○高岡市福祉のまちづくり条例

平成17年11月1日

条例第91号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第9条)

第2章 福祉に関する施策の推進(第10条―第21条)

第3章 生活・都市施設の整備(第22条―第39条)

第4章 財政措置等(第40条―第42条)

第5章 補則(第43条)

附則

ノーマライゼーションの理念のもとに、高齢者、障害者、児童をはじめすべての市民が、住み慣れた地域でともに支え合いながら、安全で快適に暮らすことのできる福祉社会の実現は、私たちの願いである。

このような社会を創出するためには、すべての人の基本的人権が保障され、一人ひとりが個人として尊重され、自ら生きがいを持って、かつ、安心して社会のあらゆる分野の活動に参加できるよう様々な障壁を取り除くことが必要である。

このため、個人の自立を基本とし、お互いの理解を深め、ともに助け合い支え合う「ともに生きる」という考えに立ち、市、市民、事業者が一体となって地域福祉の充実を図るとともに、建築物、道路等の生活・都市基盤を市民の誰もが利用しやすいよう配慮することが重要である。

ここに、私たち高岡市民は、多くの先人たちにより培われた助け合いと人を慈しむ「福祉のこころ」を更に育み、福祉のまちづくりの推進に取り組むことによって、「人間尊重の福祉都市」を創造することを決意し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、福祉のまちづくりに関する基本理念及び基本的方向を定め、市及び事業者それぞれの責務並びに市民の役割を明らかにするとともに、福祉に関する施策の推進及び生活・都市施設の整備に関し必要な事項を定め、もって福祉のまちづくりの総合的推進を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 高齢者、障害者等 高齢者、障害者その他の者で日常生活又は社会生活に身体等の機能上の制限を受けるものをいう。

(2) 生活・都市施設 病院、劇場、百貨店、ホテル、社会福祉施設、飲食店、公共交通機関の施設、道路、公園その他の不特定かつ多数の者の利用に供する施設で規則で定めるものをいう。

(3) バリアフリー化 高齢者、障害者等を含むすべての市民の人間性が尊重され、自立と社会参加を可能にするため、あらゆる分野の様々な障壁を取り除くことをいう。

(4) 公共車両等 鉄道の車両、自動車その他の旅客の運送の用に供する機器で規則で定めるものをいう。

(基本理念)

第3条 高岡市における福祉のまちづくりは、次に掲げることを基本理念とする。

(1) すべての市民の人間性が尊重されるまちづくり

(2) すべての市民の自立と社会参加が可能なまちづくり

(3) 「ともに生きる」という考えに立って行われるまちづくり

(施策の基本的方向)

第4条 福祉のまちづくりに関する施策は、次に掲げる基本的方向に基づき、実施するものとする。

(1) 市民それぞれがお互いを理解し、自立可能な環境を整備するとともに、地域福祉施策や各種福祉サービスの支援システムを構築するなど、福祉コミュニティ基盤の形成を図ること。

(2) 市民が地域社会の中で自立し、自由に主体性を持って社会活動に参加できるよう、生活・都市施設における物理的な障壁等を除去するなど、バリアフリー化を推進すること。

(3) 市民参加で福祉のまちづくりを推進するため、様々なかたちで支え合うボランティア活動の振興を図ること。

(市の責務)

第5条 市は、第3条に規定する基本理念及び前条に規定する施策の基本的方向に基づき、福祉のまちづくりを総合的に推進するための施策を策定し、これを実施するものとする。

2 市は、前項の規定による施策の策定及び推進に当たっては、県及び関係機関との連携を図るものとする。

3 市は、自ら設置し、又は管理する施設で市民の利用に供するものについて、高齢者、障害者等が円滑に利用できるよう整備を進めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、地域社会の一員であることを自覚し、その事業活動が地域社会に密接な影響を与えることに配慮し、市が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力するものとする。

2 事業者は、自ら設置し、又は管理する施設について、高齢者、障害者等が円滑に利用できるよう整備に努めるものとする。

(市民の役割)

第7条 市民は、地域社会の一員としての自覚を深め、互いに理解し、ともに助け合い支え合うことにより、地域における連帯を築き、福祉コミュニティの形成に努めるものとする。

2 市民は、市が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力するものとする。

(施策の推進に係る視点及び計画の策定)

第8条 市は、施策のあらゆる分野に福祉の視点が取り入れられるよう配慮するとともに、関連する施策を総合的かつ有機的に推進することにより、福祉サービス利用者の生活の質の向上を図るものとする。

2 市は、施策を円滑に推進するため、高齢者、障害者、児童、ボランティア等に関する計画をそれぞれ策定するものとする。

(推進体制の整備)

第9条 市は、市民の総意と参加を基本に、事業者及び市民と連携して、福祉のまちづくりを推進していくための体制を整備するものとする。

第2章 福祉に関する施策の推進

(保健・医療・福祉対策の総合的な展開)

第10条 市は、市民が必要な福祉サービスを適時に、かつ、効果的に受けることができるよう、保健、医療、福祉の連携を図り、総合的に福祉サービスを供給できる体制の整備に努めるものとする。

