○糸島市こどもの権利条例
令和6年9月30日
条例第23号
目次
前文
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 ひとりの人間としての大切なこどもの権利(第3条―第8条)
第3章 おとなの責務・役割(第9条―第13条)
第4章 施策の推進等(第14条・第15条)
第5章 こどもの権利の侵害に対する相談及び救済(第16条―第19条)
第6章 雑則(第20条)
附則
こどもの権利とは、「こどもの基本的人権」です。すべてのこどもが生まれながらに持っているもの、そして生きていくために絶対に必要な特別な権利です。ゆえに、こどもの権利を行使する際に、こどもには義務も責任も伴いません。一方で、こどもの権利は、おとなの適切な知識と姿勢、働きかけがないと守ることができないため、おとなには、こどもの権利を守る責任があります。
世界のこどもたちの特別な権利を守るために児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号。以下「条約」といいます。)が採択され、国内においてもこども基本法(令和4年法律第77号。以下「基本法」といいます。)が制定されました。そして、これらの理念に基づいて一人ひとりのこどもの権利の保障と糸島市全体で「こどもにやさしいまちづくり」に取り組むため、市民の発意により、本条例の制定が目指されました。市民がこどもの権利の保障を願っていること。それは糸島市における大きな可能性です。
こどもの権利の理解を広めるだけでなく、こどもをはじめ、こどもの育ちにかかわるすべての人たちを、地域全体で支え、共に歩んでいくために、この条例を制定します。
糸島市に住まい、又は集う一人ひとりが当事者になり、こどもにやさしいまちを、こどもと共に目指していきましょう。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、条約及び基本法に基づき、こどもの権利を保障し、こどもが、自らが有する権利を理解し、自らの意思で成長することの大切さをおとなと共に分かち合うことを通して、自分も他者も大切にし、いきいきと育つことができる、こどもにやさしいまちづくりの実現を目的とします。
(1) こども 市内に居住し、通勤し、通学し、若しくは通所し、又は市内で活動する18歳未満の人その他心身の発達の過程にある人をいいます。
(2) おとな こどもの育ちにかかわるすべての人たちのうち18歳未満の人その他心身の発達の過程にある人以外の人をいいます。
(3) 保護者 こどもの親権を行う人若しくは未成年後見人又はこどもを養育する人をいいます。
(4) 行政区等 校区、行政区、隣組等の市内の自治組織をいいます。
(5) 事業所等 市内に事務所若しくは事業所を有し、又は市内で活動する法人や団体をいいます。
(6) 育ち学ぶ施設 児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する児童福祉施設、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校その他のこどもが育ち、学び、活動するために利用する施設をいいます。
第2章 ひとりの人間としての大切なこどもの権利
(大切なこどもの権利)
第3条 この章は、条約及び基本法に基づき、すべてのこどもが生まれながらにして持つ基礎となる権利を定めます。
2 この章に定めるもののほか、条約が定めるすべてのこどもの権利が守られます。
3 こどもの権利は、自分において大切な権利であるのと同様に、すべてのこどもにおいても大切であり、お互いに尊重すべきものです。
(生命、生存及び発達に対する権利)
第4条 こどもは、その命が守られ、持って生まれた能力を十分に伸ばして自分らしく成長できるよう、あらゆる支援を受けることができます。
2 おとなは、いじめ、あらゆる暴力、虐待、不当な扱い、無視などからこどもを守ります。
(差別されない権利)
第5条 こどもは、自分や自分にかかわりのある人の人種や国籍、皮膚の色、見た目、性のあり方、言語、宗教、考え方、障がい、経済状況、学力、年齢、出生、社会的身分など、いかなる理由でも差別されません。
(休み、自由に過ごすことができ豊かに育つ権利)
第6条 こどもは、安心して休むことができ、また自由に過ごすことができる時間と環境を持つことができます。
2 こどもは、豊かに育つために、自由に遊び、学び、又は様々な芸術的、文化的、社会的な活動やスポーツなどを行うことができます。
3 おとなは、こどもが安心して休むことができ、自由に過ごすことができる時間と環境を適切かつ平等に確保します。
(考えを表明し参加できる権利)
第7条 こどもは、すべてのことについて、自分なりの方法で考えを表すことができます。
2 こどもは、ひとりの人間として、こどもにかかわりのあるすべての場に参加することができます。
3 おとなは、こどもが考えをまとめ、表せるよう支援し、そのための時間と環境を確保します。
4 おとなは、こどもが表した考えを、そのこどもの年齢や発達に応じて尊重します。
(こどもにとって最もよいことが第一とされる権利)
