○秋田の農林水産業と農山漁村を元気づける条例

平成十五年三月十一日

秋田県条例第三十八号

秋田の農林水産業と農山漁村を元気づける条例をここに公布する。

秋田の農林水産業と農山漁村を元気づける条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第八条)

第二章 農林水産業・農山漁村振興基本計画(第九条)

第三章 基本的施策(第十条―第十七条)

附則

本県は、一方を日本海に面し、三方を緑豊かな白神山地や奥羽山脈等に囲まれ、雄物川、米代川及び子吉川を代表とする清流が県土を潤し、これらの豊かな自然環境と先人のたゆまぬ努力により、秋田米、秋田スギ、ハタハタなどに代表される安全で良質な農林水産物を安定的に供給する農業県、林業県、水産県として大きな役割を果たすとともに、県民等しくその恵みを受けてきた。

農林水産業は、人間の生命の維持に欠くことができない食料など健康で充実した生活の基礎となる農林水産物を供給するとともに、その生産活動等を通じて豊かな自然環境を維持し、県土を保全し、地域の文化をはぐくむなど、「ふるさと秋田」の礎として、県民の生活と地域社会を支えてきた。

しかしながら、農林水産業に携わる人々の減少と急速な高齢化の進行、消費者等の農林水産物に対する需要の多様化、農林水産物の輸入の増加など農林水産業と農山漁村を取り巻く環境は、今や大きく変化してきている。

私たちは、こうしたときに当たり、農林水産業に携わる人々の意欲と創意工夫を生かした主体的な取組を支援することにより、農林水産業を競争力を有する魅力ある産業として確立し、将来にわたって、県民のみならず広く国民に安全で良質な農林水産物を安定的に供給できる体制を整備するとともに、多様で活力に満ちた農山漁村を構築しなければならない。

ここに、農林水産業及び農山漁村の振興に関する基本的な理念を明らかにしてその方向を示し、農林水産業及び農山漁村の振興に関する取組を総合的かつ計画的に推進し、豊かな「ふるさと秋田」を実現するため、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、農林水産業者が自らの経営に関する将来の展望に基づき創意工夫に富んだ意欲ある経営を展開できるようにすること等により農林水産業の持続的な発展を図るとともに、多様で活力に満ちた農山漁村を構築することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 多面的機能 水源のかん養、自然環境の保全、良好な農山漁村の景観の形成、地域文化の伝承等農林水産業及び農山漁村の有する農林水産物の供給の機能以外の多面にわたる機能をいう。

 農林水産業関連産業 食品産業、木材産業その他の農林水産業に関連する産業をいう。

 農林水産業者等 農林水産業者、農林水産業に関する団体、農林水産業関連産業の事業者及び農林水産業関連産業に関する団体をいう。

(基本理念)

第三条 県は、次に掲げる基本理念に基づき、農林水産業及び農山漁村の振興を図るものとする。

 水田農業を基軸とし地域の特性に応じた多様な農業生産の振興、豊富な森林資源の利用の促進、水産資源の適切な管理及び増殖の推進等により、農林水産業の持続的な発展が図られるとともに、消費者その他の需要者の求める安全で良質な農林水産物が安定的に供給され、将来にわたって農林水産物の供給基地としての役割が適切かつ十分に発揮されること。

 農林水産業の担い手が確保されるとともに、農林水産業者による創意工夫に富んだ意欲ある経営が展開され、社会経済情勢の変化に即応し得る効率的かつ安定的な農林水産業経営が確立されること。

 多面的機能が、地域の特性に応じ、将来にわたって適切かつ十分に発揮されること。

 農山漁村について、農林水産物の供給の機能及び多面的機能が適切かつ十分に発揮されるよう、それぞれの農山漁村の置かれた地域の特性を生かしながら、その振興が図られること。

(県の責務等)

第四条 県は、市町村及び農林水産業者等と連携し、並びに県民の協力を得て、前条に定める基本理念にのっとり、農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策を総合的に策定し、及びこれを実施するものとする。

2 県は、市町村が農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策を策定し、及び実施しようとするときは、情報の提供、助言その他の必要な協力を行うものとする。

3 県は、農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため必要があると認めるときは、国に対し必要な措置を講ずるよう要請するものとする。

(農林水産業者等の努力等)

第五条 農林水産業者及び農林水産業に関する団体は、自らが安全で良質な農林水産物の供給及び活力ある農山漁村づくりの主体であることを深く認識し、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。

2 農林水産業関連産業の事業者及び農林水産業関連産業に関する団体は、その事業活動及びこれに関連する活動を行うに当たっては、県内産の農林水産物の利用の促進に努めること等により、基本理念の実現に積極的に協力するものとする。

(県民の役割)

第六条 県民は、農林水産業及び農山漁村の有する農林水産業の供給に関する機能及び多面的機能に関する理解を深め、県内産の農林水産物の消費及び利用の促進に努めること等により、農林水産業及び農山漁村の振興に関し積極的な役割を果たすよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第七条 県は、農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策を実施するため必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(年次報告)

第八条 知事は、毎年、農林水産業及び農山漁村の動向並びに農林水産業及び農山漁村の振興に関し県が講じた施策を明らかにする報告書を作成し、県議会に提出するとともに、公表しなければならない。

