家庭生活を支援する制度を性別にかかわりなく活用できる環境をつくること。
(3) 男女共同参画社会の形成の推進に関する職員研修を積極的に行うこと。
(教育の充実)
第13条 市は、学校教育、社会教育その他のあらゆる教育の場において、人権意識を向上させ、かつ、男女共同参画社会の形成を推進するための教育を充実させなければならない。
2 市は、男女共同参画社会の形成を推進するため、職場、学校及び地域において、人材の育成に努めなければならない。
(家庭生活との両立支援)
第14条 市は、男女が性別にかかわりなく、共に家事、子育て、介護その他の家庭生活における活動と職場、学校及び地域における活動とを両立して行うことができるよう、情報の提供その他の必要な支援に努めなければならない。
(地域団体への支援)
第15条 市は、地域で活動する団体が活動方針の立案及び決定過程において、男女が対等に参画する機会を確保するため、情報の提供その他の必要な支援をしなければならない。
(事業者への支援)
第16条 市は、事業者に対し、雇用の分野における男女共同参画の積極的な取組を促すため、情報の提供その他の必要な支援をしなければならない。
(個人事業主への支援)
第17条 市は、農林水産業及び商工業を営む個人事業主が当該事業において、男女が対等に経営等に参画できる機会を確保するため、情報の提供、環境の整備その他の必要な支援をしなければならない。
(市民及び団体への支援)
第18条 市は、市民及び団体が男女共同参画社会の形成の推進に向けた取組を積極的に行うことができるよう、情報の提供その他の必要な支援をしなければならない。
(相談への対応)
第19条 市は、性別による差別的取扱いその他の男女共同参画社会の形成を阻害する要因によって人権が侵害された場合(以下「人権侵害」という。)に関し、市民及び事業者等から相談を受けたときは、市、県、国及びその他の関係機関並びに民間の関係団体と連携を図り、情報の提供その他の必要な支援に努めるものとする。
(普及啓発)
第20条 市は、市民及び事業者等が男女共同参画社会の形成に関する理解を深めるため、普及啓発を行わなければならない。
(男女共同参画推進強調月間)
第21条 市は、市民及び事業者等が男女共同参画社会の形成に関する理解を深め、その取組への意欲を高めるため、毎年6月を男女共同参画推進強調月間とする。
2 市は、前項の男女共同参画推進強調月間において、市民及び事業者等の協力のもとに、行事等を実施しなければならない。
(調査研究)
第22条 市は、男女共同参画社会の形成の推進に関し必要な調査研究を行う。
(年次報告)
第23条 市長は、毎年、基本計画の実施状況等を報告書にまとめ、これを公表しなければならない。
(推進拠点)
第24条 市は、糸島市男女共同参画センター(糸島市男女共同参画センター条例(平成22年糸島市条例第22号)第1条に規定する施設をいう。)を、市の男女共同参画社会の形成を推進するための拠点とする。
第3章 男女共同参画苦情処理委員
(男女共同参画苦情処理委員の設置)
第25条 市が実施する推進施策又は男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策(以下「影響施策」という。)についての苦情を適切かつ迅速に処理し、及び人権侵害における被害者の救済を適切かつ迅速に図るため、法第138条の4第3項の規定に基づき、糸島市男女共同参画苦情処理委員(以下「苦情処理委員」という。)を置く。
(定数等)
第26条 苦情処理委員の定数は、2人とし、同性によって占めてはならない。
2 苦情処理委員は、男女共同参画に関し優れた識見を有し、及び社会的信望を有する者のうちから、市長が委嘱する。
3 苦情処理委員の任期は、3年とし、再任を妨げない。ただし、任期は、通算して6年を超えることができない。
4 補欠の苦情処理委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 苦情処理委員は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第3項第2号に規定する非常勤の特別職とする。
(独任制)
第27条 苦情処理委員は、独立してその職務を行う。ただし、重要な事項については、合議するものとする。
(責務)
第28条 苦情処理委員は、公平かつ適切にその職務を遂行しなければならない。
2 苦情処理委員は、その職務上の地位を政党又は政治的目的のために利用してはならない。
(兼職の禁止)
第29条 苦情処理委員は、衆議院議員若しくは参議院議員、地方公共団体の議会の議員若しくは長又は政党その他の政治団体の役員と兼ねることができない。
2 苦情処理委員は、市と取引関係にある法人その他の団体の役員又は苦情処理委員の公平かつ適切な職務の遂行に影響を及ぼすおそれのある職業と兼ねることができない。
(秘密を守る義務)
第30条 苦情処理委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また同様とする。
(解職)
第31条 市長は、苦情処理委員が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、解職することができる。
(1) 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又は職務に堪えられないとき。
(2) 職務を怠り、又は職務上の義務に反したとき。
(3) 苦情処理委員として、ふさわしくない非行があったとき。
2 前項の規定による解職は、当該苦情処理委員に、解職の理由が説明され、かつ、弁明の機会が与えられた後でなければ行うことができない。
(関係機関等との連携)
