○加賀市いじめから子どもを守る条例
平成29年6月26日
条例第31号
子どもは、未来を担う大切な存在であり、一人ひとりの心と体は大切に育まなければならない。
いじめは、いじめを受けた子どもの尊厳及び人権を侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであり、決して許される行為ではない。
全ての子どもが健やかに成長し、安心して学ぶことができる環境をつくることは、我々大人たちの責務であり、いじめは絶対に許さず、かつ見逃さないという強い決意の下、市全体で子どもたちを支え、見守りながら、いじめの根絶に向けて取り組まなければならない。
この考えに立ち、子どもたちが夢と希望にあふれ、笑顔輝く加賀市の実現を目指し、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ、いじめの防止等のための対策に関し、基本理念及び基本となる事項等を定めることにより、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進し、もって子どもが安心して生活し、及び学ぶことができる環境をつくることを目的とする。
(1) いじめ 子どもに対して、当該子どもが在籍する学校に在籍している等当該子どもと一定の人間関係にある他の子どもが行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネット等を通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった子どもが心身の苦痛を感じているものをいう。
(2) いじめの防止等 いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。
(3) 学校 加賀市立学校設置条例(平成17年加賀市条例第87号)第2条に規定する小学校、第3条に規定する中学校及び第4条に規定する義務教育学校をいう。
(4) 子ども 学校に在籍する児童又は生徒をいう。
(5) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護する者をいう。
(6) 市民等 市民及び市内に通勤、通学等をする個人並びに市内において活動を行う法人その他の団体をいう。
(7) 関係機関等 警察署、児童相談所その他のいじめの防止等のための対策に関わる機関及び団体をいう。
(8) 重大事態 次のいずれかに該当するに至った事態をいう。
ア いじめにより子どもの生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認められること。
イ いじめにより子どもが相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認められること。
(基本理念)
第3条 市、加賀市教育委員会(以下「教育委員会」という。)、学校、学校の教職員、保護者及び市民等は、法第3条に規定する基本理念を踏まえ、いじめが全ての子どもに関係する問題であるとの認識に立ち、全ての子どもがお互いを思いやり、尊重し、安心して生活し、及び学ぶことができる環境をつくるとともに、それぞれがその責務及び役割を自覚し、迅速かつ組織的にいじめの防止等に取り組まなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、教育委員会、学校、保護者、市民等及び関係機関等と連携し、いじめの防止等のための施策を策定し、及び実施しなければならない。
(教育委員会の責務)
第5条 教育委員会は、基本理念に基づき、学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講じなければならない。
(学校及び学校の教職員の責務)
第6条 学校及び学校の教職員は、基本理念に基づき、教育委員会、当該学校に在籍する子どもの保護者、市民等及び関係機関等と連携を図りながら、いじめの防止及び早期発見に取り組まなければならない。
2 学校及び学校の教職員は、当該学校に在籍する子どもがいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処しなければならない。
(保護者の役割)
第7条 保護者は、子どもの教育について第一義的責任を有するものであり、いじめを正しく認識し、その保護する子どもに対し、いじめは絶対に許されない行為であることを説明し、これを十分に理解させるよう努めるものとする。
2 保護者は、その保護する子どもがいじめを受けていると思われるときは、適切に当該子どもをいじめから保護するものとする。
3 保護者は、市、教育委員会及び学校が行ういじめの防止等のための対策に協力するよう努めるものとする。
(市民等の役割)
第8条 市民等は、いじめが行われないよう地域において子どもに対する見守り、声かけ等を行い、子どもが安心して生活することができる環境づくりに努めるものとする。
2 市民等は、いじめを発見したとき又はいじめが行われている疑いがあると思われるときは、市、教育委員会、学校又は関係機関等に情報を提供するよう努めるものとする。
3 市民等は、市、教育委員会、学校又は関係機関等が行ういじめの防止等のための対策に協力するよう努めるものとする。
(子どもの役割)
第9条 子どもは、いじめを行わず、互いに思いやり、及び支え合うよう努めるものとする。
2 子どもは、いじめを受け、又はいじめが行われていることを認識したときは、その家族、教職員その他の関係者に相談するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第10条 市は、いじめの防止等のための対策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(市いじめ防止基本方針)
第11条 市及び教育委員会(以下「市等」という。)は、法第12条の規定により、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(以下「市いじめ防止基本方針」という。)を定めるものとする。
2 市等は、子どもを取り巻く社会情勢の変化等を勘案し、必要に応じて市いじめ防止基本方針の見直しを行い、変更するものとする。
3 市等は、市いじめ防止基本方針を策定したとき又は変更したときは、速やかにこれを公表するものとする。
(学校いじめ防止基本方針)
第12条 学校は、法第13条の規定により、当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針(以下「学校いじめ防止基本方針」という。)を定めるものとする。
2 学校は、市いじめ防止基本方針を参酌し、必要に応じて学校いじめ防止基本方針の見直しを行い、変更するものとする。
3 学校は、学校いじめ防止基本方針を策定したとき又は変更したときは、速やかにこれを公表するとともに、保護者及び市民等の理解及び協力が得られるよう努めるものとする。
(いじめ等生徒指導連絡協議会等)
第13条 市等は、法第14条第1項の規定により、関係機関等の連携を図るため、加賀市いじめ等生徒指導連絡協議会(以下「協議会」という。)を置く。
2 前項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に条例で定める。
