○北上市文化財保護条例
平成3年4月1日
条例第85号
(目的)
第1条 この条例は、文化財保護法(昭和25年法律第214号。以下「法」という。)第98条第2項の規定に基づき、法の規定による指定を受けた文化財又は岩手県文化財保護条例(昭和51年岩手県条例第44号。以下「県条例」という。)の規定による指定を受けた文化財以外の文化財で、市の区域内に存するもののうち重要なものについて、その保存及び活用のため必要な措置を講じ、もって市民の文化的向上に資するとともに、我が国文化の進歩に貢献することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
(1) 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)
(2) 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
(3) 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で市民生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)
(4) 貝塚、古墳、城跡、旧宅その他の遺跡で歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、山岳その他の名勝地で芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡米地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
(所有権等の尊重及び他の公益との調整)
第3条 北上市教育委員会(以下「教育委員会」という。)は、この条例の施行に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、文化財の保護と他の公益との調整に留意しなければならない。
(有形文化財の指定)
第4条 教育委員会は、市の区域内に存する有形文化財のうち重要なものを北上市指定有形文化財(以下「市指定有形文化財」という。)に指定することができる。
2 教育委員会は、前項の規定に基づく指定をしようとするときは、あらかじめ、指定しようとする有形文化財の所有者等(所有者(所有者が判明しない場合を除く。)及び権原に基づく占有者をいう。以下同じ。)の同意を得なければならない。
3 教育委員会は、第1項の規定に基づく指定をしようとするときは、あらかじめ、北上市文化財保護審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴かなければならない。
4 教育委員会は、第1項の規定に基づく指定をするときは、その旨を告示するとともに、当該市指定有形文化財の所有者等に通知するものとする。
6 教育委員会は、第1項の規定に基づく指定をしたときは、当該市指定有形文化財の所有者に指定書を交付しなければならない。
(解除)
第5条 教育委員会は、市指定有形文化財がその価値を失ったとき、その他特別の理由があるときは、その指定を解除することができる。
3 市指定有形文化財について法第27条第1項の規定による重要文化財の指定又は県条例第4条第1項の規定による岩手県指定有形文化財の指定があったときは、当該市指定有形文化財の指定は、解除されたものとする。
4 前項の場合には、教育委員会は、その旨を告示するとともに、当該有形文化財の所有者等に通知するものとする。
(所有者等の管理義務及び管理責任者)
第6条 市指定有形文化財の所有者等は、この条例並びにこれに基づく教育委員会規則及び教育委員会の指示に従い、市指定有形文化財を管理しなければならない。
2 市指定有形文化財の所有者は、特別の理由があるときは、専ら自己に代わり当該市指定有形文化財の管理の責めに任ずべき者(以下「管理責任者」という。)を選任することができる。
3 市指定有形文化財の所有者は、前項の規定により管理責任者を選任したときは、速やかに、その旨を教育委員会に届け出なければならない。管理責任者を解任したときも、同様とする。
4 第1項の規定は、管理責任者について準用する。
(所有者等の変更等の届出)
第7条 市指定有形文化財の所有者等が変更したときは、新たに所有者等となった者は、速やかに、その旨を教育委員会に届け出なければならない。
2 市指定有形文化財の所有者等又は管理責任者は、その氏名若しくは名称又は住所を変更したときは、速やかに、その旨を教育委員会に届け出なければならない。
(滅失、き損等の届出)
第8条 市指定有形文化財の所有者等(管理責任者があるときは、その者)は、当該市指定有形文化財の全部又は一部が滅失若しくはき損し、又は亡失若しくは盗み取られたときは、速やかに、その旨を教育委員会に届け出なければならない。
