○倶知安の未来へつなぐ景観まちづくり条例
令和4年8月3日
条例第13号
目次
前文
第1章 総則(第1条~第6条)
第2章 景観法の施行に関する事項
第1節 景観計画(第7条・第8条)
第2節 行為の届出等(第9条~第18条)
第3節 景観重要建造物等(第19条~第26条)
第3章 景観審議会等(第27条~第29条)
第4章 地区景観デザイン計画(第30条~第35条)
第5章 雑則(第36条)
附則
倶知安町は、“蝦夷富士”羊蹄山とニセコ連峰に見守られ、豊かな水資源と肥沃な土壌による農地が広がり、清流日本一に輝く尻別川及び倶登山川等その支流に囲まれた街なみがつくられ、豊かな自然の恩恵の上に成り立ってきた町である。
夏には馬鈴薯が美しく花咲く農業の営み、緑豊かな山々や河川で楽しむアクティビティ、冬には豪雪に耐える暮らしがありながらも、海外の人々をも惹きつける上質なパウダースノーなどが、魅力あふれる多層的な景観を形作っている。
今後、高速交通ネットワークの形成を踏まえた市街地の活性化、国際リゾート地としての更なる成長が期待されるなか、周辺環境への配慮を欠いた街なみの変化や開発の広がりに対し、時に不安を感じることもある。
そのため、町の魅力を見つめ直した上で、これからも倶知安町に関わる全ての人がこの町に愛着と誇りを持ち続けていくことが大切であり、また、変えることなく守るべきもの、今ある姿を磨き上げて育むべきもの、変化を柔軟に受け入れて創るべきものを倶知安町の魅力ある景観として見定め、大いに生かし、羊蹄の輝きとして未来の世代へつなげていくことが求められている。
このような認識に基づき、倶知安の多彩な魅力への理解を広く内外に示し、良好な景観まちづくりの基本理念を定め、心豊かな暮らしと文化の醸成を図っていくため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的・略称)
第1条 この条例は、景観法(平成16年法律第110号。以下「法」という。)の施行に関し必要な事項を定めることにより、倶知安町の良好な景観の形成を促進し、次の世代につなげる景観まちづくりを進めていくことを目的とする。
2 この条例は「景観計画条例」と略称する。
(基本理念)
第2条 倶知安町の美しい景観は、この町で暮らし、営む人々が、四季折々に表情を変える羊蹄山に見守られながら、彩り豊かな自然を大切にし、心豊かにいきいきと発展することにより形づくられていくものであり、未来へとつなげていくべきものである。
(1) 町民等 倶知安町に居住する者、倶知安町で事業活動を行う者、又は倶知安町に建築物や土地等を所有する者をいう。
(2) 工作物 建築物以外の工作物で規則で定めるものをいう。
(3) 特定開発行為 北海道自然環境等保全条例(昭和48年北海道条例第64号)第30条に規定する特定の開発行為をいう。
(4) 審議会 第27条に規定する倶知安町景観審議会をいう。
2 前項に掲げるもののほか、この条例おいて使用する用語は、法において使用する用語の例による。
(町の責務)
第4条 町は、法第2条の基本理念及び本町の景観計画に基づいて、良好な景観の形成の促進に関し、国や北海道との適切な役割分担を踏まえて、本町の自然的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(町民等及び事業者の責務)
第5条 町民等は、恵みと厳しさを与える自然環境をよく理解し、謙虚な姿勢を持って、景観まちづくりに取り組まなければならない。
2 町民等は、倶知安の風景と文化をつくりあげた先人の思いに、敬意を持って、景観まちづくりに取り組まなければならない。
3 町民等は、人と人との繋がりを大切にし、皆で支え合う思いやりを持って、景観まちづくりに取り組まなければならない。
4 町民等は、次世代の人たちがより良い暮らしや営みのために工夫する変化に、寛容の心を持って、景観まちづくりに取り組まなければならない。
5 町民等は、景観計画に定める良好な景観まちづくりのための行為の制限を遵守しなければならない。
(国等への要請)
第6条 町長は、必要と認めるときは、国の機関又は他の地方公共団体に対し、景観計画及びこの条例の運用について協力を要請するものとする。
第2章 景観法の施行に関する事項
第1節 景観計画
(景観計画)
第7条 町長は、良好な景観の形成に関する総合的かつ計画的な施策を推進するため、景観計画を定めるものとする。
2 町長は、景観計画を定めようとするときは、法第9条第1項から第5項までの規定によるほか、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
