○長崎市動物の愛護及び管理に関する条例
令和4年3月23日
条例第4号
目次
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 動物の適正な取扱い(第8条―第14条)
第3章 緊急時の措置(第15条・第16条)
第4章 犬の抑留、動物の譲渡等(第17条―第21条)
第5章 措置命令、立入検査等(第22条・第23条)
第6章 雑則(第24条・第25条)
第7章 罰則(第26条・第27条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市における人と動物が共生する社会の推進に関し、基本理念を定め、本市、市民等、飼い主になろうとする者及び飼い主の責務を明らかにするとともに、動物の愛護及び管理に関する必要な事項を定めることにより、市民等の動物愛護の精神の高揚を図り、あわせて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物が共生する社会の実現に資することを目的とする。
ア 市民 本市の区域内に居住し、又は本市の区域内に通勤し、若しくは通学する個人
イ 事業者等 本市の区域内において事業を営む又は活動を行う個人又は法人その他の団体
(2) 動物 哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物をいう。
(3) 飼い主 動物の所有者又は占有者をいう。
(4) 飼養施設 動物を飼養又は保管するための施設をいう。
(5) 特定動物 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「法」という。)第25条の2に規定する特定動物をいう。
(6) 飼い犬 飼い主のある犬をいう。
(7) 野犬 飼い犬以外の犬をいう。
(8) 係留 飼い犬を鎖若しくは綱で固定した物に確実につなぎ、又は住居、おり、柵若しくは障壁の中で飼養し、又は保管することをいう。
(基本理念)
第3条 本市における人と動物が共生する社会の推進は、次に掲げる事項を基本理念として行わなければならない。
(1) 動物は、人と同じ命あるものであり、みだりに排除してはならないものであること及び人の生活環境内に共存していることを認識すること。
(2) 動物を取り扱う場合は、その動物の飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な健康の管理及びその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境が必要であることを認識すること。
(3) 動物愛護の精神が市民等に醸成されることは、命あるものへの共感を育て、差別を生まない健全な社会性を育むとともに、生命の尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資することを認識すること。
(市の責務)
第4条 本市は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのつとり、次に掲げる責務を有する。
(1) 動物の愛護及び管理に関し必要な施策を策定し、及び市民等と協働してこれを実施すること。
(2) 前号の施策を実施するために必要な財政上の措置及び施設の整備に努めること。
(市民等の責務)
第5条 市民等は、基本理念にのつとり、動物を愛護し、並びに本市が実施する動物の愛護及び管理に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(飼い主になろうとする者の責務)
第6条 飼い主になろうとする者(法第8条第1項に規定する動物の販売を業として行う者を除く。)は、基本理念にのつとり、動物の飼養に先立ち、その飼養しようとする動物の生態、習性等に関する知識の習得に努めるとともに、将来にわたる住宅環境、家族構成等の変化、動物の寿命等を考慮したうえで、飼養の可否を判断するよう努めなければならない。
(飼い主の責務)
第7条 飼い主は、基本理念にのつとり、次に掲げる事項を遵守するよう努めなければならない。
(1) 動物の種類、習性等に応じた適正な飼養並びにその動物の健康及び安全を保持すること。
(2) 所有し、又は占有する動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないようにすること。
(3) 畜産、試験研究その他の正当な理由がある場合を除き、所有する動物がその命を終えるまで適正に飼養すること。
