○秋田県障害者への理解の促進及び差別の解消の推進に関する条例

平成三十一年三月十五日

秋田県条例第十八号

秋田県障害者への理解の促進及び差別の解消の推進に関する条例をここに公布する。

秋田県障害者への理解の促進及び差別の解消の推進に関する条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第七条)

第二章 障害を理由とする差別を解消するための措置

第一節 障害を理由とする差別の禁止(第八条・第九条)

第二節 障害を理由とする差別に関する相談のための体制(第十条・第十一条)

第三節 障害を理由とする差別に関する紛争の解決のための体制(第十二条―第十六条)

第四節 秋田県障害者差別解消調整委員会(第十七条―第二十三条)

第三章 障害を理由とする差別の解消に関する基本的施策(第二十四条―第三十条)

第四章 雑則(第三十一条―第三十三条)

附則

全ての県民が、障害の有無にかかわらず、互いの人権や尊厳を尊重し合い、地域で支え合いながら生き生きとした人生を送ることができる社会を実現することは、私たちの願いである。

こうした社会の実現を目指し、障害福祉サービスの充実や障害者の社会参加の促進が図られているが、それでも、今なお障害者が、日常生活や社会生活の様々な場面において障害を理由とする不当な差別的取扱いを受け、また、日常生活や社会生活を営む上で妨げとなる事物、制度、慣行、観念などの社会的障壁があることにより暮らしにくさを感じている実態がある。

このような状況を踏まえ、女性であること、児童であることなど、性別、年齢に応じた配慮をしながら、障害者が地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができ、地域社会で自立した生活を営むことができる環境づくりを更に進めていく必要がある。

そのためには、私たち一人ひとりが障害及び障害者についての理解を深めるとともに、障害を理由とする不当な差別的取扱いを解消し、また、障害者が日常生活や社会生活を営む上で制限となる様々な社会的障壁を取り除くよう、社会全体で取り組まなければならない。

ここに、私たちは、障害を理由とする差別を解消し、全ての県民が、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性が尊重される共生社会を実現することを決意し、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、障害を理由とする差別の解消の推進について、基本理念を定め、及び県の責務等を明らかにするとともに、障害を理由とする差別に関する相談及び紛争の解決のための体制を整備し、並びに障害を理由とする差別の解消に関する施策の基本的な事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(基本理念)

第三条 障害を理由とする差別の解消の推進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 全ての県民は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人としての尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。

 全ての障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

 全ての障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。

 障害を理由とする差別に関する問題は、障害の有無にかかわらず、全ての県民の共通の問題として認識され、その理解が深められること。

(県の責務)

第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関する総合的な施策を策定し、及び実施するものとする。

(市町村との連携)

第五条 県は、前条の規定による施策の実施に当たっては、市町村と連携して取り組むものとする。

2 県は、市町村が障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を策定し、及び実施しようとするときは、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(県民等の役割)

第六条 県民及び事業者(以下「県民等」という。)は、基本理念にのっとり、障害及び障害者についての理解を深めるとともに、県及び市町村が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 県民等は、障害者が地域社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加できる社会の実現に寄与するよう努めるものとする。

3 県民等は、日常生活又は社会生活の様々な場面において、社会的障壁があることについて伝え合い、その除去が重要であることを理解するよう努めるものとする。

4 県民等は、障害者及びその家族が障害による生活上の困難を軽減するための支援を求めやすい社会の実現に寄与するよう努めるものとする。

(障害者団体等の役割)

第七条 障害者の団体その他の関係団体(以下「障害者団体等」という。)は、基本理念にのっとり、障害及び障害者についての理解を深めるための活動並びに障害を理由とする差別の解消に資する活動に取り組むとともに、県及び市町村が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

第二章 障害を理由とする差別を解消するための措置

第一節 障害を理由とする差別の禁止

(障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止)

第八条 何人も、障害を理由とする不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

(社会的障壁の除去のための合理的な配慮)

第九条 行政機関等(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)第二条第三号の行政機関等をいう。)及び事業者は、秋田県の区域内においてその事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

2 県民は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするよう努めなければならない。

第二節 障害を理由とする差別に関する相談のための体制

(相談への対応)

