○豊島区男女共同参画推進条例
平成15年3月20日
条例第2号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 性別等に起因する人権侵害の禁止(第7条)
第3章 基本的施策等(第8条―第12条)
第4章 豊島区男女共同参画推進会議(第13条―第20条)
第5章 豊島区男女共同参画苦情処理委員(第21条―第27条)
第6章 雑則(第28条)
附則
私たちは、男女共同参画社会の形成を図るため、長年にわたり、積極的な取組を行ってきた。平成14年2月には、この取組の成果を踏まえ、男女共同参画都市宣言を行った。
これまでの取組により男女共同参画は前進してきているものの、今なお、性別に起因する人権侵害、性別による固定的な役割分担意識及びそれに基づく社会的慣行が存在するなど、多くの課題が残されている。一方、様々な人々が互いの違いを理解し合い、認め合う重要性はますます高まっている。こうした中、男女の性別にとらわれず、性の多様性を尊重し合い、すべての人がともに生きていける社会の実現が求められている。
私たちのまち豊島区が、本格的な少子高齢化の進展、家族形態の変化などに適切に対応し、文化の風薫る、豊かで活力のあるまちとして発展していくためには、性別等にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮し、ともに社会に参画し、責任を分かち合うことが大切である。
ここに、私たちは、家庭、職場、学校、地域社会などあらゆる場において、性別等に起因する人権侵害を受けることなく、1人ひとりがその人らしく、分かち合い助け合い、ともに暮らすまち豊島区をつくることを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関し、基本理念並びに豊島区(以下「区」という。)、区民及び事業者の責務を明らかにするとともに、区の施策の基本的事項を定めることにより、男女共同参画の推進に関する施策(以下「男女共同参画施策」という。)を総合的かつ計画的に推進し、もって男女共同参画社会の実現を図ることを目的とする。
(1) 男女共同参画 性別等にかかわらず、すべての人が社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、責任を担うことをいう。
(2) 性別等 生物学的な性別、性自認(自己の性別についての認識をいう。以下同じ。)及び性的指向(どの性別を恋愛感情又は性的な関心若しくは興味の主な対象とするかしないかを表すものをいう。以下同じ。)をいう。
(3) 区民 区の区域内(以下「区内」という。)に居住する者、区内の事務所若しくは事業所に勤務する者又は区内の学校に在学する者をいう。
(4) 事業者 営利、非営利の別にかかわらず、区内において事業活動を行う個人又は団体をいう。
(5) セクシュアル・ハラスメント 他の者を不快にさせる性的な言動(性的な関心又は欲求に基づく言動をいい、性別により役割を分担すべきとする意識又は性自認若しくは性的指向に関する偏見に基づく言動を含む。)により個人の生活環境を害すること又は性的な言動に対する個人の対応に起因して、当該個人に不利益を与えることをいう。
(6) メディア・リテラシー 新聞、テレビ、インターネットその他のメディアが伝える様々な情報を無批判に受け止めるのではなく、主体的に読み解き、取捨選択して活用する能力及び当該メディアを通じて意思疎通する能力をいう。
(7) パートナーシップ 互いを人生の伴侶とし、日常の生活において、経済的又は物理的かつ精神的に相互に協力し合うことを約した、一方又は双方が多様な性自認又は性的指向の2人の者の関係をいう。
(8) パートナー パートナーシップにある者の一方からみた相手方をいう。
(平31条例5・一部改正)
(基本理念)
第3条 男女共同参画社会の形成を図るため、次に掲げる事項を基本理念として定める。
(1) すべての人が、個人として尊重され、性別等による差別的な取扱いを受けず、その個性と能力を発揮する機会が確保されること、暴力が根絶されること等人権が尊重されること。
(2) 社会の制度又は慣行が性別による固定的な役割分担意識の影響を受けず、すべての人の社会活動における選択の自由が制約されないこと。
(3) すべての人が、社会の対等な構成員として、家庭、職場、学校、地域社会などあらゆる分野(以下「あらゆる分野」という。)における活動の方針の立案及び決定過程に参画する機会が確保されること。
(4) すべての人の性と生殖における健康と権利が尊重され、生涯にわたって自分らしい生き方を選択できること。
(5) すべての人が、社会の支援の下に、子どもの養育、家族の介護その他の家庭生活における活動の責任(以下「家庭責任」という。)を分かち合うとともに、家庭生活及び社会生活における活動を両立することができること。
(6) すべての人が、国籍にかかわりなく、その個性と能力を発揮し、ともに社会に参画し、責任を分かち合うことができること。
(7) すべての人の性自認又は性的指向が尊重され、誰からも干渉又は侵害を受けないこと。
(8) 幼児教育、学校教育及び生涯学習において、男女平等の理念及び性の多様性を尊重し、男女共同参画社会の実現に向けた取組がなされること。