(所在の変更の届出)
第9条 市指定有形文化財の所有者等(管理責任者があるときは、その者)は、当該市指定有形文化財の所在の場所を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を教育委員会に届け出なければならない。ただし、教育委員会規則で定める場合は、この限りでない。
(修理)
第10条 市指定有形文化財の修理は、所有者が行うものとする。
(管理又は修理に要する費用)
第11条 市指定有形文化財の管理又は修理に要する費用は、当該市指定有形文化財の所有者等の負担とする。
(管理又は修理に要する費用の補助)
第12条 市指定有形文化財の管理又は修理につき多額の費用を要し、当該市指定有形文化財の所有者等がその負担に堪えないとき、その他特別の理由があるときは、市は当該市指定有形文化財の所有者等に対し、その管理又は修理に要する費用の一部を補助することができる。
(管理又は修理に関する勧告)
第13条 教育委員会は、市指定有形文化財の管理が適当でないため当該市指定有形文化財が滅失し、き損し、又は盗み取られるおそれがあると認めるときは、当該市指定有形文化財の所有者等(管理責任者があるときは、その者)に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を執るべきことを勧告することができる。
2 教育委員会は、市指定有形文化財がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、当該市指定有形文化財の所有者に対し、その修理について必要な勧告をすることができる。
3 市は、前2項の規定に基づく勧告による管理又は修理を行う者に対し、その管理又は修理に要する費用の一部を補助することができる。
(現状変更等の制限)
第15条 市指定有形文化財の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、教育委員会の許可を受けなければならない。ただし、現状の変更については維持の措置又は非常災害のために必要な応急の措置を執るとき並びに保存に影響を及ぼす行為については影響が軽微であるときは、この限りでない。
2 前項の規定による許可には、市指定有形文化財の保存のために必要な限度において条件を付すことができる。
2 教育委員会は、市指定有形文化財の保護上必要があると認めるときは、前項の規定による届出に係る市指定有形文化財の修理について技術的な指導及び助言をすることができる。
(公開)
第17条 教育委員会は、市指定有形文化財の所有者等に対し、6月以内の期間を限って、教育委員会の行う公開の用に供するため当該市指定有形文化財を出品することを勧告することができる。
2 教育委員会は、前項の規定に基づく勧告により市指定有形文化財が出品されたときは、職員のうちから当該市指定有形文化財の管理の責めに任ずべき者を定めなければならない。
3 第1項の規定に基づく勧告による市指定有形文化財の出品に要する費用は、市の負担とする。
4 市は、第1項の規定に基づく勧告により市指定有形文化財を出品したことに起因して当該市指定有形文化財が滅失又はき損したときは、当該市指定有形文化財の所有者等に対し、その通常生ずべき損失を補償する。ただし、当該市指定有形文化財が所有者等又は管理責任者の責めに帰すべき理由によって滅失又はき損したときは、この限りでない。
第18条 教育委員会は、市指定有形文化財の所在の場所を変更して、これを公衆の観覧に供するため第9条の規定による届出があった場合には、当該市指定有形文化財の公開及び当該公開に係る市指定有形文化財の管理について必要な指示をすることができる。
(報告)
第19条 教育委員会は、必要があると認めるときは、市指定有形文化財の所有者等(管理責任者があるときは、その者)に対し、当該市指定有形文化財の現状又は管理若しくは修理の状況につき報告を求めることができる。
(権利義務の承継)
第20条 市指定有形文化財の所有者等が変更したときは、新たに所有者等となった者は、当該市指定有形文化財に関しての条例に基づいてする教育委員会の勧告、指示その他の処分による従前の所有者等の権利義務を承継する。
2 前項の場合において、市指定有形文化財の所有者が変更したときは、従前の所有者は、当該市指定有形文化財の指定書を新たな所有者に引き渡さなければならない。
(無形文化財の指定)
第21条 教育委員会は、市の区域内に存する無形文化財のうち重要なものを北上市指定無形文化財(以下「市指定無形文化財」という。)に指定することができる。
