○登別市ぬくもりある福祉基本条例
平成25年3月27日
条例第11号
市民一人ひとりが住み慣れた地域で、互いの人格と個性を尊重しながら、共に生きるという意識は、まちづくりの基本です。
子どもから高齢者まで、障がいのある人もない人も、女性も男性も、そして登別を訪れる人も、共に支え合う地域社会を目指し、差別や偏見のないぬくもりある福祉社会を築き上げることが私たち市民の願いです。
しかし、私たちの住む地域社会における課題としては、少子高齢化や核家族化の進展及び価値観や生活様式の多様化等による人と人とのつながりの希薄化、経済情勢の低迷や雇用環境の悪化等による経済的な不安や社会保障に対する不安等が挙げられます。
このような様々な課題に対応していくためには、行政による対象者ごとの公的サービスに加え、市民一人ひとりが人権と価値観を尊重して思いやりの心を持ち、地域で何らかの支援が必要な人たちを市と市民との協働により支え合う仕組みをつくり、市民誰もが自分らしい生活を送ることができる心の通い合う地域社会を築いていくことが求められます。
そのためには、市は、現状と将来を見据えて、福祉教育の充実や交流の促進等によりノーマライゼーション理念の普及啓発を図るとともに、福祉を支える人材や組織の養成及び財源確保等に努める必要があります。一方、市民は、地域に関心を持ち、地域のことを知り、地域で支え合う活動を行うことが必要となります。
私たちは、このような考え方に立って、それぞれの役割を自覚し、共に力を合わせて福祉のまちづくりに取り組むため、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、福祉のまちづくりに関し、その基本理念及び基本的事項を定めるとともに、市民、事業者及び市の役割を明らかにすることにより、福祉のまちづくりを市民、事業者及び市が協働で推進し、市民誰もが安心して暮らすことができる地域社会を築くことを目的とする。
(基本理念)
第2条 福祉のまちづくりの基本理念は、次に掲げるものとし、市民、事業者及び市は、この理念に基づき、協働して福祉のまちづくりの推進に努めなければならない。
(1) 市民は、地域社会の一員として尊重され、生涯を通じて自らの尊厳を保ち、互いに認め合いながら自立していくよう努めなければならない。
(2) 事業者は、地域社会の一員として自己の能力を発揮し、互いに協力して、誰もが安心して暮らすことができる地域社会の実現に努めなければならない。
(3) 市は、誰もが安心して暮らすことができる地域社会の実現のため、公平性及び公益性に重きを置き、必要な施策を総合的かつ効果的に実施するよう努めなければならない。
(4) 市民、事業者及び市は、行動を妨げる偏見等の心理的障壁や建物等における物理的障壁の除去に取り組み、市民が自らの意思で自由に行動し、社会参加できる環境づくりの推進に努めなければならない。
(1) 福祉のまちづくり すべての市民が互いの人権と価値観を尊重し、地域社会の一員として自己の能力を発揮することにより、共に支え合い助け合いながら自立した生活を送ることができ、自らの意思で地域社会づくりに参加し、誰もが安全に安心して暮らし、又は訪れることができるまちづくりをいう。
(2) 市民 市内に在住し、若しくは通勤若しくは通学する個人又は団体をいう。
(3) 事業者 市内に事務所又は事業所を有する法人又は個人をいう。
(4) 障がい者、高齢者等 障がい者、高齢者、妊産婦その他の日常生活又は社会生活において制限を受ける者をいう。
(5) 公共的施設 病院、百貨店、ホテル、飲食店、学校、共同住宅、道路、公園その他の多数の者の利用に供する施設で規則で定めるものをいう。
(6) 公共的車両等 一般旅客の用に供する鉄道の車両、自動車、航空機等で規則で定めるものをいう。
(7) 公共的工作物 信号機、バスの停留所その他の多数の者の利用に供する工作物で規則で定めるものをいう。
(8) 公共的施設等 公共的施設、公共的車両等、公共的工作物及び住宅(共同住宅を除く。)をいう。
(市民の責務)
第4条 市民は、一人ひとりがまちづくりの主体であることを自覚し、福祉のまちづくりについて理解を深め、積極的に取り組むとともに、互いに協力して福祉のまちづくりに寄与するよう努めなければならない。
2 市民は、生涯を通じて自らの尊厳を保ち、互いを尊重しながら、自立していくよう努めなければならない。
3 市民は、誰もが安全かつ円滑に公共的施設等を利用することを妨げてはならない。
4 市民は、市が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、地域社会の一員であることを自覚し、事業者としての専門性を活かして福祉のまちづくりに積極的に取り組むとともに、互いに協力して福祉のまちづくりに寄与するよう努めなければならない。
2 事業者は、自ら設置し、又は管理する公共的施設等について、すべての人が安全かつ容易に利用できるよう、その整備に努めなければならない。
3 事業者は、市が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。
(市の責務)
第6条 市は、市民及び事業者の参加と協力のもとに、公平性及び公益性に重きを置き、福祉のまちづくりに関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施するよう努めなければならない。
2 市は、福祉のまちづくりに関する施策に、市民及び事業者の意見を反映するよう努めなければならない。
3 市は、市民及び事業者の福祉のまちづくりに関する活動に対し、必要に応じて支援及び協力するよう努めなければならない。
4 市は、自ら設置し、又は管理する公共的施設等について、すべての人が安全かつ容易に利用できるよう、その整備に努めなければならない。