(平31条例5・一部改正)
(区の責務)
第4条 区は、基本理念に基づき、男女共同参画施策を総合的かつ計画的に推進するため、行動計画を策定し、実施するものとする。
2 区は、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、基本理念に沿うよう配慮するものとする。
3 区は、男女共同参画施策を実施するに当たっては、区民、事業者、国及び他の地方公共団体と連携し、協力するものとする。
(区民の責務)
第5条 区民は、あらゆる分野の活動において、男女共同参画について理解を深め、その推進に努めるものとする。
2 区民は、区が実施する男女共同参画施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、その事業活動に関し、男女共同参画の推進に努めるものとする。
2 事業者は、区が実施する男女共同参画施策に協力するよう努めるものとする。
第2章 性別等に起因する人権侵害の禁止
(平31条例5・改称)
第7条 何人も、家庭、職場、学校、地域社会などあらゆる場(以下「あらゆる場」という。)において、性別等による差別的取扱いその他の性別等に起因する人権侵害を行ってはならない。
2 何人も、あらゆる場において、セクシュアル・ハラスメント又は婚姻、妊娠、出産、育児若しくは介護に関するハラスメントを行ってはならない。
3 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、パートナー若しくは交際相手である者又はあった者に対する身体的、精神的、経済的又は性的な暴力行為を行ってはならない。
4 何人も、公衆に表示する情報において、性別等に起因する人権侵害を助長することのないよう配慮しなければならない。
5 何人も、性自認又は性的指向の公表に関して、本人に対し強制又は禁止してはならない。
6 何人も、本人の同意なくして性自認又は性的指向を公表してはならない。
(平31条例5・一部改正)
第3章 基本的施策等
(基本的施策)
第8条 区は、男女共同参画を推進するため、次に掲げる基本的施策の実施に努めるものとする。
(1) 男女共同参画の推進に関する調査研究、情報の収集分析並びに区民及び事業者に対する情報の提供を行うこと。
(2) 男女共同参画の推進に関する啓発活動等を充実するとともに、学校教育を始めとする生涯にわたる学習支援において、男女共同参画の推進のための必要な措置を講ずること。
(3) 区民及び事業者が行う男女共同参画の推進に関する活動に対し、助言等必要な支援を行うこと。
(4) すべての人が個人として尊重され、性別等による差別的な取扱いを受けることがないよう必要な措置を講ずること。
(5) セクシュアル・ハラスメント又は婚姻、妊娠、出産、育児若しくは介護に関するハラスメント及び配偶者、パートナー若しくは交際相手である者又はあった者に対する暴力的行為の防止を図るとともに、これらの被害を受けた者に対し必要な支援を行うこと。
(6) 性と生殖に関する健康と権利が尊重され、自己決定による選択ができるよう必要な措置を講ずること。
(7) 社会の制度又は慣行が性別による固定的な役割分担意識の影響を受け、すべての人の社会活動における選択の自由が制約されることのないよう必要な措置を講ずること。
(8) あらゆる分野の活動の意思決定過程において、性別等を理由に参画する機会の格差が生ずることのないよう必要な措置を講ずること。
(9) 家庭責任を持つすべての人が家庭生活及び社会生活における活動を両立することができるよう必要な措置を講ずること。
(10) すべての人がメディア・リテラシーを身に付け、向上が図られるよう必要な措置を講ずること。
(平31条例5・一部改正)
(パートナーシップ制度)
第8条の2 区長は、パートナーシップの届出があったときは、規則で定めるところにより、受理証明書を交付することができる。
2 前項の受理証明書の交付を希望する者は、規則で定めるところにより、届出書その他必要な書類を添付した上で、区長に届け出なければならない。
3 前2項に定めるもののほか、パートナーシップ制度に関し必要な事項は、規則で定める。
(平31条例5・追加)
第8条の3 事業者は、その社会活動の中で、前条第1項に規定する受理証明書を最大限に配慮し、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(平31条例5・追加)
(雇用の分野における男女共同参画の推進)
第9条 区長は、男女共同参画の推進に必要があると認めるときは、事業者に対し、雇用の分野における男女の参画状況等について報告を求めることができる。
2 区長は、前項の報告に基づき、事業者に対し、雇用の分野における男女共同参画の推進について適切な措置を講ずるよう協力を求めることができる。
(行動計画)
第10条 区長は、行動計画を策定するに当たっては、区民及び事業者の意見を反映することができるよう適切な措置を講ずるとともに、あらかじめ、豊島区男女共同参画推進会議の意見を聴かなければならない。
2 区長は、行動計画を策定したときは、これを公表しなければならない。
3 前2項の規定は、行動計画を変更する場合について準用する。
