○鳥取県自然環境保全基本方針

昭和51年3月31日

鳥取県告示第252号

目次

始めに

第1章 自然環境保全の基本的な考え方

第1節 自然環境保全の一般的な考え方

1 歴史的考察

2 現状認識

3 今後の方向

第2節 本県の自然環境

1 現状認識

2 今後の方向

第2章 県自然環境保全地域及び緑地環境保全地域の指定その他これらの地域に係る自然環境の保全に関する基本的な事項

第1節 県自然環境保全地域

2 県自然環境保全地域の保全施策

第2節 緑地環境保全地域

1 緑地環境保全地域の指定方針

2 緑地環境保全地域の保全方針

第3章 自然環境保全の基本的方策

第1節 自然の保護

第2節 自然の復元力の助長と人工的な造成

第3節 自然の活用

第4節 自然環境保全体制の充実

第5節 自然環境保全上の財政措置

始めに

自然は、人類を始めとする生物すべての生存の基盤であり、この自然を離れて人は生存することはできない。

地球上での人類は、苦難に満ちた長い進化の過程で、人類固有の知的活動を通じて自然を巧みに利用しながら優れた文化を創造し、物質的にも豊かな社会を形成して、人類の繁栄をもたらした。

しかしながら、近年になって、科学技術の急速な進歩に伴い、重化学工業を中心とする第二次産業は著しい発展を遂げた反面、その発展過程において、我々の自然に対する理解が十分でなく、節度のない開発を行つた結果、人間を取りまく生活環境は破壊され、国の内外を問わずその生存が大きな脅威にさらされるに至った。

我々は、自然が人類の生存にとっていかに重要な役割を果たしているかを深く認識し、自然の仕組みに対する正しい理解と謙虚な心をもって、賢明に自然を利用することにより、現代に生きる我々の生活をより豊かにするとともに、過去幾百万年にわたって、我々をはぐくんできた自然を貴重な天与のものとして後世に伝え、人類の永続的生存を確保しなければならない。

今こそ、県民すべてが自然の尊さを強く認識し、自然の恩恵を永久に享受できるよう郷土の自然を愛し、守り、豊かな自然環境の保全に総力を結集すべきである。

第1章 自然環境保全の基本的な考え方

第1節 自然環境保全の一般的な考え方

1 歴史的考察

(1) 人類と自然

人類と社会の発達を振り返えるとき、それは自然との対決の歴史といえる。すなわち、厳しい気候的土地的条件だけでなく、動植物を含むすべての自然に対し、人類は生きるために対決してきた。

狩猟時代から農耕時代へ、そして火を使うことを覚えた人類は、森林を農耕地に変え、水を求めて集落をつくり、自然を活用しながら生存してきたが、農耕を中心とした時代には、環境破壊の問題はほとんど生じなかった。

しかし、科学技術の進歩によって産業活動は農業中心から工業中心へと変わり、また、人間は農村から都市へと集中した。

この結果、農耕地や森林は住宅地や工場用地・レジャー用地等に転用され、緑の空間は次第に狭められてきた。しかも、こうした開発が無秩序に行われた結果、各所で自然破壊が生じ、重化学工業の発展による公害発生と併せて、豊かな生活を得るために開発された技術が、かえって人間の生存を脅かすに至っている。

(2) 自然保護思想と制度

自然保護思想は、産業革命が起こった18世紀ごろから強く主張されはじめた。しかし、この思想も、ごく限られた一部の人々が啓もう的に主張した程度で、保護制度にまで高まるものではなかった。この思想が明確な制度にまで高まったのは、19世紀後半で、1872年アメリカにおいて世界最初の国立公園イエローストーンが誕生したのに始まる。この制度は、国を代表する大自然の風景地を永遠に保全するとともに、国民のレクリエーション利用に供しようとするもので、この国立公園制度が、自然保護制度の中心となって、20世紀の前半に至った。日本においても、昭和6年国立公園法が制定され、昭和9年3月瀬戸内海、雲仙及び霧島の三地域が日本で最初の国立公園として指定された。

20世紀後半になると、この保護思想も風景の保護を中心とする考え方から脱去して、人間が生きていくための環境としての自然をどのように守ってゆくかに変化していったのである。

これまで自然環境保全に関する法律としては、自然公園法、首都圏近郊緑地保全法等があったが、急速かつ全国的に進行しつつある自然環境の破壊を防止するための制度としては不十分であったので、昭和47年6月自然環境保全法が制定され、自然公園法その他自然環境保全を目的とする法律と相まって、自然環境の適正な保全を総合的に推進することになったのである。

