○遠賀・中間地域広域行政事務組合分限処分の指針
令和3年2月24日
訓令第1号
第1 趣旨
この指針は、任命権者が地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「法」という。)第28条第1項に規定する分限処分を行う場合に、その処分が恣意的な処分とならないよう具体的な手続き等を定めるとともに、一定の事由により職責を十分に果たすことのできない職員に対して厳正かつ適切に対応することにより、公務の能率の維持及びその適正な運営の確保を図ることを目的とする。
第2 定義
この指針において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 分限処分 この指針に定める分限降任及び分限免職をいう。
(2) 分限降任 法第28条第1項第1号から第3号までの規定による降任をいう。
(3) 分限免職 法第28条第1項第1号から第3号までの規定による免職をいう。
(4) 病気休暇 職員の勤務時間、休暇等に関する条例(平成8年条例第5号)第13条に規定する病気休暇をいう。
(5) 病気休職 法第28条第2項第1号の規定による休職をいう。
(6) 懲戒免職 法第29条第1項の規定による免職をいう。
第3 分限事由、処分内容及び具体的な事例
任命権者は、職員が次の分限事由に該当すると認められる場合は、それぞれに定める処分を行う。
処分に当たっては、当該職員が現に就いている職に求められる役割を果たすことが困難で、下位の職であれば良好な職務遂行が期待できるときは、職務遂行能力等に応じた職に降任させるものとし、現に就いている職だけでなく、公務員として通常要求される勤務実績や適格性が欠けているときは、免職とする。
1 勤務実績不良(法第28条第1項第1号関係) 担当すべきものとして割り当てられた職務(以下「担当業務」という。)を遂行してその職責を果たすべきであるにもかかわらず、人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、その実績が不十分な職員は、免職又は降任とする。 | |
【具体的な事例】 | (1) 勤務を欠くことにより職務を遂行しなかった。 ① 長期間にわたる欠勤 ② 欠勤、遅刻及び早退を繰り返す。 ③ 年次休暇等を無計画に取得し、他の職員に余分な負担をかける。 ④ 勤務時間中に事務室内を目的もなく歩き回わったり、私用電話のため職務とは関係なく無断で頻繁に長時間席を離れる。 ⑤ 病気休暇や年次休暇が不承認となっているにもかかわらず、病気等を理由に出勤しなかった。 (2) 独善的行為 ① 自分の好む業務のみを行う。 ② 所定の業務処理の手続を行わず、又は上司への報告・相談等を怠るなどして、独断で業務を行う。 ③ 協調性に欠け、上司や他の職員等ともめごとを繰り返す。 ④ 粗暴な言動等により住民ともめごとを繰り返す。 (3) 能力の欠如 ① 業務の程度や作業効率が著しく低かった。 ② 初歩的な業務上の誤りを繰り返した。 ③ 業務を1人では完結できず常に上司、他の職員等の支援を要する。 ④ 業務を定められた期限内に処理できない。 (4) 業務上の重大な誤りを繰り返した。 (5) 職務命令に違反したり、職務命令を拒否した。 (6) 上記(1)から(5)までに掲げる事例以外で、勤務実績不良等が認められる。 |
2 心身の故障(法第28条第1項第2号関係) 職員が心身の故障により職務に支障が生じており、医師の診断によって当該職員の心身の故障の状態が改善される見込みがない、又は今後も相当期間の療養が必要であると認められるときは、免職又は降任とする。 | |
【具体的な事例】 | ① 3年間の病気休職の期間が満了するにもかかわらず、病状が回復せず、今後も職務の遂行に支障がある。 ② 病気休職中であるが、今後回復して就労が可能となる見込みがない。 ③ 同一の疾病による病気休暇や病気休職を繰り返してそれらの期間の累計が、過去5年間において3年を超え、そのような状況が今後も継続することが見込まれる。 |
3 適格性欠如(法第28条第1項第3号関係) 簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に起因してその職務の円滑な遂行に支障がある、又は支障が生ずる高度の蓋然性が認められる職員は、免職又は降任とする。 ※蓋然性とは・・・ある程度確かな見込みがある事。 | |
【具体的な事例】 | ① 上司や他の職員等に対する暴力、暴言、誹謗(ひぼう)又は中傷を繰り返す。 ② 協調性に欠け、上司や他の職員等ともめごとを繰り返す。 ③ 粗暴な言動等により住民ともめごとを繰り返す。 ④ 公務員に必要な適格性に疑問を抱かせるような問題行動を繰り返す。 |
