○障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例
平成22年12月14日
条例第59号
障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例をここに公布する。
障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例
これまで本県においては、障がいのある人の福祉向上のための様々な取組が行われ、障がいについての県民の理解は徐々に深まりつつある。
しかしながら、依然として、障がいのあることを理由に、障がいのある人を区別する意識やこれに基づいた社会における制度が存在し、障がいのある人の社会参加を妨げる障壁となっている。
私たちは、このような状況を憂慮し、これまで障がいのある児童等と障がいのない児童等が分け隔てなく教育を受けられる機会の拡充が十分に図られていなかったことや障がいのある人に対する誤解、偏見、理解の不足等を解消するための取組が十分に行われていなかったこと等が一因となって様々な障壁を生み、障がいのある人の地域社会への参加を妨げてきたということを改めて認識しなければならない。
今、全国を上回る速度で少子高齢化が進み、地域の担い手が減少していく中にあって、今後、本県が持続可能な社会を構築していくためには、障がいのある人もない人もそれぞれが地域における役割を担い、共に生きる地域づくりを早急に進めていく必要がある。そのためには、すべての県民が等しく地域社会の一員としてあらゆる分野に参加することができるよう、共に学び共に生きる中で、将来の地域づくりを担うかけがえのない人材に対する正しい知識の普及と理解の促進を図り、障がいのある人に対する不利益な取扱いを解消することが必要である。
ここに私たちは、障がいのある人と障がいのない人とが互いに個人の権利を尊重し合いながら心豊かに主体的に生活することができる地域づくりを目指すことを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関し、基本理念を定め、県の責務並びに市町村、県民及び事業者の役割を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、障がいのある人と障がいのない人とが互いに権利を尊重し合いながら共に学び共に生きる地域づくりを推進することを目的とする。
(1) 障がい 障害者基本法(昭和45年法律第84号)第2条第1号に規定する身体障害、知的障害又は精神障害、高次脳機能障害その他これらに準ずる障害があることに伴い、その時々の社会的環境において求められる能力又は機能に達しないことにより、継続的に日常生活又は社会生活において相当な制限を受ける状態をいう。
(2) 不利益な取扱い 障がいがあることを理由として不利な区別、排除及び権利の制限をすること並びに障がいのない人と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むことができるようにするための必要かつ合理的な配慮(社会通念上相当と認められる程度を超えた人的負担、物的負担、経済的負担その他の過重な負担を課するものと認められる場合を除く。)をしないこと。
(一部改正〔平成23年条例71号〕)
(基本理念)
第3条 障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消は、障がいのある人自らが選択した地域において生活し、地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を尊重することを基本として、行われなければならない。
2 障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消のための取組は、不利益な取扱いの多くが、障がいに対する誤解、偏見、理解の不足等に起因するものであることにかんがみ、障がいについての理解を深めることを基本として、行われなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関する施策を総合的に策定し、及びこれを実施するものとする。
(市町村の役割)
第5条 市町村は、基本理念にのっとり、当該市町村の地域の特性に応じて、それぞれの立場において、障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関する施策を推進するよう努めるものとする。
(県民等の役割)
第6条 県民及び事業者(以下「県民等」という。)は、障がいのある人が、地域の一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加できるよう、支援に努めることにより、障がいのある人もない人も共に暮らしやすい地域づくりに努めるものとする。
2 県民等は、基本理念にのっとり、障がいについての理解を深め、障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消並びに県及び市町村が実施する障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関する施策への協力に努めるものとする。
3 県民等は、障がいのある人の家族に対して必要な配慮をするよう努めるものとする。
4 障がいのある人は、自らの障がいの特性及び障がいのあることによる生活上の困難について県民等に伝え、理解が得られるよう努めるものとする。
(不利益な取扱いの禁止)
第7条 何人も、障がいのある人に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
(虐待の禁止)
第8条 何人も、障がいのある人に対し、次に掲げる行為(以下「虐待」という。)をしてはならない。
(1) 障がいのある人の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
(2) 障がいのある人にわいせつな行為をすること又は障がいのある人をしてわいせつな行為をさせること。
(3) 障がいのある人を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の障がいのある人を養護すべき義務を著しく怠ること。
(4) 障がいのある人に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障がいのある人に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
(5) 障がいのある人の財産を不当に処分することその他当該障がいのある人から不当に財産上の利益を得ること。
(交流機会の拡大等)
第9条 県は、障がいのある人と障がいのない人との交流の機会の拡大及び充実を図るとともに、障がいのある人と障がいのない人との交流の場への積極的な参加を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(職員の育成)
第10条 県は、障がいのある人に対する支援を適切に行うため、医療、保健、福祉、教育等の業務において、障がいに関する専門的知識を有する職員の育成を図るとともに、すべての職員が障がいについての知識及び理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(情報の提供及び意見の聴取)
第11条 県は、障がいについての理解の促進に資する情報を県民等に対し提供するとともに、障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関する普及啓発に努めるものとする。
2 県は、障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関し、県民等から意見を求め、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(教育の支援体制の整備及び充実)
第12条 県は、障がいのある人もない人も共に生きる地域づくりの推進に果たすべき教育の役割の重要性にかんがみ、障がいのある人が障がいのない人と共に学び、必要な教育を受けることができるよう、教育の支援体制の整備及び充実に努めるものとする。
(相互連携)
第13条 県は、障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関する施策の推進に当たっては、障がいのある人の団体その他の社会福祉関係団体(以下「関係団体」という。)及び市町村と緊密な連携を図るものとする。
(関係団体等への支援)
第14条 県は、県民等及び関係団体が自発的に行う障がいについての理解を深め、障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に資する活動を促進するため、必要な施策を実施するものとする。
(不利益な取扱い等に関する相談、助言等)
第15条 県は、障がいのある人に対する不利益な取扱い及び虐待に関する相談に応じ、これに対する助言及び調整等必要な措置を講ずるものとする。
(財政上の措置)
第16条 県は、障がいについての理解の促進及び障がいのある人に対する不利益な取扱いの解消に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
1 この条例は、平成23年7月1日から施行する。
2 知事は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則(平成23年10月25日条例第71号)
この条例は、公布の日から施行する。(後略)