2 現状認識

(1) 自然環境の現状

今日、自然環境の保全は、我が国だけでなく、地球全体で問題となっている。技術の急速な進歩に伴って生産が飛躍的に増大した反面、自然は破壊され、環境の汚染は拡大されてきた。これを大まかにいえば、人間の自然への働きかけが余りにも急速に増大したからである。

さて、自然への働きかけの大まかな指標は、人口密度と単位面積当たり人間がどれだけエネルギーを消費したか、すなわちエネルギー消費密度によって得られる。それによれば、我が国は、他の諸国に比べて相対的に希少な水・国土といった環境制約の中で、高密度の経済社会活動が行われていることが証明され、我が国がいかに自然破壊の危機に立たされているかがよく理解される。

最近“自然破壊を許すな”“自然を取りもどせ”といった運動が盛んに行われているが、世論調査をみても「5・6年前に比べて自然環境が悪くなった」とする人が約半数もあり、このことは、特に大都市の住民にとっては切実な問題となっている。これらの地方では、人口の著しい増加に伴って、農耕地、森林等が宅地、工場、レジャー施設用地等へ転用されている。

また、我が国の自然公園としては、国立公園27箇所、国定公園50箇所、都道府県立自然公園286箇所が指定され、その面積は約500万ヘクタールで、国土の約13.5パーセントを占めているが、これらの自然公園について、最近は過剰利用による破壊に加えて、利用施設の整備による破壊が見られる。

3 今後の方向

(1) 基本的な考え方

これまで、我々は、自然は無限であり、人類はその開発した科学技術によって、自然を征服し、意のままに制御しうるものと考えていた。しかしながら、我々は、完全にはは握できないが、幾つかの指標によって環境の破壊が大規模、かつ、広域となり、その影響が人類に及んできつつあることを知った。

一般に生物は、過密になると外敵、病気などによっていったん減少し、また増殖するという過程を繰り返しながら密度調節作用を行い、他とのバランスを保ってきた。

しかし、人間社会では、このような過程を受け入れることは許されない。我々は、その受け入れられない密度調節作用を何らかの手段で埋め合わせて行かなければ破滅することを認識している。

今まで生産技術に偏向していた投資、環境保全ないしは環境回復のための方向に転換することはもちろんのこと、今後土地の利用に当たっては、自然環境保全との調和を図る必要がある。

(2) 基本的な方向

環境を保全する方法は、一つは自然の保護と他の一つは公害の防止である。環境の保全は、自然の保護と公害防止が相まって保たれるものであるが、公害防止については他に譲ることにする。

我々が健康で文化的な生活を営むためには、限られた自然の資源をいかに計画的に利用するか、すなわち、開発と保護との調和をどこに求めるかということであるが、これまでは開発による経済的利益のみが迫求され、公害とか自然破壊などの予測を欠いていたといえる。したがって、今後の開発計画の策定に当たっては、環境に与える影響を事前に検討し、その事業の実施を制約するなどの体制を確立しなければならない。そのためには、まず保護すべき対象を明確にし、保護する方法を確立することである。対象としては、

(ア) 日常生活的自然

我々の日常生活に必要な自然であり、緑地・並木道・社そう

・身近な動物など、情操資源としての自然

(イ) 国立公園的自然

景観が優れ、余暇活動や保健、休養、教育等の場でもある自然

(ウ) 環境浄化的自然

田畑・森林の炭酸同化作用、河川・湖沼の自浄作用等のような環境浄化作用に着目した自然

(エ) 資源的自然

木材などのように、その資源性に着目した自然

(オ) 国土保全的自然

森林や水田のこう水調節機能等のような、国土保全の見地からみた自然

(カ) 学術的自然

動物・植物の分布や生態、特色ある地形・地質等学術的研究対象としての自然が考えられる。

我々は、日常これらの自然と無意識に接し、その存在を当然のように受け取つているが、もしこうした自然が破壊され、失われてしまった状態について考えてみれば、いかに限りない恩恵を受けているかを改めて認識させられるであろう。

このため、これらの自然環境は、いまや積極的に保護するための手段が講じられなければならない。

保護する方法としては、例えば、次のようなことが考えられるが、同時に行政・財政などの面においてその拡充強化を図るとともに、自然保護教育を徹底させる必要があることも当然である。

