○須恵町職員分限処分の指針
平成21年1月1日
須恵町指針第1号
Ⅰ 趣旨
地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「法」という。)に定める分限処分は、職員が情実に左右されず、全体の奉仕者として公正に職務を遂行できる環境を確保するために設けられた身分保障を前提に、その職に必要な適格性の欠如等が認められる職員が存在して公務能率の維持・確保ができなくなるおそれのある場合に、公務の適正かつ能率的な運営を図るために当該職員を免職、降任等させるものである。
法に定められた分限事由の有無の判断に当たっては、分限処分は職員に不利益な身分変動を生じさせるものであることから、恣意的な処分とならないよう、客観的な資料により、分限制度の趣旨に沿い、適切かつ合理的な判断を行う必要がある。
そこで、法第28条第1項第1号から第3号までの各号の分限事由について裁判例で示された考え方を確認した上で、分限処分の検討が必要となる典型的な事例について考えられる手続や留意点等の対応措置をまとめ、参考に供することとする。
Ⅱ 裁判例で示された分限事由についての考え方
過去の裁判例では、分限事由についておおむね次のような考えが示されている。
1 勤務実績不良(法第28条第1項第1号)
「勤務実績がよくない場合」とは、職員が担当すべきものとして割り当てられた職務内容を遂行してその職責を果たすべきであるにもかかわらず、その実績があがらない場合をいい、当該職員の出勤状況や勤務状況が不良な場合もこれに当たる。
2 心身の故障(法第28条第1項第2号)
「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」とは、将来回復の可能性のない、ないしは、分限休職期間中には回復の見込みの乏しい長期の療養を要する疾病のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合を指す。
3 適格性欠如(法第28条第1項第3号)
「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいう。この意味における適格性の有無は、当該職員の外部に現れた行動、態度に徴して判断すべきであり、その場合、個々の行為、態度につき、その性質、態様、背景、状況等の諸般の事情に照らして評価すべきことはもちろん、それら一連の行動、態度については相互に有機的に関連付けて評価すべきであり、さらに当該職員の経歴や性格、社会環境等の一般的要素をも考慮する必要があり、これら諸般の要素を総合的に検討した上、当該職に要求される一般的な適格性の要件との関連において法第28条第1項第3号の該当性を判断しなければならない。
Ⅲ 分限処分の検討が必要となる事例と対応措置
1 勤務実績不良(法第28条第1項第1号関係)及び適格性欠如(同条同項第3号関係)
(1) 対応措置が必要となる例
○ 毎日のように初歩的な業務ミスを繰り返して作業能率が著しく低い状況であるとともに、定められた業務処理も怠ることが多く、勤務実績が著しく悪い。
○ 無断欠勤や職場での無断離席を繰り返し、上司の注意・指導にもかかわらず来訪者や同僚等としばしばトラブルを引き起こして来訪者等からの苦情が絶えない。その結果、職員本人の業務が停滞しているだけでなく同僚職員の業務遂行にまで悪影響を及ぼしている。
(2) 対応措置
勤務実績不良の職員又は職への適格性に疑いを抱かせるような問題行動を起こしている職員に対しては、一定期間にわたり、注意・指導を繰り返し行うほか、必要に応じて、担当職務の見直し、研修等を行い、それによっても勤務実績不良の状態又は適格性に疑いを抱かせる状態が継続する場合には、分限処分が行われる可能性がある旨警告する文書(警告書)を交付する。その上で、一定期間経過後もこれらの状態が改善されていないことにより当該職員が法第28条第1項第1号又は第3号に該当するときには、分限処分を行う。
ア 手続
(ア) 注意・指導、担当職務の見直し等
人事当局及び職場の管理監督者は、勤務実績不良の職員(勤務実績不良の徴表と評価することができる事実が認められる職員)又は職への適格性に疑いを抱かせるような問題行動を起こしている職員(適格性欠如の徴表と評価することができる事実が認められる職員)に対し、勤務実績の改善を図るため又は問題行動を是正させるための注意・指導を繰り返し行うほか、必要に応じて、担当職務の見直し、配置換又は研修を行うなどして、勤務実績不良の状態又は適格性に疑いを抱かせる状態が改善されるように努める。
