○ふるさと遠野の環境を守り育てる基本条例
平成17年10月1日
条例第102号
目次
前文
第1章 総則(第1条~第7条)
第2章 基本方針(第8条~第11条)
第3章 基本施策(第12条~第25条)
第4章 審議会(第26条~第33条)
附則
民話のふるさと遠野市は、早池峰山の麓に抱かれた、水清く、空気が澄み、緑豊かな、北上高地の中央に開けた盆地のまちである。この恵まれた自然環境のもとに、遠野特有の文化が創造され、現代に受け継がれてきた。
しかし、急激に成長した今日の社会経済活動は、私たちに物の豊かさや生活の便利さをもたらした一方で、環境への負荷を増大させ、自然生態系のみならず、全ての生物の生存基盤である地球環境に大きな影響を及ぼすに至っている。
私たちは、自然の生態系の一部であることを自覚し、自然との共生の中で文化や文明を築き上げたことを忘れずに、環境への負荷の少ない生活様式を確立し、すべての生命が共存できるような社会を創らなければならない。
ここに、豊かな自然を愛する心を育みつつ連携を深め、貴重な自然環境を後世に残すという責務を認識し、自然環境と人間生活が調和する遠野型環境調和社会の実現を目指して、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、遠野型環境調和社会の実現に向け、環境の保全及び創造について基本理念を定め、並びに市民、滞在者、事業者及び市の責務を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって市民の健康で潤いのある生活の確保に寄与することを目的とする。
(1) 環境 人間や生物の周囲にあって、意識や行動の面でそれらと何らかの相互作用を及ぼし合う自然環境、社会的環境及び文化的環境をいう。
(2) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
(3) 遠野型環境調和社会 市の土地形態から区分した市街地区域、田園区域、里山区域及び森林区域の4領域で、住民がそれぞれの環境特性と課題に配慮しながら活動し、各領域間が協調を図り、総合的に自然環境との共生が形成される社会をいう。
(4) 環境の保全及び創造 環境の自然的構成要素(大気、水、土壌、生物等をいう。)及び文化的構成要素(文化財、歴史的建造物等をいう。)に着目し、その保護及び整備を図ることによってこれを良好な状態に保持し、又は形成し、過去に損なわれた自然環境の再生と自然環境に配慮されなかったものを修復することをいう。
(5) 滞在者 市内を通過する者又は旅行等により市内に滞在する者をいう。
(6) 地球環境の保全 人の活動による地球の温暖化、オゾン層の破壊の進行、海洋汚染その他の地球全体の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全をいう。
(7) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の採掘のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。
(8) 遠野らしさ 厳しい自然条件や社会の営みから創出された歴史、文化、伝統等を市民が育み継承している中で、四季の彩りを演出している山並み、河川及び田園が見通し景観に配慮され、良好に維持されている状態をいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、市民が健康で安全かつ快適な生活を営むことができる恵み豊かな環境を確保し、これを将来の世代に継承していくことを目的として行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、多様な自然環境が有するそれぞれの特性に配慮し、人と自然が共生できることを目的として適切に行われなければならない。
3 環境の保全及び創造は、資源が有限であることを自覚し、適正な管理と循環的な利用を推進し、及び環境への負荷をできる限り低減することによって、環境への負荷の少ない経済の発展を図りながら、持続的な発展が可能な社会を構築することを目的として、すべての者が公平な役割分担の下に主体的かつ積極的に行われなければならない。
4 地球環境の保全は、地域の環境が地球全体の環境に深くかかわっていることをすべての者が認識し、あらゆる事業活動及び日常生活において積極的に行われなければならない。
(市民の責務)
第4条 市民は、日常生活において資源及びエネルギーの節約並びに廃棄物の排出の抑制に努め、環境美化活動、資源回収活動その他の環境保全活動への積極的な参加に努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(滞在者の責務)
第5条 滞在者は、滞在期間において資源及びエネルギーの節約並びに廃棄物の排出の抑制その他の環境の保全に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全等に関する施策に協力する責務を有する。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、事業活動において生ずる公害を防止し、自然環境を適正に保全し、並びに環境への負荷の低減及び事業場周辺の環境美化に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(市の責務)
第7条 市は、環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
第2章 基本方針
(施策の基本方針)
第8条 市は、環境の保全及び創造に関する施策の策定及び実施に当たっては、基本理念に基づき、次に掲げる事項を基本として、市民及び事業者との協働の下に、総合的かつ計画的に推進するものとする。
(1) 市民の健康を保護し、及び生活環境を保全し、並びに自然環境を適正に保全するよう大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素を良好な状態に確保すること。
(2) 生物の多様性の確保を図るとともに、森林、農地、水辺等の多様な自然環境を地域の自然的及び社会的条件に応じて適性に保全するとともに、失われた自然環境を再生すること。
(3) 遠野らしい自然景観、歴史にはぐくまれた伝統及び社会的な環境との調和を図り、自然との豊かなふれあいを確保しながら、人に潤いと安らぎをもたらす快適な環境を保全及び創造すること。
(4) 廃棄物の減量、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用等を推進することにより、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な社会を構築するとともに、地球環境の保全に貢献すること。
(環境基本計画)
第9条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、遠野市環境基本計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全及び創造に関する目標