(健康の保持増進及び介護の支援等)

第11条 市は、市民が自ら健康の保持と増進に努めることができるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 市は、介護を必要とする高齢者、障害者等が適切な保健、医療、福祉サービスを受けられるようにするため、居宅における介護の支援体制及び福祉施設の整備の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(子育てへの支援等)

第12条 市は、児童の健全育成及び母子保健の向上に努めるとともに、健やかに子供を生み育てる社会環境を整備するため、母性への理解、子育てへの支援、児童を取り巻く環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

(福祉人材の育成)

第13条 市は、福祉ニーズの増大や多様化に対応して、保健、医療、福祉サービスの充実を図るため、福祉に関する専門的な知識や介護等の技能を有する者及び地域で福祉を担う幅広い人材の養成及び確保を図るとともに、研修機会の充実、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(民間による福祉産業の振興)

第14条 市は、より高度で多様な選択が可能な福祉サービスの提供により、当該福祉サービス利用者の生活の質の向上を図るため、福祉サービスの提供や介護・福祉機器、住宅等に関する研究、開発を行う福祉産業の振興に資する機会及び場の提供等に努めるものとする。

(生涯学習と生きがい対策の推進)

第15条 市は、市民が住み慣れた地域において生きがいを持って暮らすことができるよう、個人の特性に応じた多様な学習機会の提供、文化、スポーツ活動等への参加の機会の確保その他の必要な施策を講ずるものとする。

(情報の提供及び相談体制の整備)

第16条 市は、多種多様化、高度化する福祉ニーズに的確に対応し、福祉に関する情報を市民に適切に提供するよう努めるものとする。

2 市は、高齢者、障害者等が円滑に情報を利用できるよう必要な施策を講ずるものとする。

3 市は、福祉に関する市民の相談に適切に対応することができるよう、相談体制の整備に努めるものとする。

(就労機会の創出)

第17条 市は、高齢者及び障害者がその特性に応じて就業しやすい環境の整備を促進するとともに、職業能力の開発、向上のための支援を行うものとする。

2 事業者は、高齢者及び障害者の雇用の促進に努めるとともに、その職場環境の整備に努めるものとする。

(防犯、防災対策の充実)

第18条 市は、高齢者、障害者等が安心して生活を営むことができるよう、防犯、防災、交通安全等に関し必要な施策を講ずるものとする。

(福祉のこころの醸成)

第19条 市は、すべての市民がお互いの人間性を十分に尊重し、高齢者、障害者等に対する正しい理解を深め、温かい思いやりと助け合いのこころを高めるため、福祉教育の実践に努めるとともに、学校、家庭、地域社会において、人間愛の精神、福祉のこころ、社会奉仕の精神等の醸成が図られるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 市は、福祉に対する市民の理解を高めるとともに、ノーマライゼーションの理念の普及を図るため、広報、啓発活動の展開、市民交流の促進その他の必要な施策の実施に努めるものとする。

(ボランティア活動の振興)

第20条 市は、市民及び事業者の福祉に関するボランティア活動を支援するため、活動基盤の形成、活動機会の充実、社会的支援体制の整備等、必要な施策の展開に努めるものとする。

2 市民は、自らの持てる技能及び時間等の提供により、自主的にボランティア活動に参加、協力するよう努めるものとする。

3 事業者は、その雇用している者がボランティア活動に参加しようとするときは、業務に支障のない範囲において必要な便宜の供与に努めるとともに、自らもボランティア活動に参加するよう努めるものとする。

(住民参加による小地域福祉活動の推進)

第21条 市は、地域に即した創意と工夫のもとに、地域住民の理解と積極的な協力を得て、住民参加による各校区、地区等を中心とした小地域福祉活動を推進するとともに、そのための活動拠点の整備に努めるものとする。

第3章 生活・都市施設の整備

(整備基準)

第22条 市長は、生活・都市施設における出入口、廊下、階段、エレベーター、トイレ、駐車場、敷地内の通路その他の部分で不特定かつ多数の者の利用に供するものの構造及び設備の整備に関し、高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために必要な基準(以下「整備基準」という。)を規則で定めるものとする。

(整備基準の遵守)

第23条 生活・都市施設の新築、新設、増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替又は用途の変更(施設の用途を変更して生活・都市施設とする場合を含む。以下「新築等」という。)をしようとする者は、整備基準を遵守しなければならない。ただし、整備基準を遵守する場合と同等以上に円滑に利用できる場合又は地形、敷地の状況、建築物の構造等により整備基準を遵守することが困難である場合は、この限りでない。

(既存生活・都市施設の整備)

第24条 この章の規定の施行の際現に存する生活・都市施設(現に新築等の工事中のものを含む。)を設置し、又は管理する者は、当該生活・都市施設について、整備基準への適合状況を把握するとともに、整備基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(適合証の交付)

第25条 生活・都市施設を設置し、又は管理する者(以下「生活・都市施設の設置者等」という。)は、市長に対し、生活・都市施設が整備基準に適合していることを証する証票(以下「適合証」という。)の交付を請求することができる。

