○遠野市わらすっこ条例
平成21年3月23日
条例第11号
目次
前文
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 子どもの権利(第3条~第7条)
第3章 子どもの権利を保障する責務(第8条~第13条)
第4章 子どもに関する基本的な市の取組(第14条~第18条)
第5章 推進体制の整備(第19条~第21条)
第6章 わらすっこ支援委員会(第22条~第31条)
第7章 雑則(第32条)
附則
わらすっこ(以下「子ども」といいます。)の皆さん
子どもは、生まれながらにして一人ひとりがさまざまな個性や能力や夢をもったかけがえのない存在です。一人の人として権利が尊重され、責任ある社会の一員として周りの人に大切にされ、愛され、信頼される存在です。子どもは、さまざまな人、自然、そして文化との適切な関わりの中で、その権利が保障され、安心して健やかに成長していくことができます。
その一方で子どもは、自分の権利について学び、気づき、身につけていく中で、他の人の権利を大切にし、お互いに権利を尊重し合える力をつけていき、自分や他の人の命の尊さを知ることができるように支援されます。
おとなの皆さん
おとなは、真に子どもの視点を大切にするとともに、子どもにとって最善の方法は何かを常に考え、育ちを見守り、寄り添い、支えていく責務を負っています。おとなは、そのような責務とそれぞれの役割を認識し、子どもから信頼される存在であるように、お互いに連携し、協働することが求められます。
市民の皆さん
子どもは遠野の宝であり、希望です。市はこの認識のもと、子どもの権利が尊重され、健やかな育ちを支援するまちであることを明らかにし、この「遠野市わらすっこ条例」を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、児童の権利に関する条約を基にして、子どもの権利を守り、子どもの成長を支援するしくみなどについて定めます。これにより、市が、子どもの最善の利益を第一に考えながら、子どもの権利を保障することを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において「子ども」とは、18歳未満の人をいいます。ただし、これらの人と同じように子どもの権利を持つことがふさわしいと認められる人も含みます。
第2章 子どもの権利
(子どもの権利の保障)
第3条 この章に定める権利は、子どもにとって特に大切な権利として保障されます。
(安全に安心して生きる権利)
第4条 子どもは、安全に安心して生きるために、主として次に掲げる権利が保障されます。
(1) 命が守られ、平和で安全な環境で安心して生きること。
(2) かけがえのない存在として愛情と理解をもって育まれること。
(3) 健康な生活が守られ、適切な医療が受けられること。
(4) 虐待、体罰、暴力、いじめなどを受けないこと。
(5) あらゆる差別を受けないこと。
(6) 性的に不当なあつかいを受けないこと。
(7) 年齢及び発達にふさわしい生活ができること。
(豊かに育つ権利)
第5条 子どもは、豊かに育つために、主として次に掲げる権利が保障されます。
(1) 安心できる環境で、遊んだり、休んだり、のびのび育つこと。
(2) 個性が認められ、人格が尊重されること。
(3) 年齢及び発達に応じて学ぶこと。
(4) さまざまな人、自然とのふれあい及び多彩な文化の中で、共に生きること。
(5) 多様化する社会との関わりの中で他の人と共に生き、自立していくこと。
(6) 基本的生活習慣及び社会性を身につけること。
(自分が守られる権利)
第6条 子どもは、自分が守られるために、主として次に掲げる権利が保障されます。
(1) プライバシー及び名誉が守られること。
(2) 信頼され、自分の意思や考えが尊重されること。
(3) 自分の夢や希望を自由に持ち、表明し、行動できること。
(4) 自分の持っている力を発揮できること。
(5) 自分が心や体に危険を感じたときに保護されること。
(参加する権利)
第7条 子どもは、自分たちに関わることについて参加するため、その年齢及び発達に応じ、主として次に掲げる権利が保障されます。
(1) 自分の意見を表すことができ、その意見が尊重されること。
(2) 自分たちに関わることを決めることについて、自分たちの意見が反映されること。
(3) 意見を表すために、必要な情報の提供及び支援が受けられること。
(4) 仲間をつくり、仲間と集うこと。
第3章 子どもの権利を保障する責務
(共通の責務)
第8条 保護者、地域住民等、学校等関係者、事業者及び市は、子どもの権利を保障するため、相互に連携し、及び協働するとともに、次に掲げる支援を行うよう努めなければなりません。