5 市は、福祉のまちづくりのために広域的な取組を必要とする施策について、国及び北海道その他の地方公共団体(以下この項において「国及び北海道等」という。)と連携して、その推進に努めるとともに、必要に応じて国及び北海道等に対し、制度の改善その他必要な措置を要請するものとする。
(施策の基本方針)
第7条 市は、次に掲げる基本方針に基づき、果たすべき責務を認識し、福祉のまちづくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するよう努めるものとする。
(1) 市民一人ひとりが地域社会の一員として尊重され、自己の能力を発揮し、共に支え合い助け合って、誰もが安心して暮らせるまちづくりの推進
(2) 市民一人ひとりが自立し、自由に社会参加することができるまちづくりの推進
(3) 市民及び事業者がその果たすべき責務を認識し、自主的かつ積極的に参画することができるまちづくりの推進
(4) 市民、事業者及び市が互いに協力及び連携し、一体となったまちづくりの推進
(情報の提供)
第8条 市は、市民及び事業者が福祉のまちづくりに関して理解を深め、自発的に活動することを促進するため、必要な情報及び学習機会の提供に努めるものとする。
2 市は、市民及び事業者と連携し、福祉のまちづくりに関する情報共有に努めるものとする。
(推進体制の整備)
第9条 市は、市民及び事業者と互いに協力及び連携し、福祉のまちづくりを推進するための体制を整備するものとする。
(財政上の措置)
第10条 市は、福祉のまちづくりを推進するために、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(意識の啓発)
第11条 市は、すべての市民が互いの人権を尊重し、思いやりのある福祉の心の醸成及びノーマライゼーション理念の浸透が図られるよう、地域福祉を推進する団体と連携し、啓発に努めるものとする。
2 市民及び事業者は、支え合いの大切さを理解し、自らきずな意識を高めるよう努めるものとする。
(福祉教育の充実)
第12条 市は、幼児教育、学校教育、社会教育等の機会を通じて、思いやりのある福祉の心を育むために、地域福祉を推進する団体と連携し、福祉教育の充実に努めるものとする。
2 市民及び事業者は、福祉活動を実践するために、福祉教育に積極的に参加するよう努めるものとする。
(交流の促進)
第13条 市民、事業者及び市は、互いを尊重しながら、福祉のまちづくりに関して理解を深められるよう、多様な交流の促進に努めるものとする。
2 市は、市民及び事業者が交流を通じて福祉活動の大切さを理解し、福祉活動を実践できるよう、必要な情報及び機会の提供に努めるものとする。
(男女共同参画社会の形成)
第14条 市民、事業者及び市は、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)の基本理念に基づき、社会のあらゆる分野において男女共同参画社会の形成促進に努めるものとする。
(就業機会の促進)
第15条 事業者及び市は、障がい者、高齢者等がその能力に応じ、就業の機会が得られ、その職業の安定が図られるよう、必要な支援に努めるものとする。
2 事業者及び市は、障がい者の雇用機会を確保するとともに、職場環境の整備を図り、その雇用の安定に努めるものとする。
3 事業者及び市は、高齢者が自らの豊富な知識及び経験を活用して生きがいをもって暮らせるよう、就業機会の提供に努めるものとする。
4 事業者及び市は、女性と男性の平等な雇用機会を確保するとともに、職場待遇の改善等により、職業生活の充実が図られるよう努めるものとする。
(防災上の相互支援)
第16条 市民、事業者及び市は、互いに協力及び連携して、障がい者、高齢者等の災害時の安全確保に努めるものとする。
2 市は、災害に備えて防災意識の啓発を行うとともに、市民及び事業者と連携し、障がい者、高齢者等に配慮した支援体制づくりに努めるものとする。
(防犯活動の推進)
第17条 市民、事業者及び市は、市民が安心して日常生活を送ることができるよう、互いに協力及び連携して、防犯活動の推進に努めるものとする。
2 市は、防犯意識の啓発を行うとともに、安全な生活環境づくりに努めるものとする。
(人権擁護意識の啓発等)
第18条 市民、事業者及び市は、誤解、偏見、理解不足等から生じる差別をなくすため、互いに連携して、人権擁護意識の啓発に努めるものとする。
2 市民、事業者及び市は、人権擁護の意識を高め、児童又は障がい者、高齢者等へのいじめ又は虐待、配偶者等からの暴力等の人権侵害を未然に防止するよう努めるものとする。
3 市は、児童又は障がい者、高齢者等へのいじめ又は虐待、配偶者等からの暴力等の人権侵害の発生に際しては、関係機関と連携して情報共有を図り、適切に対応するよう努めるものとする。
(地域福祉の推進)
第19条 市は、福祉のまちづくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例の理念をもとに、社会福祉法(昭和26年法律第45号)第107条の地域福祉計画を定めなければならない。
2 市は、市民及び事業者と協働して、地域福祉計画を策定しなければならない。
3 市は、地域福祉計画を策定したときは、当該計画を公表しなければならない。
4 市は、地域福祉計画について、その進捗状況を検証しなければならない。
(地域福祉計画に定める基本的事項)
第20条 市は、地域福祉計画において社会福祉法第107条に定めるもののほか、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 子育てに関すること。
(2) 健康増進に関すること。
(3) 障がい者福祉に関すること。
(4) 高齢者福祉に関すること。
(5) 男女共同参画に関すること。
(6) 安全・安心な生活に関すること。
(7) その他市長が特に必要と認めるもの
附則
この条例は、平成25年4月1日から施行する。