○VDT作業における労働衛生管理基準

平成15年9月30日

総045

企画調整部長から、課等の長あて通達

1 定義

VDT(Visual Display Terminals)とは、視覚的表示装置と訳され、VDT作業はディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文書・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング及び監視等を行う作業をいう。

2 基本原則

(1) 対象となる作業は、職場において行われるVDT作業とし、別紙「VDT作業の作業区分」(以下「別紙」という。)によりVDT作業を区分し、作業の種類及び作業時間に応じた労働衛生管理を行う。

(2) VDT作業が新しいシステム等の導入により、様々な変化を作業者に与えることを考慮すれば、適宜作業者の労働衛生上の調査を行い、かつ、機器の安全性と健康保持に必要な措置、適正な作業方法等について検討する。

(3) この基準は、現段階において得られた知見に基づくものであり、今後とも引続き調査研究を行い、新たな知見を踏まえて継続的に検討していく。その際に現場の作業実態によりよく適合するため、一定期間ごとに評価を実施し、必要に応じ見直しを行う。

(4) 所属長は、VDT健康問題の重要性を認識し、常に作業者のよりよい作業環境管理、作業管理及び健康管理に努めるとともに、次の点に留意する。

ア 特定の者にVDT作業が偏ることなく作業編成を組むよう配慮する。

イ 作業者の間で、競争などの精神緊張を高めるようなことは避ける。

ウ 作業の不慣れによる作業負担を軽減するため、作業習得のための訓練を行う。

(5) VDT作業者は、VDT健康問題の重要性を認識し、自己の健康を守ることの自覚のもとに積極的に健康保持に努めること。

3 作業環境管理

(1) 作業が行い易いように照明・採光に配慮すること。

(2) ディスプレイ画面における照度は500ルクス以下、書類及びキーボード面における照度は300ルクス以上とすること。

ディスプレイ画面の明るさ並びに書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。

(3) 高輝度の窓には、ブラインド又はカーテン等を設け、必要に応じて輝度を低下することができるようにすること。

(4) 作業中の作業者の視野内には、高輝度の照明器具等がなく、かつ、ディスプレイ画面に映り込まないようにするとともに、グレア防止の有効な措置を講じること。

(5) VDT機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音の低減措置を講じること。

(6) 換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所衛生基準規則に定める措置等を講じること。

4 作業管理

(1) 作業姿勢

VDT作業を行う場合には、最も負担の少ない姿勢を確保すること。

ア ディスプレイは、その画面の上端が作業者の眼の高さとほぼ同じかやや下方になるような高さ(目安:10゜以下)にするとともに、ディスプレイと目の視距離が適正に保たれる程度(目安:おおむね40cm以上)に配置すること。

イ ディスプレイ、キーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく、かつ、適切な視野範囲内に配置すること。

ウ 適正な作業姿勢がとれるよう必要な作業スペースを確保すること。

(2) 一日の作業時間

ア 作業区分A

別紙における「作業区分A」に該当する作業に従事する者(以下「作業区分Aの作業者」という。)については、視覚負担をはじめとする心身の負担を軽減するため、ディスプレイ画面を注視する時間やキーを操作する時間をできるだけ短くし、他の作業を組み込むこと又は他の作業とのローテーションを実施することなどにより、一日の連続VDT作業時間が短くなるように配慮すること。

イ 作業区分B

別紙における「作業区分B」に該当する作業に従事する者(以下「作業区分Bの作業者」という。)についても、同様に、VDT作業が過度に長時間にわたり行われることのないように指導すること。

(3) 一連続作業時間及び作業休止時間

ア 「単純入力型」及び「拘束型」

別紙における「作業の種類」の「単純入力型」及び「拘束型」に該当する作業に従事する者については、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けること。

イ ア以外の型

別紙における「作業の種類」の「単純入力型」及び「拘束型」以外の型に該当する作業に従事する者については、同様に作業休止時間及び小休止を設けるよう指導すること。

(4) 業務量への配慮

作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。

(5) VDT機器及び付属設備等

ア ディスプレイ

表示画面は、照度及びコントラストを作業者が容易に調整でき、かつ、表示される文字又は図形の大きさ等が読み取り易いものであること。

表示画面は、画像がちらつかず安定したものであること。

イ 机又は作業台、椅子

机又は作業台については、その脚まわりの空間は、作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。

作業面は、書類が見易い高さであり、かつ、キーボード、書類等作業のために使用するものが適切に配置できる広さのものであること。

椅子については、安定しており、かつ、移動が行えるものであること。

座面の高さを容易に調整できるものであること。

適当な背もたれを有しているものであること。

ウ ソフトウエアの開発にあたっては、作業負担のかからない分かりやすく、使いやすいものとすること。

エ 入力機器

マウス等のポインティングデバイスにおけるポインタの速度、カーソルの移動速度等は、作業者の技能、好み等に応じて適切な速度に調整すること。

5 VDT機器等及び作業環境の維持管理

作業環境を常に良好な状態に維持し、VDT作業に適したVDT機器等の状況を確保するため、日常・定期点検及び清掃を行い、必要に応じ改善措置を講じること。

6 健康管理

(1) 健康診断

VDT作業に従事する作業者の健康状態を定期的に把握し、継続的な健康管理を適正にすすめるため、1年に1回定期に、作業区分に応じて以下の検査項目について健康診断を行う。