(1) 子どもが他の人の権利を尊重し、責任ある社会の一員として育つために必要な支援
(2) 保護者が子どもの養育及び発達に関する第一義的な責任を果たすために必要な支援
(3) 子どもと誠実に向き合い子どものよさを見つけてほめることで、子どもが自信及び誇りを持ち、自分を見つめ、生きる力を養うために必要な支援
2 保護者、地域住民等及び学校等関係者は、子どもに対し虐待、体罰及び暴力をしてはなりません。
3 保護者、地域住民等、学校等関係者、事業者及び市は、事故、災害等の未然防止を図り、子どもの安全確保に努めなければなりません。
(保護者の責務)
第9条 保護者は、子どもの健やかな成長及び権利の保障にとって家庭が果たす役割を認識するとともに、その第一義的な責任を有することを自覚し、子どもを虐待及び体罰せず守り育てなければなりません。
2 保護者は、子どもに愛情を持って接し、子どもが基本的な生活習慣、社会規範及び道徳観を身に付けることができるよう努めなければなりません。
3 保護者は、子どもにとっての最善の利益を考慮し、子どもの年齢及び発達に応じた養育に努めなければなりません。
(地域住民等の責務)
第10条 地域住民等は、地域のさまざまな人、自然及び文化との関わりの中で、子どもの豊かな人間性が育まれることを認識し、子どもが健やかに育つよう子どもの支援に努めなければなりません。
2 地域住民等は、虐待及び体罰を受けたと思われる子どもを発見したときは通告し、暴力、犯罪などから子どもを守るため、安全で安心な地域づくりに努めなければなりません。
3 地域住民等は、子どもが地域社会の一員であることを認識し、子どもとともに地域活動を行うよう努めなければなりません。
4 地域住民等は、子どもの豊かな成長を支えるため、地域と学校等の連携、協働による学校経営に参画するよう努めなければなりません。
5 地域住民等は、次世代に残すべき子育てに係る知恵と工夫の伝承に努めなければなりません。
(学校等関係者の責務)
第11条 学校等関係者は、子どもが主体的に育ち、及び学ぶ環境づくりに努めなければなりません。
2 学校等関係者は、子どもの身近にいるおとなであることを自覚し、虐待、体罰、いじめなどから子どもを守るため、関係者及び関係機関と連携し解決にあたるよう努めなければなりません。
3 学校等関係者は、関係者及び関係機関と連携を図りながら、不登校などについて適切な対応に努めなければなりません。
4 学校等関係者は、子どもの育ち及び学びに関する情報の提供に努めるとともに、説明責任を果たすよう努めなければなりません。
5 学校等関係者は、子どもが子どもの権利について理解し、意見を表明する機会を設け、又は支援に努めなければなりません。
(事業者の責務)
第12条 事業者は、子どもの育ちに与える影響の大きさを認識した事業活動を行うとともに、若年層の就労支援、従業員に対する人材育成及び社会人としての教育に努めなければなりません。
2 事業者は、子育て期の従業員が仕事と子育てを両立することができる職場環境を整えるなど、働き方改革の推進に努めなければなりません。
3 事業者は、子育て期の従業員が、その子どもと十分触れ合うことができる環境づくりに配慮するとともに、学校等が行う職場体験学習など、子どもの育成に関する活動に協力するよう努めなければなりません。
(市の責務)
第13条 市は、子どもの権利を保障するため、子どもにとっての最善の利益を考慮し、子どもに関する取組を推進しなければなりません。
2 市は、子どもの権利を保障し、子どもを支援するため、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者がそれぞれの責務を全うするよう、保健、福祉、医療、教育その他のあらゆる分野において、必要な支援及び総合調整を図らなければなりません。
3 市は、国、県及び子どもに関わる関係機関と相互に連携し、及び協働しなければなりません。
4 市は、子どもに関する取組を実施するため、財政上の措置その他必要な措置を講じなければなりません。
第4章 子どもに関する基本的な市の取組
(子どもの権利の普及)
第14条 市は、この条例及び子どもの権利について、市民の関心及び理解を深めるため、分かりやすく広めるなど、広報活動を行います。
(虐待、体罰、いじめなどの防止及び救済)
第15条 市は、保護者、地域住民等、学校等関係者及び関係機関と連携し、及び協働し、虐待、体罰、いじめなどの防止、相談及び救済のために必要な措置を講じます。
(子どもの育ちの支援)
第16条 市は、子どもの健やかな育ちを支援するため、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者と連携し、及び協働し、次に掲げる取組を行うよう努めます。