(4) 所有する動物がその命を終えるまで適正に飼養することが困難となつた場合は、適正な飼養ができる新たな飼い主を見つけること。
第2章 動物の適正な取扱い
(飼い主の遵守事項)
第8条 飼い主は、所有し、又は占有する動物の飼養に当たり、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 動物に給餌及び給水を適正に行うこと。
(2) 動物の健康状態に留意し、必要に応じて獣医師による治療その他の動物の健康を保持するための措置を講ずること。
(3) 動物の訓練、しつけ等は、動物の種類、性質等に応じた適切な方法で行うこと。
(4) 動物が公共の場所及び他人の土地、建物等を不潔にし、又は損傷しないようにすること。
(5) 動物の種類、性質等に応じた飼養施設を設け、これを適正に維持管理すること。
(6) 飼養施設の内外を常に清潔にすること。
(7) 動物による騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等により他人に迷惑を及ぼすことのないようにすること。
(8) 動物の数は、その種類、発育状況及び習性に応じた適正な飼養が可能な数とすること。
(9) 所有する動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるおそれがあると認められる場合は、その動物に生殖を不能にする手術(以下「不妊去勢手術」という。)等繁殖を防止するために必要な措置を講ずること。
(10) 人及び動物の共通感染症について正しい知識を持ち、その感染の予防に努めること。
(11) 動物に首輪、名札等を装着し、その動物が自己の所有であることを明らかにするための措置を講ずるよう努めること。
(12) 動物が逸走した場合は、自らの責任において捜索し、収容すること。
(13) 動物が死亡した場合は、その死体を適切に処理すること。
(14) 前各号に掲げるもののほか、市長が別に定める事項
(犬の飼い主の遵守事項)
第9条 犬の飼い主は、飼い犬を適正に飼養するため、前条各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 飼い犬を人の生命、身体又は財産に害を加えることのないように係留すること。
(2) 飼い犬を係留している場所から連れ出すときは、人の生命、身体若しくは財産に害を加えることのないよう鎖又は綱で確実につなぎ、又はみだりに人をかむ等のおそれがあると認められるときは、口輪をかけることその他の適切な措置を講ずること。
(3) 飼い犬を道路その他の公共の場所に連れ出すときは、犬のふんを持ち帰るための用具及び尿を流すための道具を携行し、ふん尿を衛生的に処理すること。
(4) 門柱その他外部から見やすい場所に犬を飼養していることを表す標識を掲示すること。ただし、市長が標識を掲示する必要がないと認める場合は、この限りでない。
(1) 警察犬、身体障害者補助犬(身体障害者補助犬法(平成14年法律第49号)第2条第1項に規定する身体障害者補助犬をいう。)、狩猟犬等をその目的のために使用する場合
(2) 人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれのない場所(道路、公園その他の公共の場所を除く。)及び方法で犬を訓練する場合
(3) 競技会又は曲芸を行う目的のために犬を使用する場合
(4) 犬の運動を行うことを目的とする施設のうち、当該施設を利用する者以外の者の生命、身体又は財産に害を加えることを防止するための設備を設けている施設において、犬の運動を行う場合
(猫の飼い主の遵守事項)
第10条 猫の飼い主は、その所有し、又は占有する猫を適正に飼養するため、第8条各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 猫を屋内で飼養するよう努めること。
(2) 猫をやむを得ない事情により屋内で飼養することができない場合は、不妊去勢手術等繁殖を防止するために必要な措置を講ずること。
(3) 猫に排せつその他の適正なしつけを行うよう努めること。
(飼い主のいない動物に給餌等を行う者の遵守事項)
第11条 飼い主のいない動物に給餌又は給水(以下「給餌等」という。)を行う者は、周辺の生活環境に支障が生じるような給餌等を行つてはならない。
2 飼い主のいない猫に給餌等を行う者は、給餌等を行うことができる猫、給餌等の方法その他の市長が別に定める基準を遵守しなければならない。
(地域猫活動に係る支援)