(ア) 学術的自然については、厳正に保存すること。

(イ) 国立公園的自然や資源的自然については、保護と併せて適正な利用を図ること。

(ウ) 国土保全的自然や環境浄化的自然については、無秩序な開発を制限して自然環境との調和を図ること。

(エ) 日常生活的自然については、必要に応じて自然を復元し、或は人工的に造成すること。

第2節 本県の自然環境

1 現状認識

本県は、山陰地方の中央部にあって、北は日本海に面し、東は兵庫県、西は島根県、南は岡山県及び広島県に接し、東西約120キロメートル、南北約20~40キロメートルで、その面積は、3,492平方キロメートルである。地形は、中国山地の分水界が北偏しているため、一般に急傾斜で河川も急流である。

気候は、概して温暖で、年平均14.3℃、降水量は2,000m/m内外である。地質は、南部は三郡変成岩類、花こう岩類、北部は新第三紀層とこれを覆う鮮新世火山岩類により構成されている。

高山地形は東部の扇の山~須賀の山、中部の三国山~若杉山、西部の大山、三平山~道後山と、北東~南西に並走する山地が明瞭で、標高1,000メートル以上に達しており、これらの山地には芦津渓、小鹿渓などの峡谷地形が形成されている。

海岸線は170キロメートルで、東部のリアス式海岸、長尾鼻、大山山ろく沿岸部の波食がい及び弓ヶ浜半島のほかは一般に砂丘の発達した砂浜海岸である。

自然植生は、低地では暖帯性のツバキ、シイ、タブノキなどの常緑広葉樹林が残存し、標高400~500メートル以上では、コナラ、アベマキなどが支配的となる。ブナは一般に標高600~700メートル以上から現われ、800メートル以上ではブナ帯となり、1,400メートル以上の山頂部では低木、草本原に移行する。

また、北方系のハマナスや南方系のハマヒサカキなど、寒暖両系の植物が相接近して生じている場所もある。

鳥類では、本邦野鳥の半数に当たる約200種が生息し、こん虫も非常に多く、大山に限ってみても1,000種を超すという。

そしてエゾゼミなどの北方系のこん虫や、オオバボタルなどの南方系こん虫も生息している。

ほ乳類としては、ツキノワグマ、ホンドザル、ニホンリスなどがおり、なかでも大山に生息しているヤマネは、本邦特産の一層一種の珍獣であるが、県下の動物の中で、学術的に最も貴重なものは、有尾両性類のオオサンシヨウウオであろう。

地形的景観は、山並みの重層する山国的な景観で、しかも急傾斜の短流河川のため、滝や渓谷の発達が顕著である。また、主峰大山のトロイデ式複式火山のほか、鐘状火山、溶岸台地状を呈するものがある。

平野景観は、狭少な沖積平野の一ぐうかた湖や旧潟湖の低湿地群と起伏量の大きい海岸砂丘で緑どられている点に、また人文景観では砂丘地農業景観、丘陵地栽培景観、芝、牧場景観のほか、からす止り屋根型、石屋根、箱型寄むね、赤がわら屋根などの景観に特色がある。

本県の自然公園は、大山隠岐国立公園、山陰海岸国立公園、氷ノ山後山那岐山国立公園及び比婆道後帝釈国定公園並びに三朝東郷湖県立公園及び奥日野県立公園がある。

大山隠岐国立公園は、中国山地の最高峰大山を中心とする山岳公園で、昭和11年に指定され、頂上付近の高山植物群落と中腹のブナ林が中心となっている。

山陰海岸国立公園は、海岸公園で、昭和38年に指定され、鳥取砂丘と浦富海岸が中心である。

氷ノ山後山那岐山国立公園は、中国山地第2の高峰須賀ノ山を中心とした山岳公園で、昭和44年に指定され、比婆道後帝釈国定公園は、中国山地の準平原地の道後山を中心として昭和38年に指定されている。

三朝東郷湖県立公園は、昭和29年に指定され、温泉群と湖水と史跡がその中心であり、奥日野県立公園は、昭和39年に指定され、山岳と渓谷がその中心である。

こうした本県の自然は、近年まで比較的良好に保全されてきた。

しかし、ブナ林の伐採による原生林的自然の減少や各種建設工事、宅地造成などの、開発行為によつて漸次自然環境は破壊され、あるいは登山者の急増などによって、大山山頂付近が汚染荒廃するなど、自然公園管理上、学術研究上、あるいは国土保全上将来に問題を残すおそれのある地点も生じている。

本県には、大都市や大工場地帯がないため、一般的にいえば日常生活的自然や環境浄化的自然には恵まれているといえよう。しかし、近年みられる市街地の拡大、車の急増等と考えれば、鳥取市内、米子市内などでは自然環境は悪化しつつあり、丘陵地におけるゴルフ場や分譲別荘地の開発が進行しており、本県の自然環境も破壊の危機に直面しつつあるといえる。