(1) 子どもが安全に安心して過ごすことができるための居場所づくりを進めること。
(2) 子どもが自然及び地域社会とのふれあいの中で豊かに育つことができるための遊び及び体験の場づくりを進めること。
(3) 子どもが多様化する社会においてもそれぞれが認められ、他の人と共生し、責任ある社会の一員として自立できるよう支援すること。
(子どもの参画活動の促進)
第17条 市は、子どもの主体性を大切にしながら、社会参加などの促進が図られるよう必要な支援を行います。
(子育て家庭の支援)
第18条 市は、保護者が子どもを育てるにあたり、必要に応じて経済的、社会的支援を行うとともに、保護者、地域住民等、学校等関係者及び事業者と連携し、及び協働し、支援体制の充実に努めます。
2 市は、子育てに関して困難を抱えている家庭の把握に努めるとともに、その状況に配慮したきめ細かな支援を行います。
第5章 推進体制の整備
(推進計画の策定)
第19条 市は、子どもに関する取組を総合的かつ計画的に実施するための基本となる計画(以下「推進計画」といいます。)を策定します。
2 市は、推進計画を策定するときは、この条例の趣旨に基づき、子どもを含めた市民から意見等を求め、その反映に努めます。
3 市は、推進計画を策定したときは、分かりやすく公表します。
(評価)
第20条 市は、推進計画に基づいて実施した取組の結果について評価します。
2 市は、前項の評価について、分かりやすく、速やかに公表します。
(推進体制)
第21条 市は、子どもに関する取組を総合的かつ計画的に実施するため、総合的な推進体制を整備します。
第6章 わらすっこ支援委員会
(わらすっこ支援委員会の設置)
第22条 子どもの権利の保障を推進し、子どもに関する施策の充実を図るため、遠野市わらすっこ支援委員会(以下「委員会」といいます。)を置きます。
(委員会の所掌事務)
第23条 委員会の所掌事務は、次に掲げる事項とします。
(1) 子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第77条第1項各号に掲げる事務を処理すること。
(2) 子どもに関する市の施策の充実に必要な事項を調査審議すること。
(提言及びこれに対する措置)
第24条 委員会は、子どもに関する施策に関し、必要があると認めるときは、市長その他の執行機関(以下「市長等」といいます。)に対し提言をすることができます。
2 市長等は、委員会の提言を尊重し、必要な措置を講ずるものとします。
(組織)
第25条 委員会は、委員15人以内をもって組織します。
2 委員は、人権、教育、福祉その他子どもの権利に関わる分野において識見を有する者及び市民のうちから市長が委嘱します。
(委員の責務)
第26条 委員は、職務上知り得た情報を漏らしてはなりません。その職を退いた後も、同様とします。
(任期)
第27条 委員の任期は2年とし、再任を妨げません。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。
(委員長及び副委員長)
第28条 委員会に委員長及び副委員長1人を置き、委員の互選によりこれを定めます。
2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表します。
3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるときは、その職務を代理します。
(会議)
第29条 委員会の会議は、委員長が招集し、その議長となります。
2 委員会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができません。
3 委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによります。
(関係者の出席)
第30条 委員会は、必要があると認めるときは、関係者の出席を求め、その説明又は意見を聴くことができます。
(庶務)
第31条 委員会の庶務は、健康福祉部において処理します。
第7章 雑則
(委任)
第32条 この条例の施行に必要なことがらは、市長その他の執行機関が定めます。
附則
この条例は、平成21年4月1日から施行します。
附則(平成25年9月27日条例第22号)
この条例は、平成25年10月1日から施行します。
附則(平成29年12月12日条例第23号)
この条例は、平成30年4月1日から施行します。
附則(令和元年12月16日条例第20号)
この条例は、令和2年4月1日から施行します。
附則(令和4年3月14日条例第4号)
この条例は、令和4年4月1日から施行します。