第十条 何人も、知事に対し、障害を理由とする差別に関する相談を行うことができる。

2 知事は、前項の相談を受けたときは、その内容に応じて、次に掲げる対応をするものとする。

 相談者に対し、助言又は情報提供を行うこと。

 当該相談に係る当事者間の調整を行うこと。

 関係行政機関に通報その他の通知を行うこと。

(相談業務の委託)

第十一条 知事は、前条第二項各号に掲げる対応に係る業務の全部又は一部を障害者団体等に委託することができる。

2 前項の規定により委託を受けた障害者団体等において当該委託を受けた業務に従事する者は、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その業務に従事する者でなくなった後も同様とする。

第三節 障害を理由とする差別に関する紛争の解決のための体制

(あっせんの申立て)

第十二条 障害者は、障害を理由とする差別に係る事案(第八条及び第九条に係る事案をいう。)であって第十条第二項の規定による対応によってもなお解決することができないもの(以下「対象事案」という。)の解決を図るため、知事に対し、あっせんの申立てをすることができる。

2 対象事案に係る障害者の家族その他の関係者は、前項の申立てをすることができる。ただし、当該申立てをすることが当該障害者の意に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。

3 前二項の申立ては、次の各号のいずれかに該当する場合は、することができない。

 対象事案について、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)その他の法令に基づく不服申立て又は苦情申立てをすることができるとき。

 対象事案について、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の規定に基づき紛争の解決を図ることができるとき。

 同一の対象事案について、過去に前二項の規定による申立てをしたことがあるとき。

 対象事案について、現に市町村が、この節に規定する紛争の解決のための手続に準ずる手続を行っているとき。

(事実の調査)

第十三条 知事は、前条第一項又は第二項の申立てがあったときは、当該申立てに係る事実の調査を行うものとする。

2 対象事案の関係者は、正当な理由がある場合を除き、前項の調査に協力しなければならない。

3 第一項の規定により調査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

4 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(あっせん)

第十四条 知事は、前条第一項の調査の結果に基づき必要があると認めるときは、委員会(第十七条に規定する委員会をいう。以下この節において同じ。)に対し、当該調査の結果を通知するとともに、あっせんの手続を開始するよう求めるものとする。

2 委員会は、あっせんのために必要があると認めるときは、対象事案の関係者の出席を求めて説明を求め、若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。

3 委員会は、第一項の求めがあったときは、次に掲げる場合を除き、あっせんを行うものとする。

 第十二条第一項又は第二項の規定により申立てをした者が当該申立てを取り下げたときその他あっせんの必要がないと認めるとき。

 対象事案がその性質上あっせんを行うのに適当でないと認めるとき。

4 委員会は、次に掲げる場合は、あっせんを終了するものとする。

 あっせんによって対象事案が解決したとき。

 あっせんによっては明らかに対象事案の解決の見込みがないと認めるとき。

5 委員会は、第三項各号に掲げる場合に該当してあっせんを行わないとき、又は前項の規定によりあっせんを終了したときは、知事に対し、その旨を報告するものとする。

(勧告)

第十五条 委員会は、知事に対し、次の各号のいずれかに該当する者に対して必要な措置を講ずべきことを勧告するよう求めることができる。

 正当な理由なく、前条第二項の規定による出席の求めに応じず、若しくは説明を行わず、若しくは資料の提出の求めに応じず、又は虚偽の説明若しくは虚偽の資料の提出を行った対象事案の関係者

 正当な理由なく、前条第三項の規定によるあっせんに従わない対象事案の関係者

2 知事は、委員会から前項の勧告の求めがあった場合において、必要があると認めるときは、勧告を行うものとする。

(公表)

第十六条 知事は、前条第二項の規定による勧告を受けた事業者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨及び当該勧告の内容を公表することができる。

2 知事は、前項の規定により公表しようとするときは、あらかじめ、同項に規定する事業者に意見を述べる機会を与えなければならない。

第四節 秋田県障害者差別解消調整委員会

(委員会の設置及び所掌事務)

第十七条 第十四条の規定によるあっせん及び第十五条第一項の規定による勧告の求めに係る事務を行わせるため、秋田県障害者差別解消調整委員会(以下「委員会」という。)を置く。

(組織及び委員の任期)

第十八条 委員会は、委員十五人以内で組織する。

2 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。

 学識経験のある者

 障害者又はその家族

 障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者

 事業者又は事業者により構成される団体の役職員

 関係行政機関の職員

3 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

(会長)

