○北上市空家等対策条例
平成28年3月17日
条例第17号
(趣旨)
第1条 この条例は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、市民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号。以下「法」という。)に定めるもののほか、空家等の適正な管理及び活用の総合的な対策の推進に関し必要な事項を定めるものとする。
(1) 空家等 現に居住その他の使用がなされていない建築物又はこれに附属する工作物及びその敷地(立木その他の土地に定着するものを含む。)であって、市の区域内に存するものをいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
(2) 特定空家等 そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる法第2条第2項に定めるもので、市の区域内に存するものをいう。
(空家等の所有者等の責務)
第3条 空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。
(市長の責務)
第4条 市長は、次条の空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の実施その他の必要な措置を適切に講ずるものとする。
2 市長は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、所有者等に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うものとする。
(空家等対策計画)
第5条 市長は、空家等に関する対策を総合的かつ計画的に実施するため、法第6条に基づき、法第5条に定める基本指針に即した空家等に関する対策についての計画(以下「空家等対策計画」という。)を定めるものとする。
2 空家等対策計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 空家等に関する対策の対象とする地区及び空家等の種類その他の空家等に関する対策に関する基本的な方針
(2) 計画期間
(3) 空家等の調査に関する事項
(4) 所有者等による空家等の適切な管理の促進に関する事項
(5) 空家等及び除却した空家等に係る跡地の活用の促進に関する事項
(6) 特定空家等に対する措置その他の特定空家等への対処に関する事項
(7) 住民等からの空家等に関する相談への対応に関する事項
(8) 空家等に関する対策の実施体制に関する事項
(9) 空家等の発生の抑止に関する事項
(10) その他空家等に関する対策の実施に関し必要な事項
3 市長は、空家等対策計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(空家等対策審議会)
第6条 空家等の対策の推進のため必要な事項を調査審議し、及び研究するため、北上市空家等対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(組織)
第7条 審議会は、委員14人以内をもって組織し、次の各号に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
(1) 学識経験者
(2) 知識経験者
(3) 公募による市民
(4) その他市長が必要と認める者
(所掌事項)
第8条 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議し、又は研究する。
(1) 第5条に定める空家等対策計画の作成、変更及び実施に関すること。
(2) 特定空家等の認定に関すること。
(3) 特定空家等に対する措置の実施状況に関すること。
(4) 空家等対策の総合的な推進に関する関係機関との連携に関すること。
(5) その他空家等の対策に関すること。
2 審議会は、空家等の対策の在り方について、市長に意見を述べることができる。
(任期)
第9条 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長及び副会長)
第10条 審議会に会長及び副会長を置き、委員の互選とする。
2 会長は、会務を総理し、会議の議長となる。
3 会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、副会長がその職務を代理する。
(会議)
第11条 審議会は、市長が招集する。
2 審議会は、委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができない。
3 審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(立入調査等)
第12条 市長は、法第9条第1項の規定に基づき、空家等の所在及び当該空家等の所有者等を把握するための調査その他空家等に関し必要な調査を行うことができる。
2 市長は、法第14条第1項から第3項までの規定の施行に必要な限度において、法第9条第2項の規定に基づき、当該空家等の施設を損壊する等の物理的強制力の行使によらない範囲で、当該職員又はその委任した者に、空家等と認められる場所に立ち入って調査をさせることができる。
3 市長は、前項の規定により当該職員又はその委任した者を空家等と認められる場所に立ち入らせようとするときは、その5日前までに、当該空家等の所有者等にその旨を通知しなければならない。ただし、当該所有者等に対し通知することが困難であるときは、この限りでない。
4 第2項の規定により空家等と認められる場所に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
5 第2項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第13条 市長は、第21条の規定の施行に必要な限度において、当該空家等の施設を損壊する等の物理的強制力の行使によらない範囲で、当該職員又はその委任した者に、空家等と認められる場所に立ち入って調査をさせることができる。
(情報の利用等)
第14条 市長は、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報であって氏名その他の空家等の所有者等に関するものについては、法第10条の規定に基づき、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。
(特定空家等の認定及び取消)
第15条 市長は、空家等が次に掲げる不適切な状態のいずれかにあると認めるときは、特定空家等として認定することができる。
(1) そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、かつ、周辺の建築物、工作物や通行人等に影響するおそれがある次に掲げる状態
