○小郡市食料・農業・農村基本条例

平成25年9月27日

条例第34号

小郡市は、筑後川と宝満川が合流するデルタ地帯に位置し、中央部の平坦地と、北東部の花立山から連なる台地及び北西部のなだらかな丘陵地からなっている。そのため営農条件に恵まれ、先人たちの優れた技術とたゆみない努力により、豊かな農地をまもりながら、多種多様な農産物を生産してきた。

農業及び農村は、農産物を生産し、私たちの生命の源である食料を供給するばかりではなく、良好な景観の形成、水源のかん養、生態系の保全、洪水の防止等の多面的機能を有し、市民に健康で安全な生活環境を提供してきた。

しかしながら、近年の国際化や農産物の輸入自由化などの経済情勢、食の多様化や都市への一極集中などを背景として、農業従事者の減少や高齢化、食料の安全性への懸念など、食料、農業及び農村をめぐる様々な問題が発生している。

このようなことから、今後の本市の農業及び農村の振興を進めていくためには、農業者の意欲向上はもとより、市民一人ひとりが、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性について理解を深めながら、地域で生産される農産物の域内での消費を促進することが必要である。

私たちはここに、市民、農業者及び農業団体、食品産業に関わる全ての事業者並びに行政との協働により、食料に対する理解を深め、農業を本市の基幹産業として育みながら、魅力ある農村を次世代に引き継ぐとともに、その進むべき道を明らかにするために、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、本市の食料、農業及び農村の振興に関する施策について、基本理念及びその実現に必要な基本的施策に関する事項を定めることにより、農業者の意欲の向上を図るとともに、食料、農業及び農村に対する市民の理解を深め、もって本市の農業及び農村の持続的発展並びに市民の健康で豊かな生活の向上に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 食料は、健康で豊かな生活を支えるものであることから、安全で安心できる農産物が安定的に生産され、供給されることにより、将来にわたって食料に対する市民の信頼が確保されるとともに、地域で生産される農産物の域内での流通及び消費を促進し、食の重要性に対する理解の促進と地域特有の食文化の継承が図られなければならない。

2 農業においては、農地、農業用施設その他の農業資源及び多様な担い手が確保され、地域の特性に応じた収益性の高いゆとりある農業が営まれ、かつ、良好な自然環境と調和した持続的な発展が図られなければならない。

3 農村は、食料の生産のみならず、良好な景観の形成、水源のかん養、自然環境の保全、洪水の防止、生物多様性の保全、文化の伝承等の多面的機能を有し、自然と人間との共生ができる調和のとれた空間として整備され、かつ、保全されなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念にのっとり、食料、農業及び農村に関する基本的かつ総合的な施策を推進する責務を有する。

(農業者及び農業団体の責務)

第4条 農業者及び農業団体は、自らが安全な食料の生産者であり、基本理念に示す農村における地域づくりの主体であることを認識し、安全で安心できる農産物を安定的に生産し、収益性の高い、ゆとりある農業経営の確立に向け、創意工夫を生かした効率的な農業生産及び魅力ある農村づくりに主体的に取り組む責務を有する。

(市民の役割)

第5条 市民は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、地域で生産される農産物の積極的な消費及び健康で豊かな食生活の実践に努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 食品産業に関わる全ての事業者は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、地域で生産される農産物の積極的な利用と消費者への安全で安心できる食料の円滑かつ安定的な供給に努めるものとする。

(基本的施策)

第7条 市は、第2条に規定する基本理念にのっとり、次に掲げる施策を食料、農業及び農村の基本的な事項として各々の施策相互の有機的な連携を図りつつ推進するものとする。

(1) 消費者が安全で安心できる農産物を入手し、食及び農に対する信頼関係を築くため、消費者が求める産地情報の提供等の施策

(2) 学校、家庭及び地域社会等と連携した食と農に関する教育による健全な食生活への理解の促進並びに地域で生産される農産物を使った地域特有の食文化の発展と継承に必要な施策

(3) 農業経営に意欲のある担い手とその後継者の育成及び確保に必要な施策並びに女性農業者、高齢農業者、新規就農者等の多様な担い手の育成及び確保に必要な施策

(4) 農業の生産基盤であるほ場、農道、用排水路及びため池等の整備並びに用水の確保、遊休農地の解消等による優良農地の確保に必要な施策

(5) 農業及び農村に関する情報の提供、生産者と消費者の交流等による農業及び農村の有する生産及び多面的機能に対する市民の理解の促進に必要な施策

(6) 需要の動向に応じた高品質優良農産物の生産、新たな需要を創出する品種及び品目の導入、産地銘柄の確立等による収益性の高い農業経営の確立並びに競争力のある産地の育成に必要な施策

(7) 農業者及び農業団体、食品産業に関わる全ての事業者並びに消費者の連携の強化等による地域で生産される農産物の域内での流通及び消費の促進に必要な施策

(8) 農薬及び肥料の適正な使用、家畜排泄物等有機物資源の有効利用による地力の増進等に基づく環境にやさしい有機農業の推進並びに自然循環機能の維持増進に必要な施策

(9) 農業及び農村の持つ多面的機能を十分に発揮させるための環境整備の推進に必要な施策

(10) 女性農業者の社会的経済的地位の向上、就業条件の整備及び農業政策等の意思決定への参画促進等の環境整備による男女共同参画社会の確立に必要な施策

(基本計画の策定)

第8条 市長は、前条に規定する基本的施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 市長は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ広く市民の意見が反映されるよう十分に配慮するとともに、第11条に規定する小郡市食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 市長は、食料、農業及び農村をとりまく情勢の変化を勘案し、おおむね5年ごとに基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

5 第2項及び第3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(実施状況の公表)

第9条 市長は、本市の食料、農業及び農村の状況並びに基本計画に基づく施策の実施状況をとりまとめ、公表するものとする。

(推進体制)

第10条 市長は、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるものとする。

(審議会)

第11条 食料、農業及び農村に関する基本的事項並びに重要事項を調査審議するため、市に小郡市食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。

(1) 基本計画の策定、施策の実施状況及び変更に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する重要な事項

3 前2項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、平成25年10月1日から施行する。

小郡市食料・農業・農村基本条例

平成25年9月27日 条例第34号

(平成25年10月1日施行)