第32条 苦情処理委員は、その職務の遂行に当たっては、市、県、国及びその他の関係機関並びに民間の関係団体と連携を図るよう努めなければならない。
第4章 苦情及び救済の申出の処理
(苦情及び救済の申出)
第33条 市民及び事業者等は、市が実施する推進施策又は影響施策について、苦情処理委員に苦情を申し出ることができる。
2 何人も、市内において人権侵害により被害を受けたときは、苦情処理委員に救済を申し出ることができる。
(1) 判決、裁決等により確定した事項
(2) 裁判所において係争中又は行政庁において不服申立ての審理中である事項
(3) 国会又は地方公共団体の議会に対し請願が行われた事項
(4) 苦情処理委員が既に苦情等の申出の処理を終了した事項と同一の事項であって、同一の者から申出をされた事項
(5) 前各号に掲げるもののほか、苦情処理委員が処理することが適当でないと認める事項
2 前条第2項の規定による救済の申出は、当該申出に係る人権侵害があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、これをすることができない。
(調査)
第35条 苦情処理委員は、苦情等の申出があったときは、必要な調査を行うものとする。この場合において、あらかじめ関係人に通知しなければならない。
2 苦情処理委員は、特に必要があると認めるときは、関係人に事情を聴取し、記録の提出を求め、又は実地調査を行うことができる。
3 市は、前2項の調査を拒んではならない。
5 苦情処理委員が調査の結果、苦情等の申出に理由がないと認めるときは、市長は、当該申出人に遅滞なくその旨を通知しなければならない。
(是正等勧告)
第36条 苦情処理委員は、第33条第1項の規定による苦情の申出があった場合において、調査の結果に基づき、市が実施する推進施策又は影響施策が男女共同参画社会の形成に支障が生じると認めるときは、市に対し、是正又は改善の措置を講じるよう勧告(以下「是正等勧告」という。)をすることができる。
2 市は、前項の是正等勧告を尊重しなければならない。
3 苦情処理委員は、必要があると認めるときは、市に期限を定めて、第1項の是正等勧告に対する対応結果の報告を求めることができる。
5 前項の公表に当たっては、個人に関する情報の保護等人権に必要な配慮をしなければならない。
(救済勧告)
第37条 苦情処理委員は、第33条第2項の規定による救済の申出(市に係るものに限る。)があった場合において、調査の結果に基づき、市が人権侵害を行ったと認めるときは、市に対し、当該人権侵害に対する救済の措置を講じるよう勧告(以下「救済勧告」という。)をすることができる。
2 苦情処理委員は、前項の救済勧告の決定をするときは、合議しなければならない。
3 市は、第1項の救済勧告を尊重しなければならない。
(制度改善のための意見表明)
第38条 苦情処理委員は、苦情等の申出(市に係るものに限る。)があった場合において、調査の結果に基づき、法令の定め、地方公共団体の権限の制約その他の理由により、是正等勧告又は救済勧告を行うことが困難であると認めるときは、制度改善のための意見表明(以下「意見表明」という。)をすることができる。
2 苦情処理委員は、前項の意見表明の決定をするときは、合議しなければならない。
(市以外のものによる人権侵害の救済)
第39条 苦情処理委員は、第33条第2項の規定による救済の申出(市に係るものを除く。)があった場合において、調査の結果に基づき、救済の必要があると認められるときは、市長に対し、被害を受けた者に必要な助言その他の支援を行うよう要請することができる。
2 市長は、前項の要請を尊重しなければならない。
3 苦情処理委員は、必要があると認めるときは、市長に期限を定めて、第1項の要請に対する対応結果の報告を求めることができる。
(自己の発意による苦情等の処理)
第40条 苦情処理委員は、第33条の規定にかかわらず、必要があると認めるときは、自己の発意により、市の承認を得て調査を行い、是正等勧告又は救済勧告をすることができる。ただし、人権侵害については、市に係るものに限る。
2 前項ただし書の人権侵害について、調査を行うときは、被害を受けたと認められる者の同意を得なければならない。
3 市は、第1項の是正等勧告又は救済勧告を尊重しなければならない。
4 苦情処理委員は、必要があると認めるときは、市に期限を定めて、第1項の是正等勧告又は救済勧告に対する対応結果の報告を求めることができる。
5 苦情処理委員は、第1項の場合において、調査の結果に基づき、法令の定め、地方公共団体の権限の制約その他の理由により、是正等勧告又は救済勧告を行うことが困難であると認めるときは、意見表明をすることができる。
8 苦情処理委員は、第1項の救済勧告の決定をしたときは、当該被害を受けたと認められる者に遅滞なく通知するとともに、これを公表しなければならない。
9 前項の公表に当たっては、個人に関する情報の保護等人権に必要な配慮をしなければならない。
第5章 男女共同参画審議会
(男女共同参画審議会)
第41条 男女共同参画社会の形成の推進を図るため、法第138条の4第3項の規定に基づき、糸島市男女共同参画審議会を置く。
2 審議会は、次に掲げる事項を所掌する。
(1) 基本計画その他の重要事項を調査審議すること。
(2) 基本計画の実施状況等について意見を述べること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が特に必要があると認めること。
3 審議会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また同様とする。
第6章 雑則
(委任)
第42条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成22年4月1日から施行する。