第十九条 委員会に、会長を置く。

2 会長は、委員の互選によって定める。

3 会長は、委員会を代表し、会務を総理する。

4 会長に事故があるときは、委員のうちから会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する。

(会議)

第二十条 委員会は、会長が招集する。

2 会長は、委員会の議長となる。

3 委員会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。

4 委員会の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。

(部会)

第二十一条 委員会に、第十七条に規定する事務のうち特定のものを処理させるため、部会を置くことができる。

2 部会に属すべき委員は、会長が指名する。

3 部会に部会長を置き、会長の指名する委員がこれに当たる。

4 第十九条第三項及び第四項並びに前条の規定は、部会長及び部会の会議について準用する。この場合において、これらの規定中「委員の」とあるのは、「部会に属する委員の」と読み替えるものとする。

5 委員会は、その定めるところにより、部会の議決をもって委員会の議決とすることができる。

(秘密の保持)

第二十二条 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

(委任規定)

第二十三条 この節に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、会長が委員会に諮って定める。

第三章 障害を理由とする差別の解消に関する基本的施策

(普及啓発)

第二十四条 県は、障害を理由とする差別の解消を推進する上で障害者と障害者でない者との相互理解の促進が重要であることに鑑み、障害及び障害者に対する県民の関心と理解を深めるための啓発、知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

(教育の推進)

第二十五条 県は、障害を理由とする差別の解消を推進する上で教育が果たす役割が重要であることに鑑み、幼児、児童、生徒及び学生に対し障害及び障害者についての理解を深めるための教育が行われるよう必要な施策を講ずるものとする。

(雇用及び就労への支援)

第二十六条 県は、障害者の職業選択の自由を尊重しつつ、障害者がその能力に応じて適切な職業に従事することができるようにするため、障害者の多様な就労の機会の確保に努めるものとする。

2 県は、関係機関と連携し、障害者の雇用及び就労に関する事業者の理解を深めるとともに、障害者の雇用及び就労を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

(社会参加の促進)

第二十七条 県は、障害者が文化芸術活動、スポーツ、レクリエーションその他の活動に参加する機会を確保するとともに、障害者が当該活動を円滑に行うことができるよう必要な施策を講ずるものとする。

(交流の推進)

第二十八条 県は、障害者と障害者でない者との相互理解を促進するため、両者の交流の機会を確保するとともに、その積極的な参加を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

(県民等への支援)

第二十九条 県は、県民等及び障害者団体等が自発的に行う障害及び障害者についての理解を深めるための活動並びに障害を理由とする差別の解消の推進に資する活動を促進するために必要な支援を行うものとする。

(職員の育成)

第三十条 県は、障害者に対する支援を適切に行うため当該支援に関する業務に従事する職員の育成を図るとともに、全ての職員が障害及び障害者についての知識及び理解を深めることができるよう必要な措置を講ずるものとする。

第四章 雑則

(市町村条例との関係)

第三十一条 この条例の規定は、市町村が障害を理由とする差別の解消の推進に関し、この条例で定める事項以外の事項について、条例で別段の定めをすることを妨げるものではない。

(意見の聴取)

第三十二条 知事は、この条例の施行の状況について、秋田県障害者施策推進審議会の意見を聴くものとする。

(規則への委任)

第三十三条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成三十一年四月一日から施行する。ただし、第二章(第二節を除く。)並びに次項及び附則第三項の規定は、同年十月一日から施行する。

(経過措置)

2 第十二条の規定は、前項ただし書に規定する規定の施行の日以後に発生した同条に規定する障害を理由とする差別に係る事案について適用する。

(特別職の職員で非常勤のものの報酬および費用弁償に関する条例の一部改正)

3 特別職の職員で非常勤のものの報酬および費用弁償に関する条例(昭和三十一年秋田県条例第三十五号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(秋田県障害者施策推進審議会条例の一部改正)

4 秋田県障害者施策推進審議会条例(昭和四十七年秋田県条例第六号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

秋田県障害者への理解の促進及び差別の解消の推進に関する条例

平成31年3月15日 条例第18号

(令和元年10月1日施行)

体系情報
第5編 健康福祉/第4章 障害福祉
沿革情報
平成31年3月15日 条例第18号