第二章 農林水産業・農山漁村振興基本計画

第九条 知事は、農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、農林水産業及び農山漁村の振興に関する基本的な計画(以下この条において「農林水産業・農山漁村振興基本計画」という。)を定めなければならない。

2 農林水産業・農山漁村振興基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 農林水産業及び農山漁村の振興に関する基本的な方針

 農林水産業及び農山漁村の振興に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策

 前二号に掲げるもののほか、農林水産業及び農山漁村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 知事は、農林水産業・農山漁村振興基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、農林水産業及び農山漁村の振興について学識経験を有する者、農林水産業者等並びに消費者団体の意見を聴くとともに、県民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。

4 知事は、農林水産業・農山漁村振興基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを県議会に報告するとともに、公表しなければならない。

5 県議会は、農林水産業・農山漁村振興基本計画について、必要があると認めるときは、知事に意見を述べることができる。この場合において、知事は、当該意見の趣旨を尊重するように努めるものとする。

6 前三項の規定は、農林水産業・農山漁村振興基本計画の変更について準用する。

第三章 基本的施策

(農林水産業の競争力の強化等)

第十条 県は、農林水産業の競争力を強化するため、次の施策を講ずるものとする。

 農業に関し、消費者その他の需要者の需要及び地域の特性に応じた作目の生産振興及び産地の形成、水稲の直はん栽培その他の省力化に資する栽培技術の普及、冬期間の生産の拡大、効率的な流通体制の整備、市場動向を踏まえた的確な販売活動の支援その他必要な施策

 林業に関し、付加価値の高い木材製品の開発、効率的な乾燥等加工技術の普及、特用林産物の生産拡大、市場動向を踏まえた新たな需要の開拓、効率的な流通体制の整備その他必要な施策

 水産業に関し、水産動物の種苗の生産及び放流並びに適切な管理による水産資源の持続的な利用の確保、水産物の安定的な供給体制の整備その他必要な施策

 市場動向及び地域の特性等を的確に踏まえた農林水産業に関する技術の研究開発及び普及の推進その他必要な施策

2 県は、農林水産業関連産業の健全な発展を図るため、農林水産業との連携の強化、農林水産物の流通の合理化、農林水産業関連産業に関する技術の研究開発その他必要な施策を講ずるものとする。

(効率的かつ安定的な農林水産業経営の育成等)

第十一条 県は、経営意欲のある農林水産業者が創意工夫を生かした経営を展開できるようにするため、経営規模の拡大、経営の合理化その他経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、農林水産業を担うべき人材の育成及び確保を図るため、農林水産業者の農林水産業の技術及び経営管理能力の向上、新たに農林水産業に就業しようとする者に対する農林水産業の技術及び経営方法の習得の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

3 県は、地域の農業における効率的な農業生産の確保に資するため、集落を基礎とした農業者の組織その他の農業生産活動を共同して行う農業者の組織、委託を受けて農作業を行う組織等の活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。

4 県は、女性が農林水産業に関する活動に参画する機会を確保することの重要性にかんがみ、女性の農林水産業に関する活動における役割の適正な評価その他女性がその個性と能力を十分に発揮しつつ農林水産業に関する活動に参画することができる環境整備を推進するものとする。

5 県は、高齢者は地域の農林水産業において果たす役割の重要性にかんがみ、高齢者の農林水産業に関する活動に対する支援その他高齢者がその有する技術及び能力に応じて生きがいを持って農林水産業に関する活動を行うことができる環境整備を推進するものとする。

(農林水産業の基盤の整備)

第十二条 県は、農林水産業の生産性の向上を促進するため、環境との調和に配慮しつつ、農地の区画の拡大、林道及び作業道の整備、漁港の整備その他の農林水産業の基盤の整備に必要な施策を講ずるものとする。

(環境と調和のとれた農林水産業の推進)

第十三条 県は、環境と調和のとれた農林水産業の推進を図るため、農業の自然循環機能の維持増進に配慮した持続性の高い農業生産方式の普及、森林の適正な整備の推進、水産動植物の生育環境の保全及び改善その他必要な施策を講ずるものとする。

(農林水産物の評価の向上等)

第十四条 県は、県内産の農林水産物の評価の向上を図るとともに、安全で良質な農林水産物を求める消費者その他の需要者の需要に応ずるため、農林水産物の生産から流通までの過程、品質等に関する情報の提供、食品の表示の適正化その他必要な施策を講ずるものとする。

(地産地消の推進)

第十五条 県は、地産地消(県内産の農林水産物を県内で消費し、及び利用することをいう。)の推進を図るため、自ら県内産の農林水産物を積極的に消費し、及び利用するとともに、県内産の農林水産物の県内における加工、流通及び販売の促進、農林水産業者と消費者その他の需要者との交流の拡大その他必要な施策を講ずるものとする。

(農山漁村の振興)

第十六条 県は、農山漁村の振興を図るため、農山漁村が有する資源の活用等を通じた産業の振興による就業機会の増大、交通、情報通信、教育等の生活環境の整備による定住の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

(農林水産業及び農山漁村に関する理解の促進等)

第十七条 県は、県民の農林水産業及び農山漁村に関する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆとりのある生活に資するため、農山漁村での滞在を通じた余暇活動の推進、健全で豊かな食生活の普及、食及び農林水産業に関する教育の推進、農林水産業及び農山漁村に関する情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

秋田の農林水産業と農山漁村を元気づける条例

平成15年3月11日 条例第38号

(平成15年3月11日施行)