第12条 本市は、地域における市民等と飼い主のいない猫の共生に配慮した取組みを促進するため、地域猫活動(同活動に関係する地域の市民等の十分な理解を得て、市民等が飼い主のいない猫に対して不妊去勢手術を施し、給餌、給水、排せつ物の処理等の管理を行うことをいう。)を支援するよう努めるものとする。
(犬又は猫の多頭飼養の届出)
第13条 犬又は猫(いずれも生後90日以下のものを除く。以下この項及び附則第4項において同じ。)の飼い主は、当該犬又は猫の数が一の飼養施設等(飼養施設(当該飼養施設の存する敷地を含む。)又は飼養の用に供する土地(飼養施設の存する敷地を除く。)をいう。以下同じ。)において、当該犬若しくは猫の数又はこれらの数を合計した数(以下「飼養数」という。)が10以上となつた場合は、飼養数が10以上となつた日から30日以内に、当該飼養施設等ごとに、市長が別に定める事項を市長に届け出なければならない。ただし、法第10条第1項の規定による登録を受けた者、法第24条の2の2の規定による届出をした者その他市長が届出の必要がないと認める者は、この限りでない。
2 前項本文の規定による届出をした者(以下「多頭飼養者」という。)は、届出事項に変更があつた場合は、その変更があつた日から30日以内にその旨を市長に届け出なければならない。
3 多頭飼養者は、第1項本文の規定による届出に係る飼養施設等における飼養数が10未満となつた場合は、遅滞なく、その旨を市長に届け出なければならない。
(指導又は助言)
第14条 市長は、飼い主、飼い主のいない動物に給餌等を行う者等に対し、動物の健康若しくは安全を保持し、又は動物による人の生命、身体若しくは財産に対する侵害若しくは生活環境の保全上の支障を防止するため、必要な指導又は助言をすることができる。
2 市長は、多頭飼養者に対し、飼養する犬若しくは猫の健康及び安全を保持し、又は周辺の生活環境を保全するため、飼養施設の構造及び飼養の方法について必要な指導又は助言をすることができる。
3 市長は、動物の飼養、保管又は給餌等に起因した騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によつて周辺地域の生活環境が損なわれている事態が生じていると認める場合は、当該事態を生じさせている者に対し、必要な指導又は助言をすることができる。
4 市長は、あらかじめ指定した職員に前3項の規定による指導又は助言をさせるものとする。
5 前項の職員は、指導又は助言をするときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
第3章 緊急時の措置
(特定動物が逸走した場合等の措置)
第15条 特定動物の飼い主は、当該特定動物が逸走した場合は、直ちに、その旨を市長、警察その他の関係行政機関に通報するとともに、付近の市民等への周知、当該特定動物の収容その他人の生命、身体又は財産に害を加えないために必要な措置を講じなければならない。
2 特定動物の飼い主は、当該特定動物が人の生命、身体又は財産に害を加えた場合は、被害者に対する応急措置及び新たな事故の発生を防止するための措置を講ずるとともに、市長が別に定めるところによりその旨を市長に届け出なければならない。
(災害発生時の措置)
第16条 本市及び市民等は、災害が発生した場合(以下「災害時」という。)は、相互に協力して、動物の保護に努めるものとする。
2 本市は、災害時において、動物及びその飼い主が共に避難することができるための必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
3 飼い主は、災害時における動物の適正な飼養に備えるよう努めなければならない。
4 飼い主は、災害時において、動物の保護及び動物による事故の発生の防止に努めるとともに、動物と共に避難するよう努めるものとする。
第4章 犬の抑留、動物の譲渡等
(犬の抑留)
第17条 市長は、野犬及び第9条第1項第1号の規定による係留をされていない飼い犬(以下「野犬等」という。)を抑留することができる。
2 市長は、前項の規定により野犬等を抑留するため、あらかじめ指定する捕獲人にその野犬等を捕獲させるものとする。
3 前項の捕獲人は、野犬等の捕獲に従事するときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(抑留の公示)
第18条 市長は、前条第1項の規定により野犬等を抑留した場合は、その旨及び飼い犬について、これを引き取るべき旨を2日間公示しなければならない。この場合において、飼い主の判明している犬については、併せてその旨を通知するものとする。