(イ) 警告書の交付
(ア)の措置を一定期間継続して行っても勤務実績不良の状態又は適格性欠如の徴表と評価することができる行為が頻繁に見受けられるなど適格性に疑いを抱かせる状態が続いている場合には、任命権者は、当該職員に対して、次の内容の記載がある文書(以下「警告書」(別記様式第1号)という。)を交付する。
① 勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる具体的事実
② 勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる状態の改善を求める旨の文言
③ 今後、これらの状態が改善されない場合には、法第28条第1項第1号又は第3号に基づいて分限処分が行われる可能性がある旨の文言
(ウ) 弁明の機会の付与
任命権者が職員に(イ)の警告書を交付した場合には、当該職員に弁明の機会を与える。
(エ) 警告書交付後の観察
人事当局及び職場の管理監督者は、警告書交付後も、一定期間注意・指導等を行いつつ、勤務実績不良の状態又は適格性に疑いを抱かせる状態が改善されているかどうか、注意深く観察・確認を行う。
(オ) 分限処分
任命権者は、(ア)から(エ)までの措置を講じたにもかかわらず、職員の勤務実績不良の状態又は適格性に疑いを抱かせる状態が改善されていないことにより当該職員が法第28条第1項第1号又は第3号に該当すると判断した場合は、分限処分を行う。
イ 留意点
(ア) 資料収集
勤務実績不良又は適格性欠如に該当するか否かの判断は、単一の事実や行動のみをもって判断するのではなく、一連の行動等を相互に有機的に関連付けて行うものであるので、客観的な資料を収集した上で行う必要があり、特に、仕事上の失敗・トラブル・第三者からの苦情等の具体的な事実が発生した場合には、その都度、詳細に記録を作成しておく。また、注意・指導、警告書の交付等の措置を行った場合は、その内容を記録しておく。
(イ) 問題行動が心の不健康に起因すると思われる場合
問題行動が心の不健康に起因すると思われる場合には、管理監督者は、職員に積極的に話しかけて事情を聞くほか、必要に応じ同僚等に職員の状況の変化の有無を聞き、また、衛生管理者、産業医、専門家等と対応を相談する。
(ウ) 懲戒処分との関係
問題行動が懲戒処分の対象となる場合には、任命権者は、総合的な判断に基づいて懲戒処分を行うなど厳正に対応する必要がある。
(エ) 降任と免職
分限処分を行う場合、下位の職であれば良好な職務遂行が期待できると判断するときには降任処分とし、下位の職でもそれが期待できないと判断するときには免職処分とする。
(オ) 行為の態様等に応じた手続の省略
問題行動の態様や業務への影響等によっては、任命権者の判断と責任に基づいて、裁量の範囲内で、警告書の交付などの手続を省略することができる。
2 心身の故障(法第28条第1項第2号関係)
(1) 対応措置が必要となる例
○ 3年間の病気休職の期間が満了するにもかかわらず、病状が回復せず、今後も職務遂行に支障があると認められる。
○ 心肺機能停止後昏睡状態のため、病気休職中であるが、今後回復して就労可能となる見込みがない。
○ 心身の故障のため、3年以上にわたって、病気休暇や病気休職と短期間の出勤とを繰り返している。
(2) 対応措置
3年間の病気休職期間が満了するにもかかわらず心身の故障の回復が不十分で職務遂行が困難であると考えられる場合、病気休職中であって今後職務遂行が可能となる見込みがないと判断される場合又は病気休暇や病気休職を繰り返してそれらの期間の累計が3年を超え、そのような状態が今後も継続して、職務の遂行に支障があると見込まれる場合には、医師2名の受診をさせて、法第28条第1項第2号に該当するかどうかを判断する。
ア 手続
(ア) 医師2名による診断
任命権者は、職員が3年間の病気休職期間が満了するにもかかわらず心身の故障の回復が不十分で職務遂行が困難であると考えられる場合、病気休職中であって今後職務遂行が可能となる見込みがないと判断される場合又は病気休暇や病気休職を繰り返してそれらの期間の累計が3年を超え、そのような状態が今後も継続して、職務の遂行に支障があると見込まれる場合には、当該職員に対して、法第28条第1項第2号に該当するか否かを判断するために、医師2名を指定して受診を促す。この場合において、職員が指定された医師2名の診断を受けようとしない場合には、職務命令として受診を命ずる。
(イ) 医師2名の診断結果による判断
① 医師2名により心身の故障があると診断された場合