3 教育委員会は、法第14条第3項の規定により、協議会との円滑な連携の下に、市いじめ防止基本方針に基づく市におけるいじめの防止等のための対策を実効的に行うため、加賀市いじめの防止等対策委員会(以下「対策委員会」という。)を置く。
4 前項に定めるもののほか、対策委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に条例で定める。
(いじめの防止のための措置)
第14条 教育委員会及び学校は、当該学校に在籍する子どもの豊かな情操及び道徳心を培い、心の通う対人交流の素地を養うことがいじめの防止に資することを踏まえ、全ての教育活動を通じた道徳教育、体験活動等の充実を図らなければならない。
2 教育委員会及び学校は、当該学校に在籍する子どもの保護者、市民等及び関係機関等と連携を図りながら、いじめの防止に資する当該子どもの自主的な企画及び運営による活動に対する支援、当該子ども及びその保護者並びに教職員に対するいじめの防止に関する理解の促進その他必要な措置を講ずるものとする。
(いじめの早期発見のための措置)
第15条 教育委員会及び学校は、当該学校におけるいじめの実態を的確に把握し、いじめの早期発見を図るため、当該学校に在籍する子どもに対する定期的な調査その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 市等は、いじめに関する通報及び相談を受け付けるための効果的な体制の整備に必要な施策を講ずるものとする。
3 教育委員会及び学校は、当該学校に在籍する子ども及びその保護者並びに当該学校の教職員がいじめに係る相談を行うことができる体制を整備するものとする。
4 教育委員会及び学校は、相談体制を整備するに当たっては、保護者、市民等及び関係機関等との連携の下、いじめを受けた子どもの教育を受ける権利その他の権利利益が擁護されるよう配慮するものとする。
(インターネット等を通じて行われるいじめに対する対策)
第16条 教育委員会及び学校は、当該学校に在籍する子ども及びその保護者が、発信された情報の高度の流通性、発信者の匿名性その他のインターネット等を通じて送信される情報の特性を踏まえ、インターネット等を通じて行われるいじめを防止し、及び効果的に対処することができるよう、当該子どもに対する情報モラル教育(情報化社会の中で適切に行動するための基本となる考え方及び態度を養うことを目的とする教育をいう。)の充実に努めるとともに、その保護者に対して、必要な啓発活動を行うものとする。
2 教育委員会は、子どもがインターネット等を通じて行われるいじめに巻き込まれることがないよう適切に対処できる体制の整備に努めるとともに、関係機関等との連携を図るものとする。
3 教育委員会は、インターネット等を通じて行われるいじめについて、情報化の進展状況を勘案し、学校、子ども及びその保護者に対し、最新の情報を提供する等必要な措置を講ずるものとする。
(学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)
第17条 学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、法第22条の規定により、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。
(いじめに対する措置)
第18条 学校の教職員、教育委員会の職員その他の子どもからの相談に応じる者及び子どもの保護者は、子どもからいじめに係る相談を受けたとき又はいじめの事実があると思われるときは、当該子どもが在籍する学校への通報その他の適切な措置を講ずるものとする。
2 学校は、前項の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する子どもがいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該子どもに係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を教育委員会に報告するものとする。
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた子ども又はその保護者に対する支援及びいじめを行った子どもに対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。
4 教育委員会は、第2項の規定による報告を受けたときは、必要に応じ、当該学校に対し必要な支援を行い、若しくは必要な措置を講ずることを指示し、又は当該報告に係る事案について自ら必要な調査を行うものとする。
(重大事態への対処)
第19条 学校は、重大事態が発生したときは、教育委員会を通じて、その旨を市長に報告しなければならない。
3 前項の規定による調査が行われたときは、その結果を、教育委員会が行った場合にあっては市長に、学校が行った場合にあっては教育委員会を通じて市長に報告するものとする。
4 教育委員会又は学校は、第2項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた子ども及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他必要な情報を適切かつ迅速に提供するものとする。
5 教育委員会は、第2項の規定による調査の結果を踏まえ、当該調査に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のために必要な措置を講ずるものとする。
(市長等による対処)
第20条 市長は、法第30条第2項の規定により、加賀市いじめ調査委員会(以下「調査委員会」という。)を置く。
3 市長は、前項の規定による調査を行ったときその他必要があると認めるときは、当該調査に係るいじめを受けた子ども及びその保護者に対し、当該調査の結果その他の必要な情報を適切かつ迅速に提供するものとする。
4 市長は、第2項の規定による調査を行ったときは、その結果を議会に報告しなければならない。
5 市長及び教育委員会は、第2項の規定による調査の結果を踏まえ、自らの権限及び責任において、当該調査に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生防止のために必要な措置を講ずるものとする。
6 調査委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に条例で定める。
(個人情報の取扱い)
第21条 いじめに関する相談、調査等に関係した者は、正当な理由がなく、相談、調査等に際し知り得た個人情報を他人に漏らしてはならない。
(委任)
第22条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長又は教育委員会が別に定める。
附則
この条例は、平成29年10月1日から施行する。
附則(令和6年12月16日条例第45号)
(施行期日)
1 この条例は、令和7年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の日の前日までになされた処分、手続その他の行為は、この条例による改正後の相当規定によりなされた処分、手続その他の行為とみなす。