ア 建築物が倒壊するおそれがある、又は建築物の屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがある等、著しく保安上危険となるおそれがある状態
イ 擁壁が老朽化し危険となるおそれがある状態
(2) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となり、周辺住民の日常生活に支障を及ぼすおそれのある次に掲げる状態
ア 石綿その他の著しく有害な物質の飛散及び暴露のおそれがある状態
イ 汚物、排水の流出及びこれらによる臭気の発生がある状態
ウ ごみ等の放置、不法投棄による臭気及び多数のねずみ、はえ、蚊等の発生がある状態
エ 建築物及びその設備が屋根、外壁、窓、蓋等の全部又は一部を備えないことにより、風雨、動物、害虫等が容易に侵入する状態
(3) 適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている次に掲げる状態
ア 屋根、外壁等が、汚物や落書きなどにより外見上大きく傷み、又は汚れたまま放置されている状態
イ 窓ガラス等が破損したまま放置されている状態
ウ 看板が原型を留めず本来の用をなさない程度まで破損又は汚損したまま放置されている状態
エ 立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している状態
オ 敷地内にごみ等が散乱したまま放置されている状態
(4) 周辺の生活環境の保全を図るため、放置することが不適切であると認められる次に掲げる状態
ア 立木等の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、周辺の建築物、工作物、通行人等に影響するおそれのある状態
イ 住みついた動物等により騒音、汚物、悪臭、害虫等が発生し、又は住みついた動物等による周辺の土地、家屋等への侵入が発生している状態
ウ しろあり、蜂等の害虫が発生し、近隣の家屋に飛来する状態
(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が不適切であると認める状態
3 市長は、認定した特定空家等が、管理又は除却により第1項各号の不適切な状態を解消したと認めるときは、遅滞なく、当該認定を取り消すものとする。
(助言又は指導)
第16条 市長は、法第14条第1項の規定に基づき、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次条において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
2 前項の助言又は指導は、当該特定空家等の所有者等のうち、確知した所有者等の全員に対して行うものとする。
(勧告)
第17条 市長は、前条の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、法第14条第2項の規定に基づき、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付して、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
2 市長は、前項の勧告を行った特定空家等が、管理又は除却により勧告した内容を履行し、不適切な状態を解消したと認めるときは、遅滞なく、当該勧告を取り消すものとする。
(命令等)
第18条 市長は、前条の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくその勧告に係る措置をとらなかった場合において、必要があると認めるときは、法第14条第3項の規定に基づき、その者に対し、相当の猶予期限を付して、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
2 市長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
3 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から5日以内に、市長に対し、意見書の提出に代えて、公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
5 市長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合は、必要な範囲で、傍聴人の数の上限その他の制限を付すことができる。
7 第4項に規定する者又は代理人は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
8 市長は、第1項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他法令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
2 市長は、前条第1項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第16条の助言若しくは指導又は第17条の勧告が行われるべき者を確知することができないため前条第1項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、法第14条第10項の規定に基づき、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
(安全措置)
第20条 市長は、空家等が不適切な状態にあると認めるときは、当該空家等の所有者等の同意を得て、当該所有者等の負担において、その損害を予防し、又はその拡大を防ぐため必要な最小限度の措置を自ら行い、又は委任した者に行わせることができる。
(即時執行)
第21条 市長は、空家等が、市民の生命、身体又は財産に損害を与え、又は与えるおそれがあると認める場合であって、かつ、これらの保護のために緊急に措置を行う必要があると認めるときは、その損害を予防し、又はその拡大を防ぐため必要な最小限度の措置を自ら行い、又は委任した者に行わせることができる。
2 市長は、前項の措置を行ったときは、当該空家等の所在地及び当該措置の内容を当該空家等の所有者等に通知するものとする。ただし、当該通知を受けるべき所有者等又はその連絡先を確知することができない場合にあっては、その内容を公示することをもってこれに代えることができるものとし、公示された日から2週間を経過したときに通知の交付があったものとみなす。
3 第1項の措置にかかる費用は、市が負担する。
(民事による解決との関係)
第22条 この条例の規定は、空家等に関する紛争の当事者が訴訟その他の方法により自ら解決を図ることを妨げるものではない。
(補則)
第23条 この条例の実施に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成28年4月1日から施行する。