2 市長は、飼い主が前項の公示期間の満了の日後2日以内にその犬を引き取らないときは、これを処分することができる。ただし、やむを得ない理由によりこの期間内に引き取ることができない飼い主が、その旨及び相当の期間内に引き取るべき旨を申し出たときは、その申し出た期間が経過するまでは処分することができない。
3 市長は、前項本文の規定により抑留した犬を処分した後にその犬の飼い主から申出があり、その申出の遅延理由が妥当と認める場合には、通常生ずべき損害を補償する。
(1) 返還手数料 1頭につき3,771円
(2) 飼養管理費 市長が別に定める額
(野犬の薬殺)
第20条 市長は、野犬により人の生命、身体又は財産に害が加えられることを防止するため、特に必要があると認めるときは、区域、期間及び方法を定めて、あらかじめ指定する職員をして野犬を薬殺させることができる。この場合において、市長は、人の生命、身体又は財産に害を加えることのないように、当該区域内及びその付近の市民等に対し、当該職員をして野犬を薬殺する旨をあらかじめ周知させなければならない。
2 前項の職員は、野犬の薬殺に従事するときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(動物の譲渡)
第21条 市長は、次に掲げる動物について、その動物の飼養を希望する者で市長が別に定める条件に適合し、適正に飼養できると認められる者に譲渡することができる。
(1) 法第35条第1項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定により引き取つた犬又は猫
(2) 法第36条第2項の規定により収容した犬、猫等の動物
第5章 措置命令、立入検査等
(措置命令)
第22条 市長は、犬の飼い主が第9条第1項各号のいずれかの規定に違反していると認めるときは、その飼い主に対し、人の生命、身体若しくは財産に害を加えることを防止し、又は衛生を保持するための必要な措置を講ずるよう命ずることができる。
(立入検査等)
第23条 市長は、前条の規定の施行に必要な限度において、犬の飼い主その他の関係人から必要な報告を求め、又はあらかじめ指定した職員に、飼養施設等その他関係のある場所に立ち入り、犬の飼養に関し必要な検査をさせ、若しくは関係人に質問をさせることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第6章 雑則
(動物愛護管理員)
第24条 市長は、法第37条の3第1項に規定する動物愛護管理担当職員として、動物愛護管理員を置く。
(委任)
第25条 この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。
第7章 罰則
(罰則)
第26条 次の各号のいずれかに該当する者は、2万円以下の罰金に処する。
(1) 第9条第1項第1号の規定に違反して飼い犬を係留せず、かつ、その犬が人を死亡させ、若しくはその身体に傷害を負わせ、又はその財産に害を加えた場合の飼い主
(2) 第9条第1項第2号の規定に違反して飼い犬を鎖若しくは綱で確実につながず、又は口輪をかけることその他の適切な措置を講じず、かつ、その犬が人を死亡させ、若しくはその身体に傷害を負わせ、又はその財産に害を加えた場合の飼い主
2 第22条の規定による措置命令に違反した者は、5万円以下の罰金に処する。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和4年7月1日から施行する。
(関係条例の廃止)
2 次に掲げる条例は、廃止する。
(1) 長崎市犬取締条例(昭和43年長崎市条例第2号)
(2) 長崎市動物愛護管理員の設置に関する条例(令和2年長崎市条例第3号)
(経過措置)
3 この条例の施行の日(以下「施行日」という。)前に前項の規定による廃止前の長崎市犬取締条例(以下「旧条例」という。)の規定によりなされた処分、手続、届出その他の行為は、この条例の相当規定によりなされたものとみなす。
4 この条例の施行の際現に犬又は猫の飼い主は、一の飼養施設等において、飼養数が10以上である場合は、施行日から30日以内に、飼養施設等ごとに、第13条第1項で定めるところにより、市長が別に定める事項を市長に届け出なければならない。
5 施行日前に旧条例第5条第1項の規定により抑留されている野犬及び飼い犬は、第17条第1項の規定により抑留されている野犬等とみなす。
6 施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。