3 前項の規定は、景観計画の変更について準用する。ただし、次に掲げる事項以外の軽微な変更についてはこの限りではない。
(1) 法第8条第2項各号に掲げる事項
(2) 前号のほか、町長が住民等又は審議会の意見を聴く必要があると認める事項
(重点地域の指定)
第8条 町長は、景観計画において、景観計画区域内で特に重要と認める区域を重点地域として指定、解除又は変更することができる。
第2節 行為の届出等
(行為の届出等)
第9条 法第16条第1項若しくは第2項の規定による届出又は同条第5項の規定による通知(以下「行為の届出等」という。)は、規則で定めるところにより行わなければならない。
2 法第16条第1項第4号に規定する条例で定める行為は、次に掲げるものとする。
(1) 特定開発行為
(2) 樹木の伐採
(3) 土石・資材・その他の堆積
(事前協議)
第10条 前条に規定する行為の届出等のうち規則で定める行為をしようとする者は、当該届出等を行う前に、町長と協議を行わなければならない。
(適用除外行為)
第12条 法第16条第7項第11号に規定する条例で定める行為は、次に掲げる行為とする。
(1) 自然公園法(昭和32年法律第161号)第10条第2項、第3項及び第6項(同法第16条第4項において準用する場合を含む。)、第16条第2項及び第3項、第20条第3項、第21条第3項及び第33条第1項並びに第68条第1項後段
(2) その他町長が規則で定める行為
(特定届出対象行為)
第13条 法第17条第1項の条例で定める行為は、法第16条第1項第1号及び第2号の届出を要する行為とする。
(法に基づく届出をした者に対する通知)
第14条 町長は、行為の届出等があった場合において、当該届出等に係る行為について、良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれがないと認めるときは、その旨を当該届出等をした者に通知するものとする。
2 前項に規定する通知を受けた者は、法第18条第1項の規定にかかわらず、通知を受けた日から当該届出に係る行為に着手することができる。
(無届行為者に係る措置)
第15条 町長は、法第16条第1項又は第2項の規定に反して届出をしなかった者(以下「無届行為者」という。)の当該行為について、届け出るべき事項の報告を求めなければならない。
2 無届行為者は、町長からの求めに応じ、当該行為について届け出るべき事項を報告しなければならない。
(完了の届出)
第16条 行為の届出等をした者は、当該届出に係る行為を完了したときは、規則で定めるところにより、その旨を町長に届け出なければならない。
2 町長は、前項の届出があったときは、行為の完了内容が行為の届出等の内容と相違ないか確認し、結果を届出者に通知するものとする。
3 町長は、当該行為の完了内容が行為の届出等の内容と相違する場合は、当該届出をした者に、変更内容の報告を求めることができる。
(勧告又は変更命令等の手続)
第17条 町長は、次に掲げる勧告又は命令を行うことができる。
(1) 法第16条第3項の規定による勧告
(2) 法第17条第1項及び第5項の規定による命令
(3) 第15条の報告に係る事項が、景観計画に定められた制限に適合しない場合において、当該無届行為者に対して、当該行為を景観計画に定められた制限に適合させるために必要な措置を講ずるために行う勧告又は命令
(4) 前条の規定により完了の届出があった行為が、景観計画に定められた制限に適合しない場合において、当該行為者に対して、当該行為を景観計画に定められた制限に適合させるために必要な措置を講ずるために行う勧告又は命令
2 町長は、前項に規定する勧告又は命令を行う場合は、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
(公表)
第18条 町長は、次の各号のいずれかに該当する者について、その者の氏名及び住所(法人にあっては、名称、所在地及び代表者の氏名)、当該対象となる行為及び勧告又は命令内容を公表することができる。
(1) 法第16条第1項又は第2項の規定による届出をするに当たり虚偽の届出をした者
(2) 法第16条第3項の規定による勧告に従わない者
(3) 法第17条第1項又は第5項の規定による命令に従わない者
(4) 第16条第3項の規定による変更内容の報告の求めに応じない者
2 町長は、前項の規定により公表をしようとするときは、対象者に弁明の機会を付与するとともに、審議会の意見を聴かなければならない。
第3節 景観重要建造物等
(景観重要建造物の指定)
