○利島村における議会関係ハラスメントを根絶するための条例
令和5年3月27日
条例第10号
村民から負託を受けた村議会議員及び村長並びに全ての村職員は、村政に携わる権能と責務を深く自覚し、公共の福祉の増進という地方自治の本旨を体現するとともに、住民全体の奉仕者として住民福祉の向上に努めなければならない。ハラスメントは、他者に対して行われる極めて悪辣な行為であり、ハラスメントに対する無自覚によって相手に被害を与える「人権侵害」である。
また、ハラスメントは基本的人権、個人の尊厳を著しく傷つけ、議会活動に支障をきたし、議会の社会的信用及び信頼を失うことにつながる。特に村職員や住民に対するハラスメントは、不当に村職員及び住民の尊厳を傷つけ、最悪の場合、回復不能な肉体的、精神的な被害をもたらし、ひいては人材の喪失、行政の停滞を招くことになり、更には議員への村民の信頼を裏切ることになりかねない。利島村議会は、議員及び議会としての役割を十分発揮するため、互いに人格を尊重し、相互信頼を深めることを通じて、ハラスメントの防止に努め、信頼される議会の実現を目指すことを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、日本国憲法が保障する個人の尊厳、人格権その他の基本的人権の尊重及び政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(平成30年法律第28号)等の趣旨を踏まえ、利島村議会における議員によるハラスメント又は議員若しくは議員になろうとする者に対するハラスメントを根絶するため、同法に定めるもののほか、必要な事項を定めることにより、全ての利島村議会議員、村職員及び住民が人としての尊厳を尊重され、良好な職場環境を確保することで村政の効率的運用に寄与し、もって信頼される議会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「ハラスメント」とは、次の各号に掲げるものをいう。
(1) パワー・ハラスメント 議会、職場又は地域における優越的な関係を背景とした言動であって、議会活動、議員活動又は選挙活動(準備活動を含む。)その他の政治活動(以下「政治活動等」という。)上必要かつ相当な範囲を超え、当該言動の相手とされた者(以下「相手方」という。)に対して精神的若しくは身体的な苦痛を与え、人格若しくは尊厳を害し、又は勤務環境が害されるものをいう。ただし、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示及び指導については、パワー・ハラスメントには該当しない。
(2) セクシャル・ハラスメント 政治活動等における性的な言動であって、同性、異性を問わず、相手方に対して不快感を与える行為若しくはその行為によりその者の勤務環境を害し、又は勤務条件に不利益を与えることとなる行為をいう。
(3) マタニティ・ハラスメント 妊娠したこと、出産したこと若しくは妊娠若しくは出産に起因する症状により勤務することができないこと等を理由とする言動又は妊娠、出産、育児若しくは介護に関する制度若しくはその措置の利用に関する言動によりその者の勤務環境が害されることとなる行為をいう。
(4) その他のハラスメント 前3号に類する相手方に対する誹謗中傷、事実に反する風説の流布その他の嫌がらせとなる言動であって、日本国憲法が保障する思想の自由、表現の自由等に配慮しても、なお、一般に許される限度を超え、身体的若しくは精神的な苦痛を与え、又は相手方の生活環境等を害するものをいう。
2 この条例において「村議会議員になろうとする者」とは、利島村議会議員選挙において公職選挙法(昭和25年法律第100号)第86条の4第1項の届出をした利島村議会議員(以下、「村議会議員」という。)の候補者及び村議会議員の候補者になろうとする者をいう。
(村議会議員等の責務)
第3条 村議会議員及び村議会議員になろうとする者は、村民の代表者として、機能及び責務を自覚するとともに、高い倫理観が求められることを念頭に、ハラスメントが個人の尊厳を不当に傷つけ、人格権その他の基本的人権を侵害する行為であることを自覚し、政治活動等における自らの言動を厳しく律しなければならない。