指定した医師2名によって、長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治ゆし難い心身の故障があるとの診断がなされ、その疾患又は故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないことが明らかな場合は、分限免職とする。
② 医師2名による心身の故障があるとの診断が得られなかった場合
指定した医師2名のうち、少なくとも1名が長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治ゆし難い心身の故障があるとの診断をしなかった場合には、法第28条第1項第2号に該当すると判断することはできず、職員本人及び主治医・産業医等と相談の上、円滑な職場復帰を図っていくなどの対応を行う必要がある。
イ 留意点
(ア) 医師による適切な診断を求める努力
心身の故障の回復の可能性の判断は、医師の専門的診断に基づく必要があるが、職場の実態や職員の職場における実情等について、診断する医師の十分な理解を得ることなどを通じて、適切な診断を求めていくことが必要である。
(イ) 病気休職期間満了前からの準備
3年間の病気休職の期間が満了する場合には、その期間満了前から、当該職員や主治医と緊密に連絡をとって病状の把握に努め、医師2名の診断を求める必要があるかどうか検討しておく。
(ウ) 複数の異なる内容の心身の故障が原因の場合
病気休暇や病気休職を繰り返してその累計が3年を超える場合であっても、例えば、精神疾患の病状が回復し職場復帰した後に交通事故による外傷によって病気休職等とされた場合のように、当該病気休職等の原因である心身の故障の内容が明らかに異なるときには、この事例には該当しないものとして取り扱う。
3 受診命令違反(法第28条第1項第3号関係)
(1) 対応措置が必要となる例
○ 3年間の病気休職期間満了に当たって、職務遂行能力の有無を把握し、職務復帰が可能であるか否かを判断するため、再三にわたり指定する医師の受診を命じたにもかかわらず、これらの命令に従わなかった。
○ 1の勤務実績不良又は適格性欠如の例に該当する場合で、問題行動が心身の故障に起因すると思われたことから、1(2)イ(イ)の措置を講ずる中で、再三にわたり医師の受診を命じたにもかかわらず、これらの命令に従わなかった。
(2) 対応措置
3年間の病気休職期間が満了するに当たって心身の故障の回復が不十分で職務遂行が不可能であると考えられたことなどから、再三にわたり医師の受診を命じたにもかかわらずこれに従わない場合又は勤務実績不良若しくは職への適格性に疑いを抱かせるような問題行動を起こしている職員について、それらが心身の故障に起因すると思われるため再三にわたり医師の受診を命じたにもかかわらずこれに従わない場合には、医師2名の受診を受診命令書(別記様式第2号)により命じ、これに従わないときは、法第28条第1項第3号により免職とする。
ア 手続
(ア) 受診命令書の交付
次の内容の記載がある受診命令書を交付して受診を命ずる。
① 任命権者の指定する医師2名の診断を受け、診断書を提出するよう命ずる旨の文言
② この受診命令が法第28条第1項第2号に該当する可能性があるか否かを確認することを目的とするものである旨の文言
③ 正当な理由なくこの受診命令に従わない場合、法第28条第1項第3号に該当するとして分限免職が行われる可能性がある旨の文言
(イ) 分限免職
(ア)の受診命令書の交付により行う受診命令に対し、職員が正当な理由なく従わない場合、法第28条第1項第3号により分限免職とする。
イ 留意点(適格性欠如の要件を確認しておく必要性)
この分限免職は、法第28条第1項第3号に基づく処分であるから、職員が正当な理由なく受診命令を拒否したことのほか、①当該職員が有していると思われる疾患又は故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない状況にあると認められること、②受診命令拒否その他の行動、態度等から、当該職員が職に必要な適格性を欠くと認められることを客観的資料により確認して行うことが必要である。
4 行方不明(法第28条第1項第3号関係)
(1) 対応措置が必要となる例
○ 長期間にわたり、行方不明となっている。
(2) 対応措置
原則として1月以上にわたる行方不明は、免職とする。
ア 留意点
被処分者となる職員の所在を知ることができないときには、処分内容を公示する。
附則
この指針は、平成21年1月1日から施行する。