ア 作業区分A

a 業務歴

b 既往歴

c 自覚症状の調査

d 眼科学的検査(視力検査、その他医師が必要と認める検査)

e 筋骨格系検査

イ 作業区分B

a、b及びcの調査を実施し、医師の判断により必要と認められた場合に、d及びeの検査を行うこととする。

ウ 作業区分C

自覚症状を訴える者に対して、必要なアの調査又は検査を実施すること。

(2) 健康診断結果に基づく事後措置

健康診断によって発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見者に対して次に掲げる保健指導等の適切な措置を講じ、予防対策の確立を図る。

ア 業務歴の調査、自他覚症状、各種検査結果等から愁訴の主因を明らかにし、必要に応じ、保健指導、専門医への受診指導等により健康管理を進めるほか、作業方法の改善、作業環境改善等について指導を行う。

イ VDT作業の視距離に対して視力矯正が不適切な者には、支障なくVDT作業ができるように、近見視力が両眼とも片眼視力で概ね0.5以上となるよう指導を行う。

ウ 作業者の健康のため、VDT作業を続けることが適当でないと判断される者又はVDT作業に従事する時間の短縮を要すると認められる者等については、産業医等の意見を踏まえ、作業の変更、作業時間の短縮、作業上の配慮等、健康保持のための適切な措置を講じる。

(3) 健康相談

作業者が気軽に健康について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、プライバシー保護への配慮を行いつつ、メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての健康相談の機会を設ける。

(4) 職場体操等

作業者は、就業の前後又は就業中には、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行って作業に伴う疲労やストレスの解消に努める。

7 労働衛生教育

労働衛生管理のための諸対策の目的と方法をVDT作業従事者に周知することにより、職場における作業環境、作業方法の改善、適正な健康管理を円滑に行うため及びVDT作業による心身への負担の軽減を図ることができるよう、必要な労働衛生教育及びVDT作業の習得訓練を行うこと。

8 配慮事項等

(1) 高齢者に対する配慮事項等

高年齢の作業者については、照明条件やディスプレイに表示する文字の大きさ等を作業者ごとに見やすいように設定するとともに、過度の負担にならないように作業時間や作業密度に対する配慮を行うこと。

また、作業の習熟の速度が遅い作業者については、それに合わせて追加の教育、訓練を実施する等により、配慮を行うこと。

(2) 障害等を有する作業者に対する配慮事項

VDT作業の入力装置であるキーボードとマウスなどが使用しにくい障害等を有する者には、必要な音声入力装置等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。

また、適切な視力矯正によってもディスプレイを読み取ることが困難な者には、拡大ディスプレイ、弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。

制定文

平成15年10月1日から施行することとしました。

なお、当面のVTD作業の労働衛生管理基準について(平成3年4月1日付け総045企画調整部長通達)は、平成15年9月30日付けで廃止します。

別表

作業の種類

作業の例

作業時間及び区分

4時間以上

2~4時間未満

2時間未満

単純入力型

資料・伝票・原稿等からデータ・文章等の入力(CADへの単純入力を含む。)

A

B

C

拘束型

コールセンター等における受注・予約・照会等の作業

A

B

C

対話型

作業者自身の考えによる文章の作成・編集・修正等 データの検索・照会・追加・修正 電子メールの受信・送信 窓口などで金銭の出納

B

C

C

技術型

コンピューターのプログラム作成・修正、設計・製図等を行う作業 CAD業務(単純入力を除く。)

B

C

C

監視型

交通等の監視

B

C

C

その他の型

携帯情報端末の操作、画像診断検査等

B

C

C

注:

1 作業区分に際して、一人の作業者が複数の種類の作業を行う場合は、それぞれの作業時間を合計した時間がどの作業区分に該当するかにより判断すること。

なお、一人の作業者が、「単純入力型」と「対話型」のように、作業区分の分類を決定する作業時間が異なる複数の作業を行う場合は、行う作業時間が多い方の作業の種類で判断すること。

2 1日のVDT作業時間が時期により変動する場合は、平均値をとり平均時間がどの作業区分に該当するかにより判断すること。

VDT作業における労働衛生管理基準

平成15年9月30日 総第45号

(平成15年10月1日施行)

体系情報
第5編 事/第5章 職員厚生
沿革情報
平成15年9月30日 総第45号