(2) 環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な施策の方向
(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、市民及び事業者の意見を反映することができるように必要な措置を講ずるとともに、遠野市環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(年次報告)
第10条 市長は、毎年、環境の状況、市が講じた環境の保全及び創造に関する施策の実施状況等を明らかにした報告書を作成し、遠野市環境審議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。
(財政上の措置)
第11条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
第3章 基本施策
(施策の配慮)
第12条 市は、あらゆる施策の策定及び実施に当たっては、環境の保全及び創造について配慮するものとする。
(環境影響評価の推進)
第13条 市は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者自らが環境調査及び環境に及ぼす影響の検討を行い、その結果に基づきその事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(規制の措置)
第14条 市は、環境の保全上の支障となる行為を防止するため、必要に応じて規制の措置を講ずるものとする。
(誘導措置)
第15条 市は、環境への負荷を生じさせる活動又は生じさせる原因となる活動を行う者がその活動に係る環境への負荷の低減を図るための施設の整備その他の適切な措置をとるように、誘導に努めるものとする。
(施設整備等の推進)
第16条 市は、下水道、廃棄物の処理施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、公園、緑地、河川その他の環境の保全及び創造に資する公共的施設の整備並びに森林の整備その他の環境の保全及び創造に資する公共的事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(遠野らしい環境の保全)
第17条 市は、遠野らしい環境を保全するものとする。
2 市は、遠野らしい環境の保全及び創造に関し、自然とのふれあいの場の創出、緑化の推進、良好な景観の形成その他人に潤いと安らぎをもたらすため、必要な措置を講ずるものとする。
3 市民、滞在者及び事業者は、遠野らしい環境を理解し、廃棄物の適正な処理並びに使用済の機器、資材及び遊休地等の適切な管理に努め、良好な自然環境及び生活環境の保全を尊重しなければならない。
(廃棄物の減量の推進等)
第18条 市は、環境への負荷の低減を図るため、廃棄物の減量、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用等が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
2 前項に定めるもののほか、市は、環境への負荷の低減に資する製品、原材料、役務等の利用が促進されるように必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(環境教育及び学習の振興等)
第19条 市は、市民及び事業者の環境の保全及び創造についての関心と理解の増進並びに自発的な活動の促進に資するため、環境教育及び学習の推進並びに広報活動の充実に関し、必要な措置を講ずるものとする。
(民間団体等の活動促進措置)
第20条 市は、市民及び事業者又はこれらの組織する団体(以下「民間団体等」という。)が自発的に行う環境の保全及び創造に関する活動を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(情報の収集及び提供)
第21条 市は、環境の保全及び創造に関する情報の収集及び提供に努めるものとする。
(民間団体等の参加)
第22条 市は、環境の保全及び創造に関する施策の推進に当たっては、民間団体等の参加に関し必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(調査等体制の整備)
第23条 市は、環境の状況の把握に関する調査その他の環境の保全及び創造に関する施策の策定に必要な調査を実施するとともに、監視、巡視、測定等の体制の整備に努めるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第24条 市は、広域的な取組みを必要とする環境の保全及び創造に関する施策については、国及び他の地方公共団体と協力し、その推進に努めるものとする。
(地球環境の保全に関する国際協力)
第25条 市は、国その他の関係機関と連携し、地球環境の保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。
第4章 審議会
(設置)
第26条 市の環境保全に関する基本施策等を調査し、審議し、及び評価するため、市長の諮問機関として、遠野市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(組織)
第27条 審議会は、委員14人以内で組織し、委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
(1) 識見を有する者
(2) 関係行政機関の職員
(3) 各種団体の役職員
(4) 公募による者
(任期)
第28条 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長及び副会長)
第29条 審議会に会長及び副会長1人を置き、委員の互選により選任する。
2 会長は、会務を総理し、会議の議長となる。
3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。
(特別委員)
第30条 審議会は、専門の事項を調査、審議及び評価するため必要があるときは、特別委員を置くことができる。
2 特別委員は、市長が必要と認める者のうちから委嘱し、調査等が終了したときは解職されるものとする。
(会議)
第31条 審議会は、市長が招集する。
2 審議会は、委員の半数以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
3 審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(庶務)
第32条 審議会の庶務は、環境整備部において処理する。
(委任)
第33条 この章に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。
附則
この条例は、平成17年10月1日から施行する。
附則(平成20年12月19日条例第37号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成21年4月1日から施行する。