2 今後の方向

自然環境を保全するためには、総合的に種々の施策が講じられねばならぬことはもちろんであるが、留意すべき事項を挙げれば次のとおりである。

地形・地質は、一度破壊すれば二度と復元できないものである。これを保護することは、景観・植生などを保護することにもなる。したがって、良好に保全されてきた、限られた地域には道路等の施設は建設しないこととし、既設道路についてはのり面を完全に防護し、下方斜面の安定化を図る等、地形地質を変更しないための配慮が必要である。

植生については、自然植生は、無機的な環境はもちろん、同じ植物間同士、また、動物などすべてを含めた自然環境とのバランスの上に成立していることからみて、保護のため十分な面積を確保する必要があり、これはまた、災害防止にも役立つものである。特に極盛相を示している自然は環境の変化に対し敏感であるので、格別の配慮をする必要がある。このことは動物についても同様であるが、特に水生のものについては、水量、水温の維推、汚濁の防止などにも留意しなければならない。また、都市の市街地内には、一定以上の広さの緑地帯を置くことも肝要である。これらは日常生活的自然及び環境浄化的自然として役立つのみならず、災害防止上も大きな意味をもつからである。

景観保護上は自然公園はもちろんのこと市街地周辺の緑地を保存するとともに、主要道路沿線の景観を保護することが特に必要である。

また、全県下にわたり社叢、急斜面の保護はもちろん、採砂地や採石地は保安上、景観上支障のない地点に集団的に設けるなどの措置が必要である。

第2章 県自然環境保全地域及び緑地環境保全地域の指定その他これらの地域に係る自然環境の保全に関する基本的な事項

鳥取県自然環境保全条例に規定する県自然環境保全地域及び緑地環境保全地域は「自然環境の保全に関する基本構想」に基づき県土全域を対象として体系的に選定され、適切に保全されなければならないが、それらについての基本的事項はおおむね次のとおりとし、これらの地域を指定し、又はこれらの地域についてその保全施策を講じようとする場合には、農林漁業など地域住民の生業の安定、福祉の向上及び資源の長期的確保等自然的・社会的諸条件を配慮するものとする。

第1節 県自然環境保全地域

優れた天然林が相当部分を占める森林、その区域内に生存する動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している海岸、湖沼、湿原又は河川の区域及び植物の自生地、野生動物の生息地等でその自然環境が優れた状態を維持しているものなどで、一定の広がりを持った地域について指定するものとするが、特に次に掲げるものについては、速やかに指定を図るものとする。

(1) 人の活動による影響を受けやすい弱い自然で破壊されると復元困難な地域

(2) 自然環境の特徴が特異性、固有性又は希少性を有するもの

(3) 当該地域の周辺において開発が進んでおり、又は急激に進行するおそれがあるために、その影響を受け、優れた自然状態が損なわれるおそれのあるもの

2 県自然環境保全地域の保全施策

県自然環境保全地域の保全対象である特定の自然環境を維持するため、次のとおり自然環境の状況に対応した適正な保全を図るものとする。

(1) 当該地域における自然環境の特質に即して、特に保全を図るべき土地の区域については特別地区に指定し、その保全を図るものとする。

(2) 当該特別地区における特定の野生動植物で特に保存する必要があるものの存在する地区については、野生動植物保護地区を指定するものとする。

(3) 普通地区については、当該地域における自然環境の特質が維持されるよう、適正にその保全を図るものとする。

(4) 当該地域内において自然環境に損傷が生じた場合には、速やかに復元を図るものとする。

(5) 当該地域については、適正な管理を図り、必要な保全事業を実施するものとする。

第2節 緑地環境保全地域

1 緑地環境保全地域の指定方針

市街地若しくは集落地又はこれらの周辺の地域の樹林地、草地、湖沼、河川などの区域で良好な自然環境を形成している区域について指定を図るものとする。

2 緑地環境保全地域の保全方針

(1) 当該地域内において自然環境に損傷が生じた場合には、速やかに復元を図るものとする。

(2) 当該地域については、適正な管理を図り、必要な保全事業を実施するものとする。

第3章 自然環境保全の基本的方策

第1節 自然の保護

1 自然環境保全地域の指定等

土地利用計画を確立するに当たり、自然を優先的に保護すべき地域を決める必要があるが、その場合、保護の必要度には自ら軽重があるので、保護すべき自然の態様に応じていくつかの段階を設けることが適当である。また、自然保護の重要性にかんがみ、私権が制限されることはやむを得ないことである。

