○加賀市災害対策基本条例

平成29年6月26日

条例第32号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第8条)

第2章 予防対策(第9条―第13条)

第3章 応急復旧対策(第14条―第17条)

第4章 復興対策(第18条―第20条)

第5章 他の被災地支援(第21条)

附則

私たちの住む加賀市は、山や川、海といった自然に囲まれ、農林水産業はもとより、九谷焼や山中漆器といった伝統産業、山代や山中、片山津の各温泉を主とした観光産業など、大地からの恩恵によって発展してきた地域である。

その一方、これらの豊かな大地は、時として集中豪雨による浸水被害や北陸地方特有の雪害をもたらすなど、決して災害と無縁な地域ではない。また、全国的にも震災等の未曾有の大規模災害が続発しており、これらの災害のたびに、自然の持つ力の大きさ、恐ろしさを痛感するところである。

加賀市は温泉観光都市であり、私たちは、人に対する気遣い、心配りといった「おもてなし」の心を生かし、いつ発生してもおかしくない災害に備えた防災対策及び災害に直面したすべての人たちの災害被害を最小限に食い止めるための減災対策を日頃から実施し、継続していく必要がある。

このことから、私たちは、自らのことは自らが守る自助、身近な地域で支え合う共助及び行政による公助の理念を念頭に、市民、事業者及び市が一体となって様々な災害に備え、立ち向かう決意を明確に示すとともに、それぞれの責務を十分に理解し、それらが協働することにより、災害に強い、安全で安心なまちづくりを目指すため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、災害の予防、応急復旧及び復興にかかる対策に関し、市民、事業者及び市の責務を明らかにするとともに、それらの対策の基本となる事項を定めることにより、災害から市民の生命、身体及び財産を守り、被害の軽減及び回復を図り、もって、災害に強い、安全で安心なまちづくりの実現を目指すことを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する原因により生ずる被害をいう。

(2) 防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。

(3) 減災 災害が発生した場合における被害を可能な限り軽減するための取組をいう。

(4) 市民 市内に住所を有する者又は居住する者をいう。

(5) 事業者 市内において事業活動を行う個人、法人その他の団体をいう。

(6) 自主防災組織 災害から自らの地域社会を守る活動等を行うため、市民が自主的に組織する団体をいう。

(7) 災害ボランティア 災害の発生後に、被災者の生活や自立を支援するため、自発的に能力や時間を提供する個人又は団体をいう。

(8) 要配慮者 高齢者、障がい者、乳幼児、傷病者、妊産婦、外国人、旅行者等、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に配慮が必要とされる者をいう。

(9) 高齢者等避難 災害対策基本法(昭和36年法律第223号。以下「法」という。)第56条第1項後段に規定する通知又は警告をいう。

(10) 避難指示 法第60条第1項に規定する避難のための立退きの指示をいう。

(11) 緊急安全確保 法第60条第3項に規定する緊急に安全を確保するための措置の指示をいう。

(基本理念)

第3条 防災及び減災のために行う対策(以下「防災等対策」という。)は、自らの生命、身体及び財産は自らが守る自助、身近な地域コミュニティ等で助け合う共助並びに行政による公助を基本として、総合的な視点で実施されなければならない。

2 防災等対策は、市民、事業者及び市がそれぞれの責務を果たし、その持てる能力を生かし、及び協働して実施されなければならない。

3 防災等対策は、男女が互いにその個性及び能力を十分に理解し、責任を分かち合い、及び協力して実施されなければならない。

(地域防災計画への反映)

第4条 法第16条第1項の規定に基づき設置された加賀市防災会議は、法第42条第1項の規定に基づき作成された地域防災計画(以下「市地域防災計画」という。)を修正する場合は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)を尊重するものとする。

(市民の責務)

第5条 市民は、基本理念にのっとり、平常時から避難所及び避難場所の把握、避難経路の確認など、災害の発生時に自らの身の安全を確保するために必要な取組を実施するよう努めるものとする。

2 市民は、自主防災組織が互いに助け合って災害から自らの地域社会を守る活動を担う中核をなす組織であることを認識し、その活動に積極的に参加するよう努めるものとする。

3 市民は、市長その他の執行機関(以下「市長等」という。)が実施する防災等対策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、平常時から事業活動に伴う災害を未然に防止するとともに、社会的責任を自覚し、自らが作成する防災計画に基づく取組等を実施するなど、災害に備えるよう努めるものとする。

2 事業者は、地域社会の構成員であることを自覚し、市民及び自主防災組織と相互に連携し、又は協力するよう努めるものとする。

3 事業者は、市長等が実施する防災等対策に協力するよう努めるものとする。

(市長等の責務)

第7条 市長等は、市民の生命、身体及び財産を災害から守る公助の担い手として、市地域防災計画に基づき、災害を未然に防止するとともに、災害被害を最小限に食い止めるために必要な施策を講じなければならない。

2 市長等は、防災等対策の実施に当たって、市民、事業者、自主防災組織、国、他の地方公共団体等との連携及び協力に努めなければならない。

(議会の責務)

第8条 議会は、市民の生命、身体及び財産を災害から守るため、防災及び減災に関する調査及び研究を行い、市長等が実施する防災等対策への助言及び提言を行うよう努めなければならない。

2 議会は、国及び県の動向を踏まえ、地域の実情に合わせた市長等の防災等対策の執行の監視に努めるとともに、災害の発生時には、市長等が行う被災地及び避難所等の状況の把握に協力するよう努めなければならない。

