○甲斐市男女共同参画推進条例
平成22年3月10日
条例第1号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 性別による権利侵害の禁止(第9条・第10条)
第3章 基本的施策(第11条―第26条)
第4章 男女共同参画推進委員会(第27条)
第5章 雑則(第28条)
附則
個人の尊重と法の下の平等は、日本国憲法がすべての人に保障する権利であり、男女共同参画社会基本法では、男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付けている。
甲斐市においても「甲斐ヒューマンプラン」を策定し、男女共同参画社会の実現に向けた様々な取組を進めてきたところであるが、性別による固定的な役割分担意識やそれに基づく社会慣行は依然として根強く存在し、真の男女平等の達成には、なお多くの課題が残されている。
緑と活力あふれる生活快適都市・甲斐市を築いていくためには、男女が、社会的文化的に形成された性別の概念にとらわれず、自立した個人として、その個性と能力を十分に発揮することのできる男女共同参画社会を実現することが必要である。
このような認識に立ち、私たち甲斐市民は、行政と協力して男女共同参画社会の実現に向けた取組を積極的に推進していくため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関し、基本理念を定め、市、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者の責務を明らかにするとともに、市の基本的施策を定め、男女共同参画への取組を通じた男女平等社会の実現を目的とする。
(1) 男女共同参画 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことをいう。
(2) 積極的改善措置 前号に規定する機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。
(3) 市民 住民登録の有無にかかわらず市内に居住する者、市内に勤務する者及び市内に通学する者をいう。
(4) 自治組織 市内の行政区等地縁に基づいて形成された団体その他市民が地域活動を行う団体をいう。
(5) 事業者 営利又は非営利の別にかかわらず、市内において事業活動を行うすべての個人及び法人その他の団体をいう。
(6) 教育に携わる者 市内において、家庭教育、学校教育、社会教育、保育等その他のあらゆる教育に携わる者をいう。
(7) セクシュアル・ハラスメント 性的な言動に対する相手方の対応によって不利益を与え、又は性的な言動により相手方の生活環境を害することをいう。
(8) ドメスティック・バイオレンス 配偶者、恋人等の間における身体的、心理的、性的、経済的等の暴力的行為をいう。
(基本理念)
第3条 男女共同参画の推進は、次に掲げる事項を基本理念として行わなければならない。
(1) 男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること、その他の男女の人権が尊重されること。
(2) 性別による固定的な役割分担意識及びこれに基づく社会における制度又は慣行が、男女の社会における活動の自由な選択に対して影響を及ぼすことのないよう配慮されること。
(3) 男女が、社会の対等な構成員として、市における政策又は事業者等における方針の立案及び決定に共に参画する機会が確保されること。
(4) 家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援を受けながら、家庭、職場、地域、学校その他のあらゆる分野(以下「社会のあらゆる分野」という。)における活動に、対等に参画できるようにすること。
(5) 男女共同参画の推進が国際社会における取組と密接な関係を有していることを考慮し、国際的協調の下に行われること。
(6) 男女が、互いの性についての理解を深め双方の健康に配慮するとともに、生涯にわたる性と生殖に関し他の者に強要されることなく自らが決定する権利を十分尊重し合い、生涯にわたる心身の健康が確保されること。
(7) 社会のあらゆる分野から、暴力及び虐待並びに他の者を不快にさせる性的な言動を根絶すること。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画の推進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、実施しなければならない。
2 市は、男女共同参画の推進に関する施策を実施するに当たり、必要な財政上の措置及び推進体制の整備に努めなければならない。
3 市は、男女共同参画の推進について、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者の関心及び理解が深まるよう必要な啓発活動及び学習機会の充実に努めなければならない。
4 市は、男女共同参画の推進に関する職員の資質の向上及び人材育成を図るため、職員研修等を実施しなければならない。
5 市は、男女共同参画の推進に関する施策を実施するに当たり、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者のほか、国、県及び他の地方公共団体との連携に努めなければならない。
(市民の責務)
第5条 市民は、自ら男女共同参画に関する理解を深め、基本理念にのっとり、社会のあらゆる分野において、男女共同参画の推進に努めるものとする。
2 市民は、社会のあらゆる分野において、男女の役割を固定化させている従来の慣行を改め、自立した個人として対等な関係で共に社会を形成していけるよう努めるものとする。
3 市民は、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(自治組織の責務)
第6条 自治組織は、基本理念にのっとり、性別による固定的な役割分担意識又は社会の慣行等及び男女共同参画を推進するに当たり弊害となる要因を取り除くよう努めるものとする。
2 自治組織は、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
3 自治組織における役職の構成に当たっては、性別を理由に異なった取扱いをしないよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第7条 事業者は、事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、積極的に男女共同参画の推進に努めるものとする。
2 事業者は、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
3 事業者は、事業活動において、男女の平等に関する法令を遵守し、男女が家庭と事業活動とを両立できる環境を整えることに努めるものとする。
(教育に携わる者の責務)
第8条 教育に携わる者は、基本理念にのっとり、性別等による固定的な意識を植え付けることがないよう配慮し、男女の平等について理解を深める教育等を行うよう努めるものとする。