(1) 県自然環境保全地域等の指定

第2章で述べたとおり、県自然環境保全地域及び緑地環境保全地域を指定し、その自然環境の保全を図るものとする。

(2) 第1章で述べたとおり自然公園は自然保護の中心的役割を果たすものである。自然公園は、優れた景観を保護するとともにその適正な利用により、国民の保健、休養、教化に資するために指定されたが、自然保護の見地から指定地域の適否及び公園計画について再検討し、その自然の保護を図るものとする。

2 土地の公有化

自然保護の方法として従来とられてきたのは、主として行為の規制を行うことであつたが、これだけでは不十分であり、利権の行使に当たって不公平が生じる等の問題もある。最も確実な方法は、土地を公有化することである。これまでも公有化を行っているが、これを更に強化すべきであり、自然保護上特に重要な地域については、できるだけ早く公有化するよう努めるものとする。

3 関連法令との連絡調整の強化

自然保護の基本は1と2で述べたように地域指定と土地の公有化であるが、地域指定だけでは保護の万全を図ることができず、また、土地の公有化にも限度があるので、農地法、農業振興地域の整備に関する法律、森林法、都市計画法、都市緑地保全法、文化財保護法、公有水面埋立法などの関連法令と相まつて自然保護の強化を図るものとする。

4 自然保護協定の締結

各種開発行為の無秩序な開発を防止し、自然環境保全との調和を図るため、開発事業者との間に自然保護協定の締結を推進するものとする。この協定を結ぶに当たっては、各種開発事業(公共事業を含む)の内容を考慮しながら、実施細目としての基準を設定することが必要である。

第2節 自然の復元力の助長と人工的な造成

自然環境保全の方策は、保護だけでは十分でない。開発行為は容認されるものであっても、自然を一度は破壊するので、開発行為の許可等に当たっては修景緑化を義務づけるなど自然の復元力を助長する措置を講じさせるものとする。

また、公共施設はもちろん、都市、学校、工場、家庭などの緑化を積極的に行うよう指導するものとする。

第3節 自然の活用

自然環境の保全は、自然を賢明に利用することと矛盾するものではない。保護のための保護を主張するものではなく、本県の自然は今日の県民にとっても、また、将来の県民にとっても必要なのである。我々は自然環境保全に万全を期すると同時に、その活用についても同じように努力すべきである。

1 水田、森林等農業用地の活用

水田や森林は、こう水調節、水源かん養、酸素供給、土壌侵食防止等の公益的機能とともに、自然環境保全上多くの役割を果たしているので、これらの転用についても自然保護について慎重な配慮をするものとする。

2 自然と接する機会の確保

優れた自然環境の中にありながら、県民はこれを十分活用しているとはいえない。学校教育、社会教育などを通じてもっと自然と接する機会を確保するよう配慮するものとする。

第4節 自然環境保全体制の充実

自然環境保全は、その対策の樹立に当たっても、また、実施に当たっても、長期的な視野にたって取り組まねばならない。そのため、次のような体制を整備・充実する必要がある。

1 調査・研究体制

すべての基本は、自然環境の実態を知り、保護や復元の助長、人工的な造成や活用などの適切な方法を知ることである。このため調査、研究は不可欠なことであり、継続的に実施して資料を充実させていくとともに、その体制を充実する必要がある。

2 行政体制

(1) 県の行政体制

自然保護行政を推進し、より実効あるものとするため、監視体制を含めてその組織の強化、充実を図る必要がある。

また、第1節で述べたように、関連行政が協力して、自然保護行政を総合的に推進するための組織を検討する必要がある。

(2) 市町村の行政体制

自然環境保全は、国、県、市町村がそれぞれの責任の下に推進すべきものである。特に市町村は、当該地域の自然的、社会的条件に即した環境作りを必要とするので、その体制を確立するよう指導するものとする。

3 自然保護思想の高揚施策

自然環境保全は、県民の合意が絶対条件である。このため県民運動を展開するなど、自然保護思想の高揚を図るものとする。

4 自然保護教育の充実

自然環境保全の基盤として教育は重要である。特に学校教育、社会教育において自然保護教育の充実を図る必要がある。

第5節 自然環境保全上の財政措置

自然環境保全施策を実効あるものとするため、その裏付けとなる財政的措置について十分な配慮が払われねばならない。土地公有化のための財源、私有権の制限に伴う必要な補償及び市町村が行う施策に対する助成等について必要な財源措置を、国に強く要望するものとする。

鳥取県自然環境保全基本方針

昭和51年3月31日 告示第252号

(昭和51年3月31日施行)

体系情報
第6編 生活環境/第3章 景観自然/第1節 自然環境
沿革情報
昭和51年3月31日 告示第252号