第19条 町長は、法第19条第1項の規定による景観重要建造物(以下「景観重要建造物」という。)を指定しようとするときは、同条第2項の規定によるほか、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
(景観重要建造物の管理の方法の基準)
第20条 法第25条第2項の規定により定める管理の方法の基準は、次に掲げるものとする。
(1) 景観重要建造物の修繕は、原則として当該修繕前の外観を変更することのないようにすること。
(2) 消火設備の設置その他の景観重要建造物の防災上の措置を講ずること。
(3) 景観重要建造物の滅失を防ぐため、その敷地、構造及び建築設備の状況を定期的に点検すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、景観重要建造物の良好な景観の保全のため必要な措置として規則で定めるもの
(景観重要樹木の指定)
第21条 町長は、法第28条第1項の規定による景観重要樹木(以下「景観重要樹木」という。)を指定しようとするときは、同条第2項の規定によるほか、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
(景観重要樹木の管理の方法の基準)
第22条 法第33条第2項の規定により定める管理の方法の基準は、次に掲げるものとする。
(1) 景観重要樹木の良好な景観を保全するため、剪定その他の必要な管理を行うこと。
(2) 景観重要樹木の滅失又は枯死を防ぐための措置を行うこと。
(3) 前2号に掲げるもののほか、景観重要樹木の良好な景観の保全のため必要な措置として規則で定めるもの
(景観重要建造物等の原状回復命令等の手続)
第23条 町長は、法第23条第1項(法第32条第1項において準用する場合を含む。)の規定により原状回復又はこれに代わるべき必要な措置を命じようとするときは、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
(管理に関する命令及び勧告の手続)
第24条 町長は、法第26条若しくは法第34条の規定により必要な措置を命じ、又は勧告しようとするときは、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
(景観重要建造物等の指定の解除の手続)
第25条 町長は、法第27条第2項の規定により景観重要建造物の指定を解除し、又は法第35条第2項の規定により景観重要樹木の指定を解除しようとするときは、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
(景観資産)
第26条 町長は、町民等が景観形成上重要な事物の価値を共有し、意識をもった保全活動を進めるため、次に掲げるもののうち、規則で定める基準に適合するものを景観資産として登録することができる。
(1) 良好な景観の形成に資する景観重要建造物を除く建造物(これと一体の土地その他の物件を含む。)
(2) 良好な景観の形成に資する景観重要樹木を除く樹木
(3) 良好な景観を眺望できる地点
(4) 良好な景観の形成に資するその他のもの
2 町長は、前項の規定により登録をしようとするときは、あらかじめ、その登録をしようとする建造物等の所有者の意見を聴かなければならない。
3 第1項各号に規定する建造物等の所有者は、当該建造物等について、町長に対し、景観資産として登録することを提案することができる。
6 町長は、景観資産がその価値を失ったときその他特別な理由があると認めるときは、当該景観資産の登録を取り消すことができる。
第3章 景観審議会等
(景観審議会)
第27条 本町の良好な景観形成に必要な事項を調査及び審議するために町長の附属機関として審議会を設置する。
2 審議会の構成は次のとおりとする。
(1) 審議会は、委員10名以内をもって組織し、次に掲げる者のうち、景観形成に係る専門的知識を持ち、審議会の所掌事務に密接な利害関係がないと認められる者から、町長が任命する。
ア 学識経験者 5人以内
イ 各種団体の推薦者 4人以内
ウ 公募による町民 2人以内
エ その他町長が適当と認める者
(2) 委員の任期は2年とする。ただし、補欠の委員の任期は前任者の残任期間とする。
(3) 委員は、再任されることができる。
(4) 審議会に、会長1名、副会長1名を置き、委員の互選によって定める。
(5) 会長は、審議会を代表し会務を総理し、会議の議長となる。
(6) 副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるときはその職務を代理する。
3 審議会の会議は、必要に応じて会長が招集する。