第2章 予防対策

(情報の提供及び収集)

第9条 市長等は、災害の発生に備え、平常時からハザードマップ、避難所等に関する情報を市民、事業者及び自主防災組織(以下「市民等」という。)に提供しなければならない。

2 市長等は、市民等への確実かつ迅速な情報伝達を確保するため、地域の実情を踏まえ、複数の情報伝達手段を組み合わせるなど、災害に強い情報伝達システムの構築に努めなければならない。

3 市民等は、災害の発生に備え、平常時から防災及び減災のために必要な情報の収集に努めるものとする。

(自主防災活動の推進等)

第10条 市長等は、自主防災訓練など、市民等が地域において自発的かつ組織的に行う自主防災活動に対して支援及び協力するよう努めなければならない。

2 市民等は、自主防災活動に参加し、又は協力するよう努めるものとする。

(要配慮者への支援)

第11条 市長等及び市民等は、災害の発生に備え、要配慮者に配慮した対策に努めるものとする。

2 市長等及び市民等は、要配慮者の協力のもと、その支援を行うために必要な情報の収集及び把握並びに当該支援を行うための体制の整備に努めるものとする。

3 市長等及び避難所となる施設の管理者は、要配慮者に配慮した施設の整備に努めるものとする。

4 要配慮者の支援に従事する者又は従事した者は、当該要配慮者に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的で使用してはならない。

(防災教育・防災訓練)

第12条 市長等は、講習会や市民等と連携した防災訓練等の実施により、防災及び減災に関する知識の普及及び市民等の意識の高揚を図るとともに、自主防災活動を支える人材の育成に努めなければならない。

2 市長等は、防災訓練、研修等により、市職員の防災及び減災に関する能力の向上に努めなければならない。

3 議会は、研修等への参加、防災訓練の実施等により、議員自らの防災及び減災に関する能力の向上に努めなければならない。

4 市民は、市長等が行う防災訓練に積極的に参加するよう努めるものとする。

5 事業者は、市長等が行う防災訓練に参加し、又は連携するとともに、従業員に対し、防災訓練を実施するなど、防災及び減災に関する知識を習得する機会を提供するよう努めるものとする。

(文化財の保護)

第13条 市長等は、平常時から、市民等、国、県、文化財所有者及び専門家と連携し、文化財を災害から守るための体制の整備に努めるものとする。

第3章 応急復旧対策

(応急復旧対策)

第14条 市長等は、災害が発生した場合においては、必要に応じ、当該災害に対する応急復旧活動を行うための体制を速やかに確立し、市民等の協力を得て、国、県及び防災関係機関とともに必要な措置を講じなければならない。

2 市民等は、災害が発生した場合においては、相互に協力し、初期消火、被災者の救護その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(避難対策)

第15条 市長等は、食料、毛布その他の被災した者の生活に必要な物資の確保、飲料水の供給等のため、他の地方公共団体等との応援協定を締結するなど、必要な対策を講じなければならない。

2 市長は、災害の種類に応じた避難所及び避難場所を確保しなければならない。

3 市民は、防災関係機関からの災害に関する情報に留意し、危険を認知したときは自主的に避難するとともに、市長による高齢者等避難、避難指示及び緊急安全確保に対し、速やかにこれに応じるものとする。

4 避難所に避難した者は、互いに助け合い、及び協力し、避難所を円滑に運営するよう努めるものとする。

(帰宅困難者の支援)

第16条 市長等及び事業者は、災害が発生した場合においては、通学者、来所者、従業員、旅行者等帰宅等が困難になった者の円滑な帰宅又は避難を支援するために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。

(自主防災組織等への支援)

第17条 市長等は、災害が発生した場合においては、自主防災組織及び災害ボランティアによる被災者への円滑な支援活動を支援するため、活動拠点の提供及び情報の共有に努めなければならない。

2 市長等、市民及び事業者は、災害が発生した場合においては、自主防災組織及び災害ボランティアによる活動に対して必要な協力を行うよう努めるものとする。

第4章 復興対策

(市長等の復興対策)

第18条 市長等は、災害により甚大な被害を受けた場合においては、国、県、防災関係機関、市民等、災害ボランティア等と協力し、被災地の復興に努めなければならない。

2 市長等は、前項の場合においては、必要に応じ、円滑な市民生活の再建及び被災地の復興を図るため、市民の意見等を踏まえた災害復興計画を策定し、その対策を講ずるものとする。

(議会の復興対策)

第19条 議会は、前条第2項に規定する災害復興計画について、将来のまちづくりの方向性を定める重要性に鑑み、迅速かつ慎重な審議を行うために必要な措置を講ずるものとする。

2 議会は、市長等並びに国及び県に対し災害復旧の推進並びに支援活動の実施及び調整を働きかけ、被災地の復興に努めなければならない。

(復興対策への協力)

第20条 市民等は、相互に協力して速やかな生活及び事業の再建並びに被災地の復興に努めるものとする。

2 市民等は、市長等が実施する復興対策に協力するよう努めるものとする。

第5章 他の被災地支援

(他の被災地支援)

第21条 市長等は、必要に応じ、災害により甚大な被害を受けた他の地方公共団体の被災地及び被災者の支援に努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

(令和4年3月24日条例第5号)

この条例は、公布の日から施行する。

加賀市災害対策基本条例

平成29年6月26日 条例第32号

(令和4年3月24日施行)