第2章 性別による権利侵害の禁止
(性別による権利侵害の禁止)
第9条 何人も、社会のあらゆる分野において、性別による差別的取扱いをしてはならない。
2 何人も、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンス等の権利侵害をしてはならない。
(公衆に表示する情報に関する留意)
第10条 何人も、公衆に表示する情報において、性別による固定的な役割分担及び暴力等を助長し、及び連想させる表現並びに性的感情を刺激する表現を行わないよう努めなければならない。
第3章 基本的施策
(基本計画)
第11条 市長は、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、男女共同参画の推進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画の推進に関する施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ甲斐市男女共同参画推進委員会の意見を聴くとともに、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者の意見を反映することができるよう適切な措置を講ずるものとする。
4 市長は、基本計画を策定したときは、速やかに、これを公表するものとする。
5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
(施策の策定等に当たっての配慮)
第12条 市は、男女共同参画に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画の推進に配慮するものとする。
(積極的改善措置)
第13条 市長は、各種行政委員又は審議会等における委員を委嘱し、又は任命するときは、男女が平等に市の施策及び方針の決定の過程に参画できる機会を確保するために必要な積極的改善措置を講じ、男女の委員の構成に配慮するものとする。
(男女共同参画の推進に向けた支援)
第14条 市は、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者が行う男女共同参画の推進に関する活動又は取組を支援するため、情報の提供、活動機会の確保その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(家庭生活とそれ以外の活動との両立支援)
第15条 市は、男女が共に家庭生活における活動と職業生活その他社会における活動とを両立することができるための必要な支援を行うよう努めるものとする。
(子育て及び介護に対する支援)
第16条 市は、家族を構成する者が性別により役割を固定することなく子育て及び介護を積極的に行うことができるよう環境の整備に努めるものとする。
(事業者への支援)
第17条 市は、事業者に対し、雇用の分野における男女共同参画が推進されるよう必要な支援を行うものとする。
2 市は、事業者に対し、職場におけるセクシュアル・ハラスメント等の男女の人権に関する問題の発生が事業活動に対する障害となるおそれがあることを考慮し、当該問題の回避に係る情報の提供その他必要な支援を行うものとする。
(自営業者への支援)
第18条 市は、農林業、商工業その他の産業における自営業者の男女共同参画を推進するため、これらに従事する者に対し、情報の提供その他必要な支援を行うものとする。
(情報提供及び広報活動)
第19条 市は、男女共同参画の推進について、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者の理解を深めるため、あらゆる機会を通じて情報を提供し、及び広報活動を行うよう努めるものとする。
(男女平等に関する教育の推進)
第20条 子の親又はその家族は、基本理念にのっとり、子どもの健全な育成に努めるものとする。
2 教育に携わる者は、性別による差別のない教育に努めるものとする。
3 市は、家庭教育、学校教育、社会教育その他のあらゆる教育の分野において男女共同参画の視点が盛り込まれるよう啓発その他の支援を行うものとする。
(国際的協調のための措置)
第21条 市は、男女共同参画の推進に関し国際的な相互協力を円滑に図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(推進体制)
第22条 市は、関係部局相互の連携により、男女共同参画の推進に関する施策を円滑かつ総合的に計画し、調整し、及び実施するため、市長を長とする推進体制を整備するものとする。
(新たな取組を必要とする分野の推進)
第23条 市は、新たな取組を必要とする分野(科学技術、防災、災害復興、地域興し、まちづくり、観光及び環境の各分野をいう。)における男女共同参画を推進するものとする。
(苦情及び相談への対応)
第24条 市は、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者からの男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる市の施策に関する苦情又は性別による差別的取扱いによる権利の侵害等に関する相談に対応するため、相談窓口を設置し、関係機関と連携して迅速かつ適切に対応するよう努めるものとする。
2 市長は、前項の場合において、必要があると認めるときは、甲斐市男女共同参画推進委員会に意見を求めることができる。
(調査研究)
第25条 市は、男女共同参画の推進に関する施策を策定し、及び実施するために必要な調査研究を行うものとする。
2 市長は、必要があると認める場合は、市民、自治組織、事業者及び教育に携わる者に対し、男女共同参画の状況に関する調査について協力を求めることができる。
(年次報告及び公表)
第26条 市長は、毎年度、男女共同参画の推進に関する施策の実施の状況を取りまとめた報告書を作成し、公表するものとする。
第4章 男女共同参画推進委員会
(男女共同参画推進委員会)
第27条 男女共同参画の推進を図るとともに、推進に関する基本的事項について調査審議するため、甲斐市男女共同参画推進委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
2 委員会は、市長の求めに応じて、次に掲げる事項について調査審議し、意見を述べるものとする。
(1) 基本計画の策定及び変更に関すること。
(2) 基本計画の推進に関すること。
(3) 男女共同参画の推進に関すること。
(4) 男女共同参画に関する重要事項に関すること。
3 委員会は、委員30人以内で組織する。
4 委員は、識見を有する者、関係団体の代表者及び一般住民のうちから市長が委嘱する。
5 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員会は、必要に応じて開くものとする。
7 委員会の運営について必要な事項は、別に定める。
第5章 雑則
(その他)
第28条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成22年4月1日から施行する。