4 受診命令違反 病気休職の期間が満了するため又は勤務実績不良若しくは適格性欠如の状態が心身の故障に起因することが疑われるため、医師の診断を受けることを命令したにもかかわらず、これに従わない職員は、免職とする。 | |
【具体的な事例】 | 受診命令書を交付して再三にわたり指定する医師の診察を受けることを命令したにもかかわらず、これに従わない。 |
5 行方不明 原則として1月以上にわたり行方不明(意図的に継続して無断で欠勤するなど懲戒事由に該当することが明らかな場合又は水難、火災その他の災害によることが明らかな場合を除く。)の職員は、免職とする。 | |
【具体的な事例】 | 1月以上にわたり、行方不明(職員が無断欠勤をし、かつ、当該職員の所在を当該職員の親族が把握していないことが明らかになった状態をいう。)となっている。 |
第4 所属長及び総務課の役割
所属長及び総務課は、ともに連携・協力し、対象職員への対応(指導及び分限処分)について適切に取り組むものとする。
1 所属長の役割
所属長は、概ね次のような役割を担うものとする。
(1) 対象職員の早期発見・早期対応
(2) 対象職員の勤務実績の改善を図るため又は問題行動を是正させるための注意及び指導の実施
(3) 対象職員の担当業務の見直しの検討、研修等の実施
(4) 対象職員の勤務実績不良の状況や問題行動及び所属長における注意、指導等の状況に関する記録及び資料の収集
(5) 医師への受診の促し等、対象職員の健康の保持増進及び安全確保
(6) 総務課への対象職員に関する状況の報告
2 総務課の役割
総務課は、概ね次に掲げる役割を担うものとする。
(1) 対象職員の状況の把握
(2) 所属長が行う対象職員への指導、研修等に対する助言及び支援
(3) 対象職員に対する面談、指導、研修等の実施
(4) 対象職員の上司等に対する面談、指導、受診の勧奨の実施
(5) 対象職員への警告書又は受診命令書の交付
(6) 対象職員に対する分限処分の検討
第5 対象職員等の責務
1 勤務実績不良等の対象職員の責務
勤務実績不良等の対象職員は、上司の指導等に誠実に従うとともに、自らも実績不良等の状態の改善に真摯に取り組まなければならない。
2 勤務実績不良等の状態が心身の故障に起因すると疑われる職員等の責務
勤務実績不良等の状態が心身の故障に起因すると疑われる職員は、専門の医師の診断を受け、その指導に従い、適切な療養を行わなければならない。また、病気休暇又は病気休職中の職員は、療養に専念するとともに、常に公務員としての自覚を持ち、住民の信頼を損なうことのないよう行動しなければならない。
第6 対応措置
1 対象職員等の原因確認
所属長は、対象職員等に対し、指導、観察、面談、他の職員への聞き取り等を行い、その原因が心身の故障によるものかどうか判断するための情報収集を行う。また、必要に応じて総務課、産業医に相談し、情報の共有を行う。対象職員等の勤務実績不良等の状態が心身の故障に起因することが疑われる場合、所属長及び総務課は医師の診断を受けることを促す。この場合において、対象職員が再三にわたりこれに従わなかったときは、受診命令書(様式第4号)を交付して受診を命ずる。
2 勤務実績不良等の職員への対応
勤務実績不良等の職員への対応は、以下のとおりとする。
(1) 所属長等における事前指導等
① 所属長は、勤務実績不良等の対象職員に対し、勤務実績の改善を図るため又は問題行動を是正させるための注意又は指導を行うとともに、必要に応じて、対象職員の担当業務の見直し又は研修を行うなどして、勤務実績不良等の状態が改善されるよう努める。
② 所属長は、対象職員の勤務実績不良等の状況、問題行動、所属長における注意又は指導、研修等の状況について、記録及び資料の収集を行う。
③ 総務課は、所属長に対して対象職員の状況の把握に努めるよう指導するとともに、所属長が行う対象職員への指導、研修等に対する助言及び支援を行う。また、必要に応じて、対象職員、その上司等に対して面談を実施する。
(2) 対象職員の報告
所属長は、(1)①の措置を一定期間(概ね6月間)実施したにもかかわらず、対象職員の勤務実績不良等の状態が続いている場合には、指導対象職員報告書(様式第1号)により、総務課にその状況を報告する。
(3) 総務課による面談の実施
総務課は、所属長から報告のあった対象職員に対して、所属長の上司等の立会いのもとに面談を実施し、勤務実績不良等の内容を確認する。
(4) 警告書の交付
① (3)の面談の結果、勤務実績不良等の状態の改善及び是正が必要と認められる場合、総務課は、法第28条第1項第1号又は第3号の規定に基づく分限処分が行われる可能性があることを記載した警告書(様式第2号)を交付し、個別指導等によりその改善を求める。
