○ますだ食と農の市民条例

平成29年12月21日

益田市条例第21号

本市の農業及び農村は、生命の源となる農産物を生産し、地域の安心・安全な食料の供給に重要な役割を果たすとともに、地域の産業・経済を支えてきた。そこでは、ぶどう、メロン、トマトやいちご、ゆず、わさびなどの高品質な農産物を生産する技術が根付き、また、豊かな自然と共生し、四季折々の美しい景観を守っているほか、国内外でも評価の高い石見神楽など伝統的な文化も色濃く継承されており、本市にとってかけがえのない財産である。

しかしながら、近年では、農産物価格の低迷や生産コストの上昇による農業所得の減少、農業生産基盤の老朽化や弱体化などにより、農業経営を取り巻く環境は厳しさを増している。加えて、農業従事者の高齢化や後継者不足、これに伴う遊休農地の増加や野生鳥獣による被害の拡大などにより、農業経営や技術の伝承、ひいては農村の存続までが危ぶまれている。

他方で、食の安全や自然環境の保全に対する国民の関心は高まっており、有機野菜をはじめとする付加価値の高い農産物の需要の拡大、環境と調和し、持続的な発展を目指す農業基盤の再整備など、農業のあり方は大きな転換期を迎えており、同時に、地域経済の支柱として、また、国土・自然環境の保全など多面的な機能から、農村が国民生活に果たす役割の重要性も見つめなおされている。

こうした中、安心・安全な食料の供給と、これを支える本市の財産である農業及び農村を守り、育てていくためには、全ての市民が食料、農業及び農村の重要性を認識し、生産者・消費者が相互の立場や役割を理解し、尊重し、協力し合い、益田市の農業を魅力ある産業にしていくことが必要である。

ここに本市は、全ての市民が食料、農業及び農村の重要性を認め、互いに協力しながら、本市における「安心・安全な食」と「持続的に発展する農」の確立を目指すことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、生命の維持及び健康で充実した生活に欠くことのできない食料に関し、その安心・安全な品質の確保及び安定的な供給のために農業及び農村が果たす役割の重要性に鑑み、本市における食料、農業及び農村(以下「食と農」という。)に関する施策について基本理念を定め、市、農業者、農業関係団体、事業者及び市民の責務及び役割を明らかにするとともに、食と農に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、もって豊かで健康的な市民生活の実現及び健全な地域経済の発展に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 農業者 自ら農業を営む個人、団体及び法人をいう。

(2) 農業関係団体 農業及び農村の振興、農業者の支援並びに加工、流通、販売その他の農産物の生産に関わる団体をいう。

(3) 事業者 加工、製造、販売その他の食品産業に関わる事業者をいう。

(基本理念)

第3条 食と農に関する施策に関する基本理念は、次の各号に掲げるものとする。

(1) 安心・安全な品質の食料その他の農産物の、安定的な供給の確保

(2) 農村が持つ国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の継承等の多面的機能の発揮

(3) 持続的に発展する農業の確立

(4) 農業の生産条件の整備、生活環境の整備等による農村の振興

(5) 食と農の重要性に対する市民の理解の増進

(6) 農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。)の維持及び増進

(7) 食の安心・安全、農業及び農村の振興並びに自然環境の保全の調和

(市の責務)

第4条 市は、基本理念にのっとり、地域の自然的経済的社会的な特性を踏まえて、食と農に関する施策を総合的に策定し、実施するものとする。

2 市は、食と農に関する施策の実施に当たっては、農業者、農業関係団体、事業者、国及び県並びに市民との適切な連携を図るものとする。

3 市は、地域の食と農に関する情報を発信するとともに、食と農の重要性に対する市民の理解の増進に努めるものとする。

(農業者及び農業関係団体の責務)

第5条 農業者は、農村における地域づくりの主体として、食の安心・安全の確保、食料その他の農産物の安定的な供給及び自然環境との共生を図り、基本理念の実現に取り組むよう努めるものとする。