(年次報告)
第11条 区長は、行動計画に基づく施策の実施状況等について、年次報告を作成し、これを豊島区男女共同参画推進会議に報告するとともに、区民に公表するものとする。
(拠点施設)
第12条 区長は、豊島区立男女平等推進センターを拠点施設として、男女共同参画施策を実施するとともに、区民及び事業者による男女共同参画の推進の取組を支援するものとする。
2 区長は、前項の拠点施設の運営に当たっては、区民との連携と協働の下に行うものとする。
第4章 豊島区男女共同参画推進会議
(設置)
第13条 男女共同参画の推進を図るため、区長の附属機関として、豊島区男女共同参画推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
(所掌事務)
第14条 推進会議は、次に掲げる事務を行う。
(1) 区長の諮問に応じ、行動計画その他男女共同参画の推進に関する重要事項を調査審議し、答申すること。
(2) 男女共同参画施策の実施状況について、必要に応じ調査審議し、区長に意見を述べること。
(3) 豊島区男女共同参画苦情処理委員の求めに応じ、男女共同参画の推進に関する苦情等の処理について調査審議し、区長に意見を述べるとともに、当該豊島区男女共同参画苦情処理委員に報告すること。
(組織)
第15条 推進会議は、区長が委嘱する委員15人以内をもって組織する。
2 男女いずれか一方の委員の数は、委員の総数の4割未満であってはならない。
(委員の任期)
第16条 委員の任期は、2年とし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
(会長及び副会長)
第17条 推進会議に会長及び副会長を置く。
2 会長及び副会長は、委員の互選によって定める。
3 会長は、推進会議を代表し、会務を総理する。
4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
(招集)
第18条 推進会議は、会長が招集する。
(定足数及び表決数)
第19条 推進会議は、半数以上の委員の出席がなければ、会議を開くことができない。
2 推進会議の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(庶務)
第20条 推進会議の庶務は、総務部において処理する。
第5章 豊島区男女共同参画苦情処理委員
(申出の範囲)
第22条 区民が苦情処理委員に申し出ることができる事項の範囲は、次のとおりとする。
(1) 区が実施する男女共同参画施策又は男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる施策に関する事項
(2) 性別等による差別等男女共同参画を阻害する要因により人権が侵害されたと認められる事案に関する事項
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる事項については、苦情の申出及び救済の申出を行うことができない。
(1) 判決、裁決等により確定した事項
(2) 裁判所において係争中の事案及び行政庁において不服申立ての審理中の事案に関する事項
(3) 区議会に請願又は陳情を行っている事案に関する事項
(4) 苦情の申出又は救済の申出の処理に関する事項
(平31条例5・一部改正)
(所掌事務)
第23条 苦情処理委員は、苦情の申出について、必要があると認めるときは、次に掲げる事務を行う。
(1) 苦情の申出に係る調査
(2) 区の施策に係る是正等の措置の勧告及び改善意見の表明
(3) 前号の勧告及び改善意見の内容の公表
2 苦情処理委員は、救済の申出について、必要があると認めるときは、関係者の協力を得て、次に掲げる事務を行う。
(1) 救済の申出に係る調査
(2) 関係者に対する、助言、指導及びあっせん
(3) 関係者及び関係機関に対する、人権侵害の是正の要請
3 苦情処理委員は、苦情の申出及び救済の申出の処理について必要があると認めるときは、当該申出を行った者の同意を得て、推進会議の調査審議を求めることができる。
(定数等)
第24条 苦情処理委員は、3人以内とし、男女共同参画(性の多様性を含む。)の推進に関し優れた人格識見を有する者のうちから、区長が委嘱する。
(平31条例5・一部改正)
(兼職等の禁止)
第25条 苦情処理委員は、衆議院議員若しくは参議院議員、地方公共団体の議会の議員若しくは長又は政党その他の政治団体の役員と兼ねることができない。
2 苦情処理委員は、区と特別な利害関係にある企業その他の団体の役員と兼ねることができない。
3 前2項に定めるもののほか、苦情処理委員は、公平な職務の遂行に支障が生ずるおそれがある職と兼ねることができない。
(委員の任期)
第26条 苦情処理委員の任期は、2年とし、再任することができる。ただし、在任期間は、通算して6年を超えることができない。
(庶務)
第27条 苦情処理委員の庶務は、総務部において処理する。
第6章 雑則
(委任)
第28条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
附 則(平成31年3月25日条例第5号)
この条例は、平成31年4月1日から施行する。