② ①の規定により対象職員に警告書を交付した場合は、当該職員に書面により弁明(様式第3号)する機会を与えるものとする。
③ 事前指導等の中で、対象職員の勤務実績不良等の状態が心身の故障に起因することが疑われる場合、所属長及び総務課は医師の診断を受けることを促す。この場合において、対象職員が再三にわたりこれに従わなかったときは、受診命令書(様式第4号)を交付して受診を命ずる。
(5) 個別指導の実施
① 所属長は、(4)①により警告書の交付を受けた対象職員に対し、勤務実績不良等の状態の改善及び是正を図るため、所属長において個別指導を実施する。
② 対象職員の勤務実績不良等の状態の改善が困難と認められる場合、所属長は、総務課と協議のうえ、個別指導の実施を省略し、又は中止することができる。
なお、対象職員に心身の故障があるときは、必要に応じて、医師の意見を聴き取り、改善目標を設定する。
④ 所属長は、指導期間(概ね6月間)の終了後又は中止した場合、個別指導達成状況等を記載した個別指導結果報告書(様式第7号)を作成し、総務課にその状況を報告する。
(6) 個別指導の検証
総務課は、(5)④の報告について検証を行う。
(7) 分限処分の検討
総務課は、個別指導の結果、対象職員の勤務実績不良等の状態が改善されない場合又は改善が困難と認められる場合は、法第28条第1項第1号又は第3号の規定による分限処分(免職又は降任の処分に限る。)の可否について検討する。
※消防長部局においては、人事協議会への審査に付する。
3 心身に故障がある職員への対応
心身の故障により勤務が困難な職員については、療養に専念することにより、通常の業務に円滑に復帰させることを基本とするが、病気休職の期間が一定期間以上の長期にわたり、今後も通常の職務の遂行に支障があると見込まれる場合は、次のとおり対応する。
(1) 総務課における対応
① 総務課は、心身の故障により療養が必要な職員に対して、随時、産業医の意見を聞いたうえで、所属長等の立会いのもと面談を実施するなどにより、心身の故障の状況を確認する。
② 総務課は、第3・2・①から③までのいずれかに該当すると見込まれる対象職員に対して、産業医の意見を聞いたうえで、所属長等の立会いのもと面談を実施し、対象職員に対して、法第28条第1項第2号に該当するか否かを判断するため、医師2名を指定して受診を促す。この場合において、対象職員が受診勧奨に従わなかったとき又は一定期間内に受診していないときは、受診命令書(様式第4号)を交付して受診を命ずる。
(2) 分限処分の検討
① 指定した医師2名により、第3・2・①から③までのいずれかに該当するため職務の遂行に支障がある、又はこれに堪えないとの診断がなされた場合には、総務課は、法第28条第1項第2号の規定による分限処分(免職又は降任の処分に限る。)の可否について検討する。
② 指定した医師2名のうち、少なくとも1名が将来回復の可能性がない、又は病気休職の期間中には回復の見込みが乏しいとの診断をしなかった場合には、総務課及び所属長は、当該職員及び医師等と相談のうえ、円滑な職場復帰に向けた対応等を行う。
4 受診命令に従わない職員への対応
総務課は、第6・1、第6・2(4)③又は第6・3(1)②により、対象職員に受診命令書を交付して再三にわたり指定する医師の診察を受けることを命令したにもかかわらず、対象職員がこれに従わない場合には、法第28条第1項第3号の規定による分限処分(免職の処分に限る。)の可否について検討する。
※消防長部局においては、人事協議会への審査に付する。
5 行方不明の職員への対応
(1) 所属長の対応
所属長は、職員が行方不明となった場合は、直ちに総務課に報告する。
(2) 総務課の対応
① 総務課は、行方不明となった職員の服務の取扱いについては、行方不明の事実が判明した日から欠勤として取り扱うものとする。
② 職員の行方不明の事実が判明した日から30日が経過してもなお行方不明である場合、法第28条第1項第3号の規定による分限処分の可否について検討する。なお、欠勤等の懲戒免職に相当する非違行為が認められる場合は、懲戒処分に関する指針に基づいて措置するものとする。
ア その行方不明の原因が、事故、災害等による場合は分限休職処分とし、事故、災害等の発生から1年が経過した後、死亡退職とする。
イ それ以外の原因による場合は、職場への復帰が見込まれないものと推定し、法第28条第1項第3号の規定による分限処分(免職処分に限る。)を検討する。
第7 分限処分の決定
この指針に基づく分限免職処分又は分限降任処分については、理事会が決定する。
※消防長部局においては、人事協議会における審査を経て、消防長が決定する。
第8 指針の施行に必要な事項
この指針の施行に必要な事項は、理事会が別に定める。
附則
この訓令は、公布の日から施行する。