2 教育委員会は、前項の規定に基づく指定をするに当たっては、当該市指定無形文化財の保持者又は保持団体(市指定無形文化財を保持する者が主たる構成員となっている団体で代表者の定めのあるものをいう。以下同じ。)を認定しなければならない。
5 教育委員会は、第1項の規定に基づく指定をした後においても、当該市指定無形文化財の保持者又は保持団体として認定するに足りるものがあると認めるときは、そのものを保持者又は保持団体として追加認定することができる。
(解除)
第22条 教育委員会は、市指定無形文化財が市指定無形文化財としての価値を失ったとき、その他特別の理由があるときは、その指定を解除することができる。
2 教育委員会は、保持者が心身の故障のため保持者として適当でなくなったと認めるとき、保持団体がその構成員の異動のため保持団体として適当でなくなったと認めるとき、その他特別の理由があるときは、その認定を解除することができる。
4 市指定無形文化財について法第56条の3第1項の規定による重要無形文化財の指定又は県条例第24条第1項の規定による岩手県指定無形文化財の指定があったときは、当該市指定無形文化財の指定は、解除されたものとする。
5 前項の場合には、教育委員会は、その旨を告示するとともに、当該市指定無形文化財の保持者又は保持団体として認定されていた団体の代表者に通知するものとする。
6 保持者が死亡したとき、又は保持団体が解散若しくは消滅したときは、当該保持者又は保持団体の認定は解除されたものとし、保持者のすべてが死亡したとき、又は保持団体のすべてが解散若しくは消滅したときは、当該市指定無形文化財の指定は解除されたものとする。この場合においては、教育委員会は、その旨を告示するものとする。
(保持者の氏名変更等の届出)
第23条 保持者が氏名又は住所を変更し、又は死亡したとき、その他教育委員会規則で定める事情があるときは、保持者又はその相続人は、速やかに、その旨を教育委員会に届け出なければならない。保持団体が名称、事務所の所在地若しくは代表者を変更し、構成員に異動を生じ又は解散若しくは消滅したときも、代表者(保持団体が解散又は消滅した場合にあっては、代表者であった者)について、同様とする。
(保存)
第24条 教育委員会は、市指定無形文化財の保存のため必要があると認めるときは、当該市指定無形文化財について記録の作成、伝承者の養成その他その保存のため適当な措置を執ることができる。
2 市は、市指定無形文化財の保持者又は保持団体に対し、その保存に要する費用の一部を補助することができる。
(公開)
第25条 教育委員会は、市指定無形文化財の保持者又は保持団体に対してその公開を勧告することができる。
2 市は、前項の規定に基づく勧告による市指定無形文化財の公開を行う者に対し、その公開に要する費用の全部又は一部を補助することができる。
(保存に関する助言又は勧告)
第26条 教育委員会は、市指定無形文化財の保持者又は保持団体に対し、その保存のため必要な助言又は勧告をすることができる。
(有形民俗文化財等の指定)
第27条 教育委員会は、市の区域内に存する有形の民俗文化財のうち重要なものを北上市指定有形民俗文化財(以下「市指定有形民俗文化財」という。)に、無形の民俗文化財のうち重要なものを北上市指定無形民俗文化財(以下「市指定無形民俗文化財」という。)に指定することができる。
3 教育委員会は、第1項の規定に基づく市指定無形民俗文化財の指定をするときは、その旨を告示するものとする。
(保持者又は保持団体の認定)
第28条 教育委員会は、必要があると認めるときは、市指定無形民俗文化財の保持者又は保持団体(市指定無形民俗文化財を保持する者が主たる構成員となっている団体で代表者の定めのあるものをいう。以下同じ。)を認定することができる。
(解除)
第29条 教育委員会は、市指定有形民俗文化財又は市指定無形民俗文化財が市指定有形民俗文化財又は市指定無形民俗文化財としての価値を失ったとき、その他特別の理由があるときは、その指定を解除することができる。
3 市指定有形民俗文化財又は市指定無形民俗文化財について法第56条の10第1項の規定による重要有形民俗文化財若しくは重要無形民俗文化財の指定又は県条例第30条第1項の規定による岩手県指定有形民俗文化財若しくは岩手県指定無形民俗文化財の指定があったときは、当該市指定有形民俗文化財又は市指定無形民俗文化財の指定は、解除されたものとする。
(保持者又は保持団体の認定の解除)
第30条 教育委員会は、第28条第1項の規定に基づく認定をした場合において、保持者が心身の故障のため保持者として適当でなくなったと認めるとき、保持団体がその構成員の異動のため保持団体として適当でなくなったと認めるとき、その他特別の理由があるときは、その認定を解除することができる。