2 村議会議員及び村議会議員になろうとする者は、ハラスメントとなる言動を行っている者があるときは、その者に対し当該言動は厳に慎むべきである旨を指摘するよう努める等、率先して利島村議会(以下、「村議会」という。)からハラスメントを根絶するよう取り組むものとする。
3 村議会議員は、村民全体の奉仕者としての立場を自覚し、常に、かつ、何人に対しても前2項の規定に準じた行動に努めるものとする。
4 村民は、本条例の趣旨の理解に努め、村議会に関するハラスメントの根絶に協力するよう努めるものとする。
(啓発、研修等)
第4条 議長は、前条に定める責務の遂行に資するため、本条例の趣旨の村民への周知及び啓発に努めるとともに、村議会において、及び村議会議員の政治活動等に関してハラスメント事案が発生することを防止し、村議会からハラスメントを根絶するため、村議会議員、利島村議会事務局の職員その他希望する者に対して、必要に応じて研修を実施するものとする。
2 議長は、ハラスメントに該当する事案の実態調査その他ハラスメントに関する情報の収集、整理及び分析に努め、その成果を前項の研修に活用するとともに、実態調査等の結果を踏まえた村議会による必要な取組の推進に努めるものとする。
(相談体制の整備)
第5条 議長は、利島村議会事務局の職員の中から指定した者を相談員として従事させるものとする。
2 ハラスメントによる被害を申し立てるもの(以下「申立人」という。)は、相談員に対し、当該ハラスメントによる被害の継続又は再発を防止するための措置(以下「被害防止措置」という。)その他当該ハラスメントに関する相談を行うことができる。
(相談事案への対応)
第6条 前条第2項の規定による相談を受けた相談員は、当該ハラスメントに関する事実を確認するため、申立人及び申立人がハラスメントを行ったとする者(以下「被申立人」という。)その他関係者からの聞き取り等、必要な調査を行うものとする。この場合において、相談員は、議長が認める範囲において、本項に基づく業務を他の調査に関する専門的な知識及び経験を有する者に委託し、又は他の職員に補助させることができる。
2 議長は、本条の規定に基づく相談員の業務遂行の自由を保障し、相談員、相談員の委託を受けた者及び他の職員は、当該相談事案に関する秘密を厳守するとともに、調査その他の相談に関する業務を行うに当たっては、申立人及び被申立人の名誉、プライバシーその他の人権の尊重について慎重に配慮しなければならない。
3 第1項の規定による調査の結果、当該ハラスメントに関し村議会による被害防止措置が必要と相談員が認める場合において申立人が求めるときは、当該相談員は議長にその旨を報告するものとする。
4 相談員は、受けた相談が前項の規定に該当しないときは、申立人に対し申立人が自ら採るべき措置、行動等について助言するものとする。
5 第3項の規定による報告を受けた議長は、必要に応じ、その他の者の意見を求めることができる。
(調査協力義務)
第7条 前条第1項の規定により相談員、相談員の委託を受けた者及び他の職員が相談事案に関する調査を行うときは、当該事案の申立人、被申立人及び調査の対象となった当該事案の関係者は、これに協力するよう努めなければならない。
(防止措置等)
第8条 議長は、相談員の報告又は意見を踏まえ、当該ハラスメントに係る村議会による対応として必要と認め、かつ可能な範囲において、被申立人に対し、注意を喚起し、ハラスメントをしないよう求め、又は勧告する等の被害防止措置を講ずるものとする。
(議長職務の代行)
第9条 議長が調査の対象になったときは副議長が、議長及び副議長が共に調査の対象になったときは年長の議員が、本条例に規定する議長の職務を行う。
(取組状況の公表)
第10条 議長は、実施した研修、相談の受付及び対応の状況、第3条に規定する者がそれぞれその責務を果たす上で参考とすべき事例等、本条例に基づく取組の状況を随時公表するものとする。
附則
この条例は、令和5年4月1日から施行する。