4 審議会は、委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができない。
5 審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは会長の決するところによる。
6 審議会の所掌事項は、次のとおりとする。
(1) 景観に係る条例及び規則に関する事項
(2) 町長の諮問に応じ、景観形成に必要な事項を調査及び審議すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、この条例の規定によりその権限に属させられた事項
(4) その他規則に定める事項
7 審議会は、本町の良好な景観形成に関し、必要な意見を述べることができる。
8 町長は、審議会の意見を尊重しなければならない。
(景観デザイン会議)
第28条 町長は、良好な景観形成の推進を図るため、専門的な助言を行う景観デザイン会議を設置することができる。
(景観協議会)
第29条 町長は、町内の良好な景観形成を図るために必要な協議を行うため、法第15条の規定による景観協議会を組織することができる。
第4章 地区景観デザイン計画
(地区景観デザイン計画)
第30条 景観計画区域内の一団の土地の所有者及び借地権を有する者(以下「土地所有者等」という。)は、その全員の合意により、当該土地の区域における良好な景観の形成のための地区景観デザイン計画を定めることができる。
2 景観計画区域内の一団の土地で、一の所有者以外に土地所有者等が存在しないものの所有者は、良好な景観の形成のために必要があると認めるときは、前項に規定する地区景観デザイン計画を定めることができる。
3 地区景観デザイン計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 地区景観デザイン計画の対象となる土地の区域(以下「地区景観デザイン計画区域」という。)
(2) 良好な景観の形成のための次に掲げる事項のうち、必要なもの
ア 建築物の形態意匠に関する基準
イ 建築物の高さの最高限度
ウ 建築物の敷地、位置、規模、構造、用途又は建築設備に関する基準
エ 工作物の位置、規模、構造、用途又は形態意匠に関する基準
オ 土地造成の規模、形状又は緑化修景に関する基準
カ 森林、緑地等の保全又は緑化に関する事項
キ その他良好な景観の形成に関する事項
(地区景観デザイン計画の認定)
第31条 地区景観デザイン計画は、規則で定めるところにより、町長の認定を受けなければならない。当該認定を受けた地区景観デザイン計画を変更しようとする場合も、同様とする。
(地区景観デザイン計画の認定の取消し等)
第32条 前条の認定を受けた地区景観デザイン計画区域内において、土地所有者等が当該計画に適合しない行為をしようとするとき又はしたときは、町長は当該認定を取り消し、又は相当の期限を定めて、必要な措置を命ずることができる。
(地区景観デザイン計画の廃止)
第33条 第31条の認定を受けた地区景観デザイン計画を廃止しようとする場合は、町長の認定を受けなければならない。
(地区景観デザイン計画に係る審議会の意見の聴取)
第34条 町長は、前3条に規定する認定又は認定の取消し等をしようとするときは、審議会の意見を聴かなければならない。
(地区景観デザイン計画の効力)
第35条 第31条の認定を受けた地区景観デザイン計画は、その認定後において地区景観デザイン計画の対象地域内の土地所有者等となった者に対しても、その効力があるものとする。
第5章 雑則
(規則への委任)
第36条 この条例の施行に関し、必要な事項は町長が別に規則で定める。
附則
(経過措置)
2 この条例の施行の際、現に北海道景観条例(平成20年北海道条例第56号。以下「道条例」という。)の規定に基づいてなされた処分、手続、その他の行為は、この条例の相当規定に基づいてなされた処分、手続、その他の行為とみなす。
3 この条例の施行日から景観計画の施行日までの間、道条例に基づく景観計画を第7条の規定により定めた景観計画とみなす。
4 この条例の施行日から景観計画の施行日までの間、第9条第1項の規定による行為の届出等は、景観法施行細則(平成20年北海道規則第72号)第3条に定めるところにより行うものとする。この場合において、同規則別記各号様式中「北海道知事」とあるのは、「倶知安町長」と読み替えるものとする。
5 この条例の施行日から景観計画の施行日までの間、法第16条第1項第4号及び同条第7項第11号の条例で定める行為は、道条例に規定する行為とする。
附則(令和5年9月14日条例第24号)
この条例は、令和5年10月1日から施行する。