2 農業関係団体は、農業経営の効率化及び安定化に向けた農業者の支援を行うとともに、農業者と協働して、食の安心・安全の確保、食料その他の農産物の安定的な供給及び自然環境との共生を図り、基本理念の実現に取り組むよう努めるものとする。

3 農業者及び農業関係団体は、農業及び農村の体験、自然学習等を通じて市民との交流を深めるとともに、地域の食と農に関する情報の発信及び食と農の重要性に対する市民の理解の増進に努めるものとする。

4 農業者及び農業関係団体は、市に対し地域の食と農に関する施策を提言し、市が実施する食と農に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動において、農業者及び農業関係団体と協働して、食の安心・安全の確保及び食料その他の農産物の安定的な供給に努めるものとする。

2 事業者は、地場農産物の利用の拡大その他農業及び農村の振興に資する活動に取り組むとともに、市が実施する食と農に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(市民の責務)

第7条 市民は、農業及び農村の体験、自然学習等を通じて農業者及び農業団体との交流を深めるとともに、地場農産物の積極的な消費に努めるものとする。

2 市民は、食と農の重要性について理解及び関心を深めるとともに、市が実施する食と農に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(施策の基本方針)

第8条 市が基本理念にのっとり実施する食と農に関する施策は、次の各号に掲げる事項を基本方針とする。

(1) 安心・安全な品質の農産物を安定的に生産し、及び供給する体制の構築を行うとともに、本市区域内における食料自給及び地場農産物の消費の向上を図ること。

(2) 農村における自然環境、美しい景観、文化等を保存し、その多面的機能の発揮を図ること。

(3) 新たに農業に参入しようとする者に対する適切な情報提供、指導、支援等により、将来にわたる地域農業の担い手を育成し、及び確保する体制の構築を図ること。

(4) 市場の需要に即した農業生産の推進、農業者及び農業関係団体の農業経営に対する支援等により、競争力及び生産技術の向上を図ること。

(5) 農地、農業用水その他の農業資源を確保し、農業生産の基盤を整備するとともに、農村の生活環境を整備し、農業及び農村の総合的な振興を図ること。

(6) 農村における計画的な土地利用の促進及び遊休農地の解消を図ること。

(7) 農業の生産性・効率性の向上、農産物の販路拡大等により、収益性の高い魅力的な地域農業の確立を図ること。

(8) 地場産業との連携の強化、効果的な情報発信、食育についての意識啓発等により、地域の食と農に関する市民の正しい理解を増進し、地場農産物の消費拡大を図ること。

(9) 農業及び農村の体験、自然学習等による地域間交流を推進し、生産者及び消費者の相互理解を深めるとともに、都市と農村との共生を図ること。

(10) 農業を通じた国際交流、国際協力等の推進を図ること。

(11) 森林資源及び水産資源の保全に関する施策との連携を図ること。

(12) その他、自然環境の保全と調和した、食の安心・安全の確保、農業及び農村の振興に必要な施策の推進を図ること。

2 市は、前項各号に掲げる基本方針のほか、食と農に関する施策の実施に当たっては、当該施策相互の連携を図るよう努めるものとする。

(基本計画の策定)

第9条 市は、第3条の基本理念及び前条の基本方針を踏まえ、食と農に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、食と農に関する施策の基本的事項を定める基本計画を策定するものとする。

2 市は、前項の規定により策定した基本計画について、必要に応じ見直しを行うものとする。

3 市は、第1項の規定による基本計画の策定及び前項の規定による当該基本計画の見直しに当たっては、農業者、農業関係団体、事業者及び市民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

(議会への報告)

第10条 市長は、前条第1項の規定による基本計画の策定又は同条第2項の規定による当該基本計画の見直しを行ったときは、議会に報告しなければならない。

2 市長は、前項のほか、基本計画に基づく施策の実施状況その他の当該基本計画の進捗状況に関し、適時に、議会に報告しなければならない。

(委任)

第11条 この条例に定めるもののほか、食と農に関する施策に関し必要な事項は、市長が規則で定める。

附 則

この条例は、公布の日から施行する。

ますだ食と農の市民条例

平成29年12月21日 条例第21号

(平成29年12月21日施行)