3 第28条第1項の規定に基づく認定をした場合において、市指定無形民俗文化財の保持者が死亡したとき、又は保持団体が解散し、若しくは消滅したときは、当該保持者又は保持団体の認定は、解除されたものとする。この場合においては、教育委員会は、その旨を告示するものとする。
(現状変更等の届出等)
第31条 市指定有形民俗文化財の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、あらかじめ、その旨を教育委員会に届け出なければならない。
2 教育委員会は、市指定有形民俗文化財の保護上必要があると認めるときは、前項の規定による届出に係る現状の変更又は保存に影響を及ぼす行為について必要な指示をすることができる。
(史跡名勝天然記念物の指定)
第33条 教育委員会は、市の区域内に存する記念物のうち重要なものを北上市指定史跡、北上市指定名勝又は北上市指定天然記念物(以下「市指定史跡名勝天然記念物」と総称する。)に指定することができる。
(解除)
第34条 教育委員会は、市指定史跡名勝天然記念物が市指定史跡名勝天然記念物としての価値を失ったとき、その他特別の理由があるときは、その指定を解除することができる。
2 市指定史跡名勝天然記念物について法第69条第1項の規定による史跡、名勝若しくは天然記念物の指定又は県条例第37条第1項の規定による岩手県指定史跡、岩手県指定名勝若しくは岩手県指定天然記念物の指定があったときは、当該市指定史跡、市指定名勝又は市指定天然記念物の指定は、解除されたものとする。
(現状変更等の制限)
第36条 市指定史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、教育委員会の許可を受けなければならない。ただし、現状の変更については、維持の措置又は非常災害のために必要な応急の措置を執るとき、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微であるときはこの限りでない。
(保存技術の選定等)
第38条 教育委員会は、市の区域内に存する伝統的な技術又は技能で文化財の保存のため欠くことのできないもののうち保存の措置を講ずる必要があるものを北上市選定保存技術(以下「市選定保存技術」という。)として選定することができる。
2 教育委員会は、前項の規定に基づく選定をするに当たっては、当該市選定保存技術の保持者又は保持団体(市選定保存技術を保存することを主たる目的とする団体(財団を含む。)で代表者又は管理人の定めのあるものをいう。以下同じ。)を認定しなければならない。
3 一の市選定保存技術についての前項の規定による認定は、保持者と保存団体とを併せてすることができる。
(解除)
第39条 教育委員会は、市選定保存技術について保存の措置を講ずる必要がなくなったとき、その他特別の理由があるときは、その選定を解除することができる。
2 教育委員会は、保持者が心身の故障のため保持者として適当でなくなったと認めるとき、保存団体が保存団体として適当でなくなったと認めるとき、その他特別の理由があるときは、その認定を解除することができる。
4 市選定保存技術について法第83条の7第1項の規定による選定保存技術としての選定又は県条例第43条第1項の規定による岩手県選定保存技術としての選定があったときは、当該市選定保存技術としての選定は、解除されたものとする。
(保存)
第41条 教育委員会は、市選定保存技術の保存のため必要があると認めるときは、当該市選定保存技術について記録の作成、伝承者の養成その他その保存のため適当な措置を執ることができる。
2 市は、市選定保存技術の保持者又は保存団体その他その保存に当たることを適当と認める者に対し、その保存に要する費用の一部を補助することができる。
(保存に関する指導及び助言)
第42条 教育委員会は、市選定保存技術の保持者又は保存団体その他その保存に当たることを適当と認める者に対し、その保存のため必要な指導及び助言をすることができる。
(補則)
第43条 この条例の実施に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める。
(罰則)
第44条 市指定有形文化財を損壊し、は棄し、又は隠匿した者は、5万円以下の罰金又は科料に処する。
第45条 市指定史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、5万円以下の罰金又は科料に処する。
附則
1 この条例は、平成3年4月1日から施行する。
2 この条例施行の日の前日までに、従来の北上市文化財保護条例(昭和52年北上市条例第12号)、和賀町文化財保護条例(昭和52年和賀町条例第10号)及び江釣子村文化財保護条例(昭和54年江釣子村条例第3号)の規定により指定された文化財は、この条例の規定により指定されたものとみなす。