第8条 こどもは、自分にかかわりのあるすべてのことについて、何が自分にとって最もよいことかを第一に考えてもらい、説明してもらうことができます。
2 おとなは、こどもに関することを取り決めるときは、こどもそれぞれの個性やちがいを認め、その人格や考えを尊重します。
3 おとなは、こどもが安全な環境で安心して育つために、こどものプライバシーを守ります。
第3章 おとなの責務・役割
(市の責務)
第9条 市は、こどもの権利を保障するため、国、他の地方公共団体及び関係機関と連携し、こどもにやさしいまちづくりのために必要なこども施策を策定し、実施する責務を有します。
2 市は、おとながそれぞれの責務と役割を果たすことができるよう、また、すべてのこどもが安心して過ごし、こどもが必要としている社会資源とつながることができるよう、必要な支援を行います。
(保護者の責務)
第10条 保護者は、その養育するこどもにとってかけがえのない存在であり、こどもの養育及び発達において第一義的責任を有することを自覚し、こどもの権利を尊重した子育てに努めます。
2 保護者は、地域社会がこどもの豊かな人間性と社会性を養う場になり得ることを認識し、こどもが安心して遊び、学ぶことを通じて、健やかに成長できるよう、良好な環境の形成に努めます。
(行政区等の役割)
第11条 行政区等は、こどもをかけがえのない地域社会の一員と認め、温かく見守り、こどもが安心して過ごすことができるよう努めます。
2 行政区等は、地域社会のつながりを生かしながら、こどもの育成のために相互に協力し、こどもにやさしいまちづくりのための活動とそのための人材育成の推進に努めます。
(事業所等の役割)
第12条 事業所等は、こどもにやさしいまちづくりのために、子育てへの理解を深め、こどもと子育てにかかわる人を応援するよう努めます。
(育ち学ぶ施設の役割)
第13条 育ち学ぶ施設は、こどもの健やかな成長にとって重要な役割を担っていることから、こどもが安心して過ごせる場と、こどもがこどもの権利を理解し、自分と他者の権利の大切さについて主体的に学ぶ機会の創出に努めます。
2 育ち学ぶ施設は、その運営にこどもの意見を取り入れ、かつ参加できる仕組みづくりに努めます。
3 育ち学ぶ施設は、こどもが安心して過ごせる場と学ぶ機会の保障のために、他の育ち学ぶ施設と相互に連携します。
第4章 施策の推進等
(施策の推進)
第14条 市は、こどもの権利を保障し、こどもにやさしいまちづくりの実現に向けたこども施策を推進する計画(以下「推進計画」といいます。)を策定します。
2 市は、推進計画を策定し、又は見直すときは、糸島市こども施策推進協議会の意見を聴くとともに、こどもやおとなの意見を聴き、反映させるための措置を講じるものとします。
3 市は、推進計画を策定し、又は見直したときは、これを公表します。
(こどもの権利の啓発)
第15条 市は、こどもやおとな、行政区等、事業所等、育ち学ぶ施設などと協働し、こどもの権利の啓発を行います。
2 市は、こどもやおとな、行政区等、事業所等、育ち学ぶ施設などが行うこどもの権利についての学習、研修、広報等の取組に対し、必要な支援を行います。
第5章 こどもの権利の侵害に対する相談及び救済
(相談及び救済)
第16条 市は、こどもやその関係者がこどもの権利の侵害について相談することができる場と機会を設け、相談内容やこどもが置かれている状況を踏まえて、適切な社会資源へつなぐなどの支援を行います。
2 市は、こどもの権利が侵害されているときは、関係機関等と連携し、こどもの権利の救済及び回復を図るため必要な支援を行います。
(こどもの権利救済委員会の設置)
第17条 市は、こどもの権利の救済を適切かつ迅速に図るため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定に基づき、糸島市こどもの権利救済委員会(以下「救済委員会」といいます。)を置きます。
2 救済委員会は、次に掲げる職務を行います。
(1) 市に相談したにもかかわらずこどもの権利の救済及び回復が図られないこどもやその関係者の申立てを受け、必要な調査、調整を行います。
(2) こどもの権利の救済及び回復に関し、市長から諮問されたことについて、調査審議し、意見を述べます。
(3) こどもの権利の救済及び回復のために必要な支援を行うよう市長に勧告(以下「救済勧告」といいます。)をすることができます。
3 救済委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定めます。
(救済勧告への対応)
第18条 市長は、救済委員会から救済勧告があった場合は、それに従わなければなりません。
2 市長は、救済勧告に対する対応状況を救済委員会に報告しなければなりません。
(公表)
第19条 救済委員会は、救済勧告とその対応状況について公表することができます。
2 前項の公表に当たっては、個人に関する情報の保護など人権に必要な配慮をしなければなりません。
第6章 雑則
(委任)
第20条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。
附則
この条例は、公布の日から施行します。ただし、第5章の規定は、令和7年4月1日から施行します。