2 市長は、前項の規定による請求があった場合において、当該生活・都市施設が整備基準に適合していると認めるときは、当該請求をした者に対し、適合証を交付するものとする。

(維持保全)

第26条 生活・都市施設の設置者等は、当該生活・都市施設の整備基準に適合している部分又は適合させた部分の機能を維持するよう努めなければならない。

(介助等の措置)

第27条 生活・都市施設の設置者等は、高齢者、障害者等が当該生活・都市施設を円滑に利用できるようにするため、第23条第24条及び前条に規定するもののほか、介助その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(特定生活・都市施設の新築等の届出)

第28条 生活・都市施設のうち規則で定めるもの(以下「特定生活・都市施設」という。)の新築等をしようとする者は、あらかじめ当該特定生活・都市施設の新築等の内容を市長に届け出なければならない。

2 前項の規定による届出をした者は、その届け出た内容の変更(規則で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、あらかじめその変更の内容を市長に届け出なければならない。

(指導及び助言)

第29条 市長は、前条の規定による届出があった場合において、当該届出に係る特定生活・都市施設が整備基準に適合しないと認めるときは、当該届出をした者に対し、必要な指導及び助言を行うことができる。

(工事完了の届出)

第30条 第28条の規定による届出をした者は、当該届出に係る工事を完了したときは、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。

(完了検査)

第31条 市長は、前条の規定による届出があったときは、当該届出に係る特定生活・都市施設の整備基準への適合状況について検査を行うものとする。

(勧告)

第32条 市長は、第28条の規定による届出を行わずに特定生活・都市施設の新築等の工事に着手した者に対し、当該届出を行うよう勧告することができる。

2 市長は、第28条の規定による届出を行った者が当該届出に係る工事を行った場合において、当該工事が届出の内容と異なり、かつ、当該届出に係る特定生活・都市施設が整備基準に適合しないときは、当該届出を行った者に対し、当該届出の内容に基づく工事を行うことその他必要な措置を講ずるよう勧告することができる。

3 市長は、第29条の規定による指導又は助言を受けた者が当該指導又は助言に係る工事を行った場合において、正当な理由なく当該指導又は助言に従わず、かつ、当該指導又は助言に係る特定生活・都市施設が整備基準に適合しないときは、当該指導又は助言を受けた者に対し、当該指導又は助言の内容に従うことその他必要な措置を講ずるよう勧告することができる。

(公表)

第33条 市長は、前条の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、当該勧告を受けた者の氏名、勧告の内容その他の規則で定める事項を公表することができる。

2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。

(既存特定生活・都市施設の整備)

第34条 市長は、この章の規定の施行の際現に存する特定生活・都市施設(現に新築等の工事中のものを含む。)が整備基準に適合していない場合において、特に整備の必要があると認めるときは、当該特定生活・都市施設を設置し、又は管理する者に対し、必要な指導及び助言を行うことができる。

(報告の徴収及び立入調査)

第35条 市長は、第29条及び第31条から前条までの規定の施行に必要な限度において、特定生活・都市施設の新築等をしようとする者又は特定生活・都市施設を設置し、若しくは管理する者に対し、必要な報告を求め、又はその職員に特定生活・都市施設若しくは特定生活・都市施設の工事現場に立ち入り、整備基準への適合状況を調査させることができる。

2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

(国等に対する特例)

第36条 国、地方公共団体その他規則で定める者については、第28条から前条までの規定は、適用しない。

(住宅の整備)

第37条 市民は、その所有する住宅について、居住する者が将来にわたって円滑に利用できるよう整備に努めなければならない。

2 住宅を供給する事業者は、高齢者、障害者等が円滑に利用できるよう整備された住宅の供給に努めなければならない。

(公共工作物の整備)

第38条 交通信号機、案内標識、公衆電話所等公共の用に供する工作物(以下「公共工作物」という。)を設置し、又は管理する者は、当該公共工作物について、高齢者、障害者等が円滑に利用できるよう、その整備に努めなければならない。

(公共車両等の整備)

第39条 公共車両等を所有し、又は管理する者は、当該公共車両等を高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするため、整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

第4章 財政措置等

(財政上の措置)

第40条 市は、福祉のまちづくりに関する施策を推進するため、必要な基金の設置その他の財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(社会福祉法人等に対する援助)

第41条 市は、社会福祉法人等が行う福祉に関する事業活動に関し必要な助言、助成その他の援助を行うことができる。

(功績の表彰)

第42条 市長は、市民又は事業者が、福祉のまちづくりの推進に著しく貢献したと認める場合においては、その業績を公表し、かつ、その功績を表彰するものとする。

第5章 補則

(委任)

第43条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成17年11月1日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行の日の前日までに、合併前の高岡市福祉のまちづくり条例(平成9年高岡市条例第52号)の規定によりなされた処分、手続その他の行為は、この条例の相当規定によりなされた処分、手続その他の行為とみなす。

高岡市福祉のまちづくり条例

平成17年11月1日 条例第91号

(平成17年11月1日施行)